なぜ縦・動画つくるのか?―斉藤ナミさん新連載・予告動画をつくった理由と想いとか
「縦動画の作り方」なんて単純な話じゃなくて、私たちが「情報」や「物語」を「どう消費するか」と「どう創るか」が根本から変わってきた瞬間にいるように思えてなりません。だから、感じていることを書き残しておきたくなりました。文章を書くのは一番好きだけど、映像作りはボクの人生そのものです。この二つの世界が「縦・動画」という新しい場所で出会ったとき、何が生まれるのか。その冒険の記録です。熱量高めの約7,000字興味のある方はどうぞお付き合いください。
※斉藤ナミさん新連載・予告動画・TypeA-Cはコチラ▼
池松潤/Jun Ikematsu
コミュニケーションデザイン/事業計画/エクイティストーリー/エンタープライズ営業コンテンツ/マーケティング/コンテンツなど。スタートアップCEOの壁打ち相手。慶応義塾大学卒/博報堂を経てスタートアップの若手と世代間常識を埋める現役58歳。ときどき婦人公論.jpにコラムなど。 ⇒ https://lit.link/junikematsu
1:横と縦では「構図」や「企画」そのものが変わる
横動画と縦動画の違いは、単なる画面の向きだけではありません。それは表現の文法そのものの違いであり、伝えられる物語の本質にまで影響を及ぼします。
縦動画の最大の特徴は「横幅がない」ということ。従来の映像文法の歴史は、横長の画面を前提に発展してきました。「パノラマの風景」「複数の登場人物が横に並ぶシーン」「プレゼンテーションで白板を横から指差す構図」「左から右への動きによる時間経過の表現」など、横幅を活かした表現技法が映像の基本でした。
しかし縦動画では、この横の広がりが制限される代わりに「縦の高さ」が強調されます。「空から地面」まで、あるいは「足元から頭上」までを一つのフレームに収められる。この「垂直性」が生み出す表現は、横動画では決して成し得なかったものでした。
今回、私は斉藤ナミさんの新連載の予告動画を制作したのですが、これは婦人公論.jp (WEB)の新連載コラムの予告であり、読者開発のために作りました。
なので「新連載が始まる」パートと、「斉藤ナミさん」を伝える2つのパートに分けました。だから冒頭に「新連載が始まる」を表現するシーンがあります。


斉藤ナミさんを伝えるパートはここから。

従来の「横・動画」なら、おそらく「顔のアップ」と「風景のワイドショット」を交互に切り替えるような映像演出になっていたでしょう。
しかし「縦・動画」では、そのような従来の構図概念ではダメです。縦の良さが活きません。「新連載が始まるんだ!」という登場のシズル感も出ません。
一番大事なことは「動画の顔」を最初の3秒(ココはやり方で変わる)で表現しないとならないのです。
まずは「理想の映像」をアタマにイメージします。
画面の上部に著者である斉藤ナミさんの表情、中央部に手元の動き、下部にページをめくる動きを同時に収めることができたら、凄くわかりやすい動画になったでしょう。垂直的な構図によって、人物の内面と外面、思考と行動の繋がりをシームレスに表現できます。
でも、時間がない
もちろん、お金もない
さらに言えば、縦動画では「下から上への動き」が非常に効果的なのは解ってるんですよ。スマホの縦スクロールの習慣と相まって、下から上への動きには「上昇」「成長」「希望」といった感情が沸き立つように演出ができます。
でも、時間がない
もちろん、お金もない
ほぼ不可能です。
そこで、BGM(曲)勝負にしようと決めました。映画もTVドラマもCMも音楽で印象の8割が変わります。音楽を起点に、映像の世界観を決めようと思いました。
10年前なら音効さん(楽曲や効果音の専門家)に頼むしかなかった。
でも、いまは無料素材と有料素材を探しまくればある。
ありました!
「Art list 」!神サービスです(他にもありますけどコレが一番)
そこからさらに、気合と根性(愛情)で曲を探しました。

そして、3パターン作ることを決めました。
・春っぽい系(オーソドックスなやつ)
・J-POP系(Z世代向け)
・Jazzファンク系(斉藤ナミさんに合ってると思った)
ここまで読めば解ると思うのですが、単に構図の問題ではなく、企画の段階から変わってくるということです。
「何を一番伝えなければならないのか?」そして「どんなストーリーで語るのか」という根本的な「問い」に対して、横動画と縦動画では考え方が変わってきちゃうのです。
例えて言うなら、横動画が「パノラマ的な物語」に適しているなら、縦動画は「垂直的な物語」に適しています。
人の成長、深層心理への潜入、社会階層の上下移動、あるいは天と地を繋ぐような壮大なテーマとか。これらは縦動画だから効果的に表現できます。
ええ解ってるんですよ。それも。
でも時間がない
もちろんお金もない
だから知恵と根性(愛情)が必要になるのです。
縦動画を作るということは、単に既存の映像を回転させることではないんです。
「新しい視点で世界を捉え直し、新しい方法で物語を紡ぐこと」
限られた中で、縦の可能性を探求する冒険なのです。ええ。カッコよく言い過ぎましたね。でもワクワクして作ったのが、伝わるといいなと思ってます。だからこのnoteを書いてます。
2:上田監督の影響ーそれはTiktokカンヌ受賞作品「レンタル部下」から始まった
縦動画に衝撃を受けたのは、カメラを止めるな!の上田監督「レンタル部下」を観たときでした。カンヌ国際映画祭の「#TikTokShortFilm コンペティション」受賞作品です。映画館で2時間かけて語られる物語と同じくらいの衝撃がありました。
※まずは内容を知らないと続きが理解できないので「レンタル部下」を見てください。
なぜそんなに衝撃的だったのか?
従来の横画面なら「上司と部下」の会話シーンは、二人を横に並べて撮るでしょう。でも縦画面でそれは出来ません。交互に映すしかない。上司と思われる男性が「この成績じゃやる気ないと思われてもしかたないよね!」と、女性を叱責する場面から始まります。一見ただの職場のやりとりです。
しかしタイマーが残り1分半になったところで、二人は何かスイッチが入ったかのように話を畳みかけます。
「お前だから言ってんだよ」
「ありがとうございます 今は課長みたいにちゃんと怒ってくれる人いないので」
「飲みにいくか?」
「おごりですか?」
「お前反省してないだろ(笑)」
「(笑)」
冒頭の険悪な雰囲気は一気に氷解して爽やかなドラマのようなエンディングに……と思いきやタイマーが鳴る。
女性は電卓を取り出し事務的に「鞭と飴コース、基本料6000円、指名料1000円、簡易台本指定が2000円、合計9000円になります」と代金を請求するのです。男性は静かに代金を支払います。実は2人の関係は“部下と上司”ではなくて“レンタル部下とお客さん”だったのです。この時点で40秒です。
すげぇ。天才じゃん。。。(虚)
予算も無さそう(たぶん)
時間も無さそう(実際にサクッと脚本書いてサクッと撮ったらしい)
神様よ!才能をボクにくださいぃぃぃぃ。
さらに驚いたのは、「縦スクロール文化」を「物語の構造」そのものに取り入れていることです。横動画の物語は通常左から右へと時間軸に沿って進みます。それは「映像の世紀」100年の歴史ですよ。でも「レンタル部下」はスクロールするように展開するんです。こんな演出があったんだ。。「素敵なラスト」「全部だまされた」と沢山のコメントが寄せられてました。
ある意味で、縦動画は「制約」の芸術だと思います。横に広がれない代わりに、深さと高さを極限まで追求する。そこが創造性を刺激する。
上田監督と違ってボクには才能などありません。広告会社員時代も受賞したことないですし。でも会社が驚くほどの収益をあげたり、広告主に儲けてもらうのが上手でした。だからすべての「制約」は創造の源だと知っています。「ないないづくし」の中でどう表現するか?これこそが、クリエイティブの本質だと思うのです。
「レンタル部下」を見ていなかったら、ボクは横動画を編集するだけだったかもしれません。自分で編集もしなかったでしょう。「縦動画」の可能性を教えてくれて感謝しかありません。
実は上田監督はVRのイベントでお会いしてお話しました。それが、映画・アングリースクワッドの主役・内野聖陽さんのインタビューに繋がってたりして。(記事はこちら)人生何がどう繋がるかわかりません。面白い。

3:小説家やライターには「縦・CM」が必要ー読者開発に縦動画CMが必須の時代になる3つの理由
ご存知ですか?全国に書店が無い市町村は、1741市区町村のうち482市町村を超えてます。割合は全体の27.7%です。
書店ゼロの自治体、27%に
沖縄、長野、奈良は過半を占める(共同通信)
#Yahooニュース
ほぼAmazon一強。Amazon対策といえば、せいぜい書籍コメントくらいでしょう。書いたら終わり。印刷して配本したら終わり。記事をアップしたら終わり。で。前述noteにも書いたのですが、そこからがホントの勝負です。読者開発の努力なくして読まれることなどありません。
これは小説家もライターも一緒ではないでしょうか。でもなぜ?フォロワー数に囚われる人の数は一向に減らないのでしょう。実際にフォロワー数の数が多くても、読まれない場合が増えてます。もうフォロワー数の時代ではないのに。
だから読者開発が必要なのです。自ら読み手にアプローチする。その「打ち手」を考えて実行しなければ、先は見えてきません。
いま小説家やライターが直面しているのは「そもそも存在を知ってもらえない」という絶望的な現実です。出版社や編集者は一部を除いてこの現実にぜんぜん解決できてません。出版社のブランド力と読者へのリーチ力(到達力)は比例しないのです。はっきりいって「読者開発」にあまりに無力の場合が多い。この現実を認めて、対策している出版社は一部です。そこで読者開発に必要になるのが「縦・動画CM」だと思います。
では、なぜ「縦」なのか?
答えはカンタンです。人口の多くが24時間のうち多くをスマホで縦スクロールしているからです。Instagramや、TikTok、Xのタイムラインを縦にスクロールしている読者の流れで目に止めるには、このフォーマットにあわせた表現で知ってもらうしか方法がないのです。

※この辺を否定する人は、この先は読まないほうが良いです。
でも「よっしゃ!縦動画作ろう!」と思っても、小説家やライターには難しい壁があります。
1:技術的なハードル(編集ツールの難しさ)
2:お金の問題(いい専門家に頼むと結構高い。安いとレベルが低い)
3:そもそも映像の事がワカラナイ
僕は博報堂でCMを作ってた経験もあるし、大手出版社とも仕事をしてきたので、この問題を痛感していました。良い作品なのに届かない。素晴らしい作家なのに読者が増えない。この状況を解決しようとする編集者はほんの一部にしかいません。だから。。
・初めて本を出したときの感動を知ってますか?
・初めて連載コーナーの感動を知ってますか?
僕は知ってます。
斉藤ナミさんの予告動画を作ったのもそんな想いからでした。
この歳になると、そういう時間を伸ばしたい。斉藤ナミさんに婦人公論.jpで書きませんか?ってお声がけしたのは2023年10月の名古屋です。紆余曲折をへて、やっとこの瞬間が来ました。とても感慨深いです。
「著者の世界を映像に意訳する」
これが縦動画CMの本質だと思います。著者の文章の魅力をそのまま伝えることはできません。でもその著者の読者開発を30秒で伝えることはできます。だからとにかく作りました。作らなければ「何も無い」からです。
で。文章の感じを伝えるために、冒頭にタイプライター音を入れました。エンディングにも。文章の力を見せるためには、言葉をたくさん見せるのは逆効果です。その代わり「この映像の先には、もっとステキな世界がある」と暗示する構成にしました。
縦動画CMのもう一つの利点は「保存性」です。記事や書籍は一度読まれたら暫く読まれることはありません。そこでおしまいですが、動画は見るのは簡単です。文章を読むほど労力はいりません。だから作家さん自身の資産・アセットになります。
小説家やライターのみなさんが縦動画CMをサクッと作るのは難しいです。まぁAIでも作れるけど、今回の動画のようなものをカンタンには作れません。でも自分の作品を信じているなら、そして読者開発が必要だと思うなら、届けるための「縦・動画」というアプローチ方法を、信じてほしいと思います。
時間がなくても、お金がなくても、あなたの物語を届ける道はあります。それが「読者開発」であり「縦動画CM」だからです。
4:作るのがとにかく面白い! ―i-phoneがあれば何でも試せる。
ところで5年前まで僕は自分で映像編集ができませんでした。自分で編集するようになったのは4年くらい前からです。なぜなら、編集は誰かに頼むのが普通だと思っていたからです。
しかしミュージシャンが自分のMacで収録編集するのと同じで、CMも自分で作れる時代になりました。だから編集をちょこちょこするようになったのです。もちろんノートPCは貧弱です。だからクラウド編集サービスです。プレミアProを使うほど動画で稼いでもいません。だから無料クラウド動画編集サービスを使ってます。そろそろ移行したいところです。

でも、それも「旅」のようなもので面白いですね。なぜなら、撮りたい映像も、編集する映像も、全部自分のアタマの中にあるからです。それが一番大事です。
たとえば、小説や記事を書くために、色んな本や記事を読みますよね?だから映像も沢山見て「嗚呼。こんな映像カッコいいな」とか「こんな映像を作れたらいいな」って感じることが、なによりも大事だと思ってます。
僕は、社会人の青春時代をCMと共に過ごしてきました。CMってずーっと見てると「あ。このCMのカメラマンはあの人だな」とか「このCMの監督はあの人だ」と表現で解るようになります。そして「ああ。この広告主の社内はこんな事情があってこういう表現にしたんだな」とか「この広告主は視聴者のことを信じてないな」とか、制作過程まで解るようになりました。変ですね。でも事実です。
どんな世界でも「ずーっと」見てると「見えてくるもの」がありますよね。でも僕の縦動画は、まだそこには至ってません。だから面白い。たぶん解るようになるでしょうから。
上田監督「レンタル部下」の衝撃から、色んな縦動画を見るようになりました。でも「縦動画ネイティブ世代」ではありません。だから「縦ネイティブ」クリエイターと仲良くなって「なるほどー!」って縦動画の核心的な真髄を知りたいと思ってます。
文章を書くのは一番好きだけど、映像は僕の青春です。だから動画を作るのがスキです。でも、こんなハナシは聞かれないとしないものです。だからこの機会に書き残しておこうと思いました。それに縦・動画は面白い。だからもう少し「縦・感性」を磨いていきたいと思います。
おわりに
いかがでしたか? 「ボクがなぜ縦・動画つくるのか?」という旅はこんな感じです。
斉藤ナミさんの新連載の予告篇を作ったとき、正直なところ(商業レベルでは)完璧とは言い難かったです。ええ。言い訳です。でも時間もカネもない時こそ「こんなの撮りたい!」「あんなの作りたい!」って思うほうが良いです。そうじゃないと「気持ちがちっちゃな動画ができあがります」それは見る人にも伝わります。ココはすごく大事なこと。半世紀生きて得た体験的な確信です。
だから、何も「有る」より「なにも無い」方がいいです。絶対にいい。そう信じてます。時間もお金もスタッフも全てが揃っていても、良いものがデキるとは限らないからです。それを身に沁みるほど良く知っています。
文章を書くことが一番好きですが、映像を作ることは僕の青春そのもの。だからこの二つの表現方法が「縦・動画」という形で新しく交わった時に、新しい「何か」が生まれる予感がしてます。
完璧を目指さなくていい。まずは作ってみる。そこから全てが始まります。そんな感じがスキです。「映像の世紀」は100年以上の歴史。すべて横の世界でした。縦の世界はまだ始まったばかりです。僕の探検も始まったばかり。一緒に新しい表現の可能性を探っていける人と一緒に旅ができたら幸せです。
あ、そうそう。忘れるところでした。肝心なのは、斉藤ナミさんの新連載をぜひ読んでください。ボクの動画よりもずっとずっと素晴らしい世界が待っています。ええ。事前に読んでますよ。斉藤ナミさんと編集長と準備してきましたから。
掲載日は来週です。Xでもお知らせしますので、興味が湧いた方はぜひチェックしてみてくださいね。
急にナニ言ってるの状態ですけど...事業計画書とか営業資料を書いたりセミナーイベントやったりと同じで使えるスキルは死蔵してても意味ないから💫CM制作ノウハウ注ぎ込んで縦動画🎬超楽しい❣️こちらこそありがとうです😊#斉藤ナミさん新連載スタート祭り#嫉妬祭り#みんなで楽しむnote企画準備中 https://t.co/1lFSFg5wo6
— 池松潤 / Jun Ikematsu (@jun_ikematsu) March 7, 2025
文章を書くことも、動画をつくることも、全て「表現」という同じ「川」でつながってます。やがて海にたどり着く。その流れに身を任せながら、これからも「縦・動画」の「旅」を続けていきたいと思います。
一緒にいきましょう「縦」の世界へ
池松潤
https://lit.link/junikematsu
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