《葬送のフリーレン》何がソリテールを変えたのか?(進化論否定と復活の知識)

ネタバレには配慮していません。

『葬送のフリーレン』の原作マンガはまだ読んだことがないという方には原作マンガを、既に読んだことのある方にはある一つの視点からの再読をお勧めしています。


はじめに(ソリテールの変化)

女神の石碑編(約80年前)のソリテールは死を恐れており戦いには慎重です。(第12巻117話、第13巻118話)

それに対して、黄金郷編(現代)のソリテールは積極的にフリーレンと戦いますし、強敵との戦いを楽しんでさえいます。かつてのソリテールはこういうキャラではありませんでした。(第10巻97話)

死に際にも軽口を叩いています。(第11巻102話)

アウラやマハトと比較すると明らかですが、死を恐れていません。(第3巻22話、第11巻103話)

このソリテールの変化がなぜ生じたのかを考えます。

復活・転生に関する知識を得た

死を恐れていたソリテールが死を恐れなくなったのですから、ソリテールは復活や転生に関する知識を得たのだろうというのは自然な発想です。

この描写もそれを裏付けています。ソリテールは「それだけ知ってもらえれば今はそれで十分(それ以上は後で知れば十分)」とマハトに言ったにもかかわらず、そのまま二人は死んでしまうからです。「死んだら終わり」ならこの台詞は意味が分かりません。死んでも後(次)があるから「今はそれで十分」なわけです。(第11巻103話)

手掛かりがもう一つあります。魔王に対する態度の変化です。

魔王に対する態度の変化

マハトと出会った頃(約100年前)のソリテールは魔王のことが大好きです。(第10巻88話)

女神の石碑編(約80年前)のソリテールもそうです。(第12巻116話、117話)

しかし、現代のソリテールは、魔王に対して複雑な感情を抱いています。(第11巻98話、第11巻103話)

魔王の思想は危険だというのです。

ですから、ソリテールは魔王の思想を捨てて転向しています。

つまり、魔王の思想を捨てて、復活・転生の知識を得ているわけです。

魔王の思想

魔王の思想とは「共存」です。共存のために人類との戦争を引き起こします。

この戦争は人類との戦いですが、究極的には女神様との戦いです。(第12巻116話)

つまり、戦争の正当性を基礎づける「女神は魔族の敵である」とする理論を魔王は持っていたはずです。

「理論も何も、女神様と魔族が敵対していることは説明するまでもない当たり前のことだ」と感じるかもしれませんが、実はそんなことはありません。この世界がもともと魔族のためにデザインされていて、かつて魔族は女神様に近しい存在だったのではないか?と思われる描写はいくつもあるのです。

ですから、魔王は「女神は魔族の敵である」とする理論的支柱を必要としていました。

それが、魔王がソリテールに教えた魔族の起源に関する進化論です。(第10巻88話)

魔族は進化(自然選択)によって生まれた存在で、神話や女神とは関係ないという進化論が魔王の思想を支えています。

人類からも魔族からも必要とされた進化論

フランメも「魔族の祖先は魔物である」という進化論を唱えています。(第2巻14話)

フランメは当時の常識「魔法は魔族の技術」を否定して魔法研究の認可を得たかった。そして「誰もが魔法を使える時代」を目指していた。そのために「魔族の祖先は魔物である」という進化論を唱えました。(第6巻53話)

帝国(当時の統一王朝)としても、魔法を軍事利用して魔族に対抗できる力を必要としていたため、フランメの進化論を利用しました。

つまり、人類の側からも魔族の側からも必要とされていたのが魔族の起源に関する進化論だったというわけです。

ソリテールの転向

女神の石碑編の後、ソリテールはフリーレンの後を追うように移動しています。魔王城(魔王戦)、北部高原最北端の城塞都市(南の勇者とシュラハトの戦い)を調査して、南側諸国へ渡り、その後クヴァール戦、アウラ戦の痕跡を調べながら北上して黄金郷に来ています。(これは過去記事を参照してください)

ですので、ソリテールが転向するきっかけになった知識は南側諸国で得ています。帝国の力が及ばない大陸南部であれば聖典がそのまま残っているでしょう。

ソリテールはそれを手に入れて、ソリテールは魔王から教わった進化論の間違いに気付いた。そして、魔族の起源の秘密(かつては聖典に書かれていたけれどもフランメの進化論が公認されたことにより削除された魔族の起源に関する創造論)を知ったのでしょう。そこに魔族の復活・転生に関係する記述があったものと思われます。

(補足)テキスト版

ソリテールには女神の石碑編と黄金郷編との間で変化がある。

  • 死を恐れていて戦いには慎重 → 死を恐れなくなり戦いに積極的

  • 魔王の思想への傾倒 → 魔王の思想からの転向

この原因について考えている。

前者(死を恐れなくなった)については、簡単に想像できる。死を恐れなくなったのだから、復活や転生に関する知識を得たのだろうと。実際、マハトにもそういう話をしている。「それだけ知ってもらえれば今はそれで十分」と。

だけど、この知識をどこからどうやって手に入れたのかがわからない。(場所はわかる。彼女の移動経路を辿ればおそらく南側諸国)

それに、後者(魔王の思想からの転向)との関係もよくわからない。魔王の思想というのが具体的に何なのかもわからない。「共存」だということはわかるけど、なぜそれを否定するに至ったのか。戦争に負けたから、というだけではないだろう。

これが数か月前の考察の状況。

で、最近、別方面の考察で進展があった。フランメの進化論(魔族の祖先は魔物)についての考察だ。

このフランメの進化論と、フランメが帝国(当時の統一王朝)から魔法研究の認可を得ようとしていたことは無関係ではないだろうということ。

当時は「魔法は魔物の技術」と考えられていた。それはおそらく聖典にそういう記述があったから。神話の時代の物語の一つとして、魔族の誕生に関する物語があり、魔法と関連付けられて語られていたから。

魔法研究の認可を得たいフランメとしてはこの聖典の記述が邪魔だった。

他方で、帝国としても魔法を軍事利用したかったから、この聖典の記述は邪魔だった。

フランメと帝国の目論見が一致して、フランメの進化論が公認されて、聖典から魔族の誕生に関する神話の時代の物語(創造論)は削除される。そして魔法研究の認可が下りる。こういう流れがあっただろう、と。

この考察が、ヒントになった。

結論から先に言うと…。

ソリテールは魔王から魔族の起源について進化論を教えられてそれを信じていた。「収斂進化」の話。けれども、聖典から削除された創造論の存在を知って、魔王から教わった進化論がウソだと気付いた。ということ。

順を追って説明する。

魔王は「共存」のために人類と戦争を始める。これは人類との戦いだけど、究極的には女神との戦いだ。女神の石碑編でソリテールがそう言っている。

だから、魔王はこの戦争を正当化するために「女神は魔族の敵である」という理論を持っていた。 この理論はそれほど自明なものではない。

たとえば魔法技術は人類よりも魔族の方が長けている。この世界は魔族のためにデザインされているように見える。神話の時代には、魔族は女神様に近しい位置にいた。人類よりも。(そしてこれがフランメの進化論が公認されたことにより削除された聖典の神話の時代の物語だ)

こういった魔族と女神様の関係を示す描写は他にもある。(女神の加護等)

だから、魔王は「女神は魔族の敵である」とする理論的支柱が必要だった。

それが魔族の起源に関する進化論だ。つまり、魔族は自然選択によって発生した存在で、神話とも女神様とも関係ない、と。そう魔王は主張していた。ソリテールはそれを信じていた。

けれども、魔王の死後、ソリテールは南側諸国で古い聖典を見つける。大陸の南部には統一王朝の力も及んでいなかったから、古い聖典が残されていたのだろう。そこで、魔族の起源に関する創造論を知り、魔族の復活に関する知識を得た。

これが、ソリテールが魔王の思想から転向した理由だ。

おわりに

魔族が追放された忌み子なのだとしたら。 魔王が唱えた共存とは、親(女神様)なんか無視して子供たち(魔族と人類)だけでやっていこうという親殺し(神話の否定)なのかもしれないと思います。

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