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《葬送のフリーレン》デンケンとルティーネのトラブルの背景(第14巻132話「追跡」)

ネタバレには配慮していません。原作マンガ最新話(第15巻147話)への言及や物語の展開に関する予想があります。

『葬送のフリーレン』の原作マンガはまだ読んだことがないという方には原作マンガを、既に読んだことのある方にはある一つの視点からの再読をお勧めしています。その訳をこちらの記事で説明していますのでお読みください。


はじめに

帝都の図書館で発生したデンケンとルティーネの、トラブルに関する背景の説明です。

これは若干カスハラ(カスタマーハラスメント)っぽさも感じるトラブルですが(笑)、若者に優しいデンケンに限ってそんなわけもなく、かといって、デンケンがなぜそこまでルティーネに突っかかるのか?実はよくわからない、という方が多いのではないでしょうか。

この点を、以前にも書いたことはあるのですが、もう少しわかりやすく書き直しました。

これはゼーリエ暗殺計画の前日譚でもあります。

また、ゼーリエ暗殺計画の後日譚として、帝国編の後の「北の果て編」(仮)とも関わってくるのではないかと私は考えています。

派生する考察として、聖杖法院やミリアルデ、クラフトも関わってきます。

ですので、かなり魅力的かつ大きな謎(ミステリー)です。

謎解きの過程はちょっとした推理小説、ミステリ小説のようで、『葬送のフリーレン』でこんな仕掛けを施すのか!という驚きもあります。

デンケンとルティーネのトラブルの背景

さらっと読むとあの場の偶発的なトラブルに見えます。

しかし、そうではありません。

この時点でのデンケンはゼーリエ暗殺計画をまだ知りませんし、影なる戦士の関与も当然知りません。そもそも、レーヴェがシュリットにゼーリエ暗殺計画の通達を渡したのはトラブルの前日のことです。(第14巻129話)

にもかかわらず、デンケンは一介の図書館司書に過ぎないはずのルティーネの身辺調査を済ませていて、出身地から戦歴、趣味まで把握していました。

ですから、ゼーリエ暗殺計画が動き出す前から、デンケンはルティーネの尻尾を掴んでいて、彼女をマークしていたことになります。

なぜそんなことができたのでしょうか?(答えは「なぜなら尻尾を出していたから」しかあり得ませんが、伏線となる描写があるので見ておきましょう)

その理由は、地下通路下見時と舞踏会でのイーリスとルティーネの会話からわかります。

先に、舞踏会で「一緒に踊る?」と冗談で誘われた時のルティーネを見ておきます。(第15巻141話)

ルティーネはイーリスのことが大好きなんですね。イーリスから誘われるとつい嬉しくなって、ここが「死地」であることを忘れています。(シュタルクはフェルンに誘われてもとてもそんな気分になれません)

次に、地下通路下見時のルティーネです。イーリスは「久々の任務だ」「命懸けの戦いになる」「楽しみだね」と話を振りますが…(第14巻133話)

ルティーネの反応は「そうですね…」と今一つ芳しくありません。地下通路下見時のルティーネには何かあります。どうしたのでしょうか?

イーリスの言葉のうち「命懸けの戦いになる」「楽しみだね」にはルティーネも素直に同意できるはずです。

ということは、ルティーネが素直に同意できなかったのは「久々の任務」という点です。イーリスにとってはゼーリエ暗殺計画は「久々の任務」ですが、ルティーネにとっては「久々の任務」ではないということですね。ルティーネはイーリスに対して上手く嘘をつけずに、対応に困ってしまったのです。

では、ルティーネの任務とは何でしょう?

ルティーネの出身地はレーヴェが総督を務める帝国最北端領・ロルベーアです。(第14巻129話)

ということは、二人には特別な関係があります。ルティーネはレーヴェから直接指示を受けて、ゼーリエ暗殺計画の準備をしていたのでしょう。

つまり…

ルティーネはレーヴェの指示で以前からゼーリエ暗殺計画の準備段階の任務にあたっていた。 その動きに気付いたデンケンが疑念を持ち、ルティーネの身辺調査を行った。ただ、ルティーネの任務がゼーリエ暗殺計画につながることまではデンケンは気付いていない。

そういう背景があって、図書館でのデンケンとルティーネのトラブルになっています。

ルティーネの任務の舞台(図書館)

では、ルティーネの任務について考えてみます。

そもそも、図書館司書ルティーネと宮廷魔法使いデンケンの接点はこの図書館しかありません。

ですから、ルティーネの任務の舞台は、ルティーネの勤務先、かつ、デンケンが常連になっているこの図書館です。

図書館で怪しい動きをしていたルティーネにデンケンが気付いたわけです。そこで身辺調査をしたところ、ただの図書館司書ではない。真っ黒だったのでマークした。

そういうことになります。

この図書館は何なのか?(修道院の附属図書館)

では、この図書館は何なのか?

そもそも、宮殿の資料室や書庫を自由に使うことができて、お金も有り余るほど持っている宮廷魔法使いのデンケンが通う図書館ですから、普通の図書館ではありません。権力やお金の力では集めることのできない、かなり特殊で貴重な資料を収蔵しています。(第7巻59話)

この話は聖杖法院も絡んでくるので、ちょっと複雑になってきます。少し推理小説風です。

当日のデンケンの行動を「追跡」する

この日の午前中のデンケンの行動は、描写を追いかけてみるとこうなっています。(第14巻132話のタイトルは「追跡」です)

  1. カノーネと会う。「昼には義父上の城塞都市ヴァイゼへの移送が行われれる」「儂もそれに同行する」「フラーゼの手綱が握れなくなる」「根回しを進めておくか」(第14巻130話)

  2. 図書館で本を返却、ルティーネとトラブルに。(第14巻132話)

  3. 図書館を出た後、ゼンゼと出会って一緒に昼食を取る。(第14巻132話)

  4. 昼、ヴァイゼへ。

ですから、根回しをしている描写はありませんが、カノーネと会った後に根回しをして、その後に図書館に寄っています。

では、根回し先はどこか?

フラーゼに対抗できる存在となると、聖杖法院しかありません。(第14巻128話)

つまり、デンケンは聖杖法院へ行ってミリアルデと面会して根回しをした後で、図書館に行っています。

ですから、この図書館は聖杖法院の「近くにある」可能性が考えられます。帰郷するので根回しの「ついでに」図書館に寄って借りていた資料を返却したわけです。

「近くにある」とか「ついでに」とは勝手な想像だと思われるかもしれませんが、もうすこし見てみましょう。

聖杖法院とは

聖杖法院とはどんな組織でしょう?

聖杖法院は宗教組織です。

なぜなら、聖杖法院トップのショートカットのエルフの女性(おそらくはミリアルデ)がお祈りのポーズをとっていますし、組織名に「聖杖」と冠しているからです。(「聖杖」といえば大魔法使いの地位を示す「聖杖の証」ですが、「大魔法使い」は神話の時代から存在します。ゼーリエが「神話の時代の大魔法使い」だからです(第10巻93話)。ですから、「聖杖」は女神様と関係のある言葉です)

さらに絞り込めば、聖杖法院は教会の系統ではなく、修道会(修道院)の系統に属する組織です。

なぜならトップが女性だからです。『フリーレン』の世界に女性の僧侶はいません。女性は修道女です。(例外は「剣の魔族」で登場していた、女性魔族の自称「旅の僧侶」です。第7巻64話)

ですから、聖杖法院は修道会に由来する裏組織(特務機関)です。

修道院と言えば、ハイターが女神の石碑編で解説していました。修道院には写本によって昔の文献や神話を現代へ伝えるという役割があります。(第12巻112話)

つまり、帝都の修道院には、神話の時代に関する重要な資料を集めた附属図書館があります。おそらく帝国最大規模の図書館でしょう。(図書館というよりは文書館です)

そして、ここまでの考察から、聖杖法院と修道院とその附属図書館の所在地はかなり近い(あるいは同じ)と考えるのが自然です。

宮殿の書庫や資料室を自由に使うことができて、お金も使い切れないほど持っているデンケンが図書館の常連になっている理由は、ここにしかない貴重な資料があるからです。ですから、ルティーネの勤務先が修道院附属図書館だとすれば納得できます。

デンケンは聖杖法院で根回しをした後に、ついでにすぐ近くの修道院附属図書館に立ち寄って本を返却したことになります。

ルティーネの任務

レーヴェは神話の時代に関する知識をもっています。(第15巻147話)

ということは、この知識の出所は修道院付属図書館の秘密資料ですね。

ルティーネが図書館で何をしていたかというと、レーヴェの指示で神話の時代について調査をしていました。おそらくは、神話の時代に関する秘密資料を盗み出していたのでしょう。

それにデンケンが気付いて、身辺調査をしていたわけです。

関連する考察

女神様は本当に「天地創造の女神様」なのか?

レーヴェの説明はソリテールの説明とよく似ています。(第12巻116話)

女神様が世界の法則を書き換えた(世界の理を捻じ曲げた)という主張は、女神様が天地創造を行った創造神であることを否定し「女神は創造神が造った世界を変更した下級神に過ぎない」と主張しているようにも聞こえます。

ですから、レーヴェが入手した資料は教会の教えとは真っ向から対立するかなり機密性の高い文書です。

レーヴェの主張は正しいのか?

これは、世界の謎に直結する疑問になってきます。

ミリアルデの生存、回復、再登場

ここまでの考察を前提とすれば、自然な発想として、

  • ミリアルデは玉座のバザルトによるエルフの里襲撃を逃れて修道院(ハイターによると人里離れた場所にある)に匿ってもらったのだろう(第12巻112話)

  • 武道僧モンクのクラフト(モンク=修道僧)が300年前に出会った同族とはミリアルデのことで、ミリアルデはクラフトから立ち直りのきっかけを得たのだろう(第3巻24話)

  • デンケンの根回し先が聖杖法院なのだから、聖杖法院(ミリアルデ)は大陸魔法協会の味方として登場してゼーリエのピンチを救うだろう

といった想像ができると思います。

ミリアルデに関する考察はこちらも参照ください。

ゼンゼがデンケンに質問したこと

ゼンゼと昼食を取った際、デンケンはゼーリエ暗殺計画については「儂は何も知らん」と言うのに、「他にも聞きたいことがあるんだろう」とゼンゼに質問を促しています。

デンケンはもともと神話の時代については詳しいのです。 一級魔法使い試験(第二次)の「零落の王墓」についても良く知っていました(第6巻48話)。

趣味なのか何なのかわかりませんが、日頃から神話の時代について調査・研究しているのでしょう。(だから図書館の常連になっていて、ルティーネとは顔見知りです)

そして、ゼーリエは「神話の時代の大魔法使い」です。

つまり、ゼーリエ暗殺計画の背景について教えられることがあると思うから儂に聞いてくれ、と質問を促しました。

神話の時代の謎は「北の果て編」(仮)へ

ゼーリエ暗殺計画の背景を説明するために、神話の時代に関する説明がある程度は帝国編でなされるはずです。ゼーリエは「神話の時代の大魔法使い」だからです。

ただ、一部は次の長編へ謎として持ち越されるでしょう。

ゼーリエ暗殺計画が潰えてレーヴェが退場した場合、物語としてはルティーネが「北の果て編」(仮)へその謎を引き継いで行くことになるのだと思います。(もう一人はクレマティスの後継者である修道女のロレです。第15巻139話)

おわりに

《葬送のフリーレン》に関する記事は下記のマガジンにまとめています。

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