新聞店の4代目が、ケーキ屋さん専用のITシステムを作るまで
はじめまして。がだんだん株式会社の代表、福井佳亮です。
私は名古屋で、ケーキ店専用 店頭受取予約+AI販促プラットフォーム「いつでもケーキ」を開発しています。なぜ新聞販売店の4代目がケーキ屋さんのシステムを作ることになったのか。今日はその話を書いてみようと思います。
iPhoneが世界を変えるのを見て
私がテクノロジーの世界に惹かれたのは、スティーブ・ジョブズの影響が大きいです。
一度アップルから追い出された後に復帰し、iPodを世に出した。それまで私が使っていた東芝のHDDプレイヤーやソニーのウォークマンが、みるみるうちに過去のものになっていく。そこにiPhoneが登場して、世界がまるごと変わりました。
実際にiPhoneを手にして、1つのプロダクトが世界を変えていく様を目の当たりにした時、私もこの世界で勝負してみたいと強く思うようになりました。
シリコンバレーで確信したこと
2014年、どうしてもアメリカのスタートアップを自分の目で見たくて、シリコンバレーに3週間滞在しました。Plug and Playという施設で、日本のスタートアップ企業にインターンとして入れてもらった日々です。
ある日、電車を乗り間違えて見知らぬ場所に着いてしまいました。英語も話せない、土地勘もない。途方に暮れていた時に、当時アメリカでローンチされていたUberを初めて使いました。スマートフォンで車を呼び、目的地に無事到着。テクノロジーが言葉の壁も土地勘のなさも超えて、私を助けてくれた。
Airbnbで宿を予約し、DoorDashで料理が届き、街中ではGoogleの自動運転車やTeslaが当たり前のように走っている。未来都市に来たようなワクワクが止まりませんでした。
印象的だったのは、現地の日本企業の駐在員の方々との交流です。私が「新聞販売店を経営しています」と言うと、「なんて面白いやつなんだ」と肯定的に受け止めてくれた。企業の規模ではなく、人と人がフラットにビジネスの話ができる環境。日本ではなかなか経験できないことでした。
一方で、スタンフォードの学生やGoogleをスピンアウトした人たちが昼夜を問わずプロダクトを磨いている熱量を見て、正直に感じたことがあります。国として日本はもう米国には追いつけないかもしれない。でも、個人として覚悟を持ったチームで挑めば、絶対に戦える。そう確信しました。
80年続いた家業を引き継ぎ、そして手放した
私の家系は江戸時代から名古屋で農業を営んでいました。曾祖父の代で「これ以上畑は増やせない」と商売へ転身し、昭和13年に新聞販売店を開業。私は4代目として、約15年間この事業に携わりました。
2016年、父が病気で倒れ、急に4代目を任されました。事業を引き継ぐというのは「会社をもらう」話ではありません。お客様も従業員も地域との関係も、歴史も借金も、良いことも悪いことも全部引き受けるということです。
中小企業の経営は想像以上に泥臭い現実の連続でした。求人を出しても人が来ない。育てても辞めていく。その中には楽しさもあり私が小学生のときからお勤めいただいている従業員さんや他所の新聞店の店主さんたちはおじさんのような存在でした。そして何より私が生まれる前からずっと新聞を購読してくださっている読者の皆様から温かいお言葉。
しかし43歳の時、立ち止まって考えました。ここから65歳まであと22年。このまま新聞を配り続ければ、家族を養って、子供を大学に出して、それなりの老後は迎えられる。でも、あと22年自分のずっとやりたかった仕事に目を背けて働き続けられるのか。ちょうど世の中が新型コロナの問題で立ち止まってから動き出すタイミングで私は決断しました。1度だけの人生自分のやりたいことに全力でチャレンジしてみよう。
2024年、80年以上続いた新聞販売店の権利を中日新聞社に返還しました。従業員の雇用とお客様への配達は次の事業者に引き継いでいます。
この決断をする時に考えたのは、私は先代から何を引き継いだのかということです。曾祖父も農業の先が見えなくなった時に商売を始めた。時代に合わせて自分を変えることに、私は何の抵抗もありません。それは先代を否定することではなく、先代と同じことをしているのだと思っています。
私が引き継いだのは、新聞店ではなく起業家精神でした。
なぜケーキ屋さんなのか
2019年、名古屋市のスタートアッププログラム「NAGOYA BOOST 10000」に参加しました。半年間、土日を全て返上して学び、最終的に最優秀賞をいただきました。ここで出会った仲間たちと、2020年にがだんだん株式会社を設立しています。
最初に作ったのは、コロナ禍での非接触テイクアウトシステム「GHOST BENTO」。技術的にはうまくいきましたが、ハードウェアの初期投資が重く、スケールの難しさを痛感しました。ただ、初めてお客様が自分たちのプロダクトを使ってくれた時の感動は、今でも忘れられません。
転機は、ある展示会でした。ケーキ店を営む方と出会い、「ケーキ屋さん専用の予約システムがどこにもない」という話を聞いたのです。ソフトウェアは大企業向けに作られていて、中小企業には「ちょうどいいIT」が存在しない。これは新聞販売店時代にずっと感じていたことと同じでした。
運用していく中で気づいたことがあります。通常期の予約の約90%が「誕生日のお祝い」目的でした。お客様はケーキを買っているのではなく、大切な人をお祝いする「体験」を求めている。ここにテクノロジーで届けられる価値がまだたくさんあると確信し、予約システムから店頭受取予約+AI販促プラットフォームへと進化させました。
これから
私がやりたいのは、中小企業がテクノロジーを使いこなせる世界を作ることです。それは使命感だけで言っているのではなく、自分がやりたいからやる。誰もやらないなら自分がやる。成功したら、自分が正しかったという証明になる。そういう気持ちが根底にあります。
ジョブズは、コンピュータを「知性の自転車」と表現しました。人間の移動効率は他の動物に遠く及ばないけれど、自転車に乗った人間は地球上で最も効率的な存在になる。テクノロジーとは、そういうものだと思います。
ケーキ屋さんのオーナーは、経営者になりたくてお店を始めた方ばかりではありません。ケーキが好きで、作りたくて独立した方が多い。そういう方々が予約管理や販促に時間を取られず、本来やりたかったケーキ作りに集中できる環境を作る。それが今の私の仕事です。
「いつでもケーキ」はまだ小さなプロダクトですが、ここから日本の中小企業のあり方を少しでも変えていけたらと思っています。
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がだんだん株式会社 代表取締役 福井佳亮
ケーキ店専用 店頭受取予約+AI販促プラットフォーム「いつでもケーキ」
▼ 業界関係者の方々へ
この記事を、紙袋・包装材・装飾品・送り状・原材料・機材など、ケーキ屋さんと取引のある業界関係者の方が読んでくださっていたら嬉しいです。「いつでもケーキ」は、ケーキ屋さんを儲かる仕組みに変えるためのプラットフォームですが、その先には、業界全体が一段上がる景色が見えると思っています。情報交換できる機会があれば、ぜひお声がけください。
