連載小説 サンタドロップス(18)
あかねさんは仄かに顔を傾けて、左手で薄いピンクの不織布マスクの紐を耳から外すと、マスクケースに丁寧に入れバッグの中にしまった。そして顔を上げ俺の方に向き直った。
う、美しい!
あかねさんの素顔は今まで見たどんな美女よりも綺麗だった。緑川さんには悪いけど、美人の奥さんよりもあかねさんの方が数倍美しいと思った。
俺はビールグラスを口に当ててはいるが、全く飲まずに固まっていた。俺と目が合ったあかねさんは少し恥ずかしそうに俯いた。
三田さん、父を紹介しますね、と俺の強烈な視線から逃れるようにあかねさんが言った。あかねさんのこの世離れの美しさに唖然としていた俺はここでハッと我に返った。
あかねさんは俺を連れて監督の席に行くと、お父さん、三田さんよ、と紹介した。はじめまして、三田です、と俺は緊張気味に監督に挨拶し、持ってきたビールを注いだ。
おお、君が三田くんか、太郎から聞いとるぞ、あの強豪校出身らしいな、と言って監督は俺にビールを返杯した。野球帽の跡が付いた白髪頭に、ギョロリとした大きな目、それはどことなくあかねさんの大きな美しい切れ長の目の面影があった。
俺は監督としばらく野球談義に花を咲かせた。なあ三田くん、うちのチームでコーチやってもらえんか、コーチが足りんのじゃ、と監督は言った。
つづく
