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連載小説 サンタドロップス(10)


俺はアパートの鍵を開け誰もいない真っ暗な部屋に帰って来た。電気を点けテレビのリモコンをオンにする。別に見たい番組がある訳でも無いのに、静けさを紛らわす為、部屋に居る時は常にテレビを付けっ放しにするのが習慣になった。

同じ様な一日がまた終わろうとしている。ただ慌ただしいだけで何か成長したのかと言われたら、何も変わらない。不快な疲労感だけが身体に残る。新入社員の頃、緑川さんと一緒に仕事していた頃の様な充実感は感じられない。

テレビではお笑い芸人が何やらハイテンションで捲し立てているが、全く聞いてないから面白くも何とも無い。

俺は万年床のベッドに倒れ込んだ。安物のベッドは少し動くだけでギシギシと軋む。

テレビの前のローテーブルの上に転がっているドロップスの缶が目に入った。そう言えばサンタの爺さんは私利私欲に塗れた願いはダメだと言ってよなあ、と赤い缶を眺めながら思った。

あんな綺麗な女を彼女にしたいなんて、私利私欲塗れだよなあ、よし、それならば、俺は身体を起こしてドロップスの缶を手に取った。

蓋を開け、中のドロップを手の平に振り出した。カランと音がして緑のドロップが出て来た。俺はそれを口に放り込み目を閉じた。

"緑川さんに再びチャンスが訪れて、また一緒に仕事が出来ます様に"

緑のドロップは俺の口の中で少しずつ小さくなって行く。舐めながら俺は何度も何度も繰り返し願った。


つづく

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