連載小説 サンタドロップス(12)
「お願いって何ですか」
「三田君は野球やってたんだろ?実は息子の太郎が野球チームに入りたいって言い出したんだ。今度家に来てキャッチボールでも教えてやってくれないか」
と緑川さんは言った。
そう、俺は子供の頃からプロ野球選手になるのが夢だった。小学校から夢中で白球を追い続け、高校は甲子園常連の野球の強豪校に入った。
部員数が百人を超える強豪校でのレギュラー争いは、それは熾烈な物だった。俺はそこで自分のレベルを嫌という程思い知らされた。
それでも俺は、努力さえすればレギュラーになれると信じ、毎日遅くまでグランドに一人残り、人の何倍も練習した。
でも生まれ持った才能のある奴には絶対に勝てなかった。そしてオーバーワークで肘を痛めた俺は公式戦に一度も出る事無く高校生活を終えた。
俺はそこで野球を辞めた。生まれて初めて味わった大きな挫折だった、その時俺は、人生とは無情で不平等な物だと悟った。
「太郎君は今何年生ですか?」
「小学三年生だよ」
「わかりました!太郎君のコーチ引き受けましょう、但し僕はスパルタですよ」
「ハハハ、了解!太郎に覚悟しとけって言っとくよ、じゃコーチ料は家で晩飯とビールという契約でどうだい」
「よろこんで!」
こうして俺は緑川さんの息子、太郎君の野球のコーチになった。
つづく
