連載小説 サンタドロップス(13)
それから俺は毎週末、緑川さんの家に行き、近所の公園で太郎くんに野球を教えた。何の偶然か俺が野球を始めたのは小学三年生の時、そして太郎くんも小学三年生だった。
俺は週末が来るのが楽しみになった。部屋とコンビニの往復だった俺の週末は一変した。コーチと言えども野球はやっぱり楽しい。
太郎くんは緑川さんの息子だけあり、とても素直で正直な子だった。野球センスも良く教えた事をスポンジの様にどんどん吸収しぐんぐん上達した。肩も強く下半身もしっかりしていて、俺が子供の時より間違いなく上手だった。
自分が叶えられなかったプロ野球選手になるという夢を託すかの如く、俺は自分の持っている全ての技術を伝えようと熱心に太郎君を指導した。少し厳しい事も言ったが太郎君は決して諦めたり不貞腐れることは無かった。
野球の練習が終わると、緑川さんの自宅で晩御飯をご馳走になった。緑川さんの奥さんはとても明るく優しい人で、女優の様な切れ長の大きな目をした美人だった。そして何より料理がめちゃめちゃ美味い。結婚するなら絶対にこんな人がいいと俺は思った。
「三田のおにいちゃん、来週の試合見に来てね、ぼく絶対に打つから」と太郎君が言った。
「OK!それは楽しみだな、がんばれよ」
ああ家族っていいなあ、暖かい家族団欒の仲間に入れて貰えた俺は、この上無い幸福感を感じていた。
つづく
