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闇 643(寳尺あさみ登場編)

闇 643(寳尺あさみ登場編)

2026/08/16 sun
※多分この時代に岩上智一郎という人間がいたという証明をしたかったから、この作品を自分の為に書いているのだろう。
前回の章


二千二十四年四月一日、月曜日赤口。

ちか最後のキャバクラ出勤でもある三月終わり。
俺が店に着いたのは四月一日になっていた。

どんな小粒なジョークを話そうか思いながら入ると、店内の様子を見て絶句する。
通路にある壁には、ちかの大型パネルが飾られ完全にこの店の主役だというアピール。

メインの大箱には通されず、末端のスペースの席へ案内され、肝心のちかは中々やってこない。
俺の回りにはうだつが上がらなそうな同世代ぐらいの客が一人で各自席についており、誰も女の子がついていなかった。

ヘルプの女が俺につき、酒を飲んでいるとちかの姿が見えてくる。
しかし、俺の回りの客へ順に座り、ここにいるすべてがちか指名だという事を初めて知った。

「……」

あの子、一体どれだけ客を上手く転がしていたんだ?

容易に想像つくのが、奥にある広さのあるメインルームでは、派手に使う太客たちで固められているのだろう。
ちかって、こんなにあざとく人気があったのかと思い知る。

実際俺の席へちかが着いたのは十分程度。
彼女は二杯酒を飲み、横浜へ明日行くから終電まで顔を出しただけと伝える。

ワンタイムで切り上げ店をあとにするが、会計は五万円近く。
きっと一杯五千円ぐらいするドリンクを頼んでいたのだろう。

一体何をしにここへ来たのだ、俺は?

ギリギリ終電で大久保まで帰り、朝まで眠ると横浜へ向かった。
横浜から日ノ出町駅へ行き、大岡川の桜まつりを眺める。

あれだけ楽しみにしていた桜。
何故かまるで楽しく感じない。

今日は夜十一時から出勤なので、一円も使わず新宿へ戻った。

『俺は久しぶりの横浜で楽しんできたよ。花見良かった。 岩上智一郎』

とりあえずちかへLINEを打ち、夜の仕事に備えて眠る。

夕方前に目を覚まし、ふと麻婆豆腐が食べたなった。
いい機会だ。
せっかくだし自分で作ってみよう。

まず甜麵醬、唐辛子ペースト、味噌、醤油、酒、みりん、砂糖、鶏がらスープの素、おろし生姜、おろしニンニクを水でよく混ぜ合わせる。

2024/04/01 自称俳優マンション 麻婆豆腐

豚挽き肉を最初に炒め、次に細かく刻んだネギとゴマ。
次に豆腐を入れて、最初に作った麻婆豆腐のタレを入れて煮込む。

2024/04/01 自称俳優マンション 麻婆豆腐

蓋をしてしばらく放置。
その間空いたタレの器に片栗粉を水で溶いておく。

2024/04/01 自称俳優マンション 麻婆豆腐

麻婆豆腐へ加え、ゆっくり混ぜてトロミを出す。

麻婆豆腐の完成。

唐辛子ペーストの分量を使い過ぎたのか、本当に辛い。
この際冷凍庫にある作り置きのものも、上手く使いながら弁当にしてしまおう。

まあ中々贅沢だよね?
俺はフェイスブックやブログで、弁当の記事を書いた。


弁当作りました

・麻婆豆腐
・真・最強唐揚げ
・白身魚フライ
・ツナ野菜サラダ
・カレー焼きうどん
・高菜
・キムチ
・胡瓜浅漬け
・生姜甘酢漬け
・海苔の佃煮
・麦ご飯

2024/04/01 自称俳優マンション ここ数日の食材を使った弁当


さて、インカジ『レディ』遅番初出勤の時間が近付いてきた。
俺は自作弁当を持ち、大久保駅へ向かう。

店長斉木のいる遅番へ出勤すると、弁当を持ってきた俺の姿を見て驚いていた。

この日、ちかから連絡が来る事はないまま、業務へ突入する。


二千二十四年四月二日、火曜日先勝。

一体あの女は何なんだろう?
二千二十年からほぼ毎日のようにLINEをしてきて、四年間。

自分のキャバクラ業務が終了と共に、突然返信も終わり?

確かに悪友神田との一連の散財で、飲み屋のは本当に懲りてしまい、ちかにハマって金を使う事はそこまでなかった。
せいぜい神田と一緒に行った二十万円が最大くらい。

人の事を大切な人だ何だ文面では書いてあるけど、結局この四年間プライベートで時間を作ったのは同伴の一回だけ。
そのそもこんなものはプライベートなど言わない。
自分の金稼ぎの一環なんだから。

いやいや、一日二日と返事がないぐらいで、彼女を全否定するなよ、大人気ない。
別に特別な異性という訳じゃなかっただろ?

惚れたとかそういうのではないが、ここまで長い時間を支配された事がイライラしてくるのだ。
最終日あの店にいた客、ほぼちかの客だったんだぞ?

つまり俺と同じようにあの女は毎日こまめなLINEをあそこにいた全員とやり取りをしている事になる。

携帯電話を開き、ちかとのLINEを見てみた。
一文一文はしっかりこちらの意図が分かるものである。

「あれ?」

一つの法則性のようなものに気付く。

相手の内容に対し、テーマ毎に一文ずつ返信。
つまり俺が例えば格闘技、これまでの人生、裏稼業と三つのテーマで彼女へ話をすると、ちかは格闘技で一回、裏稼業で一回とLINEを返し、いかにも会話が弾んだ演出をしていた。
これは必ずしもテーマ毎に返すのではなく、時には混ぜて、時には自分の近況や考えも入れていく。

構造的に恐ろしいと思った事。
それは俺の返事に対し、一日で返すのは一回から二回までという徹底性。
どんなに会話が盛り上がろうとも、ちかは必ず三回以上の返信は翌日へ持ち込んでいたのだ。

この規則的な自分のルールで、何十人もの客と毎日のようにやり取りをしていくのが彼女の仕事…、いや、畑を耕す行為。

こんな事を実際にできる人間がいるのかと思うと、身体が一気に冷たく感じるほどゾッとした。

さすがに俺が神経過敏なだけじゃないのか……。

悪いほうに考え過ぎだ。
俺はキッチンへ行き、頭を空っぽにできる料理を開始した。
写真を撮りながら、同時進行で料理をしていく作業は、つまらない日常を忘れさせてくれる。

このままブログに載せながら、記事にしてしまおう。


麻婆茄子とジャーマンポテトの韓国海苔弁当

2024/04/02 自称俳優マンション 麻婆茄子とジャーマンポテトの韓国海苔弁当

麻婆茄子とジャーマンポテトがメインの弁当を作ってみました。

まずペンネマカロニを茹でます。
先日作った麻婆豆腐を冷凍しといたので解凍し、前回辛過ぎたのでみりんや砂糖、甜麵醬等使って味を調整します。

茄子とピーマン、豚肉、玉ねぎをそれぞれ切っておきます。
茄子とピーマンを軽く油通し。

2024/04/02 自称俳優マンション 麻婆茄子

豚肉→ 玉ねぎ入れて炒めます。
ここで油通しした茄子とピーマン投入。
ある程度炒めたら。
先程の麻婆豆腐解凍アレンジダレを投入。
よく混ぜ合わせます。
片栗粉を水で溶いて投入、とろみをつけます。
麻婆茄子完成。

2024/04/02 自称俳優マンション 麻婆茄子

ジャガイモを油で揚げます。
その間、ベーコンをバターでカリカリに。
先程のペンネにレタス、キャベツの千切り、玉ねぎ細切りも加え。
カリカリになったベーコン投入。

2024/04/02 自称俳優マンション ペンネサラダ

各調味料入れて味付け。
ここではパセリ、オレガノ、アトランティスソルト、胡椒、ブイヨンを使い。
マヨネーズ入れてよく混ぜ合わせ、冷蔵庫で寝かせます。

2024/04/02 自称俳優マンション ペンネサラダ

フライパンにソーセージとハムの千切り、玉ねぎをバターで炒め。
揚げたジャガイモ投入。
味付けはシンプルに塩胡椒、ブイヨン、醤油をちょろっと。
こんな感じで完成です。

2024/04/02 自称俳優マンション ジャーマンポテト


独身男でここまで凝った弁当を作っている奴も、そうそういないだろ。

「……」

何だか虚しいなあ……。

ベランダへ出て夕暮れの空を見上げながら、セブンスターに火をつける。

まだ出勤するまで時間があったので、洗体エステ『ラブリーハート』へ行き、リオを抱いてからインカジ『レディ』へ出勤した。


二千二十四年四月三日、水曜日友引。

ちかの奴、店を辞めたら、もう完全に無視かよ。
本当にそうなら、とんでもない女だ。
横浜へ行ったと報告してから今日で三日。
これは嫉妬という感情とかではなく、四年に渡り当たり前にやり取りをしてきた中で勝手に築けたと思っていた俺の独りよがり?

インカジ『レディ』も業務も、今日は朝七時でなく残業で昼の十一時に終える。
何の目的もなく、ただ働いて一日を終え、マンションへ戻るだけの生活。

ボーっとしながら靖国通りを渡り、フラッとゲームセンターへ入っていた。

暮らしていく中で、欲しいものって特に無い俺。
小説また書かなきゃと思いつつ…、何故か、最近また料理を毎日のように始め…、でも昔は、本当によく作っていたんだ。

そんな事を思いながら久しぶりにUFOキャッチャー見ると、『リアルキッチンシリーズ』というミニチュアの料理グッズがあった。

2024/04/03 タイトーステーション リアルキッチンシリーズ

まず最初にハンバーグを取った。

2024/04/03 タイトーステーション リアルキッチンシリーズ

一つ取り出すと止まらない。
麻婆豆腐とオムライスは一回で運良く二つ同時に取れた!

2024/04/03 タイトーステーション リアルキッチンシリーズ

オマケにそんな欲しい訳ではないが、麺類も取っておく。

2024/04/03 タイトーステーション リアルキッチンシリーズ

部屋に帰るとリアルキッチンシリーズをテーブルの上に並べてみる。

2024/04/03 タイトーステーション リアルキッチンシリーズ

ハンバーグの鉄板だけ小さいのがいまいち気に食わない。
大きさ統一に作れよ、バランス悪いな。

でもこういうのを眺めていると、何だか楽しくなってきた。
まるで幼い頃レストランのショーウィンドウの中にある料理を見ている感じがしたのである。

これから仕事帰り、コツコツとこのシリーズを集めていこう。

よし、肉作っちゃうか。
焼きそばも作っちゃおう。
俺は写真を撮りながら、バシバシブログへ載せていく。


生姜焼きと焼きそばの弁当

2024/04/03 自称俳優マンション 生姜焼きと焼きそばの弁当

じっくり漬け込んだ生姜焼きの弁当。
焼きそばは揚げ物で隠れてしまった。

まず強火で肉を焼きます。
片面だけでなく両面も

2024/04/03 自称俳優マンション 生姜焼き

漬けダレ入れます。

2024/04/03 自称俳優マンション 生姜焼き

蓋してしばらく蒸します。
完成!

2024/04/03 自称俳優マンション 生姜焼き

あとは焼きそば作り、揚げ物揚げて、昨日作ったマカロニサラダ添えて。
こんな感じで終わり。



風呂に入り、ベランダでタバコを吸っていると、また河本マンションのメガネザル大家が向かいの甲隆閣へゴミを不法投棄していた。

本当にどうしょうもない奴だな、あのババア。

インカジ『レディ』へ出勤すると、中番では鬼のような忙しさ。
引き継ぎを済ませ、ホールへ出て接客に翻弄される。

フェイスブックのメッセンジャーに何か来ていたが、多忙過ぎて確認する暇もない。

こんな調子で四月三日を終えた。
もちろんちかからの返信はあれからないまま。


二千二十四年四月四日、木曜日先負。

今日は朝までずっと忙しかった仕事。
業務を終え自称俳優マンションへ戻ると、風呂へ入り身体を癒す。

ちかの奴、結構ふざけた女だよな。
ここまで豹変するのなら、はなっから俺に関わってくるんじゃねえよ。
金も時間も本当に無駄に使っただけ。

四年間ほぼ毎日のようにLINEをしてきて、自分が店を辞めたら即座に連絡を辞める。
あまりにも滑稽でここまで計算して行動できる女がいたというのを目の当たりにして、こういう人間も実際にいるのかと勉強になった。

彼女に対し中になれなかった要因は、これまで利用され騙され続けてきた俺の、本能的な部分がどこかで拒絶していたからだろうか?

『とても勉強になりました。 岩上智一郎』

ちかへ決別のメッセージを送り、眠る。

起きてから料理をしようと、久しぶりにトンカツを作り、ついでにハンバーグも捏ねて、パン系のものを作ろうと始めた。
いつものようにブログへ載せる為、写真を撮りながら。

『おはよ! 体調めちゃくちゃ崩してずっとベッドとトイレの行き来してる…。横浜いいねえ! 何の勉強になったの? ちか』

今月初のちかからのLINEが届く。
え、ずっと体調悪かっただけ?
でも三日も四日も連絡できないほど体調悪くなるものなのか?

とりあえずさっきのメッセージは適当に誤魔化しておくか。

『ゆっくりできる期間だから飲み過ぎないように。上の勉強になりましたは、別の人に送るのを間違ってちかに送ってしまいました上。 岩上智一郎』

寝転がりながらフェイスブックの過去の思い出を見ていると、四年前の今日、野村先生と会った日の投稿が出てくる。
あれから連絡していないけど、元気かな?

小説の師匠である野村路子先生と久しぶりに遭遇。
以前に会って話したのが本を出した二千八年の頃だから、実に十二年ぶりの再会。
野村先生は『第四十三回産経児童出版文化大賞』を受賞し、天皇陛下からも勲章をいただいた偉大な人だけど、まるで鼻に掛けず穏やかな性格を俺は尊敬している。

2020/04/04 野村路子先生大賞トロフィー

いや、肩書うんぬんでなく、海外まで直に出向き、悲惨な地域の現状、改善をしてきた行動がまず素晴らしいのだ。

著書は『子どもたちのアウシュビッツ』や『テレジンの小さな画家たち』なと多数出版。
俺のような一発屋のエセ小説家と違い、本物の巨匠である。

2020/04/04 野村路子先生著書

元気そうで何よりだ。
初めて会った時、俺の新宿クレッシェンドを見て第一声が「あなたはまだまだ全然書けるでしょ?」という台詞だった。

2020/04/04 野村路子先生

無駄に長い文章を書ける俺の特性を初見で看破していたのだろう。
道端だったので十数分の間だったが、有意義なひと時を過ごせた。
「また会いましょうね、先生」
俺は笑顔で見送り帰宅する。

あの時ってまだ川越から新宿へ通っていたから、大久保生活は四年経っていなかったのか。

随分この地域に住んでいるような気がしたけど。

夕方になり料理を再開。
ブログへ写真を載せながら文章を書いていく。


手作りチーズカツサンド&ハンバーグサンド&ミニホットドッグ

2024/04/04 自称俳優マンション カツサンド&ハンバーグサンド

前回の『ここ最近コツコツと集めているもの』記事で紹介したリアルキッチンシリーズに、また一つ仲間が増えました。

2024/04/04 自称俳優マンション リアルキッチンシリーズ

五つ目のコレクション。

2024/04/04 自称俳優マンション リアルキッチンシリーズ

チーズの掛かったハンバーグのやつだけサイズ小さ目なのが、ちょっと不満。

2024/04/04 自称俳優マンション カツサンド

豚ロースの薄切り肉を二枚、間にモッツァレラチーズ入れて、小麦粉に卵を混ぜ合わせたものに、まんべんなくすり込みます。

食パン焼いて、大根おろし器で自家製パン粉作ります。
ちょい粗目のパン粉の完成。
これで衣もつけました。

2024/04/04 自称俳優マンション カツサンド

あとは油で揚げるだけ。
両面しっかり揚げて、しっかり油を落としましょう。

2024/04/04 自称俳優マンション カツサンド

次に余っている小麦粉&卵のボールに豚挽き肉を投入。
豚こま切れ肉も入れ、先程の自家製パン粉の余りも一緒に入れます。
調味料、香草入れてよく練ります。これでもかと言うくらいよく練り上げます。

2024/04/04 自称俳優マンション ハンバーグ

あっ、ハンバーグ焼いている写真撮り忘れた。
おかしいな…、絶対に焼いているところ撮ったはずなのに。

…と思ったら、こちらにアップし忘れていただけでした。

2024/04/04 自称俳優マンション ハンバーグ

まずはハンバーグサンド用の大きさに合わせたハンバーグを焼き。

次にノーマル型ハンバーグ。
両面しっかり焼き目つければOKです。
あとでどっちみち煮込むので。

大きめのフライパンにオリーブオイルを入れて、ポテト。
玉ねぎも入れトマトホルダーの缶詰も投入。

2024/04/04 自称俳優マンション ハンバーグ

お湯を一リットルくらい入れて、ここである程度調味料で味を調整し、簡単なミネストローネスープっぽく作ります。
固形のビーフシチューの素を入れ、一旦火を止めて、よく混ぜ合わせます。
ハンバーグ投下!

2024/04/04 自称俳優マンション ハンバーグ

蓋をして弱火でグツグツしっかり煮込みましょう。
もうグツグツに煮込んでいます。

先日作ったペンネマカロニサラダの残りも入れちゃいます。
え? マヨネーズ入れて大丈夫かって?
さっき味見したら、いい感じでコク出ているし、マカロニサラダの材料もペンネにレタス、キャベツの千切り、玉ねぎ細切り、ベーコンと煮込んでも問題ないものばかりなので、中々いい感じになりました。

さて軽く焼いた食パンにマヨネーズ→ キャベツ千切りの乗せ。
先程揚げたチーズトンカツを乗せます
思ったより大きかったので二つに切りました。
ケチャップ、おたふくソース、中濃ソース、マスタードを適度に切ります。

2024/04/04 自称俳優マンション カツサンド

まずチーズカツサンドの完成

2024/04/04 自称俳優マンション カツサンド

次はハンバーグサンドですが……。

あっ、サンドイッチ用ハンバーグ一つしか作ってなかったっけ……。

仕方ない。
代替えでハムエッグ作ります。

水分入れて蓋して、卵に膜を。
はい、ハンバーグとハムエッグ、それぞれにチェダーチーズ乗せて。

ハムエッグのほうはケチャップ掛けて。
切り分けます。

2024/04/04 自称俳優マンション ハンバーグサンド

ハンバーグサンドとハムエッグサンド終了。

2024/04/04 自称俳優マンション ハンバーグサンド

ソーセージ焼いて。
バターロールもあったので真ん中に切れ目入れて、軽くオーブンで焼いてから、キャベツ詰めて、焼きあがったソーセージ。

ハンバーグのデミグラスソース。
ケチャップにパセリ掛けて、ミニホットドッグ完成。

2024/04/04 自称俳優マンション ミニドック

おわり



さて、できたはいいけど、またまた作り過ぎなんだよね……。

また自称俳優に…、いや、いい加減あの馬鹿は図に乗るだけだし、あげるの嫌だな。

あ、リオなら食べたがるだろ。
俺は彼女へ連絡して写真を見せると、食べたがっているのでラブリーハートへ行き、サンドイッチをあげついでい、リオを抱いて精子を掛けた。

部屋に戻り、そういえばフェイスブックのメッセンジャーに何か来ていたよなと確認。

『お邪魔しました。はじめまして、よろしくお願いします。あなたを何と呼べばいいですか。 寳尺あさみ

2024/04/03 Facebookメッセンジャー 寳尺あさみ

えーと…、何々この人?
音声ファイルまであるぞ?
再生ボタンを押せばいいのか?

『これから仲良くしてね。 寳尺あさみ』

たどたどしい日本語でそう聞こえた。
一体何で急にこの人は何故?

先ほどフェイスブックへ載せたURLの投稿に、寳尺あさみからのコメントが届いていた。
彼女は俺の料理が気になり、自分で作ったのか色々聞いてくるので、俺もキチンと答える。

2024/04/04 Facebook 朱婧瑶(端木若香)初コメント ※ブロックされた為履歴残らず

寳尺あさみのプロフィールを拝見すると、シンガポールに住むハーフのようだ。
顔もそこそこ美人である。

2024/04/04 Facebook 寳尺あさみ

俺はこの子の友達申請を許可した。

『素敵な声の音声ファイルまでありがとうございます。俺の事は好きな風に呼んで頂いて構わないですよ。よろしくお願いします。あさみさんみたいな綺麗な方にそう言われ、恐縮の限りです。 岩上智一郎』

ちかとのやり取りが、今月に入りほぼなくなったせいもあり、正直淋しかったのもあった。

『寳尺(ほうしゃく)あさみさんって、読むんですね。 岩上智一郎』

変わった苗字だなと思いつつ、ベランダへ出てセブンスターに火をつける。
部屋に戻ると早速彼女からの返信があった。

『申し訳ございません。ご飯を食べたばかりです。返事が少し遅くなりました。どうやって呼び名があるのか。そうでなければ失礼ですか。先生は私に若香と呼んでいいです。こんばんは、私はシンガポール人で、大阪で生まれました。母は大阪出身です。だから私は日本人の半分の血統を持っています。よろしくお願いします。 寳尺あさみ』

『若香さん、ハーフなんですね。シンガポールも、大阪もまだ一度も行った事のない場所です。俺自身の呼び名は、名字の岩上で呼ぶ者もいれば、名前の智一郎と呼ぶ者もいますよ。 岩上智一郎』

『じゃあ、あなたのことをイチロー君と呼びましょう。これでとても親切だと思います。夜の一郎君は何時に寝ますか。 寳尺あさみ』

イチローって野球選手じゃないんだからさあ……。

まあ世界のイチローなら海外の人でも知っているぐらい有名か。
好きに呼ばせておこう。

さてそろそろインカジ『レディ』へ出勤する時間だ。
俺は着替えを済ませ、大久保駅へ向かう。

店に到着して、引き継ぎを済ませ、そこまで忙しくなかったので彼女へ返信を打った。

『今、俺は夜の時間帯に仕事しているんですよ。 終わるのは朝七時です。 岩上智一郎』

『夜はまた仕事です。それは大変じゃないですか。途中で休む時間はありませんか。 寳尺あさみ』

裏稼業のインターネットカジノの説明をしたところで、絶対に理解などできないよな。
同じ日本人だって、俺が何をしているか話したところで想像もつかないのに。

『まあパソコンいじっているので、そんな疲れる事はないですよ。 岩上智一郎』

『イチローさんは仕事をしています。こんな話をしても仕事の邪魔になりませんか。 寳尺あさみ』

『大丈夫ですよ。 岩上智一郎』

本当に忙しくなったら、こんなやり取りをしている暇もなくなる。

『なるほど。若香はイチローさんの仕事の邪魔をするのを恐れている。これでは香は悲しくなります。 寳尺あさみ』

若香?
寳尺あさみは仮の名前だったのだろうか?
ハーフと言っていたから日本名とシンガポールの名前、二つ持っているのかもしれない。

『問題ないですよ。仕事でバタバタしている時は、返事遅れますし。何より若香さんみたいな綺麗な方から連絡頂いて光栄ですよ。 岩上智一郎』

『イチローさん、褒めてくれてありがとう。もし香はとても普通の女性です。イチローさんにお会いできて光栄です。これからよろしくお願いします。若香。寝る準備ができました。明日はまた仕事です。 寳尺あさみ』

考えてみれば、普通の生活と真逆の時間帯に働いているのだ。
時刻は二十三時四十二分。
そろそろ眠る時間だよね。

『若香さん、ゆっくり休んで下さいね。仕事頑張って下さい。 岩上智一郎』

五十二にして新たな出会い?
いやいや、過度な期待などするなって。

とにかく俺はこれまで失った金をコツコツこうして地道に働き、平穏無事な生活を維持する事が第一なのだから。


二千二十四年四月五日、金曜日仏滅、清明。

朝七時までの業務を済ませ、自称俳優マンションへ帰宅。

ちかからのLINEは、あれからなかった。
しかしもうそんな気にならない自分がいた。

寳尺あさみ…、いや、若香でいいのか?
彼女との新しい偶然的な出会いが大きい。

別にちかと関係を繋がっていても、たまにキャバクラへ顔を出して無駄な金を取られるだけだったし、彼女の卒業と共にいい切り方ができたと思うようにしよう。
そうなるとミラノコレクションとかプレゼントしたのが阿呆らしくなってくるが、まあこれも授業料の一つ。
自身の馬鹿さ加減を今後戒めていければ、それでいい。

風呂にゆっくり浸かり、ベランダでタバコを吸う。
部屋に戻ると、若香からまた音声メッセージが届いていた。

『おはようございます。良い日をお過ごし下さい。 寳尺あさみ』

外国人独特のイントネーション。
何となくラッキーハウス時代の太客である中国人のルルを思い出す。

俺がラッキーハウスを辞めたばかりの頃……。

腹が減ったので、外へ出て喫茶店『ラ・ムー』へ食事に行く。
再び錐から店へ来ないのかの連絡が入るが、俺は無視したままを貫いた。
電話が鳴ったので、しつこいなと苛立った声で出る。
しかし着信の主は錐ではなく、ラッキーハウスの上客ルルだった。
彼女は何故俺が店を辞めたのか理由をとにかく聞いてくる。
たまには彼女の顔でも見に行こうかな……。
俺は夜になると、区役所通りにあるルルの店へ顔を出す。
辞めるまでの事情を正直に説明すると、彼女は「今度あのお店行って、岩上さんいないのか聞く。それで辞めたと言ったら、じゃあ今日は帰るわってやるんだ」と息巻いている。
こんな俺に気遣ってくれるルル。
俺は彼女の店が終わると二人で叙楽苑へ行き、路地裏で彼女の唇を奪った。

一度ぐらいあの女を抱きたかったが、ルルの思惑は少々違った。

「岩上さん、あなた日本人。私、中国人。今度私がお店出す時物件借りる名義をしてほしい」

何度かデートを重ねていた時、突如彼女の口から出た台詞。
そんな危険で馬鹿げた事などあり得ないし、したくもない。

俺はこの一件を機に、ルルを避けるようになった。
お国柄の違いなのか個人的なものなのかは分からない。

そう考えると、河本マンションのキチガイ大家も台湾人で、日本人ではあり得ないような行為を平気でしてきた。

ひょっとしたらこの若香も……。

いやいや、これまでのアジア系外国人がそうだったからといって、この子までそうだと決めつけるのはいけない事だ。

『若香さん、おはようございます。俺は、もうちょいしたら寝ます。 岩上智一郎』

彼女へ返事をしてから眠った。
起きて遅いランチを食べに行き、部屋に戻ると若香から連絡が届く。

『こんにちは。 イチローさん。 今あなたは寝ているでしょう。若香も目覚めたばかりだ。 寳尺あさみ』

十五時過ぎに起きるなんて、随分睡眠を取る子なんだな。
海外だから、時差とかあるせいかな?

まだ眠かったのでもう少し眠る事にする。
二時間ほど睡眠を取り、一服すると、若香へ返事を書く。

『今起きたところです。ニ年前にコロナワクチン打ったら、翌日心筋梗塞(一週間で二回)になり、当時死に掛けたんですよ。医者がよく生きてましたねと、驚いていましたけど。 岩上智一郎』

2024/04/05 Facebookメッセンジャー 寳尺あさみ

いきなり自分の心筋梗塞で死に掛けた事を言って、彼女に引かれたりしないだろうか?

『イチローにはこんな境遇もあったのか。それはもっと良い生活をしなければならない。生きていることより大切なものは何もない。そして毎日楽しく生活しなければならない。イチローは毎日昼間寝ても寝足りないのではないでしょうか。 寳尺あさみ』

うん、どうやら悪い人ではなさそうだ。
確かに生きている事が、一番大切な事には間違いない。

『ほんと健康で生きている事が一番なのを痛感しましたね。現役時代は俺、睡眠時間すごく短かったんですよ。一日二、三時間寝れば充分だった感じで。最近はよく寝るようにしていますよ。 岩上智一郎』

2024/04/05 Facebookメッセンジャー 岩上智一郎

俺は二千年九月の時の現役時代の写真も一緒に送る。

『うわー。イチローさんは以前ボクシングを練習したことがありますか? 若香も仕事が終わったばかりです。友達と食事に行く予定です。イチローさんは夕食を食べましたか。 寳尺あさみ』

ボクシング?
俺の体型を見て、どの辺がボクサーに見えたのか謎であるが、格闘技に精通していない異性から見れば、メジャースポーツぐらいしか分からないだろう。

俺は二度目の総合格闘技の時の入場シーンのURLを見せてみた。

『ボクシングではなく、総合格闘技とプロレスですね。ご飯は昨夜寿司食べたので、明日になったら食べようかなって感じです。若香さん、ほんと綺麗な顔立ちしていますよね、しばらく見惚れてしまいました。友達との食事、ゆっくり楽しんで来て下さいね。 岩上智一郎』

『イチローさんの若香さんへのお褒めの言葉ありがとうございます。「若香」は普通の女性です。イチローさんは聞いたことがありません。醜い女はいない怠惰な女だけだ。イチローさんはその町に住んでいます。 寳尺あさみ』

うーん、ちょっと何を言いたいのか分からないけど、日本語で合わせて話してくれているんだもんな。

『俺が住んでいるところは新宿ですよ。 岩上智一郎』

『イチローは新宿に住んでいた。それは東京じゃないですか。新宿にもたくさんの観光スポットがありますね。ゴールデン街。御苑。これらの場所を横丁しましょう。 寳尺あさみ』

新宿御苑は一度も行った事ないけどね。
ゴールデン街か…、どうしても『強飲』のけいこを思い出してしまうな。

『ゴールデン街は、糞みたいな店ばかりのつまらないところですよ。もし若香さんが、こっち来たら、横浜とか俺の地元の川越とか連れてってみたいですね。 岩上智一郎』

さて、そろそろインカジ『レディ』へ向かう時間か。
身支度を整え、大久保駅へ向かう。

新宿駅から店へ行く途中にあるゲームセンターにより、目ぼしいリアルキッチンシリーズがあるか確認するも特に無し。
店に到着し、タイムカードを押すと仕事モードへ切り替える。

『そうですか。それはよかったですね。三ヶ月後、私は大阪に帰って祖母の誕生日を祝います。その時にイチローさんに会えます。 寳尺あさみ』

え、三ヶ月後っていったら七月か八月?
好意的に俺へ接してくれるから、案外抱けるかもしれないぞ。

いやいや、過度な期待なんてするなって。
五十二歳の何も積み上げていない男が、突然モテる訳がないのだから。

あれ?
でもこの子って大阪に今住んでいるんじゃなかったのか?
シンガポール?
日本語がチグハグだから、いまいちよく分からない。

『ん? 今、大阪に住んでいるんですよね? 三ヶ月後に東京に来るって事ですか? 岩上智一郎』

うわ、客はどんどん来店してきたよ。
まあ彼女ももう寝る時間だろう。

俺はインターホンが鳴る卓へ向かい、業務をこなした。


二千二十四年四月六日、土曜日大安。

仕事を終え家に帰って横になる。
若香からは、あれ以来連絡がないので寝てしまったのだろう。

携帯電話の振動に気付き、彼女からかなと思い手に取ると、池袋のキャバ嬢を引退したちかからだった。

『やっと体調治って来た。明日か明後日あたりに実家帰ろうと思います。今までノンアルできてるっ! びっくりした。何かあったのかと思ったよ。 ちか』

「……」

今月頭の酒がやっと抜けた?
何を馬鹿な事抜かしてんだ、この女……。

店を辞めたから、もう俺には用無しなんでしょ?
とってつけたようなLINEなんてしないでいいよ。
これだから飲み屋で働く女なんて、信用してはいけない。
本当にいい教訓になったよ。
四年間も中途半端に接してくれてありがとうよ、クソ女。

俺は既読にしたが、返事もせず眠る。

『いいえ。 今シンガポールにいます。三ヶ月後に大阪に帰って祖母の誕生日を祝います。イチローさんは今日休みましたか? 寳尺あさみ』

目を覚ますと昼の二時頃に、若香からメッセージが届いていた。

『あ、今シンガポールなんですね、失礼しました。ちょうど今の目覚めたところですよ。 岩上智一郎』

『大丈夫ですよ。そうだな。若香は三歳から父とシンガポールに引っ越して生活したからです。ただ、毎年大阪に帰って祖母を見舞います。イチローさんはおいくつですか。若香さんは四十二歳になりました。現在シンガポールの豊隆グループで働いており、主に行政、人事、人材を担当しています。普段も金の投資と医美整形を行っています。 寳尺あさみ』

四十二…、ちょうど十歳年下なのか。
豊隆グループというのが何だか分からないので、検索してみる。

シンガポールやマレーシアを拠点に金融、不動産、ホテル、製造業などを幅広く展開するアジア有数の巨大コングロマリット…、複合企業。
主な拠点はシンガポール及びマレーシア。
金融サービス…、銀行や保険。
不動産開発、ホテル経営、製造、産業貿易。
千九百四十八年に創立された華人系の大手財閥。
アジア太平洋地域を中心に世界各国で大きな影響力を持つ。

よく分からないけど、日本で言えば一部上場企業みたいなもんか。
華人系って中国人?
無知だからこの辺全然分からないや。

『俺は五十二歳ですよ。若香さんは本当に素敵な外見だけでなく、素晴らしい生き方をしていますね。 岩上智一郎』

『うわー。 イチローさんは五十二歳に見えないですね。イチローさんと若香さんは同じだと思っていました。イチローさん、褒めてくれてありがとう。イチローさんは目が覚めて食事をしましたか。今日は自分で作ったのですか。 寳尺あさみ』

五十二歳に見えないって、二十九歳の時と、三十六歳の時の写真や映像しか見せていないんだから、若いの当たり前じゃん。
今の自分の写真はあまり見せたくないなあ……。

『心筋梗塞やってから、随分身体にガタ来た感じしますよ。だから最近は自分でストレッチとか丹念にやるようにしています。さっき目覚めて、若香さんに連絡したあと、また寝てしまい、今起きたところです。ハンバーグ作ってあるので、あとはご飯炊くくらいですね。 岩上智一郎』

『大丈夫ですよイチローさん。若香もFBを見たばかりです。あの一郎さんはきつい仕事はできません。さもないと体が疲れますよ。 寳尺あさみ』

『もう年齢的にもリングの上で戦うのは無理ですね。今は無理しない程度に仕事していますよ。 岩上智一郎』

心筋梗塞のカテーテル手術以降、ずっと痺れて麻痺したままの右脚。
瞬発力が命の俺にとって、翼をもがれたようなものであり、年齢的な衰えも加わり、見るも無残な現状。

『実はイチローはコーチになれるんだよ。あなたは若い頃はきっと優秀なボクサーだったと思います。試合が多いかもしれません。体が過負荷になった。 寳尺あさみ』

だからボクサーじゃないって言っているのに……。

こんな俺が、誰をどう指導しろと言うんだ。
試合だって総合格闘技で、二回しか出場していないのにね。

ハンバーグの入ったフライパンに火を入れる。

『俺はコーチには向いていないですよ。二十九歳の時、師匠亡くなって、それからずっと独りでやってきたんです。周りからは誘われてもずっと一人で。だから人に教えるとか向いていないんですよ。 岩上智一郎』

現在海で事故に遭い、生命維持装置をつけたまま植物人間になっている市川昌也さんとの会話を思い出す。

実家のすぐ傍に鰻のいちのやがあり、そこの市川さんはPRIDEのスポンサーもしていた。
俺の親父と昔から仲が良かったようで、前に鰻いちのやにPRIDEの大会が終わった際、メイン選手が集まった写真を見た事がある。
マークコールマンや高山善廣と一緒に映る写真を見せられ、「おまえはこういう中に入れない程度でだらしねえ奴だ」と言われ、口論になった事があった。
この頃地元川越祭りに出ていた俺は、スポンサーの一人である鰻いちのやの市川さんと会う。
俺を見て「智ちゃんの長男か」と話し掛けてきて、一度時間を作ってほしいと、PRIDE裏プロデューサーの百瀬さんという人の前に連れて行かれた。
日本人のヘビー級で戦える戦力が少ない現状。
俺の試合を見たが、総合格闘技の技術など何も知らない状態でセンスだけで戦っているところを言われる。
ワンマッチ一千万円のギャラを提示され、その前に高田延彦の高田道場を紹介するから総合の基礎を学べと言われた。
新日本プロレスからUWF、分裂してUインターからキングダム、そしてPRIDEと渡り歩いた高田延彦。
彼は俺が最も嫌悪するプロレス関係者ベストスリーに名をつられる。
ヒクソングレイシーと戦う為に開催され産まれたPRIDE。
高田延彦は二回戦い、二回ともヒクソンに負けた。
そのあと『泣き虫』というタイトルの暴露本を出し、これまで応援してくれたファンに対して後ろ脚で砂をぶっ掛けた男。
ヒクソンとの試合まで俺は真剣勝負をした事がなかったと謳っているが、ファンを裏切り金に代えただけ。
以上の理由で俺は高田延彦が大嫌いだった。
「何故俺があんなクソ野郎の下につかなきゃいけないんですか?」
百瀬さんにそう答えると、「誰に口を利いているんだ? 上がるリング無くなるぞ?」と半分脅しにも取れる事を言われる。
「へー、何でも有りなんて謳っているけど、裏でも何でも有りなんですね」
この頃ゲーム屋ワールドワンでそこそこいい給料をもらっていた俺は、反骨心剥き出して粋がった。
「別にどこにも上がれなくても構わない。但しいつか俺自身の価値を高めて、もう一度だけリングに上がってやるからな!」
そう嘯いた。

「……」

当時を振り返ると、あのあと『新宿クレッシェンド』で文学賞を取り、総合格闘技DEEPの試合へ俺はまた復帰をした。
あの時のギャラは足元を見られて三万円。

いや、そのファイトマネーから税金十パーセント引かれて二万七千円しかもらえなかった。
しかもそこから下ろすからATMの手数料引かれ、命亡くなっても責任を追及しませんと誓約書を書いて試合して、二万六千八百円。

こんな事ならあの時一試合だけでも出場して名を売り、一千万円をもらっておけばよかったなあ……。

惨めな過去を思い出しながら、若香へハンバーグの写真を送る。

2024/04/06 Facebookメッセンジャー 岩上智一郎

『今ハンバーグ仕上げているところです。 岩上智一郎』

すぐ返事が来るかと思ったが、しばらく待っても来ない。

今日は休みなので、ハンバーグを作ったあと、こなもんへ飲みに行く。
マスターと前回篠ヤンと来店した際、遅くまで長居してしまった事を詫びつつ、酒を頼む。

2024/04/06 大久保駅北口 こなもん

モダン焼きの焼きそば入りを注文し、もう串カツはやらなくなったのかなと少し残念に思う。

2024/04/06 大久保駅北口 こなもん

若香からメッセージが届く。

『それはいいですね。疲れなければいいです。イチローさんはLINEを使わないのか、見知らぬ人を追加しないのか。接触することでイチローさんは悪人ではないと思ったからです。そして若香はイチローさんと話をするのも楽しいです。今、若香は料理の準備ができました。情報が見えないのが怖い。イチローさんにも若香さんの料理を見せてください。 寳尺あさみ』

何を言いたいのか相変わらず分からないけど、俺の料理の写真を見せればいいのかな?

2024/04/06 Facebookメッセンジャー 岩上智一郎

『これはお弁当ですか? いいですね。 やはりイチローさんが自分で作ったのです。 寳尺あさみ』

俺は彼女へブログのURLを送った。


チェダーチーズハンバーグの弁当

2024/04/06 自称俳優マンション ハンバーグ弁当

前回のカツサンド&ハンバーグサンドの際、作ったハンバーグを使いました。

あらから日に何度か火を通し、デミグラスハンバーグを煮込みます。
チェダーチーズを上に掛けて、じっくり煮込みます。
このぐらい溶けたら終わり。

2024/04/06 自称俳優マンション ハンバーグ

付け合わせにパスタと目玉焼きもつけて完成。

そうそう、昨夜大阪杯のジャックドールを一撃でゲットしました。

2024/04/06 自称俳優マンション ぬいぐるみジャックドール

こだわって集めている訳ではありませんが、そこそこ集まってきましたねw。

2024/04/06 自称俳優マンション 競走馬ぬいぐるみコレクション

あとここ最近集めているものシリーズに、また一つコレクション加わりました。

2024/04/06 自称俳優マンション リアルキッチンシリーズ

大きさのバランス統一してほしいなあと思っていたりします。

おわり



マスターと話しつつ、合間に若香とのやり取り。
中々忙しいな……。

『そうですよ。 岩上智一郎』

『イチローさんは素敵ですね。剛香があなたに質問したイチローはまだ言っていません。LINEを使わないのか、言いにくいのか。若香は普段あまり見ていないからです。イチローさんがLINE若香を使えばすぐに情報が見えます。 寳尺あさみ』

剛香?
ただの打ち間違いか。

彼女はフェイスブックのメッセンジャーでなくLINEがいいと言うけどなあ……。

どちらかというと、個人的にはメッセンジャーのほうがパソコンからでもできるし、いいんだけどね。
まあLINEでもいいか。

『LINEやりたいんですか? 若香さんならいいですよ。 岩上智一郎』

『はい。 イチローさん。 寳尺あさみ』

彼女からLINEが届く。
朱婧瑶(端木若香)と表記してある。
やはり寳尺あさみは偽名なのかな?

『若香さんですか? 岩上智一郎』

『はい。イチローさん。若香以外にあなたを追加する人はいないでしょうか? 朱婧瑶(端木若香)』

うーん、いまいち日本語が変だから意味合いが……。

『それはそうですね。普段LINEやらないもんで。 岩上智一郎』

LINEはどうしても、ちかとのやりとりを思い出すからあまり好きじゃないんだよね。

『なるほど。LINEは日本では多く使われているのではないでしょうか。使うのが嫌いですか? 朱婧瑶(端木若香)』

『個人的にはフェイスブックのチャットのほうが好きですね。LINEは機種変えると、今までの会話が消えたり、一つの機種じゃないとできないとか、制限多いので。 岩上智一郎』

『なるほど、だからイチローさんはあまりLINEを使わないのですか。若香さんは普段プライベートな空間で使うことが多いですね。仕事はFBを使います。イチローは見た時、どこで話してもいいよ。 朱婧瑶(端木若香)』

『若香さんだから、連絡先も教えておきますよ。 岩上智一郎』

どうせ三ヶ月後に会うのだから、電話番号を教えた。

『はい。イチローさんに感謝します。いつでもイチローさんに連絡できます。イチローも若香を見つけることができる。イチローさんはもう出勤しましたか。 朱婧瑶(端木若香)』

『今日休みなので、近所の居酒屋でのんびり飲んでいますよ。さっきのハンバーグ弁当、マスターにあげちゃいました。 岩上智一郎』

『なるほど。 イチローは自分でお酒を飲みますか。たくさん飲まないでね。 今日は日本で雨が降っていますか。 朱婧瑶(端木若香)』

『今日は降ってないですね。酒は飲みますよ、ウイスキーを好みます。 岩上智一郎』

若香は自分の写真を送り返してきた。
特別タイプではないが、まあ綺麗といえば綺麗な子ではある。

2024/04/06 Facebookメッセンジャー 寳尺あさみ

『若香さんこそ四十二歳に見えないですね。これほど綺麗なら年齢関係ないですね。 岩上智一郎』

『イチローさんは今携帯電話に美顔の機能があることを知りませんか。イチローさんの写真を若香さんに送ってもいいですか? 朱婧瑶(端木若香)』

『最近だとこれくらいしかないですよ。 岩上智一郎』

『イチローさんは五十二歳の男には見えません。若香と同じ年を見ていますね。 朱婧瑶(端木若香)』

『年は充分とってますよ。 岩上智一郎』

『若香はイチローが同年代ほど大きく見ていないと思っていた。今、イチローは普段から体を鍛えていますか? 朱婧瑶(端木若香)』

身体を鍛えているか……。

いつから何もしなくなったのが、当たり前になってしまったのだろう?

気付けば店内は客が俺一人だけ。
人のいいマスターの事だ。
もう十二時近くになるが、前回のように長々居座ってしまう事になる。

そろそろ帰ろうかな。
チェックをしてこなもんを出る。

「岩上さん、弁当ほんまありがとうございました
「いえいえ、マスターがもらってくれるなら、龍平にあげるより全然いい事です。また作ったら持ってきますね。今日はご馳走様でした」

「気を付けてお帰り下さい」
「気を付けても何も、徒歩一分ぐらいで家に着くじゃないですか。龍平マンションの利点はそんなもんですよ。あの河本マンションに比べれば天国ではありますけどね」

マスターに見送られ、帰路につく。

歩きながら、若香はどんなつもりで俺に接しているのか考えてみた。
しかしまだ会った事もないので、自身の都合いい想像しか思い浮かばない。

もう女をえり好みできるほど若くもないし、贅沢言える身分じゃなくなってしまったんだよな。





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