【書評】 AWS生成AIアプリ構築実践ガイド
来たる8月22日に針原佳貴氏、尾原颯氏、吉田真吾氏による「AWS生成AIアプリ構築実践ガイド」が発売される。
筆者は株式会社IVRyに勤めており、本書の著者のひとりである尾原さんと同僚という関係であることを予め断っておく。また、株式会社日経BPさんより発売前に事前に読む機会を提供いただいている。貴重な機会をいただき、感謝している。
さらに前置きとして、筆者は主にウェブフロントエンド領域を生業としており、AWSはホビー程度の事前知識しかなく、AIに関しても新聞を作る程度の応用はできるし、普段の開発フローにおいてもなくてはならない存在となりつつあるが、その仕組みや理論等に明るいわけではない。その点を留意の上お読みいただければ幸いである。
本書の構成
改めて「AWS生成AIアプリ構築実践ガイド」では第1部が座学的な内容になっていて、LLMの興りから後の部でハンズオン的に用いることになるAWSのAI関連のサービスについてまとめられている。
個人的には3章の「プロンプトエンジニアリング」のところを非常に面白く読んだ。プロンプトエンジニアリングというと、現在ではどうか分からないが、筆者の体感として少し前までは嘲笑的なニュアンスがあったようにおもう。しかし、AIといってもエスパーではないので「オレ、昨日の晩は何食べたとおもう?」と聞いてもズバリで答えられるわけではない。これはやや突飛な喩えだが、普段の開発ワークフローの中でも類するような無茶振りをしていることがあるような気がしていて、その能力を引き出すためには入力が大事なのだと改めて感じた。
ネタバレになってしまうので具体的な内容については割愛するが、明日から使えるプロンプト改良テクから、ステップバイステップでプロンプトをチューニングしていく方法が丁寧に解説されていて興味深く読んだ。
第2部では、RAGアプリとマルチエージェントのシステムを実際にAWS上で組み上げていくまでを丁寧に解説されている。GUIの操作のみで完結するものは詳説されている通りに進めればよく、また別途サンプルコードがまとめられたリポジトリがGitHub上に公開されているので、ハンズオン的に試すことができる。
本書の中でも強調されているが、使うサービスの中には月額費用が結構かかるものがあるので、試し終わったらきちんとクリーンアップするのが大事だ。筆者は何度となくクレカの請求をみて「ん….?なんだこの請求は….?」をやっている。
第3部では生成AIアプリを本番導入する際に気をつけておくべきことと、LLMを活かしてプロダクト開発をするサイクルについて述べられている。ここで、Amazonにおけるプロダクト開発フローについて書かれていて、LLMを活かすかどうか関係なくプロダクト開発フローとしてとても参考になった。
「トンカチを持ったら全てが釘に見える」とはよく言ったものだが、LLMにおいてもLLMの凄さを体感すると、なんでもLLMによって解こうとしてしまいがちだが、本書を通してLLMをはじめAIは万能の銀の弾丸ではなく、不確実性のあるコンポーネントであることを意識するのが大事だと感じた。
また、エンジニア視点だとどうしても「できること」ベースのアイデアに閉じがちだと日頃からおもっていて、LLMに関しても自分の道具箱から着想して作れそうなモノを想像しがちである。Amazonの "Customer Obsession" は聞いたことあったが、なるほどそれは取り憑いてるなあ…と感心しながら読んだ。
おわりに
他社のサービスにまつわる内容の本を書くと、その内容が陳腐化することから逃れることはできない。筆者はかつてGitHubにまつわる本を執筆したが、刊行直前になってサービスのUIのデザインが変わって、原稿用にキャプチャした内容を一部ごっそり撮り直す羽目になったことがあり、身に染みて知っている。AIにまつわる技術は日進月歩であり、サービスプロバイダであるAmazonも早いサイクルでサービス開発がされていることは想像に難くない。しかし、1部と3部の内容は普遍的な内容になっており、AIにまつわる技術がこの先どのような進歩があるかは全く予想がつかないが、その礎には本書の内容が含まれているはずである。一方で、2部は書名に「実践ガイド」とあるようにかなりプラグマティックな内容になっていて良いバランスだとおもう。
また、本書を注意深く読むとスナップショット的な言及には必ず日付が付されており、また刊行日を考えるとギリギリまで新鮮な内容になるよう努力の跡が窺えた。
本書を100%楽しむために、ぜひ予約して発売日にお読みいただければとおもう。
いずれ何らかの形でお伝えできると良いが、IVRyの開発フローや、プロダクト内におけるAI/LLM活用は著者の尾原さんをはじめとして、日々改良されていて、いちエンジニアとして「こんなこともできるのかあ」と驚くばかりだ。
また、IVRyでは全職種でAIによって業務フローをブラッシュアップすることが力強く奨められている。
本書は、対象読者としてある程度プログラミング経験がある方を想定して書かれているようだが、最近は未経験の方がAIを補助輪にプログラミングに接しているのを社内のSlackでも、社外でも観測している。筆者はまさに対象読者であったので、スルスル読めたがAWSを触ったことがない方も本書や他の本、そしてAIを相棒に夏休みの課題として取り組んでみてはいかがだろうか。
この記事を読んで「IVRyのことがちょっと気になるな」「尾原さんに聞きたいことがある!」と思っていただけた方は、カジュアルなつながりから始めませんか? IVRyでは以下の2つの方法をご用意しています。
①キャリア登録(情報収集をご希望の方に)
イベント情報や新しい募集ポジションなどをお届けします。まずは情報収集から、という方におすすめです。
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