Podcast: AI時代の新卒採用、なぜ戦略は議論止まりになるのか
AIの話はしているのに、採用戦略が決まらない。採用計画の会議では人数表を見ているのに、そこで採る若手が数年後にどんな仕事を担うのかは、まだ言葉になっていない。そんな場面は、意外に多いのではないでしょうか。
リクルートワークス研究所の2026年調査では、AIなどの影響について人材・採用戦略の議論を始めている企業は35.5%です。一方、その議論を踏まえて戦略へ反映している企業は6.5%にとどまります。この差は、遅れを責めるための数字ではありません。組織が何を決めるべきかを、まだ掴み切れていない現実を映しています。
今回のPodcastでは、AI時代の新卒採用を「増やすか減らすか」だけで考えないための視点を話しました。焦点は、採用人数を決める前に、未来の仕事を仮説にできるかです。
何が議論を止めるのか
AIによる効率化への期待があっても、現場の人手不足がすぐに解消するわけではありません。同じ調査では、正規社員について「不足している人材があるが、過剰な人材はない」と答えた企業が57.1%で最も多くなっています。
だから、「AIがあるから新卒採用を一律に減らす」という結論にはなりません。実際、新卒採用数を変えない企業は68.8%で、増やす・減らすとする企業はいずれも7.5%でした。目の前の欠員を埋める必要と、将来の仕事が変わる不確実さが、同じ会議に並んでいるのです。
ここで議論が止まりやすいのは、技術の予測が難しいからだけではありません。事業側は仕事の変化を、人事は人数や制度を、現場は当面の要員不足を見ている。それぞれの見ている単位が違うまま、採用人数だけを決めようとすると、話は従来どおりに戻りやすくなります。
人数の前に置く問い
採用計画で先に問いたいのは、「何人採るか」だけではありません。AIで定型作業が減った先に、若手はどんな経験を積むのか。どの職務、顧客、現場で、人の判断を育てるのか。そこに仮説を置くことが出発点になります。
1つ目は、入口になる仕事を言葉にすることです。
新卒に任せてきた仕事のうち、AIによって形が変わるものは何か。その先に残る、観察、対話、判断、改善といった経験は何かを、事業側と一緒に確かめます。仕事を細かく予測し切る必要はありません。採用の入口を、過去の仕事の再現にしないためです。
2つ目は、若手に育てたい判断を決めることです。
将来の基幹人材を採ると言いながら、どんな判断力をどの現場で育てるのかが曖昧なら、採用の目的もぼやけます。採用は単年度の欠員補充ではなく、事業を続けるための人材をどう育て始めるかという設計でもあります。
3つ目は、事業と人事が同じ仮説を持つことです。
採用担当、人事企画、現場マネジャー、事業責任者が別々に考えれば、議論は情報共有で終わります。人数表に加えて「未来の仕事で若手に何を担わせたいか」を同じ言葉で置くと、採用数、配置、初期育成の判断がつながり始めます。
不確実だから、粗い仮説で動く
AIがどこまで仕事を変えるかを、今すべて確定することはできません。だからこそ、精密な予測を待ち続けるより、仮説を置いて見直す会議のほうが実務では役に立ちます。
従来どおり採り続ければ、将来の仕事と採用・配置の前提がずれたままになるかもしれません。反対に、急に採用を絞れば、現場の人手不足と次世代の人材層を同時に薄くするリスクがあります。大切なのは、正解の人数を当てることではなく、判断を更新できる材料を会議に持ち込むことです。
人事ができるのは、AIツールの話を一般論で終わらせないことです。「この変化の先で、若手には何を経験してほしいのか」「その仕事を支えるには、どんな採用と配置が必要か」と事業側に問い返す。採用計画を、未来の仕事を確かめる対話の場に変えていくことです。
今日の持ち帰り
今日の持ち帰りは、一つです。
AI時代の新卒採用で先に決めるべきなのは人数ではなく、将来の仕事で若手に何を担わせ、何を学ばせたいかという仮説です。
人手不足も、技術の変化も、どちらも本当です。その二つを前にして採用を議論止まりにしないためには、人数表の前に未来の仕事を置く必要があります。
次の採用計画会議では、人数の行を増やす代わりに、一つだけ問いを足してみてください。数年後、その若手はどんな仕事を担い、どんな判断をできるようになっていてほしいか。だから明日、ここを見る。
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