相談の60分で、本当は何をしているのか
「今日は何から話せばいいですか?」
初めて相談に来られた経営者から、この言葉を聞くことは少なくありません。
私はその瞬間、「今日は整理できそうだ」と思います。
実は、この一言には、とても大切な意味があります。
何を話せばいいか分からない。
つまり、問題が整理されていないということです。
私は年間400件以上の経営相談をしていますが、相談内容は創業、事業承継、新規事業、資金繰りなど様々です。
それでも最初にやることは、ほとんど変わりません。
相談に来る経営者は、問題が多すぎて何から考えればいいか分からなくなっている場合が多いからです。
「相談」と聞くと、何をイメージしますか?
アドバイスをもらう場所
答えを教えてもらう場所
専門家が評価する場所
そんなイメージを持っている方も多いと思います。
でも、私が相談でやっていることは少し違います。
私は最初から答えを考えていません。
まずやることは一つです。
経営者の頭の中を一緒に整理すること。
相談の最初に聞くこと
相談が始まると、私はすぐに事業計画の話をしません。
詳細な財務諸表の分析もしません。
まず聞くのは、
「もし5年後、理想通りになっていたら、会社はどうなっていますか?」
という質問です。
未来を当ててもらいたいわけではありません。
経営者が何を大切にしている人なのか。
どんな会社を目指しているのか。
その判断基準を知りたいのです。
そこが分からないままでは、
どんなアドバイスも正解にならないと私は考えています。
本当に困っていることは、別の場所にある
ある経営者は、
「売上を増やしたい。」
と言って相談に来られました。
話を聞いていくと、
売上は十分ありました。
本当に困っていたのは、
利益が残らないことでもありませんでした。
設備投資をしたいのに、
資金繰りが見えないことだったのです。
売上という言葉の奥に、
まったく別の問題が隠れていました。
こういうことは珍しくありません。
私が見ているのは、相談内容ではありません
相談では、私は4つのことを整理しています。
本人が困っていること
本当の問題
経営者の価値観
最初の一歩
相談内容そのものよりも、
その背景にある構造を見ています。
だから、
「融資を受けたい」
という相談でも、
事業計画の話にならないことがあります。
逆に、
「新規事業を始めたい」
という相談が、
組織づくりの話になることもあります。
問題は、表面に見えているものとは限らないからです。
相談が終わる頃には
60分後、
ホワイトボードやA4一枚には、
こんな内容が整理されています。
理想
↓
現状
↓
ギャップ
↓
次の10日でやること
もちろん、60分ですべてを解決することはできません。
必要に応じて、利益構造や資金繰り、KPI、事業計画などを複数回に分けて整理し、実行まで伴走します。
でも、
一番大切なのは資料ではありません。
経営者自身が、
「これなら進める。」
と納得できる状態になることです。
今日の整理
もし今、
頭の中に
やることが多すぎる
何から始めればいいか分からない
同じことを何度も考えてしまう
そんな状態なら、
足りないのは知識ではないかもしれません。
必要なのは、
答えではなく、
考えを整理する時間です。
相談が終わる頃、多くの方が最初に言われるのは、
「何を相談したかったのか、自分でも整理できました。」
という言葉です。
私が提供しているのは答えではありません。
経営者が、自分で次の一歩を意思決定できる状態です。
次回予告
第3話では、
「私は答えを教える人ではありません」
というテーマで、
私がなぜ「正解」を教えない支援を続けているのかを書きます。
※本記事の事例は、守秘義務に配慮し、一部内容を変更・再構成しています。
もし今、頭の中が整理できず、何から手を付ければいいか迷っているなら、一度整理してみませんか。
私は事業承継後の後継者、第二創業、新規事業責任者を中心に、経営者が自分で意思決定できる状態をつくる伴走支援を行っています。
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熊谷 篤
実戦経営アドバイザー/中小企業診断士
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