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なぜ私は、最初の60分を無料にしているのか

「無料相談って、最後に営業されるんですよね?」

直接そう聞かれることはあまりありません。

でも、初めて相談に来られる方と話していると、どこかにそんな警戒心があるのを感じることがあります。

当然だと思います。

無料相談と聞けば、

「結局、契約を勧められるのではないか」

「高額なサービスを売られるのではないか」

「一度相談したら断りにくくなるのではないか」

そんな不安があってもおかしくありません。

だから、最初に書いておきます。

私は、初回相談を「契約を取るための60分」だとは考えていません。

むしろ逆です。

私に相談する必要があるのかどうかを、一緒に判断する60分だと思っています。

なぜ、最初から有料にしないのか

理由は、とても単純です。

最初から有料だと、相談するハードルが高いからです。

私は年間400件以上、さまざまな経営相談に関わっています。

事業承継。

第二創業。

新規事業。

資金繰り。

組織。

投資判断。

相談内容は違います。

でも、初めて相談する経営者の心理には、共通するものがあります。

「そもそも、こんなことを相談していいのだろうか」

「うまく説明できないけれど大丈夫だろうか」

「この人は自分のことを分かってくれるだろうか」

そして何より、

「この人に相談すると、本当に何が変わるんだろう」

ということです。

これは、ホームページを読んでも分かりません。

「経営支援をします」

「伴走します」

「課題を整理します」

そう書くことはいくらでもできます。

でも、それだけでは実際に話したときの感覚までは伝わりません。

実際、私もよく言われます。

「もっと硬い人だと思っていました」

「話してみると、イメージが全然違いますね」

「こんなことまで話していいんですね」

私は、これを悪いことだとは思っていません。

経営相談は、モノではありません。

買う前に触って確かめることもできません。

まして、経営者が話すのは、会社のかなり深い部分です。

数字。

社員。

先代。

家族。

借入。

将来への不安。

場合によっては、社内の誰にも話していないこともあります。

それを、ホームページを読んだだけの人間にいきなり話してくださいと言われても、難しいのは当たり前です。

だから私は、まず一度話してみてほしいと思っています。

ただし、無料だからといって、何もしないわけではありません

初回相談でも、私は普通に相談を受けます。

「今日は顔合わせだけにしましょう」

とは、基本的にしません。

まず聞きます。

今、何が気になっているのか。

本当は、会社をどうしたいのか。

何がそれを邪魔しているのか。

自分で変えられることは何なのか。

何を先に決めなければならないのか。

話が広がれば、一つずつ整理します。

必要なら、ホワイトボードや紙に書き出します。

理想。

現状。

ギャップ。

そして、次にやること。

このマガジンで何度も書いてきた、いつもの相談と基本的には同じです。

私が提供しているのは「答え」ではありません。

経営者が、自分で次の一歩を意思決定できる状態です。

だから、初回だからといって出し惜しみする理由がありません。

60分で整理できるところまで、普通に整理します。

そして、「今は私にお金を払わなくていい」と思うこともあります

実際に話してみると、

「この方は、今は継続して相談しなくてもいいな」

と思うことがあります。

例えば、やることがすでに整理できている人。

その場合は、

「まずやってみましょう」

で終わることがあります。

逆に、支援を受けたい気持ちはあっても、今の会社の状態ではそこにお金を使う余力がないケースもあります。

資金繰りを考えれば、外部のアドバイザーに費用を払うより、先に守らなければならないものがある。

そう判断することもあります。

後継者の場合は、また少し違います。

本人は、

「会社を変えたい」

「自分の経営を始めたい」

と思っている。

でも、まだ社長ではない。

予算を握っていない。

最終決定権もない。

その状態で無理に継続支援を始めても、本人が動かせないことばかりになってしまいます。

そんなときは、

「今はまだいいと思います」

とお伝えします。

このマガジンでも書いたように、私は必要のない伴走を続けることを目的にはしていません。

経営者自身が判断できるようになれば、いったん私の役割は終わりです。

一方で、「この人とは少し長く一緒に考えた方がいい」と感じる人もいます

典型的なのは、

やる気はものすごくあるのに、何から手をつければいいのか分からなくなっている人です。

特に、事業を承継したばかりの後継者には、この状態が少なくありません。

会社を変えたい。

新しいこともやりたい。

古い仕組みも変えたい。

社員にももっと主体的に動いてほしい。

数字もちゃんと見たい。

新規事業も考えたい。

先代との関係も整理したい。

全部、間違っていません。

むしろ、やる気があるからこそ、やりたいことが増えていきます。

ところが、

「では、最初に何をやりますか?」

と聞くと、止まってしまう。

全部大事だからです。

そして、全部大事だから全部やろうとする。

結果として、会社が動かなくなる。

私は、こういう経営者とは一緒に整理する意味があると思っています。

もう一つあります。

MBAや経営書、セミナーなどで、経営についてかなり勉強してきた人です。

知識が足りないわけではありません。

SWOTも知っている。

KPIも分かる。

MVVも知っている。

管理会計も勉強した。

戦略についても説明できる。

でも、自分の会社になると途端に難しくなる。

これは珍しいことではありません。

経営を知っていることと、自分の会社で経営することは、まったく違うからです。

現実の会社には、

先代の想いがあります。

古参社員との関係があります。

昔からの取引先があります。

借入があります。

社員の生活があります。

そして、自分自身の感情もあります。

教科書では分けて考えられたものが、実際の経営では全部つながっています。

だから、

「理屈は分かっている。でも、うちの場合はどうすればいいんだ」

となる。

私は、こういう状態を一緒に整理することを得意としています。

理論を教えるのではありません。

現実の経営に使えるところまで落とします。

ただ、一つだけ必要なものがあります

それは、

自分で動く意思です。

私は営業代行をしません。

社員の代わりに仕事をすることもありません。

経営者の代わりに会社を経営することもできません。

「熊谷さん、全部やっておいてください」

と言われても、それはできません。

でも、

「会社を変えたい」

「自分も変わらなければいけないと思っている」

「まずこれをやってみます」

と言える人なら、一緒にできることはたくさんあります。

私はこれまで多くの経営者を見てきましたが、変わる会社の経営者は、最初から経営能力が高い人ばかりではありません。

知識量が多い人ばかりでもありません。

むしろ大きいのは、

一度決めたことを、まずやってみることです。

やってみる。

結果を見る。

違ったら、また考える。

そして次の意思決定をする。

経営は、その繰り返しです。

私はその横で、

「何が起きましたか」

「当初の前提と何が違いましたか」

「では、次は何を変えますか」

と一緒に考えます。

答えを渡し続けるのではありません。

経営者自身の判断基準を、一緒に磨いていく。

それが私の伴走です。

だから、最初の60分は「お互いに判断する時間」です

私は、相談に来たすべての方と契約したいとは思っていません。

経営者側にも、私を選ぶ権利があります。

「話しやすい」

「この人なら会社のことを話せそうだ」

「違う視点をもらえそうだ」

「一緒に考えてみたい」

そう思えたら、そのとき初めて次を考えればいい。

反対に、

「自分には合わないな」

と思えば、それで構いません。

そして私も考えます。

今、本当に外部の伴走者が必要なのか。

費用を払ってでも取り組むテーマなのか。

私が役に立てる問題なのか。

本人に動く意思があるのか。

だから私は、

初回相談を「営業の場」ではなく、「お互いに判断する場」だと考えています。

この10話を最後まで読んでくださった方へ

ここまで10話、読んでいただきありがとうございました。

このマガジンで伝えたかったのは、経営ノウハウではありません。

「相談すると、何が起きるのか」

それを少しでも疑似体験していただきたいと思って書いてきました。

このマガジンの設計段階から、目指していたのは「相談って説教される場所じゃない。頭を整理する場所なんだ」と感じてもらうことでした。

だから、最後に一つだけ問いを置いて終わります。

もし今、

会社を良くしたい気持ちはある。

やりたいこともたくさんある。

経営について勉強もしてきた。

社員も頑張ってくれている。

それなのに、

「結局、何から手をつければいいんだろう」

と思っているなら。

それは、能力が足りないからではないのかもしれません。

新しい知識が必要なわけでもないかもしれません。

一度、頭の中にあるものを全部出して、

何を大切にするのか。

何をやらないのか。

何を先にやるのか。

どこまでなら投資できるのか。

そして、

次の10日で何をするのか。

そこまで整理する時間が必要なだけかもしれません。

私の相談では、最後に「これで前に進めます」という状態を目指しています。問題が全部なくなるからではありません。何に悩み、何を大切にし、何を決め、まず何をするのかが見えるからです。

その整理なら、私は一緒にできます。

そして60分話したあと、

「もう自分で進めそうだ」

と思ったなら、そのまま進んでください。

「もう少し一緒に整理したい」

と思ったなら、そのとき初めて次を考えればいい。

相談するかどうかも、最後に決めるのはあなた自身です。

それが、

私が最初の60分を無料にしている理由です。

※本記事の事例は、守秘義務に配慮し、一部内容を変更・再構成しています。

もし今、一人で考え続けていることがあるなら、一度整理してみませんか。

私は、事業承継後の後継者、第二創業、新規事業責任者を中心に、経営者が自分で意思決定できる状態をつくる伴走支援を行っています。

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熊谷 篤
実戦経営アドバイザー/中小企業診断士

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