【事例紹介①小売業】承継から2年──借入返済に追われた会社が“利益の残る仕入れ”を取り戻すまで
※本記事は複数の事例を基にした再構成であり、個別の成果を保証するものではありません。
「月末になると通帳残高とにらめっこ」「幹部会議で誰も意見を言わない」「先代のやり方を変えようとすると、古参従業員の視線が冷たい」──。 経営セミナーや経営書で学んだ知識が、まったく現場で通用しない──そんな絶望を味わった承継者が、1年でどう会社を変えたのか
今回ご紹介するA社長の会社も、承継当初は借入金償還年数が厳しい状態、資金繰りも厳しく、組織が停滞していました。しかし2年以上の伴走を経て、その数字は大幅に改善し、従業員の雰囲気も大きく変わったのです。
背景
A社長が承継したのは、長年続く老舗小売業。事業を引き継いだ直後から、次のような課題を抱えていました。
先代が典型的なP/L思考&売上至上主義でB/Sを気にしなかった結果の多額の借入金(借入金償還年数【借入金残高 ÷ (税引後当期純利益 + 減価償却費)】が危険な水準になっていた)
B/Sを気にせず経営されていたため、投資と借入れのバランスが崩れ、金利や元本返済の負担も大きく黒字なのに資金繰りが厳しい
承継者を子どもの頃から知っている古参従業員との距離感
承継者が継ぐまでは大手コンサル業で働いていたため、事業実務には不慣れ
「何から手をつけていいか分からないが、借入金を何とかしないとこの先大変なのはわかる」という不安を抱え、私にご相談いただいたのが最初のきっかけでした。
最初の半年──"視える化"と会議体づくり
支援のスタート時点では、まず承継者自身の経営理念の言語化と現状整理(特に過去の強みの棚卸し)、経営会議の設計に集中しました。
キャッシュフローの構造を数値で理解
経営者が数字で現場を把握し、PDCAを回せる会議体を設計
売上至上主義から、限界利益(売上高-変動費)の増加に軸足をシフト
不必要な固定費を削減し、利益構造を改善する重要性を理解
これにより「経営の全体像」と「優先すべき課題」がクリアになりました。
次のステップでは、小さな実験的プロジェクトを導入。既存事業に関連した新サービスを試験的に立ち上げ、社長と同年代の若手従業員を責任者に任命しました。
1年後──自信と前向きな空気が生まれる
取り組みから半年が経過したころ、会社には目に見える変化が生まれました。
キャッシュフローの視える化により、資金繰り不安が軽減
固変分解を行って自社に合った管理会計を導入したことで、「利益が生まれる仕組み」が視覚化
→ 「儲かっていると思っていた事業が、実はほとんど利益を生んでいなかった」などの問題が浮き彫りに古参従業員が新プロジェクトに協力的になり、職場の雰囲気が前向きに
→ 数字で考える部分などは、古参幹部は今までなじみが無かったため、自力で行うことは難しいことが分かりました。そこで、柔軟にIT技術などで対応できる現場の若手との組み合わせでプロジェクトを進めることで「安定して進捗する」こととなりました。また、1か月に1回は実戦経営アドバイザーとの伴走を設けることで現場の疑問を解消しながら進めました。社長自身が「意思決定に自信を持てるようになった」と実感
今まで誰も見向きもしていなかった小売店舗でのPOSデータを分析し、「何が売れているのか?」「いつ納品したら良いのか?」などを誰でも管理できるところまでシステム化。それにより今まで「勘と経験と度胸」で行っていた販売をロジックを用いて行えるようになった。
但し、すべてが順調だったわけではありません。当初、管理会計の導入を急ぎすぎて先代や古参幹部から「今までのやり方を否定するのか」と反発されたことも。そこで、まずは若手との小規模プロジェクトで成果を出し、「数字で見ると確かに改善している」という実感を共有することで、徐々に理解を得ていきました。
他にも、「一緒に住まないなら株は売り渡さん」と予定していた先代から承継者への株式売買が中止になりかけたり、古参従業員の一部が「A社長ではダメなので、古参幹部のB部長を社長にしないと全員で辞める」と先代に迫ったりなんてこともありました。
A社長はこう語っています。
「これまでは"自分だけが悩んでいる"と思っていましたが、伴走してもらうことで視点が整理され、従業員も少しずつ変わってきました。小さな一歩が会社全体を動かすと実感しています。最近では、トラブルがあったときに"熊谷さんならどう考えるかな?"と考えながら、2週間に1度のディスカッションを楽しみにしています。」
2年後──数字の改善と現場の変化
伴走開始から2年後、経営者だけでなく古参幹部や現場従業員も巻き込んだ改善が進んでいます。
借入金償還年数の改善に向けて取り組んだ結果
→ 限界利益にこだわった改善と固定費削減により「税引後純利益」が増大。
→ さらに不要在庫の圧縮、売上債権の短期化、仕入債務の長期化を徹底し、運転資金の改善に取り組み、借入金の順調な返済が進むように。その結果、借入金の順調な返済が進むようになりました。業務フロー図とマニュアルの整備
→ 現場の作業が数百項目あることが可視化され、「全体像がつかめて良かった」と事業部長も驚くほどに。
→ 現場責任者が「社長が見てくれる」と喜び、やる気を見せるように。スキルマップの作成
→ 従業員が「どのスキルを伸ばせばよいか」を理解し、人材育成の方向性が明確に。
→ 一人しかできなかった作業を複数人で分担できるようになり、有給休暇の取得や計画的な人事異動も可能に。
ある現場従業員はこう話してくれました。
「以前は努力しても評価されていない気がして、不満が溜まり、辞める人もいました。しかし今は社長が現場に関心を持ち、話をしてくれるのでとてもやりがいを感じます。」
さらに、辞めていった若手従業員が数人「新社長のもとでなら」と幹部として出戻ってくるという嬉しい現象も起きています。
まとめ
承継後の経営は、知識やスキルだけでは解決できない「現場の壁」に直面します。今回のA社長のように、借入金償還年数を大幅に改善し、現場の雰囲気も変えることは、決して特別な会社だけの話ではありません。
大切なのは、現場に入り、対話と仕組みづくりを"伴走"すること。その一歩が、会社全体を動かすきっかけになります。
もちろん承継者の取り組みはこれだけでは終わりません。今後も承継者の想いを実現するために「より進んだ改善」と「新規事業の立ち上げ」を併せて行っており、現在も現場も巻き込んだ実戦的な伴走支援を行っています。
※事例は複数事例を組み合わせるなど一部加工しています。実在の企業・人物とは関係ありません。また、成果はあくまで一例であり、すべての企業に同様の結果を保証するものではありません。相談内容により、公的機関の専門家や他の士業のご紹介を行う場合があります。
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📌 あなたの会社は大丈夫?
承継企業の「よくある落とし穴」チェックリスト
□ 借入金償還年数を計算したことがない
□ 固変分解をして限界利益の管理をしていない
□ 現場従業員との定期面談がない
□ 業務フローが属人化している
□ 資金繰り表がない
✅ 1つでも当てはまった方へ
まずは「借入金償還年数」を計算してみてください。
計算方法: [借入金残高] ÷ [税引後純利益 + 減価償却費]
→ 10年以上なら要注意。現状分析と改善実行をお手伝いします。
✅ 3つ以上当てはまる方は、初回60分無料相談へ
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※初回相談後の継続的な伴走支援については、個別にご案内いたします。
著者プロフィール
熊谷 篤(くまがい あつし)
実戦経営アドバイザー/中小企業診断士
年間400件以上の経営相談を行い、承継後3年以内の承継者を中心とした伴走支援を実施。VCでのIPO支援や、年商100億円規模企業の改善支援など、多様な現場で成果を創出。
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