マクロレンズの世界 vol.12 作画工程(3/3)レタッチ
※ 9000字あります。
※ この記事は既刊で初出させた概念の取得を前提に進みます。
お手数をおかけして恐縮ながら、順読みをお願いします。
1番目: vol.11 視覚認識(1/2)基礎 -視覚認識の3段階
2番目: vol.11 視覚認識(2/2)個人差
3番目: vol.12 作画工程(1/3)基礎 -アートの通学路
4番目: vol.12 作画工程(2/3)マクロ撮影
5番目: vol.12 作画工程(3/3)レタッチ ←本号です
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∫1 ヒトには気になる点とならない点がある
[眼球]と[カメラ]には、共通点/相違点、両方あります。
(復習:vol.11 視覚認識(1/2)基礎 眼とカメラの違い)
データとしては記録できたものの、細かい写りについては、
「肉眼の見え方と違っていて納得できーん! ヽ(`Д´)ノ 」
となることはよくあります。
気になる点、気にならない点をみていきましょう。
全部で12項目あります。
1)気にならない
気にならない、または、気にしないことにする扱いになっているのは、
以下4点です。
①画像の外形
②描点の形
③階調
④画質(粗さ)
①画像の外形
ヒトは、画像の外形(長方形)を気にしないようです。
視野の周辺は、ヒトが注意を向けず、ぼんやり見ている位置です。
「周囲はこだわるところではない」ということでしょう。
②描点の形
ヒトは、画像が四角形で構成されていることを気にしないようです。
四角形で構成された絵は、むしろ好きだったり?
マリオやスライムで知られる「ドット絵」は四角がチャームポイントです。
画素が粗い時代、文字も四角形が露わでしたが、難色表明はなかったです。
液晶モニタのトリプレットは、長方形で、格子配列です。
何も描かれていない無地を表示すると、格子配列が見えてしまいますが、
表示内容に意識を向けている状態では気づきません。
③階調
汎用の液晶モニタは、256階調です。
JPEGが採択されたときから続く規格で、見直しの動きはないです。
識別テストの結果は、視覚認識の上限超えであることを示しています。
段々に見えていないのなら、気にしようがありません。
モニタによって、階調の表示能力に差があります。
規格は256でも、256階調を表示できているとは限りません。
お使いのモニタの階調テストをしてみてもよいと思います。
レタッチするならモニタも大事、です。
④画質(粗さ)
ヒトは、画質の粗さを許容できるみたいです。
動物にとって視覚は、外界(対象と状況)を把握する手段です。
何が写っているか判別できれば、実用として合格です。
テクスチャーはマニアの領分です。

2003年、ズームコンデジ(FinePix A210)で撮影。データサイズは123KB。
どの写真家も、当時の解像度で撮影を楽しんでいました。
色と形だけでも、絵は作れます。
サザンカは、夕暮れ咲きです。
咲きたてが一番香り高く、漂う香りで「咲いたばかりだ」とわかるほどです。
「美しい絵を作ること」と「生命の営みを賛美すること」、
美術家は前者を、生物写真家は後者を、それぞれ選択します。
2)気になる
「気になる」発言をみかけるのは、以下6点です。
✕ 後日の対応は難しい
⑤フレーム入り:見切り
⑥焦点:ピンボケ
⑦ブレ
〇 あとから修正できる
⑧傾き
⑨明るさ
⑩色
⑤フレーム入り:見切り
被写体がフレームからはみ出すことを、写真用語で「見切り」といいます。
ヒトは平素、頭部と眼を回し、見たいものを視野に収めて暮らしています。
「見たいと思ったものが見れない」状態の画像には納得できません。
見切れてしまったときは、諦めるしかないでしょう。
最近のAIは、フレーム外に出た部分を合成し、補完できるそうです。
フレームからはみ出てしまった、我が子の手が、AIによって合成されます。
「その手を愛せるか」と問われると、それはちょっと・・・。
作りものですよね。
⑥焦点:ピンボケ
ヒトは、対象の特に見たい部分に、注意を集中することができます。
注意を向けたときは、眼のレンズを調節して、焦点を合わせます。
注意を向けたくなる、その魅力的な部分がピンボケでは納得できません。
次こそ、焦点合わせを成功させましょう。
AIに焦点合わせの加工を命じることはできます。
しかし、焦点は、撮影の意図本質です(復習: vol.12 作画工程(2/3))
AIが焦点を合わせた画像を「私の意図です、私の、私のー」と誇れるか。
撮影者には、見た目の完成度より大事なものがあります。
防犯カメラの画像から、車のナンバーを割り出す方法としては有効です。
防犯カメラに意図などないです。
加工うんぬんより、ひき逃げ犯の特定のほうが大事です。

「推し」が花弁であるとき、この撮影は成功です。
(クリック拡大可能)
常人は部分に着眼する習慣がないので、「ピンボケ写真だ」というでしょう。
推し活は孤独です。
AIに花柱の先端を合成させたくないです。
それは虚偽の花柱です。
AIが合成した花柱が、現実の花柱と整合している保証は一切ありません。
雄しべ先熟で、遅れて開く花柱もチャーミングなので、別々に撮るのも一考です。
深度合成は、僕はまだやったことがないです。どうですか?>マクロ写真勢
深度合成はブラケットの一種で、像は本物です。
肉眼はカメラほどボケないので、見た感じに近くなります。
⑦ブレ
ブレた画像は、受け入れがたいことが多いです。
「醜い」ではなく「見にくい」。判別しにくい、です。
対象や状況を認識するという、視覚の本来の目的に支障があります。
撮影者は、現物を見ていました。
把握を済ませているので、ブレを許容できます。
「私は見ていました。写真は、記憶を引き出してくれればよいのです」
閲覧者は、現物を見ていません。
画像のみで判別を強いられるとき、見にくいと苦しいです。
ヒトは、肉眼で生じないタイプの視覚妨害を看過しがたい。
「小計システム」を使う以上、ブレは避けられないので、程度問題です。
「ぱっと見」で、ブレに認識を妨害されると耐えがたい。
拡大してやっと判明する「あっ、ブレてた」は、マニアの領分です。
AIにブレの低減を命じることができます。
包丁でトマトを切る方法、縄の結び方、ピチカート奏法など、
動作を説明するシーンで、判別性の改善は歓迎されそうです。
画像に「動きの方向を示す矢印」を張り付ければ、なおよしです。
ブレは元々アーティファクトで、現物の本質ではないです。
それが「愛すべきアーティファクト」でないときはどうでもよいでしょう。
AI加工を使って、写真家コミュニティに侵入することは歓迎されません。
そこは「技量」の価値観が支配する特別地域です。
女神「あなたが撮ったのは、ブレた画像ですか、ブレてない画像ですか」
⑧傾き
ヒトの視覚処理の一つに「水平」があります。
頭蓋はしじゅう傾いていますが、視覚は、傾いた入力そのままではなく、
水平補正をかけて、認識に使用しています。
傾けば補正、傾けば補正で、世界は水平が保たれているという認識です。
(この水平認識は、地動説の受け入れを邪魔したかもしれません)
傾いた画像には、酔いを伴う不快感があります。
銃弾に倒れるシーンや、忍者が屋根裏から覗くシーンでは補正しません。
特殊な状況を伝える方法としては効果的ですが、
くつろぎのリビングに飾る絵は、水平であってほしい。
傾きの補正はトリミングのカテゴリーです。
フィルム時代はプリントの裁断で整えていたでしょう。
デジタル化した現代は、画像アプリの「回転」を使います。
直せるとはいえ、四隅が削れたり、画質が低下したりしますので、
直さなくて済む程度に、撮影時に水平を心掛けます。
⑨明るさ
ヒトは、昼と夜で行動を変える動物です。
明るさは時刻や天候の認識と結びついているために、
「どうでもいい」になりません。
生体はこまめに網膜に届く光量を調節しています。
眩しいと、顔を背けたり、目を細めたり、瞳孔を狭くしたりします。
暗いときは、見定める努力をしたり、暗さに慣れるまで待ったりします。
A. 状況判断に用いる情報であること
B. 生体として光量の調節感覚を持つこと
この2点を背景として、明るさは気になる項目です。
見えた通りの明るさに写ってくれなかったときは・・・、レタッチですね。
⑩色
ヒトは、外界を認識するのに色を使っています。
緑の野山、赤い砂漠、青い海原、白い雪原、それぞれ印象が異なります。
果実が熟した程度や、肉に火が通ったかも、主に色で判断しています。
色は、なければないで「色無し画像」として了解します。
色があるとき、その色味がおかしいと納得できません。
料理が青っぽく写っていて、美味しそうに見えないことがあります。

ただし、この色です。古代人に差し出したら、飲もうとしないんじゃないでしょうか。
撮影地:千葉ポートタワー
マクロレンズは、料理本の撮影でも使われます。
食べるときの料理の見え方に近いです。
3)どちらとも言えない
⑪曲がり
レンズで集光すれば、多かれ少なかれ、曲がります。
建築写真家は曲がりを気にして、関数を使って補正することがあります。
一般人にも、水平線や地平線が曲がっているのに納得できない人がいます。
曲がりを減らすには、平たいレンズ(魚眼レンズの反対)を使います。
⑫ひずみ(収差)
「物撮り」の人は、ひずみを気にすることがあります。
曲がりについては「近づいて見るとは、こういうことです」で片づけます。
眼球もレンズを採用しています。
家電や家具は手で使う道具で、人が接近して見たときの感じと合致します。
曲がりを許容する一方で、四隅で目立つ、樽型収差のひずみを許せない。
眼球で見たときに、こんなひずみはありません。
眼球が採用している網膜スクリーンは球面で、ひずみが出にくいのです。
メーカーは収差を減らす努力をしてきました。
現在のカメラ+レンズに、ひと目でわかるほどのひずみはないです。
曲がりとひずみは、気になる/気にならないが、分かれます。
写真家のうち、直線のある被写体を扱う人は、気にする人が多めです。
項目が多くて、混乱しそうですね。
プロは全て学ばなくてはなりませんが、本号が扱うのは二つだけです。
レタッチでは、[明るさ]と[色調]を整えます。
ヒトは[明るさ]と[色調]に神経質、
いやもう、めちゃめちゃ神経質です。
∫2 視覚認識合わせのレタッチ -明るさ-
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