【万博】貴重すぎる展示物を振り返る。行列の先の本物たち
2025年に開催された大阪・関西万博。
たくさんの展示物が飾られ、その中にはあっと驚く貴重なものもたくさんありました。
万博は「いのち輝く未来社会のデザイン」というテーマに対して各国なりの解釈を表現する場であり、展示物そのものの価値は必ずしも重要ではありません。
それでも、分かりやすくインパクトのある展示物は万博を盛り上げ、一目見るために大勢の人が行列を作りました。
このnoteでは、そんな貴重すぎる展示物をまとめて紹介し、万博を振り返りたいと思います。
イタリア館、バチカン館
「貴重すぎる展示」で真っ先に思い浮かぶのは、やはりイタリア館およびバチカン館。ファルネーゼのアトラスを筆頭に「国宝級」の展示物が展示され、来場者の度肝を抜きました。
しかも会期が進むごとに貴重な展示物が次々と追加され、いつしか「デアゴスティーニ方式」と呼ばれることに。万博で最も注目されたパビリオンの一つとなりました。
ファルネーゼのアトラス
古代ローマ時代(西暦150年頃)に制作された、イタリア館の顔とも言える大理石像です。美術品としてだけでなく学術的価値も計り知れません。
普段はナポリ国立考古学博物館に展示され、日本では初公開です。万博閉幕後も大阪にしばらく貸し出され、大阪市立美術館で「天空のアトラス イタリア館の至宝」が行われました。

ミケランジェロ≪キリストの復活≫
ルネサンス期を代表する芸術家ミケランジェロの大理石像です。開幕時はありませんでしたが、5月18日から追加展示されました。
実はこの作品、ミケランジェロによる制作中に顔の部分に黒筋が入っていることに気づいて放棄。100年ほど後、バロック期を代表する彫刻家ベルニーニが完成させたといういわく付きです(諸説あり)。

ボッチョーニ≪空間における連続性の唯一の形態≫
前衛芸術運動「未来派」を代表するボッチョーニのブロンズ像です。イタリアでは20セント硬貨のデザインに採用され、非常に高い知名度を誇ります。

カラヴァッジョ≪キリストの埋葬≫
バロック期の巨匠カラヴァッジョの最高傑作ともされる絵画です。こちらはバチカン館の展示です。
元々は2021年の企画展で来日する予定でしたがコロナ禍で中止。しかし、バチカンのフランシスコ前教皇(万博開幕の8日後に死去)の特別な意向で万博で展示されることとなりました。

ダ・ヴィンチ≪アトランティコ手稿≫
ルネサンス期に各分野で才能を発揮した天才ダ・ヴィンチが遺した2,000枚にもおよぶ創作スケッチの一部です。万博では会期前半に2枚、会期後半に別の2枚が展示されました。




ペルジーノ≪正義の旗≫
ルネサンス期に活躍し、ラファエロの師匠としても有名なペルジーノの絵画です。会期終盤の8月31日から追加展示されました。
調和の取れた宗教的なモチーフだけでなく、後ろの信者や背景の建物などの細かい描写も特徴です。イタリア国外で展示されるのは初めてとなります。

ヴェナフロのヴィーナス
古代ローマ時代(2世紀頃)に制作され、1958年にヴェナフロという町で発見された作者不明の大理石像です。
1週間の期間限定の展示(7月6日~12日)であったため、見ることができた人はラッキーでした。

貴重なものがたくさん見れた万博ですが、その中でもイタリア館とバチカン館は量・質ともに飛びぬけていました。
これだけの作品が一か所に集まり、その気になれば手が届きそうな距離に展示されるのは最初で最後ではないでしょうか。
イタリア館にはこの他にもすごい展示物がゴロゴロと転がっていましたが、前述したものと比べると知名度が落ちるためダイジェスト紹介します。
ドメニコ・ティントレット≪伊東マンショの肖像≫

ヤーゴ≪循環器系≫

ジャコモ・バッラ≪ボッチョーニの拳の力線≫

飛行機「SVA 9」の模型

フランス館
フランス館といえば大量に飾られたルイ・ヴィトンやディオールなどのブランド品の印象が強いですが、有名なロダンの彫刻も多数飾られました。

ロダンの手の彫刻(5作品)





ノートルダム大聖堂のキマイラ像
もののけ姫が描かれた巨大タペストリーに目が行きますが、注目したいのは手前の石像。
これはノートルダム大聖堂に飾られていた19世紀のキマイラ像の実物です。ノートルダム大聖堂は2019年の大火災で大きな被害にあいましたが、この像は奇跡的に被害を免れ、再建のシンボル的存在となっています。

千寿オリーブ「若さの樹」
中庭に植えられていたオリーブの大木。これは、樹齢1,000年以上のとんでもなく古い木で、触ると寿命が延びると言われています。

チェコ館
チェコ館は館内に描かれたヤクブ・マトゥシュカの現代アートやボヘミアンガラスが印象的ですが、この他にも貴重なものが展示されました。

ミュシャ≪岩に座る裸婦≫
アール・ヌーヴォーを代表し、日本でも非常に人気のある画家・イラストレーターであるミュシャのブロンズ像です。
1900年パリ万博に出展するために作成されましたが、事情があってお蔵入りになった万博と関連深い作品です。

メンデルの自筆原稿
「遺伝学の父」とされる生物学者メンデルが1865年に発表した論文の自筆原稿です。この論文では、教科書でもおなじみのエンドウ豆の交配実験について記載されています。
科学史において非常に貴重な資料であり、チェコではこの原稿をユネスコ文化遺産として登録する活動を進めています。
劣化防止のために普段は厳重に保管され、1年にわずか2日間だけしか公開されません。今年は万博ということで、その2日間の公開を特別に日本で行うこととなりました(7月23日~24日、ただし24日は関係者のみ)。
残念ながら展示期間が非常に短く、公開後はすぐにチェコに返却されたため見ることができた人はかなり限られています。
ただし、精巧な複製も用意され、バチカン館でしばらくコラボ展示された後にチェコ館で閉幕まで展示されました。

ペルー館
ナスカ文化財
「ナスカの地上絵」で有名なナスカ文明に関連する9点の文化財です。8月15日に追加され、閉幕まで展示されました。
どれも西暦100~650年頃に作成されたものですが、乾燥地帯であるためか非常に保存状態が良いように感じました。

下左:ハチドリ柄の壺、下中:トカゲ柄の皿、下右:ヘビ柄の壺
いずれも材質は土

中央:ネコ科の口ひげモチーフの金製鼻飾り
右:戦士が描かれた楽器(土器)
ポーランド館
ショパンの自筆楽譜と手紙
ポーランド館では国を代表する音楽家であるショパンを全面的にアピール。国際的に有名なショパン・コンテストに出場するレベルの実力者によるショパン・コンサートを毎日行い人気を集めていました。
そして8月28日から9月3日を「ショパン・ウィーク」と位置づけ、ショパンゆかりの展示を更に追加しました。その目玉となるのが、ショパン自筆の楽譜や手紙という非常に貴重な資料です。
期間限定かつ要予約というかなり厳しい条件だったため、残念ながら私は見ることができませんでした。
ポーランドを初めて飛び出しました!ショパン・ウィークの期間中、ポーランドパビリオン来館者は巨匠ショパンのオリジナル自筆原稿を見学する機会を得ました。日本にで展示されたのは、家族への手紙として知られる「シャファルニア通信」、そして現在のポーランド国歌「ドンブロフスキのマズルカ」のリ… pic.twitter.com/SvNpEctyLh
— Poland at Expo (@ExpoPL) September 3, 2025
サイエンス関係
万博では美術品だけでなく、科学的に貴重な資料も多数展示されました。特に宇宙関係と再生医療関係が多くみられました。
アメリカ館:月の石
アメリカ館の目玉展示で、NASAがアポロ17号(最後のアポロ計画)で持ち帰った118グラムの月の石です。
ちなみに大阪万博(1970年)でアメリカ館が出展した月の石とは別物です。
(あちらはアポロ12号で持ち帰ったもの)

日本館:火星隕石
日本館の目玉展示で、日本の南極観測チームが発見した13キロの隕石です。「火星の石」と呼ばれていましたが、火星から飛来した隕石であるため、「火星隕石」の方が適切な名称です。
火星に行って取ってきたわけではありませんが、火星の成分を明らかにする貴重な資料であり、なによりロマンを感じさせます。

近くには、薄くスライスした火星の石の切片を実際に触れるコーナーもありました。

日本館:イトカワ、リュウグウのサンプル
一時期大きな話題になったJAXAの「はやぶさ」「はやぶさ2」がそれぞれ小惑星「イトカワ」「リュウグウ」から採取してきたサンプルです。
小さすぎるため見た目のインパクトは弱いですが、稀少性や採取難易度を考えると前述の火星の石よりも遥かにロマンがあります。


中国館:月の土
無人月探査船「嫦娥(じょうが)5号」(2020年)、「嫦娥6号」(2024年)が月面から採取してきたサンプルです。中国館の展示物は大半が複製でしたが、こちらは正真正銘の本物です。
特に、嫦娥6号は月の裏面から土を採取しました。月の裏面は地球と直接通信ができないためミッションが困難で、サンプルリターンは世界初です。日本ではあまり報道されない中国の宇宙開発技術の高さを実感できます。

隕石展:月隕石、火星隕石
万博会場の「西の果て」ことフューチャーライフビレッジの隕石展でも火星隕石と月隕石(月から飛来した隕石)が展示。
サイズこそ小さいものの、予約が不要であり、近づいてしっかりと触ることができることから人気を集めました。残念ながら隕石展は万博よりも一足早く7月に展示終了しています。

この他にも隕石を叩けるという謎コーナーがあったり、詳細は不明ですが市場に出たら一億円以上はする貴重な隕石も展示されていたそうです。

その他
これ以降はちょっと数が多いのでダイジェスト紹介となります。
三重ブース:自由の鐘(真珠製)

1939年のニューヨーク万博でも展示された
三重ブースではこのほかにも、宝刀「村正」や伊勢神宮でかつて使われていた木材「鰹木」(かつおぎ)なども展示されました。
福井ブース:恐竜のウンコの化石

パソナ館:iPSミニ心臓、心筋シート


大阪ヘルスケア館:心筋シート

オーストリア館:ベーゼンドルファー自動演奏ピアノ

マルタ館:江戸幕府の使節団が訪欧した際に贈与した甲冑

アイルランド館:ジョセフ・ウォルシュ≪マグナス・リン≫

チェコ企業:文明の森(亜化石オーク133本)

夜の地球:輪島塗の巨大地球儀

おわりに
このように、大阪・関西万博には様々なジャンルの貴重すぎる展示物が集まりました。
特に会期の後半になると各国が競うように展示物を追加してきて、ワクワクしながら情報をチェックしていたのを思い出します。
万博の熱気を文章として残すことは難しいですが、このような展示物が飾られていたという事実だけでも「世界各国が本気で参加した特別なイベント」であることが伝わるのではないでしょうか。
10年後20年後に万博のことを知らない人がこのnoteを読み、「万博ってそんなすごいイベントなんだ。また日本でやって欲しい」と応援してくれないかなと感じます。

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