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世界最速で地盤沈下するジャカルタで勝手ガイドと船に乗る

世界最大の都市圏となったインドネシアの首都ジャカルタは、世界最悪レベルの地盤沈下が進行する町でもある。そんなジャカルタ北部の「海抜ゼロメートル地帯」を散策した。

インドネシアのモルッカ諸島(香辛料諸島)の話を拙著『8の都市からよむ「世界一周」の世界史』(日経ビジネス人文庫)に書きました。「はじめに」は無料で公開しています。

おじさんが勝手にガイド

「インドネシアあるある」のひとつかもしれないが、地域のおじさんが頼んでもないのにその場所を案内してくれることがある。

赤い船とガイドのおじさん

今回もそのパターンだった。2025年3月、僕は久しぶりにジャカルタを訪れた。オランダ東インド会社が支配した時代に主要施設があった北部を散策するためだ。

ホテルからタクシーで北部に向かう。高層ビルが林立する中心部と違い、北部はトタン屋根の簡素な住宅や商店が所狭しとひしめき合う。一言で言えば、下町だ。

ジャカルタ北部はトタン屋根の住宅が目立つ

海洋博物館の前でタクシーを降りると、いかにも怪しそうなおじさんが近づいてきた。辿々しい英語で話しかけてきたので、とりあえず無視して博物館内に入った。(当然詐欺師みたいな輩もいるので警戒は必要だ)。

博物館に入るとおじさんの勝手な説明が始まる。うん、なかなか正確だ。博物館が2018年1月に火災でほぼ全焼したことなども踏まえていた。こちらからインドネシア語で話しかけると、おじさんは水を得た魚のように喋り始めた。

おじさんはもとNHK助手⁉︎

博物館はオランダ東インド会社時代の香辛料倉庫だった。おじさんは歴史にも造詣が深かった。聞けば、かつてNHKジャカルタ支局で助手をしていたらしい。(検証はしていない)。

海洋博物館に残る大砲。オランダ東インド会社の紋章が刻印されている

「海がみたい」。博物館を出るときにおじさんにそうリクエストした。おじさんは「任せとけ!」という感じで、博物館近くの海沿いにあるカンプン(集落)を案内してくれた。

細い路地を抜けて歩く

こういう場所に行くときに地元の人を味方につけておくことは不要なトラブル回避につながる。普通の暮らしにグッと近づくチャンスでもある。

ちなみにこの時はLeica Q2を持って行った。インドネシアの人たちは写真撮影はほとんど断らないので、撮影許可が取りやすくていい。

おじさんと出航

さて、小さな迷路のような集落をしばらく歩いたところに船がたくさん泊まっていた。木造の船だ。「乗りたいか?」と聞かれたので、値段も確認せずに乗った。

塀の上から。生活感あふれる地域だ

塀を乗り越えて船に乗り移る。赤い塗装が施された綺麗な船だった。無口な船長とおじさん、僕の3人だけの貸切だ。

漁船もたくさん停泊していた

湾内では農産品(コプラのように見えた)を荷上げする様子などが見えた。漁船もたくさん停泊していた。少し西にある輸出入拠点タンジュンプリオク港と違い、こちらは生活感のある港だった。

防潮堤で囲まれる北ジャカルタ

船上から陸をみると、人の背丈よりも高い防潮堤で囲まれているのがわかる。

地域を覆う防潮堤。落書きはどうやって描いたのだろう

ジャカルタは世界でも最悪レベルの地盤沈下が進行中で、酷い場所では年に30センチメートルという信じられない速さで土地が沈んでいる。測り方にもよるが、世界最速の地盤沈下であるという説も根強い。

地下水の過剰な汲み上げに加えて、地球温暖化による海水面上昇もあり、ジャカルタ北部の広い地域は実は海抜ゼロメートル未満だ。いわば「水の中」にある。

博物館の外から。1718年に作られたとされる門も沈んでいる

実際、高潮や大雨の時には北部は深刻な洪水に見舞われる。ジョコ前大統領が首都移転の理由にジャカルタの洪水を挙げるほど頻繁に大洪水が発生している。

ジャカルタ北部の洪水は「当たり前」に(2017年2月)

僕は2016年から4年間ジャカルタで生活した。ここはアジアの可能性と課題の縮図のような町だ。地球温暖化が目に見えて人々の生活を脅かしているのもその一断面だ。

「湾内クルーズ」は30分ほどで終わった。期待していたようなオランダ時代の面影は正直あまり感じられなかった。

でも、久しぶりにジャカルタの人々の生活に少し触れられていい旅になった。ありがとう、おじさん。ちなみにガイド料は求められなかったが、帰り際に10万ルピア(950円)を手渡した。

(2025年3月のメモをもとに作成しました。26年1月18日公開、改題)

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