舌の根の乾かぬ内に
嘘を書いてはいけない。
それは、ライターとか以前の話。
人として、嘘をついてはいけない。
ライターの佐藤友美(さとゆみ)さんは、2025年のエッセイ講座で、私を含む受講生に向かってこう言っていた。
嘘は書いちゃいけないよ。嘘を書くと文章の神様に嫌われる。
また、毎日更新されるコラム『今日もコレカラ』で2024年1月19日の回で、こうも書いている。
文章を書き慣れてくると、指が勝手に動くときがある。
感動しました。
感銘を受けました。
衝撃を受けました。etc.
だけど、本当に、感動したのか。
本当に、感銘を受けたのか。
本当に、衝撃的だったのか。
(中略)
私はすこぶる雑で粗忽で適当な女なのだけれど、思ってもいないことをなるべく書かないことに関しては、ことばの神様と約束したの。
さとゆみさんは、絶対嘘を書かない人。
そう信用させるに十分なエピソードだと思う。
ところがどっこい。
2026年1月18日、さとゆみさんはライター仲間の佐藤智さん、田中裕子とこんなエッセイ集を出版した。
『舌を抜かれる』
9本のエッセイのうち6本は嘘。
ええええ!?嘘書いてますやん!?
私にとって、さとゆみさんが嘘を書く、というのが、本当に、本当に信じられなくて。
衝撃的過ぎて、購入するのを1週間悩んでしまったぐらいだ。
さとゆみさんが、嘘を、積極的に書いた。
嘘は書かないと書いたコラムから2年間。彼女にどういった心境の変化があったのか。
そもそも、嘘って何だろう。
「思ってもいないことを書く」ことが嘘なら、「事実ではなくとも思ったことを書くこと」は、実は、嘘ではないのかもしれない。
話は変わって私。
先日こんなコラムを書いた。
「推し」という言葉が苦手だ、という話。
が、撤回します。
私、もっと推しをいっぱいつくりたい。
いや、お前こそ、舌の根の乾かぬ内にどないした?という感じですが。
というのも、このコラムを書いた翌日、2026年1月24日のさとゆみライティングゼミにて、さとゆみさんはこう教えてくれた。
「推し」がないと企画が立たない
自分の好きなものを伝えたいという原動力がなければ、企画を立てることはできないということだ。
これを聞いた私の感想はこう。
やばい。ライターとして「推し嫌い」は致命傷やないか!
というわけで、今の私は推し肯定派でございます。
じゃあ、「推しという言葉が嫌い」というのが嘘だったかというと、嘘ではなくて。
むしろ、2026年1月23日までの私は「推し嫌い」で、2026年1月24日からの私は「推し肯定派」になった、というのがありのままの事実(舌の根の乾かぬ内に、意見を変えたことも事実だが)。
私は意見を180度ひっくり返したが、嘘はついていない。
毎日書いていると、自分の変化を記録できるのが素晴らしいと思う。
明確に変わった日がわかったり、じわじわと思考の転換が起こっているのが観察できる。
やっぱり書くって、そして読むって楽しい。
『舌を抜かれる』は昨日発送されたらしい。届き次第、じっくり味わいたいと思います。
