ビーチ・ボーイズの「ココモ」はなぜ「史上最悪のサマーソング」と酷評されたのか
先週末、新百合ヶ丘にオープンしたハワイアンレストラン「MAHALO」に行って、カクテル飲んで酔っ払った午後は、喜び少ない老後生活における、久しぶりに幸福な時間だった。
ああ、幸せだったなあ、と、それから数日は、それを思い出すだけで幸福になれた。
同時に脳内で鳴り始めるのは、ザ・ビーチ・ボーイズの「ココモ」です。
フロリダ・キーズの沖に
ココモという場所がある
そこへ行きたい
すべてから逃れるために
砂浜に埋もれた人影
トロピカルドリンクが手の中で溶けていく
私たちは恋に落ちる
スティールドラムバンドのリズムに合わせて
ココモで
Off the Florida Keys
There's a place called Kokomo
That's where you wanna go
To get away from it all
Bodies in the sand
Tropical drink melting in your hand
We'll be falling in love
To the rhythm of a steel drum band
Down in Kokomo
The Beach Boys - Kokomo (1988)
この曲は、最初聴いた時から好きでねえ。
このいかにも1980年代っぽい緩いMVも大好きです。
それなのに、Wikiによると、この「ココモ」は批評家に酷評されて、「史上最悪のサマーソング」と呼ばれているらしい。
それを知って、老人が朝からブチ切れてるんですけど。
商業的な成功にも関わらず、「ココモ」は音楽評論家から否定的なレビューばかり受けた。ローリングストーン誌のジミー・グーターマンは、この曲が「Still Cruisin'」に収録されている「情熱のない新しい曲のパターンを示している」と書き、ローリングストーン誌のアルバムガイドでは「喜びのない小歌」と評した。1998年の記事で、ステレオ誌のスティーブ・シメルズは「味気ない」と評した。ブレンダー誌は、この曲は「ビーチ・ボーイズっぽい曲をビーチ・ボーイズが歌っている、と表現するのが最も適切だろう」と述べた。キャッシュ・ボックスは、この曲を「本物のアイランド・バイブとキャッチーなコーラスを備えた、軽快な昔風の曲」と評した。
Despite its commercial success, "Kokomo" has attracted mostly negative reviews from music writers. Jimmy Guterman of Rolling Stone wrote that the song "sets the pattern for the new, passion-free songs" on Still Cruisin', while the Rolling Stone album guide called it a "joyless ditty". In a 1998 piece, Steve Simels of Stereo described it as "insipid". Blender stated the song was "perhaps most kindly described as a Beach Boys–influenced song with the Beach Boys singing on it". Cash Box called it a "snappy little throw-back of a tune" with "a real islands-vibe and hooky chorus."
発売以来、「ココモ」は批評家から酷評され、悪名高い。ブレンダー誌の史上最悪の曲トップ50、ダラス・オブザーバー誌の偉大なアーティストによる最悪の曲10選、フォーブス誌の史上最悪の歌詞など、いくつかの史上最悪の曲リストに登場している。ステレオガムのトム・ブレイハンは次のように書いている。「人々は『ココモ』を嫌っている。ビーチ・ボーイズのキャリア後期の信じられないヒット曲は、凡庸さの象徴というレッテルを貼られている。今日に至るまで、かつて愛されたグループが、80年代のヤッピー向けの甘ったるい曲を作ることで、自らの伝説と信頼を台無しにしてしまったという、教科書的な教訓となっている」。この曲を「史上最悪のサマーソング」と評した回顧録の中で、MELマガジンのティム・グリアソンは次のように記している。「私たちの多くは、この1988年の大ヒット曲を嫌うことに、計り知れない喜びを感じてきた」。ブレイハンとグリアソンは共に、マイク・ラヴに対する個人的な嫌悪感が、この曲に対する否定的な意見の要因となっている可能性があると考えている。
Since its release, "Kokomo" has become notorious for its negative critical reception. It has appeared on several worst songs of all time lists, such as Blender's top 50 worst songs, Dallas Observer's ten worst songs by great artists, and Forbes' worst lyrics of all time. Tom Breihan of Stereogum wrote: "People hate 'Kokomo.' The Beach Boys' improbable late-career hit has a reputation as a monument to mediocrity. To this day, it serves as a textbook cautionary tale of a once-beloved group poisoning its own legacy and goodwill by making smarmy '80s yuppie pablum." In a retrospective dubbing the song the "worst summer song ever", MEL Magazine's Tim Grierson wrote: "A lot of us have taken immense delight in hating this 1988 smash. "Both Breihan and Grierson attribute their personal dislike of Mike Love as a possible factor for their negative opinion of the song.
「ココモ」で演奏したドラマーのジム・ケルトナーは、批評家から酷評されたのは、この曲が「甘ったるいポップス」だからだと説明した。「批評家たちは、言葉でこの曲をなきものにしようとしたが、この曲の『ヒット感』は奪えなかった。これは正真正銘のヒット曲で、それに尽きる」
Drummer Jim Keltner, who played on "Kokomo", attributed the critical disdain to the song being "just sooo syrupy pop ... But while the critics killed it with their words, they couldn't kill the 'hitness' of it. It's just a bona fide hit record, that's all there is to it."
おまけに、私の大好きなミュージックビデオまで酷評されている。
2011年、NMEはこのビデオを史上最悪の17位にランク付けし、「まるでマイク・ラヴがブライアン・ウィルソンから『ビーチ・ボーイズ』の名前を奪ったかのようで、かつトム・クルーズがブラッディマリーを混ぜている映像を無理やり見せられる。ご苦労なこった」と評した。
In 2011, NME ranked the video as the 17th worst of all time, commenting, "It was as if Mike Love had taken the 'Beach Boys' name straight out of Brian Wilson's hands and we were forced to watch footage of Tom Cruise mixing up Bloody Marys. Thanks guys."
*英語版Wikiより。日本語版Wiki「ココモ」では酷評について触れられていない(2025/6/10時点)。
なぜそんなに酷評されたのか。
要するにアレだろ、ブライアン・ウィルソンがこの曲に参加してないから、気に食わないわけだ。
批評家はブライアン・ウィルソンを「天才」と呼んで大好きだからね。
ビーチ・ボーイズといえばブライアン・ウィルソン。
「天才」のウィルソンがいるから、ビーチ・ボーイズは素晴らしい。
そのウィルソンがいないのに、名曲であるはずがない。
そういう「理論」先行の批評家の偏見なわけですよ。
「ローリングストーン」誌含め、ロック批評の悪い面が全部出てる感じだ。
私はあえて言えば、その天才の曲「グッド・ヴァイブレーション」より「ココモ」のほうが好きだ。
そんなことを言うと、ロック批評界では袋叩きに遭うんだろうな。
そんな曲が、「グッド・ヴァイブレーション」以来、22年ぶりのビーチ・ボーイズのNo1ヒットになった、という事実そのものを、批評家は否認したい。
批評家クソ喰らえですよ。
この曲は、元ママス&パパスのジョン・フィリップスらの曲で、ブライアン・ウィルソンは作曲にもレコーディングにも参加していない。
ウィルソンがこの曲に参加しなかったのは、自伝によると「ソロアルバムに専念するため」だが、実際には以下のような事情だったようです。
マイク・ラヴによれば、ウィルソンが「ココモ」に参加しなかったのは、ウィルソンのセラピストからコラボレーターになったユージン・ランディが、自分がプロデューサー兼共作者でない限り、ブライアンに歌わせるわけにいかない、と拒否したためだった。本作のプロデューサーのテリー・メルチャーは、ナンバー1ヒットを何曲かプロデュースしていたので、ランディの協力を必要としなかった。「ランディがそんなことを言うのは哀れだが、当時は彼がブライアンを完全にコントロールしていた」とマイク・ラヴは言っている。2018年のステレオガム誌によると、「(ブライアンが)ラジオでこの曲を初めて聞いたとき、ビーチ・ボーイズの曲だとさえ気づかなかった」という。
Mike Love stated that Wilson was not on "Kokomo" because Eugene Landy, Wilson's therapist-turned-collaborator, refused to "let Brian sing on it unless Landy was a producer and co-writer," and Melcher did not "feel he needed Landy since he had produced some number-one records. It was pathetic of Landy to do that, but he controlled Brian completely at that time." According to a 2018 article in Stereogum, "When [Brian] first heard the song on the radio, he didn’t even recognize it as a Beach Boys tune."
(上掲のwiki"Kokomo"より)
(マイク・ラヴ=上のMVでサックスソロを吹いているフリをしている人=は、ブライアン・ウィルソンの従兄弟で、共にビーチ・ボーイズの創設メンバーだが、一時期、2人は仲が悪く、ブライアンを崇拝する人はマイク・ラヴを嫌う。作曲担当のブライアンがビーチ・ボーイズの「芸術」面を代表するとすれば、フロントマンのマイク・ラヴは、その商業主義を代表すると思われた。このマイク・ラヴの悪印象が、「ココモ」評価に投影されている。なお、この曲のリードヴォーカルは、ブライアンの弟で、1998年に癌のため51歳で亡くなったカール・ウィルソン。ベースを弾いているのは、ブライアン不在時のメンバーだったブルース・ジョンストン)
この曲がヒットした1988年は、日本でバブル真っ盛りでね。
トム・クルーズが主演した映画「カクテル」のテーマ曲。
当時20代の私の青春も真っ盛りで、貧乏な私はバブルが嫌いだったし、モテ男のトム・クルーズ(ほぼ同世代)には金玉破裂するぐらい嫉妬してたけど、この曲だけは好きだったねえ。
私の人生には決して起こらなかった幸福な情景を想像させてくれるから。(ちなみに「ココモ」は架空の地名)
たまたま日本に滞在していたクリストファー・クロスがゲスト参加した2012年の素敵なライブ映像もあります。(ここにはブライアン・ウィルソンも=一応=参加している)
Beach Boys feat Christopher Cross Kokomo live Japan 2012
<参考>
