情報生活デザイン #4: もしスマホが「わたし」の幸せを優先してくれたら? その3
「広告経済の次」シリーズで挙げた構造的な問題に対し、
私たちの「情報生活」を
あるべき姿に「デザイン」し直せるとしたら──
そんな想いで、このシリーズを進めています。
前々回は「文化の享受」、
前回は「社会との連携」
について考えてみました。
今回は、三つ目の視点、
「思考の深化: 『わたし』にとっての『確かな』知を体系化していくこと」
について考えてみたいと思います。
問題意識: 「表層的な答え」ではなく「深く考えるためのサポート」が欲しい
たとえば、ChatGPT や Gemini。
質問すれば、たいていのことはすぐに答えてくれます。
悩みごとにも寄り添ってくれるし、話し相手にもなってくれる。
でも、思考のパートナーとしては少し物足りない。
何が物足りないかというと・・・
「いま話していること」が、
なかなか積み上がっていかない、
ということです。
たとえば、ChatGPT とのチャットの中では、
一つのトピックを掘り下げたり、
関連する話題に発展させたりもできます。
けれど、その過程で得られた知見を
「別のトピックに活かす」「体系的に再利用する」となると、
急に難しくなるのです。
あるトピックについて深めた議論が、次のチャットでは参照できない。
複数の議論を横断して、知識やアイデアを統合するのが難しい。
途中で分岐したサブトピックを、改めて抽出・整理するのが面倒。
つまり、思考の「流れ」はあっても、
「構造」になっていない。
だから、思考の「積み上げ」や「体系化」は、
ユーザ自身でやるしかありません。
「深く考えるサポート」が欲しい場面
もしかすると、みなさんは、
「そんな思考の『積み上げ』や『体系化』なんて、
自分には必要ない」
と思われるかも知れません。
でも今でも、みなさん、
ここぞというときには、ネットで調べたり、人に聞いたりして、
かなり複雑なことを自分自身で決めているはずです。
例えば、
就職、転職、起業などの
キャリアプランについて。
そのための、自分の経験・能力の棚卸しや、
資格取得に向けた勉強法などについて。住宅ローン、教育費、老後資金などの
ファイナンシャルプランについて。
ふるさと納税、NISAなどの税制度のことや、
株資産の運用のノウハウなどについて。国会、自治体などの
選挙について。
自分の価値観にとって最も重要な争点は何か?
各党の政策が、具体的に自分や社会にどう影響するのか?
これらの、仕事、お金、政治に関する意思決定は、
昔に比べて、選択肢が増え、情報量も多くなった今、
自分にとって何がベストかを判断するのは、
以前よりも難しくなっているように感じます。
これからもその流れは続き、
IT/AI のサポート無しで行うのは難しくなっていくでしょう。
もし、「わたし」専属の万能コンサルタントがいたら
もし、「わたし」の幸せを最優先してくれる
優秀で信頼できる万能コンサルタントがいてくれたら、
どうでしょうか?
「わたし」の夢、取り巻く環境、理想とする社会、
などを傾聴してくれ、
キャリアプランもファイナンシャルプランも
一緒になって考えてくれる。
政治についても、ニュースだけでは分からないことを
「わたし」の視点で掘り下げて調査してくれる。
もちろん、これらは一回で答えの出るものではありません。
人生という長い曲がりくねった道のりを
一緒に走ってくれる。
そういう存在がいてくれたら、
と思うのです。
「深く考えるサポート」の実現イメージ
万能コンサルタントをスマホで実現しようとしたら、
どういう方向になるでしょうか?
ここからはちょっと技術的な話になります。
「考えを深める」には、「構造」が必要です。
自然言語のやりとりだけでは、
なかなか構造として積みあがっていかない。
セマンティクス(意味の構造)が曖昧になり、
あとから再利用したり、発展させたりするのが
難しくなります。
このことについては、Wiki や
プログラミング言語の世界に、
ヒントがあると考えています。
Wiki とは知識を簡単に記述・参照できるシステムで、
ナレッジ共有のための枠組みとして、
エンジニアを中心に広く使われています。
文書を互いに参照させることが
非常に直感的に容易にでき、
つまり、知識の構造を表現することができます。
この思想を取り入れて、
オープンコミュニティーで百科事典を作ったのが
Wikipedia です。
チャットやニュースでは情報は流れて行ってしまうのに対して、
Wikipedia では情報は構造化され、知識として蓄積されます。
プログラミング言語では、
変数や関数などに明確な構造があり、
同じコードを何度でも再利用できるようになっています。
プログラマの仕事は、まさに
「再利用できるコードを積み上げていくこと」
であり、
その仕事を効率的に行えるように
「プログラミング言語」が設計されているのです。
もちろん、
人間は、自然言語で話すのが自然です。
ただ思考を積み上げていくためには、
これらの形式的な言語のサポートが
必要になるはずだと考えています。
今回は、「思考の深化」について考えてみました。
次回以降は、こうした構想を
もう少し具体的なサービスのかたちで
描いてみたいと思っています。
みなさんの情報生活にとっても、何かヒントになれば嬉しいです。
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