もう取り返しがつかないけれど、だからこそ、取り返しのつかないことを減らしたい
水泳お好きですか? クロールは習ったものの、ピンと来なくて。
学校の水泳の授業は、平泳で問題なかったから、私は平泳と背泳ぎをしていました。
父はペンより重いものは持ったことがない人で、洗面所の水道管も、母がホームセンターで直し方を独学し、パッキン交換していました。ことに球技がダメで、キャッチボールしてくれるお父さんでは無いのです。
しかし、好きなことは極める人で、市民プールで水を得た魚のように、ザバザバ泳いでいました。クロール、平泳、バタフライ。肺活量もあり、プールの往復を潜水することも。父についてプールに行きましたが、自宅では見ないアクティブな父を眺めて、私は平泳をしていました。彼ほど水泳に打ち込めなくて。たぶん、前世はカッパですね。
あ、犬小屋は作っていました。工業高校出身なので、やればできるのです。
水泳は、独りになれるから、彼には良かったのでしょう。少年時代、1950年代の川で覚えたと、話してくれたものです。
鬱病を発症しても、体調が良ければ水泳は出来ていました。
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父は子どもの頃に受けちゃいけない傷として、身近なお友達と、家族から継続してバカだと踏み躙られた経験があります。
彼の10歳上の長男の兄だけは「そんなことないぞ」と、九九とか教えてくれました。
しかし、父が小学生の頃に、頼りにしていた兄が、就職した先で重い精神疾患を発症してしまい、庇護者を失います。
そこから何年かして中学生になり、自分は近眼だと理解し、眼鏡をつければ黒板見えるので勉強できると気がつきました。
自分はバカではなかった喜びと、それまでの悔しさから、超人的な努力で勉強し、一気に成績を上げて偏差値が学区で一番高い工業高校に行った人なのです。その後、就職や夜学を経て、大学院へ進み、研究者になりました。
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父は人間が存在するということが、理解しにくいようです。
例えば、彼の母親、僕の祖母が寝たきりでいてくれた間はなんともないけども、病没すると、過労と重なり鬱病の引き金になりました。
寝たきりなのだから予想がつかないのか、疑問ですが、父は「居てくれる」ことが理解できませんでした。
もう一つ目は、私の母が父に対して——
私と下の子を片親にせず、父の健康管理を頑張ろうという文脈で母の体験を話しても「自分がそこに存在するだけでいい」ことが、何故か分からないのです。
母は自分の母親、つまり僕の祖母に対して、「何もしてくれなくていいから、寝ているだけでいいから、生きていてくれたらと願った」と、体験を話しても、父は分からないのです。母の伝え方の問題では無いと、私は明記します。
おそらく、父は自己肯定感、自尊心、自己承認が、機能しにくいのでしょう。父は逆境に弱い。肩書きをアイデンティティに組み込んでいるからです。
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父のケースから、言えること。
身を守れない子どもを傷つけてはいけない
その心の傷は一生その子を苦しめる
絶対にダメ
もう一つは、自己肯定感や自尊心を持てず
苦しむ方が一定数います
子どもの頃に、受けちゃいけない傷を
受けている場合がある
起きたことは、無かったことには出来ないし
全てのことが認知行動療法で解決できるわけではありません
そういう痛みがあるのだと、社会がもうちょっとだけ優しくなり、「たとえ分かることはできなくても、幼少期の心の傷を抱えていることは察する」と、別に優遇するのではなく、「よく生き延びてくれた」と、その存在自体への無条件なリスペクトが不可欠です。
「あなたは何かができるから素晴らしいね」とか、「こんなに役に立ったね」ではなくて、それ以前に、「そこにいてくれることにありがとう」と、もちろん家族とかパートナーとか友達からのリスペクトも大切だけど、社会からの理解も意味があります。
例えば鬱病は、1980年代は治らないと言われました。偏見もあった。今は、正しい情報にアクセスしやすくなっています。
同じように、幼少期のトラウマも、今の鬱病みたいに社会が理解するようになれば、そういうものを抱えて、理不尽と戦っている人が、これ以上苦しまなくて済む。
生まれる環境を選べません。幼少期の心の傷をゼロにすることを目指す他に、傷を負った人が、安心して力を発揮できるようになると、例えばうちの父のように、取り憑かれたように努力し続ける破滅を減らせます。
彼はバカでは無いことを、心の傷に対して証明し続けるしか、生き方が無かったのでしょう。
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