📖『アムリタ(上)(下)/吉本ばなな』(福武書店)に救われて


📖『こころにしみる日々(上) 〜 愛と喪失と再生の獄中272日間 〜』


判決前の一週間は地獄の一週間だった。自らの精神状態を正常に保つために様々な工夫が必要だった。私はこれまでの2回の裁判で、自分にできることは全てやったつもりでいた。つまり反省をしているということ、もう二度と同じ過ちを繰り返さないということを精いっぱい主張したつもりだった。精いっぱいのことをやったのだから、もう結果は決まっている。それを受け止めるだけと自分に言いきかせた。そして📖『アムリタ(上)(下) / 吉本ばなな』(福武書店)を読むことによって癒され、判決までの最後の何日間かを乗り越え救われることになった。
こんな素晴らしい作品があの90年代に発表されていたなんて。。。私は吉本ばななさんに感謝せずにはいられなかった。私は拘置所にいる間中、ずっとこの作品を借り続けることになる。そしてこの後も私は拘置所、刑務所で、まるで神に導かれるかのように、折にふれて素晴らしい本に巡り合うことになる。
🔗️📖P. 48『2023.3.8~』
拘置所を去る前日私は、📖『アムリタ(上)(下) / 吉本ばなな』(福武書店)の中で、最も気に入った箇所をノートにメモっておくことにした。これらの箇所は何度も何度も繰り返し読み返した。素晴らしい場面だ。
📖『アムリタ』抜粋
① 音楽が変わって、陽気な速いテンポになった。させ子は踊りながら退場し、地元のおじさんに抱きつかれてキスされて、キスを返した。そしてテーブルに戻ってきた。
「どう?私の歌。」させ子はほほえんだ。
「何だかまだよくわからないけど、でも何だかよかったわ。」私は言った。
「もっと聴きたい」それにつきた。ほかには言葉にはできない。原始的な欲望だった。気持ちいい、いつまでもそこにとどまって感じていたい(P.283)。
目に見えないものが、あるのは知ってる。弟が感じること、私がさせ子の接近を感じ取ること。そういうこと。それにどういう名前をつけるかは人それぞれだと思う。させ子が今、私にしてくれたこともそうだ。名前をつけることよりもきっと、よく知りもしない私に心を尽くして何らかの方法で体の具合をいいほうにかたむけるやり方を教えてくれた。そのことの方が大切だ(下・ P.12)。
✏️ちなみに「させ子」というのは、母親が浮気をして生まれた子供で、父親が腹を立ててつけた名前だという。何らかの意図があるのかないのかわからないが、すごい設定だ。
② させ子は地元の人間らしく、浜を通り行く人達が次々にハーイ!とあいさつしていった。近所の人、カラオケ友達、店の客、いろいろいた。人気者だった。させ子は、浜に座ったまま、いつもにっこりと手を上げた(下・ P.22)
✏️「いつもにっこり手を上げ」るというのが、なんかいい。
③ 「裏返さないと、黒こげをよー!」させ子が私をつついた。はっと目覚めた。砂の上で寝ていた。涙がこぼれた。
「うーん。」私はあおむけになった。
「夕方近いとはいえ、日がが強いから。」させ子がにこにこ笑っていた。痛いような笑顔だった。"そうか、私が部屋でひとりつまんなそうに寝ていたから、今日いちにちつき合ってくれたのか"と初めて気づいた。あんまりにもさりげなく一緒にいたからわからなかった。たぶん、わからなくてもいいくらい自然に物事が進んで行く。そういう場所、そういう人だ。(下・ P.24)
✏️いいものに理由なんていらない。
④ 日は西に傾き、何もかもがうっすらとオレンジ色に見える。海は静かに夜の準備に入ろうとしている。店のイルミネーションが点滅を始める。笑いながら、2人がこちらに歩いてくる。させ子が立ち上がる。彼女がこんなにいい暮らしに流れ着いたことを嬉しく思った。そして私も立ち上がった。今日あったことを話して、夕食を食べる。そういう暮らしに(下・P.25)。
✏️この場面、理由もなく、素晴らしすぎる。やっぱり理由なんていらない。
私たちはサンドイッチ屋の外のテーブルに腰かけていた。目の前は海で、さっきまで泳いでいた弟の髪からぽたぽたと水滴がたれている。奥からさせ子がすいかを大盛りにのせた皿を持ってこちらに歩いてきた。私は思った。"何でいつもこういうとき、あんなににこにこ笑っているんだろう。片手に持ったすいかがもっとおいしく見えてしまう。古い南国の映画を見ているみたいな、甘い気持ちになってしまう。好きだなあ、この人が。この才が。痛いくらいに。切ないほど"
「サービスのすいかですよ。」させ子は言った。
「私はまだ奥で働いているから、ゆっくりしていってね。」そしてすいかを置いて、店の中に戻っていった(下・ P.66)
⑤ 「空が青いのも、指が5本あるのも、お父さんやお母さんがいたり、道端の知らない人と挨拶したり、それはおいしい水をごくごく飲むようなものなの。毎日、飲まないと生きていけないの。何もかもが、そうなの。飲まないと、そこにあるのに飲まないなんて、のどが乾いてしまいには死んでしまうようなことなの。ばかだからうまく言えないけど、そうなのよ。」(下・ P.150)

これ以外にもすばらしい場面、すばらしい章がたくさんある。とてもここには書き切れない。
こんな素晴らしい作品を90年代にリアルタイムで読めていれば、どんなに素敵だっただろう。
刑期を終えて、経済的に余裕ができたら必ずこの本を手に入れたいと思う。
🔗️📖P. 48『2022.12. 14~』


📢コンテンツを読んでくださった方へ

これは実は、全体でひとつのリアルなストーリーになっています。
🔰📖『ここしみ』 超・あらすじ
👉ざっくりと全体を把握したい方へ
❓📖『ここしみ』って?
👉全体像。壮絶な日々の果てに綴られた“特別な一篇”。こころに灯る何かを感じてもらえたら。。。
壊れた人生。それでも生かされた。だから今語り始める。「罪と罰」、「愛と絆と再生」、そして「本当の自由」の物語。私があそこで過ごした272日間と、その後の壮絶な日々を綴っています。
また、獄中「🏛️訴訟ゲーム」を通じて、冤罪、死刑制度、司法の闇など、現代社会の深い問題についても斬ります。他に、「🏰ムショトピ」といったゆるーいコンテンツも。
そんな風に、ひとつの人生の軌跡を通じて、「生きるとは何か?」「愛とは?」を問いかけます。
👉気になるコンテンツだけでもOK
👉だいたいの話は各話ごとの短編としても(多分)お読みいただけます
📖『こころにしみる日々(上)~ 愛と喪失と再生の獄中272日間 ~』
📖『こころにしみる日々(下)~ 灯りを求めて。出所、そして壮絶な日々 ~』
『💠コラム的な:』 👉📖『ここしみ(上)(下)』から抜粋したエッセイ集
✉️カルマに声を届ける

👉こちら、または下のコメント欄からでも、お気軽にどうぞ

リンク元コンテンツ 🔗📖「2022年、それは私にとって最高の年になるはずだった。しかし・・・・・・」
リンク元コンテンツ 🔗📖「🌙拘置所最後の夜」
リンク元コンテンツ 🔗📖「📖『パイナップルヘッド / 吉本ばなな』(幻冬舎文庫)」
リンク元コンテンツ 🔗📖「私は夢見心地で歩いていった」
リンク元コンテンツ 🔗📖「玄関の向こうに、こころが届かない ~ 新たなる旅立ちの日 ~」
リンク元コンテンツ 🔗📖「Sho - chie」
いいなと思ったら応援しよう!
サポートありがとうございます。カルマ・ショウと申します。
いただきましたサポートは作品を完成させるために大切に使わせていただきます。尚、体や精神を病んでらっしゃる方、元受刑者など社会的弱者の方々向けの内容も数多く含むため、作品は全て無料公開の方針です。よろしくお願い申し上げます。