メタル君の「今日の精神医学豆知識!」(691)-(695)
皆様、こんにちは。
鹿冶梟介(かやほうすけ)です😆
GWも後半に突入しましたね!
皆様も行楽に出かけたり、長めの休暇を楽しんでいることでしょう。
4連休もあれば小生も旅行等に出かけたいところなのですが、休みのほぼ真ん中でオンコールが入っているため、遠出はできません... ...😖(というか、今日から明日の朝までオンコール)
とはいえ、息子がGW後半に帰省してくれたので、連休中は大学生活の感想を聞いたり、家族で食事行ったりしようと思います🍽️
話は変わりますが、女優の広末涼子氏が双極性障害であることをカミングアウトされましたね。
人気商売である女優が、精神疾患を公表することには大きな勇気が必要なことだと思います。
また今回の公表は、同じく双極性障害を抱えている方々にとっても、大きな啓発や励ましになったのではないでしょうか。
双極性障害は、日本における生涯有病率が0.8%であり、比較的ありふれた精神疾患のひとつです。
もしご自身の気分の"浮き沈み"が激しいと感じる場合は、一度専門家に相談することをお勧めします。
それにしても、今回の事件については、ちょっとモヤモヤが残ります。
以前のnote記事でも少し触れましたが、警察官が逮捕した被疑者に対して精神障害により自傷他害の危険性があると判断した場合、精神保健および精神障害福祉に関する法律第23条に基づき、ただちに都道府県知事に通報する義務があります。
その後、精神保健指定医による措置診察の結果、"措置該当"と判断された場合には、都道府県知事の権限により被疑者を強制的に指定病院へ入院させる措置がとられます。
おそらく今回のケースでは、広末氏が逮捕された直後に弁護士が介入し、23条通報がなされなかった、あるいは阻止されたのでは...と小生は推測しております。
もし正式に23条通報がなされ、措置診察が行われていれば、高速道路での事故や病院での暴力行為を考慮し、「措置該当」と判断されるのが一般的な流れだったのではないでしょうか。
広末涼子さんのカミングアウトを美談として受け止める方もいらっしゃるかと思いますが、本件には、明らかに「有名人であるがゆえの忖度」があったのではないかと感じています。
私が言いたいのは、「精神疾患を抱えた女優が事件を起こした」ということよりも、「有名人であれば措置入院を免れ得る」という構図こそが、注目すべきポイントだと思います。
… …そうした理由から、この事件の結末について、私の中ではどうしても「アンフェアさ」が払拭できません。
メタル君の「今日の精神医学豆知識!」は、X(旧: twitter)で毎朝8時にアップしております。
X(旧: twitter)民の皆様も、X(旧: twitter)では語りきれなかった【メタルのおまけ】がございますので、ご興味があれば本記事を是非お読みください!
【今日の精神医学豆知識集!(その139)】
691.抗NMDA受容体脳炎って知っている?主に卵巣腫瘍に随伴する傍腫瘍性脳炎で精神症状(幻覚妄想、抑鬱)、痙攣、記銘力障害、意識障害、中枢性低換気を呈する自己免疫疾患だよ。若年女性に発病しやすいから統合失調症との鑑別が重要だね。
【メタルのおまけ】
抗NMDA受容体脳炎は比較的最近に提唱された概念だけど、それより前から傍腫瘍性神経症候群(paraneoplastic neurologic syndrome)という概念は存在したよ。これはガン患者さんに生じる自己免疫によって生じる神経症状のことなんだけど、特に大脳辺縁系に脳炎が起こることがよく報告されていたよ。抗NMDA抗体だけでなく、Hu/Ma2/CRMP5/アンフィフィジンなんかに対する抗体が検出されたよ。ちなみに男性の場合は精巣腫瘍に伴うものも報告があるよ。
↓この映画はヒロインが抗NMDA受容体脳炎に罹患する話だそうです。
692.昨日ちょっと触れたけど抗NMDA受容体脳炎の特徴として、急速進行性の統合失調症様症状があるよ。Dalmau Jらが100例の抗NMDA受容体脳炎を調べたんだけど、実に84%もの患者さんが統合失調症様の症状を呈したよ。
【メタルのおまけ】
これらの知見から「統合失調症は自己免疫疾患」という仮説が生まれたけど、結局抗NMDA抗体受容体脳炎自体は極めて稀だから統合失調症=自己免疫疾患という説はその後廃れることになるよ。とは言え、脳内のミクログリア細胞の活性と統合失調症の関係が指摘されていることから、微小環境における炎症反応は統合失調症と何らかの関係はありそうだね。
↓これも抗NMDA抗体受容体脳炎をテーマにした映画です。
693.Dalmau Jらの報告から「統合失調症と診断されたケースの中に抗NMDA受容体脳炎が含まれているかも?」という疑問が生まれ、イギリスの研究チームが実際に調査したところ115名の統合失調症患者さんのうち約8%が抗NMDA受容体陽性だったそうだよ。
【メタルのおまけ】
以後、類似の研究は様々な国で報告されたけど、結局統合失調症患者さんの抗NMDA抗体を持つケースはそれほど多くは無かったみたいだよ。10年ほど前の論文では、大うつ病患者さんの2.9%、境界性パーソナリティ障害で0%、健常者では0.4%に抗NMDA抗体がみつかったよ。
↓これはオカルト映画ですが、症状は抗NMDA抗体受容体脳炎っぽいです。
694.抗NMDA受容体脳炎の治療は、ステロイドパルス療法、血漿交換、免疫グロブリン大量療法が推奨されているよ。それから卵巣腫瘍などの腫瘍を合併している場合はその腫瘍を摘出することで症状が軽減することがあるよ。
【メタルのおまけ】
治療の第一選択がいずれも有効でない場合は、第二選択としてシクロホスファミドやリツキシマブなどの免疫抑制剤を使用するよ。ただしこの治療法については海外での臨床結果であって、日本では未承認の治療法なんだよね。日本ではなかなか薬剤使用の承認がおりないから、もう少しスムーズに使えるようにするべきと個人的には思うよ。
↓3年前の医学雑誌「Brain and Nerve」で、この映画も抗NMDA受容体脳炎では…、と指摘されていました。
695.統合失調症においては抗NMDA受容体抗体だけでなく、シナプスなどに対する自己抗体も同定されているよ。ひょっとすると免疫抑制療法によって統合失調症の一部が治療できるかもしれないね。
【メタルのおまけ】
抗NMDA受容体脳炎の発見は、統合失調症の自己免疫疾患説を生んだよ。実際、統合失調症患者さんの脳では炎症関連細胞のミクログリアが活性化しているからね。この知見から10年ほど前には統合失調症患者さんに、様々な抗炎症剤を投与して症状の変化を調べることが流行ったけど、結果はいま一つだったんだよね...。それでも今後の研究に期待したいね。
↓ずいぶん前ですが映画「エクソシスト」を考察したnote記事です。是非、ご高覧を!精神医学ネタが満載なので、お勧めですよ!
【メタル君の考察】
今回は「抗NMDA受容体脳炎」に関係する精神医学ネタをツイートしたよ!臨床象は精神症異常や行動異常が顕著だから、精神科に紹介されるケースもあるよ。だけど、つぶさに観察すると、てんかん、意識障害、呼吸障害、ミオクローヌスなど神経疾患らしさを伴うから、あわてて神経内科にコンサルトすることもあるんだよね。
精神症状のみで統合失調症と区別することはむずかしいけど、けいれん発作や呼吸障害を伴う急性精神病症状の患者さんを診たら、抗NMDA受容体脳炎を意識すべきだと思うね。
これからもマニアックな精神医学ネタをビシバシ紹介するぞ😆
↓このマグカップ、イカす!
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— 精神科医・鹿冶梟介(かやほうすけ) (@kayahosuke) March 22, 2022
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