システムの発展法則【技術の変化を予測する】
新しい価値をつくるビジネス(事業)を成功させるためには、技術の変化を予測することが必要です。
どうすれば、そんなことができるでしょうか?
技術の発展には法則があります。その法則を使えば、「技術の変化を予測する」ことが可能になります。
その法則の1つがシステムの発展法則です。
「システムの発展法則」を使って、技術の変化が予測できれば、製品・サービスの企画や研究開発を優位に進めることができます。
この記事では「システムの発展法則」をわかりやすく解説します。
システムの発展法則
TRIZ(発明問題の解決理論)では、世界中の特許の分析や、さまざまな分野(技術、ビジネス、芸術など)の研究が行われました。
※TRIZについては、記事の最後の「TRIZとは」をご覧ください。
その結果、「技術の発展には法則がある」ことが発見されました。技術システム(技術を用いたシステム)は、次の2つの法則に従います。
システムの基本法則:システムの成り立ちについての法則
システムの発展法則:システムの発展のしかたについての法則
この記事では「システムの発展法則」として次の3つをご紹介します。
発展法則A:理想性の向上
発展法則B:システムの拡張と集約(複雑化と簡略化)
発展法則C:6つの発展パターン
発展法則A:理想性の向上
システムの発展法則Aは次のようになります。
システムは理想性が向上する方向に発展する
システムの発展の度合い(レベル)を表すものとして理想性があります。理想性は、次の式で表すことができます。(参考文献1)

上の式の主要機能とは、システムの目的となる機能です。「何のためのシステムか」を表す機能が主要機能です。

自動車を例に考えましょう。

自動車をシステムとすると、主要機能と対象物を次のように定義することができます。
主要機能:移動する
対象物:人

※自動車の主要機能の対象物には、荷物などもあります。
理想性の式によると、式の分子(主要機能)を大きくし、分母(重量+サイズ+消費エネルギー)を小さくすれば、理想性が向上します。

「理想性が向上する方向にシステムが発展する」というのが、システムの発展法則A(理想性の向上)です。
理想性向上の例
「理想性の向上によりシステムが発展してきた例」として、次の2つを考えましょう。
自動車
家電製品
1.自動車
自動車は、人を「移動する」という主要機能を、「より速く、より多く、より安全に、より快適に」といった形で向上させてきました。その結果、理想性の式の分子は大きくなってきました。

次に、式の分母の「重量+サイズ+消費エネルギー」を考えます。
自動車では、そのシステム自体に対して、「軽量化・小型化・低燃費化・環境への負荷(負担)の軽減」といった対応が行われてきました。
これらの対応により、システムの重量やサイズが小さくなってきました。さらに消費エネルギーも小さくなりました。その結果、理想性の式の分母(重量+サイズ+消費エネルギー)は小さくなってきました。
自動車システムの「理想性の式」の分子と分母の変化を考えました。
自動車システムでは、理想性の式の分子は大きくなっていき、逆に分母は小さくなっていくことで、理想性が向上してきました。

2.家電製品
同じ傾向は家電製品にも見られます。テレビ、ビデオ、エアコン、掃除機といった家電製品では、「高機能化・軽量化・省電力化」が進められてきました。
その結果、理想性の式の分子は大きくなり、逆に分母は小さくなることで、理想性が向上してきました。
このような形で理想性が向上してきた製品が、他にも多くあります。
発展法則B:システムの拡張と集約
システムの発展法則Bは次のようになります。(参考文献2)
技術システムは、次の拡張段階と集約段階を通して発展する
拡張段階:構成要素が増加し、複雑化が進む
集約段階:構成要素が減少し、簡略化が進む

発展法則Bは、次のように表現することもできます。
技術システムは、次の拡張段階と集約段階を通して発展する
拡張段階:システムの主要機能が向上することで発展する
集約段階:主要機能を維持しながら、システムを簡略化することで発展する
拡張と集約のプロセス
「システムの拡張と集約(複雑化と簡略化)」のプロセスは次のようになります。
システムの拡張段階
拡張の限界点
システムの集約段階
1.システムの拡張段階
拡張段階では、システムの主要機能を向上させるために構成要素が増加していきます。
例えばヒゲソリでは、剃り心地を改善するために、刃の枚数を「1枚刃→2枚刃→3枚刃→4枚刃」と増加させていきました。このことにより、肌への負担を減らすことができます。

構成要素が増加し複雑化することで、システムの主要機能が向上していきます。これがシステムの拡張段階です。
※システムの拡張段階については、関連記事で詳しく解説しています。記事の最後の「関連記事」からご覧ください。
構成要素が増加し、主要機能が向上するという拡張にも限界があります。
2.拡張の限界点
ヒゲソリの刃の枚数が、無制限に増加することはないでしょう。
技術システムの構成要素の増加には、その限界点が存在します。その点を越えて構成要素が増加しても効果は大きくならず、逆に効果が落ちてしまいます。システムには、そのような拡張の限界点が存在します。

システムの拡張は、いつまでも続くことはありません。顧客のニーズ、システムへの制約などにより、やがて限界点を迎えることになります。
3.システムの集約段階
限界点を越えた後、システムは集約段階に入ります。
主要機能の向上が市場(顧客)の要求するレベルに達した、または、システムへの制約により、それ以上の拡張ができなくなった後は、主要機能を維持したままで構成要素が減少し簡略化していきます。
集約段階では、このような形で理想性が向上します。そのイメージを表したものが次の図です。

「拡張してから集約する」(複雑化してから簡略化する)という発展プロセスは、多くの技術システムに当てはまります。
しかし発展のしかたをより具体的に見ていくと、いくつかのパターンがあることがTRIZでは発見されています。
最後の発展法則Cは「発展のパターン」を示したものです。
発展法則C:6つの発展パターン
発展パターンには、主に次の6つがあります。(参考文献3、4、5)
細分化
可動性の向上
制御の向上
人手作業の置き換え
ミクロレベルへの移行
システム内の不均一な発展
【注記】
上記の6つのパターンは、アルトシューラ-の書籍や、他のTRIZ専門家の書籍を参考にしてまとめたものです。TRIZの研究では、他のパターンも観察されています。それらは技術進化パターンや技術進化トレンドと呼ばれています。
(注記おわり)
発展パターンについては、関連記事で詳しく解説しています。
記事の最後の「関連記事」からご覧ください。
まとめ
◆システムの発展法則には次の3つがある
発展法則A:理想性の向上
発展法則B:システムの拡張と集約(複雑化と簡略化)
発展法則C:6つの発展パターン
◆発展法則A:理想性の向上
システムは理想性が向上する方向に発展する
◆発展法則B:システムの拡張と集約(複雑化と簡略化)
技術システムは、次の拡張段階と集約段階を通して発展する
拡張段階:構成要素が増加し、複雑化が進む
集約段階:構成要素が減少し、簡略化が進む

◆発展法則C:6つの発展パターン
細分化
可動性の向上
制御の向上
人手作業の置き換え
ミクロレベルへの移行
システム内の不均一な発展
TRIZとは
TRIZとは「発明問題を解決する理論」のことです。
世界中の特許の分析や、さまざまな分野(技術、ビジネス、芸術など)の研究により、つくり上げられてきた問題解決の理論です。
TRIZは、ゲンリック・アルトシューラ-によって創始されました。その後、長い時間をかけて研究開発が続けられ確立されてきた理論です。
関連記事
システムの発展パターン
発展法則A「理想性の向上」と発展法則B「システムの拡張と集約」について詳しく解説した記事です。
「システムの基本法則」についての記事です。
関連書籍
システムの発展パターンや、システムの発展法則について詳しく解説しています。(参考文献2)
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参考文献
Yuri Salamatov『超発明術TRIZ シリーズ5 思想編「創造的問題解決の極意』の「5.4.高度な思考の基礎」
青戸けい『TRIZの世界観【秩序と変化】 Kindle版』の「5章.技術システムの発展法則」
日経メカニカル編集『超発明術TRIZ シリーズ3 テクニック編「図解 40の発明原理」』の「第2章 TRIZ入門」の「5.技術システムの進化」
Darrell Mann『TRIZ 実践と効用 (1) 体系的技術革新』の「第13章 問題解決ツール-技術進化のトレンド」
Yuri Salamatov『超発明術TRIZ シリーズ5 思想編「創造的問題解決の極意』の「9.予期しないことの予測:システムの進化」
