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「やりたいことをやれ」本田宗一郎が自ら語る経営と人生の哲学

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本田宗一郎。ホンダの創業者にして、世界的な自動車メーカーを一代で築き上げた伝説の経営者。この本は体系的な経営論ではなく、日経新聞の一言コラムのような、珠玉の言葉の集まりです。「人生そのものが博打」「資金の足りない部分は知恵と労力で補え」「発見はあっても発明はない」。78年間を生き抜いた技術屋の言葉には、時代を超えた重みがあります。

📖 この本を読むべき人

  • ものづくりに携わるすべての人

  • 起業家・経営者として本質を見つめ直したい人

  • 日本発の世界企業がどう生まれたか知りたい人

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著者プロフィール: 本田宗一郎
1906年(明治39年)、静岡県に生まれる。小学校卒業後、アート商会(東京・自動車修理工場)に入社。1928年、のれん分けして浜松アート商会を設立。自動車修理工として成功するが飽きたらず、東海精機重工業(株)を設立しピストン・リングの製造を行う。1946年、本田技術研究所、1948年、本田技研工業(株)を設立。オートバイ「ドリーム」「スーパーカブ」などを次々に開発。1959年、英国マン島TTレースに初参加。1961年、マン島TTレースで1~5位を独占して完全優勝する。1962年、四輪車に進出。1964年、F1GPに挑戦。1965年、F1メキシコGPで初優勝。1972年、低公害のCVCCエンジン発表。アメリカの排ガス規制法であるマスキー法規制に世界ではじめて合格する。1973年、社長を退任、取締役最高顧問。1989年、日本人として初めてアメリカの自動車殿堂(AHF)入り。1991年、84歳で逝去。

やりたいことをやれ Kindle版

感想

  • ポケットアドバイスのような一言が詰まった本。日経新聞のコラムを読んでいるような感覚で、ノートブックに残したくなる言葉が多い。

  • 気概のある男だと思う。

    • 熱いオヤジという感じ。

    • しかし、その中でも凝り固まった老害みたいな思考ではなく、柔軟な思考を持った人なのだと思った。多分、そういったところが中小企業のオヤジで終わらせず、この人を世界的に有名な経営者にしたのだと思う。

    • 年配にありがちな、年齢が上であれば何が何でも敬え見たいなのはないし、むしろ若者への期待感や若さ・情熱みたいなところを重視している。

    • あとは、エンジニア・技術屋に特徴的な本質に迫る思考が見受けられる。

      • 科学や論理、合理性を大事にする価値観。

      • 便所を借りて、表面的な人との付き合いを避ける。

    • 様々なことに対して執念を感じる。

      • 資金不足は、知恵と労力で補えば良い。

    • 誇りやプライドを感じるところも多い。

    • 人生そのものが博打。

    • 良い人に巡り合うというのは非常に大事だなと思うし、本田さんもそれに恵まれたのだと思う。

  • 過去の偉人の色々な側面を感じる。

    • Steve Jobs

      • 需要は生み出すもの。マーケットリサーチではない。

      • 仏像から得られるデザイン。盗むというところ。

    • ヘンリー・フォード

      • 国家観や社会の発展

      • 資金面や法律面で、国家等の保護を受けるべきではない。

  • 良い言葉・考え方が多かった。

    • モノを作る方と売る方。

    • 技術は礼儀から始まる。

    • 作られたものには魂が現れる。

    • 結局は人柄。

      • 人に恵まれないと難しい。

      • 悪い思想の元には悪い人が集まってくる。

      • 困った時に助けてくれる・知りたいことを教えてくれる人柄。

        • ただ、迷惑をかけてはいけないというところはそうなのかと。

        • 定義はしていないが、迷惑にも色々あるのかなと。

        • インド人が子供に教えている「迷惑をかけても周りに助けてもらえる人になりなさい」

  • 企業の存在意義を考えさせられた。

    • いつ、誰が、どこで受けとめても、なるほどと納得できる思想を持つか持たないかで、企業の生命は決る。妥当かつ普遍的な民族を超えた哲学があれば、その企業は必ず世界へ伸びるといってよい。

    • ここから考えると、会社は存在意義を無くした時に終わるのだと思う。

      • 資金が無くなるのは別に終わりではないのかなと。


輪読会で議論したこと

模倣と創造 - 「本当の発明」は存在するのか

本田宗一郎の「発見はあっても発明はない」という言葉をきっかけに、創造性の本質について議論になりました。シェイクスピアが物語の基本パターンをすべてやりきっている、音楽で気持ちいいと感じるサウンドの組み合わせは何通りかしかない。模倣が全てのものづくりの起点だとすると、本当の意味での「発明」は存在するのか。

図書館の自由宣言を見て『図書館戦争』を思いついた有川浩のように、ありとあらゆるところからアイデアは生まれる。仏像の曲線からバイクのタンクをデザインした本田宗一郎も同じ。骨組みは模倣でも、視点の広さが創造性になる。

教育の本質は「助けてもらえる人間」になること

「教育の本当の目的は勉強ではなく、喜んで何でも教えてくれるような人に囲まれること」という本田の言葉が全員に響きました。知識を得ることより、人にいかに助けてもらえるような人間に育つかの方が、結局その人の人生のアドバンテージになる。人間関係の構築が回り回って一番の近道なのではないか。

同時に「気持ちがよく分かることになることが重要、恋愛したことのある人とない人ではまるで違うと思う」という記述も印象的。人間への興味と共感力が、経営にもものづくりにも通じている。

企業の存在意義——お金がなくなった時ではなく、意義をなくした時に終わる

本田宗一郎の「いつ誰がどこで受け止めても妥当かつ普遍的な哲学があれば、その企業は必ず世界に伸びる」という言葉から、企業の存在意義について議論が深まりました。ユニバーサルな企業はお金儲けではなく、世界に対する問題を解いているかどうかで決まる。会社はお金がなくなった時に終わるのではなく、存在意義をなくした時に終わる。

この視点は、自分たちの事業にもそのまま当てはまる。知識がなくなってしまう問題、それをパブリックにアクセスできるようにすること——80億人の知的資産を守る意義があるかどうか。2050年、2070年にどうなっていたいか。本田宗一郎は70年以上かけて世界企業を作った。自分たちも70年続ければ、という話になりました。

常識を疑う——シルク・ドゥ・ソレイユの逆転発想

本田宗一郎の「常識にとらわれない」姿勢から、水平思考の話に広がりました。シルク・ドゥ・ソレイユの創業者は、当時のサーカスの当たり前を全部書き出して、全部逆にした。動物が出てくる→人だけ、複数演目→1つに絞る。全部逆にしたら斬新なものが生まれた。

本田宗一郎も同じことをしている。資金がない→知恵と労力で補う、国の保護を受ける→受けない方が強くなる。常識を書き出して逆にするという発想法は、横井軍平の「枯れた技術の水平思考」にもつながる。

ファウンダーは頭がおかしい——ダイソンの5127回

次に読む本として『インベンション』(ジェームズ・ダイソン)が選ばれた流れで、ファウンダーの「ネジが飛んでる感」について盛り上がりました。ダイソンは1979年から4年かけて5127回のプロトタイプを作り、1983年にようやくサイクロン掃除機に成功。そこからさらに10年かけて1993年にダイソン社を設立。

5000回失敗しても喜んでやり続ける人間は、成功すれば天才、失敗すればただのヤバい人。日本人の大人に「何回挑戦したことがありますか」と聞くと、平均0.8回——1回もしていない。3〜4年で「うまくいかない」と辞める起業家がいる一方で、50年やり続ける人がいる。やりたいことがある人は相当貴重で、周りを気にせずコミットし続けるべき。本田宗一郎の「やりたいことをやれ」は、そのまま起業家への最大のメッセージです。

漫画編集者とVCは似ている

輪読会メンバーに漫画業界の人がいたことから、編集者と起業家の類似性について議論になりました。漫画家は企業家と似ている。売れるからやる人もいれば、一世一代の思いをかけてやる人もいる。編集者はVCに似ていて、ホームランを狙ってバッターボックスに立つ人を応援し、監督もする。

尾田栄一郎は「魔法使いか忍者か海賊、この3つでしか漫画を描きたくない」と言い切った人。強いこだわりがある人が結局売れる。連載準備中は一切お金が発生しないのに、1年2年かけてネームを練る漫画家の姿は、資金なしで知恵と労力で戦う本田宗一郎と重なります。


引用

資金の足りない分は、知恵と労力で補えばいいのである。

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人間の心を理解し、喜怒哀楽を理解し、不満や希望を知らなければ、大衆に受け入れられる商品を、創造し生産することはできないはずである。

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国の保護を受けたものでいいものは一つもない。結局は、自分が苦労しなけりゃダメなんだ。通産省の保護すれば育つんだ、という考え方はまちがいだと思うな。子どものうちなら保護してもいい。大学を出てからも保護してたら、いいわけがないよ。

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経験が尊重されるためには、その人がその経験を通して、いつ、だれが、どこで考えても納得のできる正しい知識を学びとっているかどうかによる。

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勝負は自分の力でやるべきですよ。私は変なテクニックで商売はしたくないナ。本業で体当たりしたい。

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構想とかアイデアとは、いってみれば魂のようなものだ。自分がつくったものには魂が入ってくる。だから愛着もわいてくる。人間と物質との精神的なつながりというものは、こうして生まれてくるのだ。

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自社ブランドを安売りしちゃダメだ。死守するつもりで、誇りを持たないとね。

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知識というのは、それを使って未来を開拓するのでなければ価値はないのだ。

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だからといって科学は人間の持つ最高の能力であり、いつの時代でも変わることのない正義であり、道徳であることは変わりないはずだ。現代において科学の未熟をとりあげて、科学を否定することは絶対に許されない罪悪である。人間否定であると思う。

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いつ、誰が、どこで受けとめても、なるほどと納得できる思想を持つか持たないかで、企業の生命は決る。妥当かつ普遍的な民族を超えた哲学があれば、その企業は必ず世界へ伸びるといってよい。

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歴史とは、いつわりも真実も、気まぐれや偶然も、すべて時代の流れの中でいろいろなかたちをとりながら伝達されてきた、とても価値の高い情報なのだと思う。

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結局、商売というものは相手を尊ぶことから始まるんだ、というふうに順序立てて説明すれば、分らん人は絶対にないですね。

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発見はあっても発明はない―という言葉がある。一見、独創的に思える発明も、そのどこかに、これまで人類が積み重ねてきた何千年という時間や知恵が生かされているからである。

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そのためには経営者、人の上に立つものは人を見る目、見抜く力を持たねばならない。ここが大事なところですね。そしてその場合、その人の学歴、経歴などの過去の既成観念にとらわれ、能力を想定してしまわないように、私は極力努力した。あくまで現時点、将来にわたってその人がどういう能力を発揮しうるか、という観点のみから人を見るように心掛けてきました。

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スピードを否定する人間は敗北者だと思います。

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