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ナチスの迫害を逃れた少年がインテルを作るまで|グローブ自伝レビュー

ホロコーストを生き延びたハンガリーのユダヤ人少年が、難民としてアメリカに渡り、やがてインテルを率いる経営者になる。アンドリュー・グローブの自伝『Swimming Across』は、インテル創業の話ではなく、それ以前——戦争、共産主義、亡命という激動の半生を描いた一冊です。

📖 この本を読むべき人

  • シリコンバレーの伝説的経営者の原点を知りたい人

  • ホロコーストやハンガリー動乱の実体験に興味がある人

  • 「失うものが何もない」人間の本気度を感じたい人

著者プロフィール: アンドリュー・S・グローブ
インテルの3番目の社員で第3代CEOを務め、同社を世界最大の半導体企業に成長させた。インテルでの仕事、著書や専門的な論文の結果、グローブは世界中の電子機器製造業界に多大な影響を与えた。彼はシリコンバレーの「成長期を牽引した人物」と呼ばれている。 1997年、『タイム』誌は彼を「マイクロチップのパワーと革新的な可能性の驚異的な成長に最も貢献した人物」として「マン・オブ・ザ・イヤー」に選んだ。ある情報筋は、インテルでの業績だけで、彼は「20世紀の偉大なビジネスリーダーと並ぶに値する」と指摘している。

アンドルー・グローヴ - Wikipedia

感想

  • アンネ・フランクを思い出す。

    • 家が爆撃されている。

    • 父親が捕虜になっている。

    • 本人は無事だけど、何回か名前を変えている。

    • ハンガリー出身の起業家は初めてかも。

    • 第二次世界大戦とハンガリー動乱を経験している。

  • 性格・キャラクター

    • 小さい頃、死にかける経験。

      • 片耳がほとんど聞こえない。

    • 学校では常に元気と評価される。

    • 幼少期は太っている。プフィと呼ばれる。

    • 父親が革命の前までは、お金を稼いでいた人だった。

    • イタズラ好き。

    • 幼少期の学業成績は良い。

    • ファウンダーとしての性質を感じる。

    • 幼少期は英語を学習させる。

    • ピアノを習わせる。

  • 大学

    • 化学を専攻。

    • ニトログリセリンを作る。

    • 化学物質を当てる課題で、4つの物質を全て当てる。授業で初の出来事だったらしい。

  • アメリカ亡命

    • 割と簡単に行けたのがびっくり。

      • ただ、難民を助ける団体に自分から行ったのはすごい。

    • アメリカの常識が全然違う。

    • 名前は自由に変えていい。変えるためには名乗ること。

  • インテル創業の話

    • インテル創業の話は全く出てこない。

    • シリコンバレーの歴史も全く出てこない。

    • なので、この続きを読んでみたい。

  • アンドリュー・グローブというと、インテルやシリコンバレーのレジェンドというイメージだったけど、この本はインテル創業の話が全く出てこない。企業までの話が書かれていなくて、大学院あたりで終わる。正直、肩透かし感はありました。


輪読会で議論したこと

インテル創業の話がない——消化不良感

全員が口を揃えて言ったのが「インテルの話が出てこない」ということ。グローブといえばインテル、半導体、シリコンバレーのレジェンド。当然その創業ストーリーを期待して読んだのに、大学院あたりで終わってしまう。ムーアの法則のことも、共同創業者のことも、ほぼ触れられていない。

おそらくグローブ自身は「インテル以降は様々なところで語ってきたから、誰も知らない幼少期にフォーカスした」のだと思う。しかし我々の世代にとっては、インテルの話こそ知らない。レスト・イズ・ヒストリーと言われても、その「ヒストリー」の方も知らないんだという話になり、次の輪読会で『パラノイアだけが生き残る』を読むことに即決しました。

アンネの日記、夜と霧、そしてグローブ自伝——ホロコースト3部作

冒頭の戦争描写を読んで、全員が「アンネの日記だ」と感じていました。さらに、輪読会でこれまでに読んだ『夜と霧』(ヴィクトール・フランクル)と合わせると、ホロコースト関連の本を3冊読んだことになる。アンネは死んでしまった側、フランクルはアウシュヴィッツを生き延びた側、グローブはハンガリーで迫害を逃れた側。それぞれ違う立場からの記録です。

そして改めて思うのは、残っているストーリーはほんの一部でしかないということ。ホロコーストで600万人が亡くなったと言われる中で、語り継がれている物語はごくわずか。数えきれないほどのストーリーが、語られることなく消えていった。

ユダヤ人のマインドセット——攻められる前に攻めろ

ホロコーストの話から、ユダヤ人の歴史的なマインドセットについて議論が広がりました。「民族が消滅するかもしれない」という経験をしてきた人々は、「攻められる前に攻めろ」という信念を持っているという話。予防的先制攻撃という考え方は、現在のイスラエルの行動にもつながるのかもしれない。

また、ユダヤ人が不動産などの固定資産より知識に投資する傾向があるのも、「国がなくなったら不動産は終わり。でも頭の中の知識は奪われない」という歴史的な教訓から来ているという指摘も出ました。金融業界をユダヤ人が牛耳っているのも、元は「金貸し」が卑しい職業とされていた時代にそれしかできなかったから。歴史の皮肉です。

死にかけた経験が人を変える——ファウンダーの本気度

グローブの人生を見ていると、死にかけた経験がその後の本気度に直結しているのがわかる。戦争、病気、難民。失うものが何もない状態から這い上がってきた人間と、ぬるいお湯に浸かっている人間では、緊張感が違う。

自らチャンスにアクセスしに行く力——難民を救済する団体に自分から行く、アメリカ行きの選抜に無理やり入り込む——が印象的でした。『自助論』にも書いてあるけど、「自らを助けるものにチャンスはやってくる」というのは、とりわけアメリカで強く感じる。待っていてはダメで、自分からアクセスしないといけない。

グローブの不思議な理性——キスの後に病原菌を心配する人

自伝は普通、主観的で感情的になりがちなのに、グローブの文章はやけに理性的。口を開けてキスを待っている女の子に対して「なんで口を開けているんだ」と疑問に思う。初めてのキスの後に「どんな病原菌が移ったのだろうか」と考え、「猛烈な勢いで口をすすいだ」と書く。

女の子への興味はすごくあるのに、付き合った経験がないとも書いている。科学者的なバックグラウンドが、恋愛にまで適用されているような不思議さ。この感覚は輪読会メンバー全員が「この人、わからない」と笑ったポイントでした。

共産主義下のハンガリー——名前も通りも変えられる世界

グローブの半生で最も異質に感じたのは、共産主義下のハンガリーの描写でした。名前を変えられる、通りの名前も変えられる、経営者の家庭というだけで身分が低くされる。バスが橋から落ちて乗客が死んでも新聞には載らず、代わりにそれを揶揄した歌が民間で広まる。情報が規制された社会のリアルな姿が、企業ストーリーよりもむしろ面白かったという声もありました。


引用

ユダヤ人には、フライシャー、シュヴァルツ、クラインのようにドイツ語の名前が多かったが、私たちの名前は非ユダヤ人の名前となんら変わりはなかった。「グローフ」とはハンガリー語で「伯爵」の意味である。家族に伝わる話によると、ハンガリーの伯爵の領地を管理していた先祖がいて、その先祖がいつのまにか「あの伯爵の」と呼ばれるようになったことに由来するらしい。

僕の起業は亡命から始まった!―アンドリュー・グローブ半生の自伝

唯一嫌いな科目は宗教で、これだけはどうしても好きになれなかった。宗教はおとぎ話と同類にしか思えなかったし、そんなものに耳を傾け、信じなければならないことが腹立たしくて仕方なかったのである。

僕の起業は亡命から始まった!―アンドリュー・グローブ半生の自伝

私のもう一つの夢は、作家になることだった。私には、たまに思い出したように発作的に読書をする癖があった。たくさん本を読む時期もあれば、まったく読まない時期もあったのだ。この突然読書に走る癖は、いつも、大きな感動を与える作家の発見が引き金となった。カール・マイはその一人だし、ジュール・ヴェルヌもそうだった。

僕の起業は亡命から始まった!―アンドリュー・グローブ半生の自伝

それから、何かが起こることを待った。数日後、何かが起こった。ハンガリー文学の授業のはじめに、テレグディ先生がいつものぎこちない姿勢をとり、咳払いをしてから、来週の文学同好会で大変すばらしいことが起こるだろうと言ったのだ。そして、ある生徒が匿名でとても興味深い物語を提出したので、クラス全員でその朗読を聞きにくるべきだと言うのである。そんな招待は、きわめて異例のことだった。

僕の起業は亡命から始まった!―アンドリュー・グローブ半生の自伝

なかには、この分析実験を単調で嫌だという学生もいたが、私は大好きだったし、得意でもあった。家で実験の真似事をいろいろやっていたことが少しは役立ったのかもしれない。とりわけ、たとえばある実験である結果が得られ、別の実験で別の結果が得られた場合、問題の化合物はXになるはずだということを演繹的に解くプロセスが好きだった。

僕の起業は亡命から始まった!―アンドリュー・グローブ半生の自伝

私には、自分の無機化学の理解力についてハイリスクな選択をするだけの自信があった。数段階を経たあと、私は念入りにメモをとりながら所定の流れから離れ、自分からみて理にかなっていると思われる方向に舵をとった。最初は急速な進歩を遂げた。いくつかの化合物を検出し、不適当なほかの数多くを消去した。やがて状況は厳しくなった。実験を何度重ねても新しい情報が全然得られなくなったのである。

僕の起業は亡命から始まった!―アンドリュー・グローブ半生の自伝

摩天楼のまっただ中にいたのだ。私は無言のまま、それらをじっと見上げていた。摩天楼は写真で見たアメリカそのままだった。突然、自分は本当にアメリカにいるんだという実感がわき起こった。私にとって摩天楼こそがアメリカの象徴だったからである。いま自分は通りに立ち、首を伸ばしてそれを見上げているのだ。それは同時に、自分が、故郷から、あるいはかつて故郷だったところから、信じられないほど遠くにいるということでもあった。

僕の起業は亡命から始まった!―アンドリュー・グローブ半生の自伝

コロドニー教授はまたちょっと考え込んで、「もしかしたら、君はカリフォルニアヘ移ったほうがいいかもしれないね。アメリカで君の言うような場所に一番近いところといったら、サンフランシスコしかないだろう」と言った。

僕の起業は亡命から始まった!―アンドリュー・グローブ半生の自伝

さて、ではどうやったら自分の名前を正式に変えられるのだろうか。驚いたことに、必要なのは新しい名前を使いはじめることだけだと言われた。私が晴れてアメリカ市民になったときに、名前は正式に変更される。でも、それまではどんな書類も必要ない。ただ、新しい名前を使うことに徹すればいい、というのである。アメリカには相変わらず驚かされるばかりだ。

僕の起業は亡命から始まった!―アンドリュー・グローブ半生の自伝

サンフランシスコの北側のトンネルを通り抜け、さんさんと降り注ぐ陽光を浴びてきらめくこの都市を見た瞬間、私はサンフランシスコ湾岸地区に恋をした。すべてがコロドニー教授の言ったとおりだった。美しい街、やさしい街。ここが故郷になった。私は以来ずっとこの湾岸地区に住んでいる。

僕の起業は亡命から始まった!―アンドリュー・グローブ半生の自伝

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