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Netflix実写化で話題|中国発SF『三体』はなぜ世界を熱狂させたか

著者プロフィール: 劉 慈欣
劉慈欣(りゅう じきん、リウ・ツーシン、1963年6月23日 - )は、中華人民共和国のSF作家。北京で生まれ、3歳の時に山西省の炭鉱の町、陽泉に移り住んだ。本業はエンジニアで、発電所のコンピュータ管理を担当している。
中学生のころから創作を開始。1999年、中国のSF雑誌『科幻世界(中国語版)』でデビュー。その後、銀河賞に連続して入選。2010年、第1回中国星雲賞(世界華人SF協会主催)で作家賞を受賞(韓松と同時受賞)。2015年、アジア人初のヒューゴー賞受賞者となった。

劉慈欣 - Wikipedia

文化大革命で父を失った天体物理学者・葉文潔が、絶望の果てに宇宙へ向けて送った一通の信号。それが地球から4光年先の三体文明に届いたとき、人類の運命は静かに書き換えられ始めた。中国のSF作家・劉慈欣が描く壮大な宇宙SFは、アジア人作家として初めてヒューゴー賞を受賞し、Netflix実写化で世界的な話題を呼んでいます。

この本を読むべき人:

  • Netflix版を観て原作が気になっている人

  • ハードSFの世界観にどっぷり浸りたい人

  • 中国の文化大革命という歴史背景に興味がある人


登場人物 (Wikipediaからの引用)

  • 葉文潔

    • 清華大学物理学部の天体物理学の教授で、2004年に退職した。楊冬の母親。

    • 1967年、文化大革命の批判闘争で、父親が紅衛兵によって殴打されて死亡するのを目の当たりにした。その後、大興安嶺での労働に下放され、生産建設兵団の『大生産報』の記者である白沐霖に『沈黙の春』を巡る問題で陥れられ投獄されるが、専門的な知識のおかげで罰を免れ、楊衛寧と雷志成の仲介で「紅岸基地」に入った。

    • 紅岸基地では、地球外文明を探索する極秘プロジェクトに携わった。1971年、彼女は偶然にも太陽が電波を増幅して反射する機能を発見し、太陽を介して宇宙空間に地球の情報を信号にのせて送信した。

    • 彼女は最初の宇宙への信号送信の直後に楊衛寧と結婚し、返信を受け取った後に妊娠し、娘の楊冬を出産した。しかし、三体文明からの返信の存在が雷志成に知られてしまったため、彼女は秘密を守るために雷志成を暗殺することを決意し、機会を捉えて夫の楊衛寧と共に殺害した。2年後、彼女は紅岸基地を離れ、清華大学に戻った。また、地球三体協会を設立したマイク・エヴァンズに請われ、その精神的な統率者となった。

  • 史強

    • 対テロ専門家の警官。かつて中越戦争に参加した経験を持つ退役軍人。行動は粗野だが、勇敢で細心の注意を払い、柔軟な発想を持つ。少将の常偉思が主宰する、軍警の垣根を越えて中央情報局(CIA)のメンバーはじめ世界各国の組織も参加する地球防衛安全保障局に派遣され、その会議に参加する。汪淼や丁儀とともに科学者の自殺事件の捜査を行う。

  • 紹琳

    • 清華大学の物理学教授であり、葉文潔の母。彼女の父親はアインシュタインが中国を訪れた際に同行者の一人であり、アインシュタインと短い交流を持った。文化大革命の時には夫である葉哲泰を告発し、批判に参加して彼を死に至らしめた。

  • 楊冬

    • 物理学者。葉文潔と楊衛寧の娘であり、丁儀の恋人。1979年生まれ。高校時代には羅輯と同級生。

    • 2007年、物理学への絶望から、「物理学は存在しなかった」という遺書を残して自殺した。

    • 後の調査で、三体から送られてきた智子が加速器の実験を阻害していたこと、そもそも三体との関わりの起源が母、葉文潔の行為にあった事を知って絶望したことが明らかになった。

  • 丁儀

    • 物理学者であり、楊冬の恋人。ラフな身形で酒を好むが、口調は丁寧で非常に才能がある。球状閃雷の研究で巨大原子を発見し、世界的に有名になった。

  • 雷志成

    • 紅岸基地の政治委員で、天体物理学専攻出身であり、政治委員の中でも数少ない知識人である。紅岸基地の運営に力を尽くした。

    • 葉文潔を紅岸基地に入れることに慎重で、基地内での彼女の活動や研究を厳しく制限する一方で、彼は政治的な地位向上のために葉文潔の研究成果を自らのものとして利用しようとした。

    • 葉文潔が三体文明からの返信を隠蔽した際、彼は密かに制御コンピューター上でバックグラウンドで動かしていた監視プログラムによって葉文潔の行動を察知したが、そのために葉文潔によって口封じされた。

  • マイク・エヴァンズ

    • 地球三体協会の実際の創設者であり、父親は富豪であった。

    • 「種の共産主義」の支持者。地球の生物の種を分け隔てなく平等に扱うべきで、人類が欲望に任せて他の生物を抑圧することを嫌悪する。中国北西部で自然保護活動を行っていたとき、電波天文台の立地調査のためにやってきた葉文潔と知り合う。彼は、人類が欲望のために環境を破壊する行為を強く非難し、これに共感した葉文潔が、地球を救う手段を提供すべく三体文明に関するすべてを彼に打ち明けた。その存在が確認された後、彼は三体文明を地球に招き入れるために、受け継いだ莫大な財産をもとに地球三体協会を設立し、葉文潔を協会の最高指導者に任命する。

    • その資力を用いて6万トン級タンカーを入手し、生活環境と、三体と通信する大型パラボラアンテナを具える大型船 "JUDGEMENT DAY"(「審判の日」号)に改造し、地球三体協会の本拠地「第二紅岸基地」とした。

    • 地球三体協会では「降臨派」の指導者であり、彼が三体文明との対話を主に担当し、2007年に地球に到着した智子を介して三体文明とリアルタイムで情報交換を行なう。その情報は「降臨派」で独占した。

    • 「古筝作戦」で死亡した。

  • 1379号監視員

    • 最新の三体文明が宇宙に他文明からの電波を求めて多数設置した観測ステーションの一つである1379号監視ステーションで電波監視などを行う監視員。葉文潔が発信した地球の情報を受信して、たった一つの恒星を巡り永遠に恒紀が続く豊かな水に恵まれ生命に富み作物が良く採れる夢のような楽園が存在することを知るが、一方で三体文明に絶望し、三体によって地球が蹂躙されるのを望まず、太陽系の座標を知る手がかりとなる返信をしないよう『不要回答』(応答するな)のメッセージを地球に送る。この行為は三体文明に対する裏切りで、強制脱水したうえで線維化した肉体を焼却する刑死が当然のところだが、元首によって刑を免除され、地球文明が滅ぶのをその目で見て絶望する様に仕向けられる。

  • 元首

    • 最新の三体文明の現在の最高指導者。感情というものを持たず、葉文潔からの情報で移住先が見つかって喜ぶこともなく1379号監視員の裏切り行為に激怒することもない。淡々と粛々と三体文明の存続の為に戦略を練り星間艦隊の建造と地球出征を指示し、また、地球の科学技術が発達して三体を上回るのを妨げるべく智子計画を遂行し、製造された智子を地球に送り込んで物質研究を阻害し、地球社会に混乱をひきおこして地球の力を削ぐ。一方で1379号監視員の如き「軟弱」な思想が三体に広まらぬよう地球に関する情報の統制も行う。

引用元:三体シリーズの登場人物 Wikipedia


感想

「三体問題」から壮大な物語を組み立てる発想力

天体力学の三体問題——3つの天体が互いに引力を及ぼし合うとき、その運動は予測不可能になるという問題。ここからこれほどのスケールの物語を構築できるのがすごい。劉慈欣がなぜこの着想に至ったのか、過去にどんな作品を書いてきたのか気になりました。

文化大革命から始まる意外性

SFでありながら、物語の起点が文化大革命という現実の歴史であることに驚きました。父を目の前で殺され、人類への絶望から地球外文明を招き入れる決断をしてしまう葉文潔。「現世に絶望していると、そうなるのかもしれない」という感想が出ました。よくこれが中国国内で出版できたなとも思います。

1巻は導入で、本番は2巻以降

正直、1巻だけ読んでの感想は「まだよくわからない」というのが率直なところ。内容はなんとなくわかるけど、そこまで熱狂するほど面白いかはまだ判断できない。2巻・3巻が本当に面白いという評判を聞くと、1巻はあくまで壮大な物語の導入に過ぎないのだと感じます。

既存SFとの共通点

読んでいて『月は無慈悲な夜の女王』(ハインライン)に近い味を感じました。また、『朝暗くの陽電気の終わり』や『タイタンの幼女』のパターンとも重なるところがあり、SFの宇宙系作品のパターンはかなり出尽くしているのではないかという疑問も浮かびました。


輪読会で議論したこと

本で読むか、映像で観るか - 想像力とAIの話

Netflixドラマ版を観たメンバーと、本だけで読んだメンバーがいて、メディアの違いが議論になりました。

ドラマ版では、ナノファイバーで船を切断する「古箏(グーチン)作戦」のシーンや、三体ゲーム内のビジュアル、脱水と復活の映像が圧倒的に鮮明。一方、本ではシーンの転換が早く、兵隊を使って演算するシーンなど、文章だけだとイメージしにくい箇所もある。

ただ、ここで面白い指摘が出ました。「映像を見ちゃったらそれが全てになる。本で読むと自分で想像する力が鍛えられる。これってChatGPTを使いすぎてIQが下がるという話に近いのでは?」。前回のパラノイアの輪読会で議論した「人類の知的体力」の話題と、意外なところでつながりました。

4光年先の文明に、なぜ気づかなかったのか?

輪読会で最も盛り上がった疑問がこれです。三体文明はケンタウルス座アルファ星系にあり、地球からわずか4光年。宇宙のスケールで言えば「隣の家」のようなもの。ある程度の技術を持った文明が、一番近い恒星系の生命を見逃すものだろうか?

惑星に大気や酸素があるかどうかは、光の波長の変化で観測できるはず。「真っ先に見るでしょう、一番近いんだから」という指摘に、全員が納得しました。ここには何か伏線があるのではないか。「実は守られていたのでは」「それがバレた瞬間が、物語の起点なのでは」という推測が出ました。

言語も知らないのに、なぜ通信できるのか

もう一つの疑問は、三体文明と地球人のコミュニケーション。言語体系も全く違うはずなのに、翻訳が成立している。しかも三体人は人類と似たような形態で、脳と脳で直接コミュニケーションを取る。「できすぎている」という違和感がありました。

ここから出た仮説が面白い。「実は人類の文明は過去何十億年の間に何周もしていて、前の世代の人類と三体文明は既に接触済みだった説」。実は初見ではなかったから通信が成立するのだと考えると、つじつまが合うかもしれません。

結末予想 - ゲーム世界が鍵になるのでは?

1巻の情報だけで結末を予想するという無謀な試みも行いました。

出た仮説の一つは「三体ゲームが実は現実とつながっている」というもの。三体人が作ったと言われているゲームが、実はもっと上位の存在が作ったもので、三体人自身もゲームを解ききれていない。人類がゲームの中でシンギュラリティを起こし、そこから三体文明への攻撃手段を見つける - 漫画編集者のメンバーからは「全人類が巻物(脱水状態)になって次の世代に託し、ゲーム世界に知性を集中させて戦う」という大胆な予想も。

もう一つの仮説は、三体問題そのものが解かれる可能性。初期値が決まれば安定的に回る解が8箇所あるという話が本にあり、実はそこに持っていく方法があるのでは。三体問題が解かれれば両文明が生き残る道が開ける 。ただし、これだと「三体」というタイトル自体がミスリードになるかもしれません。

果たしてこれらの予想は当たるのか。2巻以降で答え合わせをしていきます。

SF小説に限界はあるのか

三体をきっかけに、SF小説というジャンルの未来についても議論になりました。宇宙系のパターンはかなり出尽くしている印象がある。5万人もの作家がSFを様々な角度から書いてきた中で、本当にユニークな「ワットイフ」はまだ残っているのだろうか。

一方で、「設定がユニークでリアリティに沿っていれば、いくらでも作れる」という意見も。火星でジャガイモを育てて生還する話(プロジェクト・ヘイル・メアリー)や、アメリカの内戦を描くシビルウォーのように、現実感のあるSFには可能性がある。ドラえもんが毎週新しい話を作り続けた藤子・F・不二雄の「SFはちょっと不思議のSF」という定義を思い出すと、SFの射程は宇宙だけに限らないのかもしれません。


引用

人類社会に三体文化を広める主要ルートは、VRゲーム『三体』である。この巨大なソフトウェアは、ETOが莫大な資金をつぎこんで開発したもので、当初の目的は二つあった。ひとつは三体教を布教すること。もうひとつは、それまで知識階級に限定されていたETOメンバーの階層をもっと広げるべく、社会の中下層にいる若者をリクルートすることだった。

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太陽のガス層とわれわれの惑星の大気とのあいだに、特殊な光学的相互作用があることは、まだ発見されていないようですね。これは、偏光もしくは、相互に弱め合う干渉作用に似た現象です。その結果、われわれが太陽を大気圏内から観察しているとき、太陽がある距離に達すると、ガス層がとつぜん透明になり、太陽の中心核しか見えなくなるのです。このとき、われわれが見ている太陽は、いきなり中心核サイズまで小さくなる。これが飛星です。

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この現象が、歴史上のあらゆる文明の研究者たちを混乱させ、彼らが三つの太陽の存在に気づくことを阻んできました。なぜ三つの飛星の出現が長い厳寒期の到来の先触れとなるのか、これでおわかりでしょう。それは、このとき、三つの太陽すべてが遠くにあるから

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メソッドはシンプルだが、モンテカルロ法は、ランダムな総当たり攻撃が正確なロジックを凌駕しうることを示している。量を質に変える、数的なアプローチだ。これが、三体問題を解くためのぼくの戦略だよ。時間経過に沿って三体の状態を観察すると、それぞれの瞬間ごとに、三つの球の運動ベクトルには無限の組み合わせがある。その組み合わせを一種の生物のようなものと見なす。

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「まず注意しておくべきことがひとつ。三体文明は、アルファ・ケンタウリから四光年離れた地球めがけて二つの陽子を発射し、それが二つとも目標に到達した! とても信じられない正確さだ。四光年のあいだには、星間物質の塵をはじめ、無数の障害物がある。それに、太陽系も地球も動いている。この部屋にいる一匹の蚊を冥王星から射ち落とす以上の正確性が必要だ。射撃手の腕前は、想像を絶している!」

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「おまえが憧れるようなタイプの文明は、かつて三体世界にも存在したことがある。彼らは民主的で自由な社会を築き、豊かな文化遺産を残した。おまえたちはそれについてほとんどなにも知らない。彼らの文化のほとんどは封印され、閲覧を禁止されているからだ。三体文明の全サイクルの中で、そういうタイプの文明がもっとも脆弱で、もっとも短命だった。それほど大きくもない乱紀の天災ひとつであっさり滅亡した。おまえが救いたいと願う地球文明を見るがいい。あの永遠の春のような美しい温室で甘やかされて育った社会が、もし三体世界に移植されたら、百万時間も生き延びられまい」

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