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【ラジオ深夜便4時台】桐野夏生が語る創作と喪失感 (No.8)



今回の放送ハイライトまとめ

  • 桐野夏生:23年ぶりに探偵・村野ミロを復活させた理由を語る。親しい友人の死が創作の原動力に。

  • 日本ペンクラブ:女性初の会長として表現の自由と平和を守る活動。P.E.N.は詩人・編集者・小説家の頭文字。

  • 染谷将太:大河ドラマ『べらぼう』で歌麿役。毎日筆を執る役作りで「筆力」を体得。


札幌の冬、ラジオ深夜便と過ごす夜明け前

冬の早朝、雪に覆われた窓の外を背景に、和室でストーブが柔らかく灯り、テーブルの上には湯気の立つグラスが置かれている様子。
札幌の夜明け前、ストーブの温もりとラジオの声に包まれる静寂の時間


ラジオ深夜便を聴きながら、夜明け前の静けさに身を委ねていた。

札幌の12月は、朝の4時といえばまだ真っ暗だ。窓の外は静寂そのもので、時折、除雪車の遠い音だけが聞こえてくる。ストーブの前で焼酎のお湯割りを片手に、五藤茂義アナウンサーの落ち着いた声に耳を傾けていると、不思議と心が鎮まっていく。

最近、AIの勉強なんかを始めてみて、生成される文章の滑らかさには驚かされるのだが、やはり人間の声というのは、どこか違う。いや、決定的に違うのだ。言葉の隙間にある「間」や、語り手の息遣いまで伝わってくるような感覚は、機械には出せないものだ。

桐野夏生が23年ぶりに村野ミロを復活させた理由

机に積まれた本とタイプライターに囲まれ、熟年の女性が静かに原稿へ向き合っている室内の情景。
喪失と記憶を紡ぐ作家の静かな決意


この日のメインゲストは、作家の桐野夏生さんだった。

正直に言うと、私は桐野さんの小説をそれほど熱心に読んできたわけではない。だが、ラジオから流れてくる彼女の声には、どこか凛とした強さがあって、思わず引き込まれた。23年ぶりに「村野ミロ」という探偵を復活させた理由を語る桐野さんの言葉が、妙に胸に残った。

親しい友人が亡くなって、自分の過去を知る人がいなくなると、自分自身も一部失われたような孤独を感じる

ああ、これは分かる。分かりすぎるくらいに分かる。50代も後半になると、周りから少しずつ人が消えていく。同級生の訃報をSNSで知ることも増えた。あの頃のことを一緒に笑い合える相手が減っていく感覚は、まさに「自分の一部が失われる」という表現がぴったりだ。桐野さんが60歳のミロに自分の老いや喪失感を投影したという話を聞いて、作家という仕事は本当に孤独で、でも誠実な営みなんだなと思った。

30年前の出版業界と「リアルな女性」を描くこと

雨に濡れた都会の夜景を背景に、書類と本が積まれた編集室で、数名の編集者が議論しながら資料を読み込む様子。
時代と闘いながら「リアルな女性」を描き続けた創作の現場


それにしても、30年前の出版業界の話には驚いた。女性のハードボイルド探偵を描くというだけで、「主人公が男性と関係を持つシーンはやめてほしい」だの「もっと年齢を若くできないか」だのと注文がついたという。この話を聞いたときには笑った。

男性主人公ならそんなこと言われないのに、女性だというだけで制約を受ける。理不尽だ。桐野さんはそんな時代と戦いながら、「東京で一人で生きるリアルな女性」を描き続けてきたのだという。

私自身、北海道という土地で生きてきて、東京の空気感とは縁遠い生活をしてきたが、それでも「リアルであること」の大切さは分かる。綺麗事ではなく、泥臭くても本当のことを書く。それが創作の本質なのだろう。

日本ペンクラブ初の女性会長として

桜の花びらに囲まれた机の上で、和文の書と英文の手紙が開かれ、万年筆とインク瓶、巻物や折り鶴が並ぶ静かな筆記の情景。
表現の自由を守る、言葉に関わる者たちの使命


番組の中で、桐野さんが日本ペンクラブの会長を務めているという話も出た。女性初だそうだ。「P.E.N.」が詩人、編集者、小説家の頭文字だと初めて知って、へえ、と声が出た。言葉に関わる全ての人に開かれた団体で、表現の自由や平和を守るために声明を出すこともある。基本的にボランティアでの活動だという。激動の時代に、そういう責務を背負いながら小説を書き続けるというのは、並大抵のことではないだろう。

日本ペンクラブ…ブロガーも入れてくんねぇかな?

作家夫婦の距離感と「女性の徴兵制」という警鐘

面白かったのは、桐野さんの私生活の話だ。同じ作家である夫とは「お互い構われたくない性格」で相性が良く、会話は「生きる上で必要最低限」だという。同じ家にいても顔を合わせるのが少し億劫。この率直さに、思わず笑ってしまった。夫婦のあり方なんて人それぞれで、べったりしているのが正解でもない。距離感を保ちながら尊重し合う関係もあるのだと、改めて思った。いったい、何のための夫婦だよ?なんて、思ってみたり…

そして最後に語られた、来年1月からの連載テーマ「女性の徴兵制」という言葉には、背筋が冷たくなった。少子化対策や貧困対策の名目で、女性が徴兵される未来。ありえないと思うかもしれないが、世界情勢はどうなるか分からない、と桐野さんは言った。「炭鉱のカナリア」という比喩が出てきたが、まさにそうだ。作家というのは、社会の無意識にある恐怖や不安をすくい上げて、警鐘を鳴らす存在なのだろう。この辺りは俺たち、ブロガーも見習うべきだろう。それにしても、恐ろしい話だよ、まったく。

染谷将太が語る大河ドラマ『べらぼう』の役作り

和紙の上に筆で黒い線を描く手元の様子。脇には筆や硯、墨汁などの書道道具が整えられている。
筆を執り続けることで体得する、浮世絵師・歌麿の「筆力」


番組の後半では、大河ドラマ『べらぼう』のコーナーがあった。染谷将太さんが浮世絵師・歌麿を演じているそうで、役作りのために毎日筆を執り、実際に絵を描く練習を重ねたという話には感心した。「筆力」という言葉が出てきたが、細い線をブレずに描くには相当な集中力がいる。その行為そのものが、歌麿の精神状態になりきる最大の役作りだったという。

正直、最近の大河ドラマはあまり観ていないのだが、こういう話を聞くと、ちゃんと観てみようかなという気になる。染谷さんの「人生の機微をみんなで共有し、一歩ずつ前に進んでいく『明日への活力』を感じてほしい」という言葉も良かった。ドラマも、小説も、ラジオも、結局は人生の機微を共有する場なのだ。

セントポーリアの花言葉「小さな愛」

水滴をまとった淡いピンク色のセントポーリアの花が、柔らかな光の中で咲いているクローズアップ写真。


番組の最後に、12月7日の誕生日の花としてセントポーリアが紹介された。花言葉は「小さな愛」。熱帯高地原産で、強い日差しや寒さに弱い繊細な植物だという。小さく可憐な姿から、その花言葉が生まれたそうだ。横浜の橋本さんという方のお便りで、紫根で染めた草木染めの刺繍の話も出てきて、ほう、と思った。紫根。昔の人は植物から色を引き出して、布を染めていたんだな。今はAIが画像を生成する時代だが、手仕事の温もりというのは、やはり特別なものだ。

明日への活力を感じて

加古隆さんのピアノで「愛のテーマ」が流れて、番組は終わった。五藤アナウンサーの「今日一日、何か楽しいことがあるといいですね」という言葉が、暗い部屋の中でじんわりと心に染みた。

外はまだ暗かったが、もうすぐ夜が明ける。札幌の冬の朝は遅いが、それでも確実に光はやってくる。ラジオを消して、ストーブの火を見つめながら、私は少しだけ、今日のことを考えた。
全く、この4時台はやりたい放題の俺の耳に刺さる事ばかり言いやがる。しかし、特に寒くなってくるとなにか、こぅ暖かいんだよな。

焼酎はやめて、コーヒーでも飲むか。

番組:もっと、べらぼう


静かな夜のしじまに、かつての記憶がゆっくりと溶け出していく。

あの日、歴史の大きなうねりの中で人々は何を思い、どのような祈りを捧げたのでしょうか。

語り継がれる平和への願いと、あの冬の記憶を紐解く


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還暦の現場技術者・健一:プロフィール

札幌在住。32年間、石油業界の最前線でプラントのメンテナンスに命を削ってきた元エンジニア。

厳寒の地でボルト一つ、バルブ一つの「軋み」を聞き分けてきた経験は、今、アニメの中に生きるキャラクターたちの「心の軋み」を読み解く力へと変わった。

現在は統合失調症の妹と高齢の母をケアする生活者として、日々「ままならぬ現実」と対峙している。

効率やスピードばかりを尊ぶ現代において、あえて時間をかける「手入れ」の尊さを説く。

私の書く言葉は、雪の夜のストーブのように、不器用だが確かな熱を宿すと信じている。

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