結局、死ぬ時に後悔したくないだけ
「要はこういう筋書きにしたいんでしょ?
テレビ的に」
取材相手にこれを見抜かれた時、ドキッとする。
直接言われることはなくても、表情でわかる。
そして心から「そうじゃない」と言えない時がある。
これは以前、戦力外通告を受けたプロ野球選手を
取材したときの話です。
当時のインタビューの文字起こしを
見返してみました。
戦力外を受けた当時の心境が語られています。
生々しいくらいに。
私はこれを見ると憂鬱な気分になります。
なぜか?
この言葉を真っ直ぐ伝えようとは
しなかったからです。
陥りやすい、
メディアの悪い癖がモロに出た、
そんな記憶だからです。
当時入社5年目の私は何を考えていたか?
「TBSの戦力外通告っぽいやつを作りたい」です。
クビを宣告され、それでも野球を諦めきれず、
家族の為に、妻の為に、
現役か?引退か?そしてその時電話が…
みたいなやつです。
見た事ある人多いと思います。
私は子どもの頃から見まくっていました。
結果どうなったか?
シナリオを描き過ぎてしまうんです。
そしてシナリオ通りに現実が進まないと、焦る。
無意識のうちに、
「戦力外になった選手が諦めずにもがく物語」
が私の中で前提になっていたんです。
いま全てのインタビュー文を見返すと
その方が発するメッセージは一貫していました。
「死ぬ時に後悔したくないだけ」
これだけです。
必死にプロ野球界にしがみついているかと
いえばそうではない。
それよりも自分の人生を良くするために
今の時間と真剣に向き合っている。
それなのに、
「戦力外っぽく…」と刷り込まれている
私の脳は、その言葉の真意に気付けない。
欲しい言葉にしか耳を傾けない。
・戦力外から這い上がり家族のためにもがく姿
・引退を決断する姿
を描くことしか頭に無かったんですね。
これが良くない。
そして描いたゴール、シナリオに向けた
質問を投げかけていくんですね。
そうすると何が起きるか?
微妙にズレが生じていくんです。
「なんか違うな...」
「もっと深刻なコメント欲しいな」
こんな事思ってしまうんです。
でもそんな作り手の妄想に沿った
答えは返ってこない。本心ではないからです。
実際はこの方はすでに
戦力外を事実として受け入れて
人生を前に進めていたので、
ものすごく切羽詰まっているわけではなかった。
それがリアルでした。
でもカメラを向ける私は、
その事を見ようとしない。
シナリオ通りに進めたい。
その方は私の意図にきっと気づいていて、
それでも憤ることなく、
うまく対応してくださったのだと今は思います。
私は取材から戻ると基本的には
インタビューをWordで文字に起こし、
放送で使いたい部分を赤字にします。
業界でいう、「強いON」の抜粋です。
取材から何年も経って、
私は自分が赤字にしているところと
黒字にままにしている部分を見比べてみました。
すると、
「家族との時間が取れるありがたみ」
「長い目で見た人生観」
「いまの充実感」
などの言葉には一切反応せず、
「ファンへの感謝」
「NPBへの未練」
「次の所属先」
といった部分ばかりを赤字にしている事に
気がつきました。
型にはめて自分の描いたストーリーに仕立てる
これはディレクターが
かなりの確率でやってしまう病です。
そしてその背景には、
自身の「思い込み」と「成立させなきゃ」という
焦りがあります。
実感としてその思い込みや焦りは
ほぼ確実にカメラを向ける相手にバレます。
直接言われることもあるし、表情でわかります。
そしておそらく、視聴者にも。
結果的に私は、
①「死ぬ時に後悔したくない」
という視聴者の悩みに寄り添わず、
②「既視感のある戦力外話」
を伝えることに必死になっていたわけです。
今思えば、
絶対①のほうが見たいだろうなと思います。
別に綺麗事でもなく、
伝えるメッセージとして普通にそっちの方が
共感するひとが多いことは明らかだからです。
でも当時は②しか選べなかった...
想定のイメージや構成力は大事です。
それがないと何かを作ることはできない。
ただ、
「要はこういう筋書きにしたいんでしょ?
テレビ的に」
これを思われたら作り手としては終わりだなぁと
今は思います。
久しぶりに取材メモを見返しながら、
未熟な自分に腹が立ちつつ、
気をつけなきゃなと思った話です。
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