荒川くんと、雨の日曜日|1920(大正9)年7月11日(日)〜7月15日(木)
📗 1920年(大正9年)の日記です。書いたのは18歳の祖父、読んでるのは106年後の孫(私)。
旧制中学を出たばかり。
小学校教員を目指して受験した師範学校は、不合格でした。
来年こそ!と思いながら、親戚の家に居候しつつ田舎の小学校で非正規の代用教員をしていたころの話です。
🧭 この日のあらすじ
日曜日。午前中は高山の実家でのんびり過ごしていたところ、斐太中学の同級生・荒川くんが遊びに来た。
あいにくの雨でテニスはお預け。
本屋で「代数の考え方」などを購入。
午後3時に家を出て丹生川小学校に立ち寄り、少し仕事をしてから下宿先の石松家へ。
着いたらちょうど蚕の繭の選別中。
📅 日記本文
7月11日(日)
朝7時起床。
代数の考え方、および十二高から(ここ、判読自信無し)を買う。
午後3時、家を出る。
丹生川本校にてしばらく仕事をなし、石松に行く。
まゆわけ○あり。
荒川、遊びに来らる。
仕合なし。
7月12日(月)〜14日(水)
記事なし
7月15日(木)
夜直す。
📌 背景メモ
『代数の考え方』
過去記事「大正時代の受験の神様」でも触れていますが、藤森良蔵さんの数学の参考書です。
旧制中学校在学中は、藤森良蔵さん刊行の数学雑誌『考へ方』の懸賞問題によく応募していました(どうやら学校で流行っていたみたい)。
2年前、旧制中学校3年生の時のの日記に「代数の学び方」を買いに行ったけど、書店に無かった、との記述がありました。
※正式なタイトルは『代数学 学び方考へ方と解き方』。

藤森良蔵 山海堂出版部 1915
まゆわけ
養蚕で収穫した繭を、大きさや品質ごとに選別する作業のことだと思われます。
6月終わりから7月初めにかけて、祖父も教員の仕事のかたわら石松家の養蚕の手伝いをしていました。
この日も帰宅すると、ちょうどその作業の最中だったようです。
荒川(喜久造)
荒川くん、この後は明治専門学校(現在の九州工業大学の前身。名前が似てる明治大学とは別モノ)電気工学科へ進学、教員免許も取得して最終的には中部電力で課長になってます。
同級生の中でも、わりと堅実にキャリアを積んでいったタイプなのかも。
💭 孫のつぶやき
2年前、書店で「代数の学び方」を探しに行ったのに置いてなかった、って日記に書いてた祖父。
2年越しで手に入れてる…これ、まさかの伏線回収では?
荒川くんが遊びに来たのに、この日はあいにくの雨。楽しみにしていたテニスは中止です。
「仕合ナシ。」
たった四文字だけど、ちょっと残念そうな空気まで伝わってくる気がします。
そして石松家へ帰ると、待っていたのは繭の選別。
「お、ちょうどいい。ちょっとこっち来て。」
……そんな空気だったのかどうかは分かりません。

