『卵を食べるということ』 −體をつくる本質 −
序章|なぜ、私たちは卵を食べるのか
冷蔵庫を開けると、そこにはいつも卵があります。
特別なものではない。
むしろ、どの家庭にもある、ごく当たり前の食材です。
しかし、この「当たり前」の中にこそ、本質は潜んでいます。
卵とは何か。
それは単なる栄養源ではありません。
一つの生命が、外界の助けを借りずに、殻の中だけで完結して育つための“すべて”が詰まっている存在です。
タンパク質、脂質、ビタミン、ミネラル。
そうした言葉で説明することはできます。
しかし、それはあくまで分解した後の話に過ぎません。
本来の卵は、そうした要素が“統合された状態”で存在しています。
つまり、卵とは「栄養の集合体」ではなく、“生命を成立させる構造そのもの”です。
私たちは普段、「何を食べれば健康になるか」を考えます。
タンパク質は足りているか、ビタミンは不足していないか。
そうした思考は決して間違いではありません。
しかし、その発想のままでは、食事はどこまでいっても「補うもの」に留まります。
本来、食べるという行為は、不足を埋めるためのものではなく、體をつくり、更新し続けるための営みです。
その視点に立ったとき、卵という存在は、まったく違う意味を持ち始めます。
なぜ、昔から卵は食べられてきたのか。
なぜ、多くのアスリートが卵を手放さないのか。
なぜ、育ち盛りの子どもに卵が必要なのか。
それらはすべて、偶然ではありません。
この小さな殻の中には、私たちの體を理解するためのヒントが詰まっています。
今回の記事では、「卵を食べる」という当たり前の行為を通して、栄養の話に留まらない、體をつくるという本質に迫っていきます。
第1章|卵は“完全栄養食”なのか
■「完全」という言葉の違和感
卵はしばしば「完全栄養食」と呼ばれます。
タンパク質、脂質、ビタミン、ミネラルをバランスよく含み、これ一つでほとんどの栄養が摂れる。
そうした総合評価です。
我が家の卵の消費量は、大人は3個、子どもは2個(4人)、合わせて14個/日。栄養価(コレステロール、良質なタンパク質、ビタミン群)の王様だから、子どもたちの補食も卵料理が多いです。冷蔵庫にはたっぷり卵が保存されています🥚😆🔥
— 續池均(kintsuzuike)@MTR Method Lab®︎ (@kintsuzuike) April 29, 2024
ちなみに、卵の加熱によるの吸収率の違いは下記。… pic.twitter.com/J2QrUlozn0
確かに、その側面は間違っていません。
しかし、この「完全」という言葉には、少し注意が必要です。
■卵は「それだけで足りる」のか
完全とは何か。
それは「それだけで足りる」というニュアンスを含みます。
ですが、人の體は、単一の食材で成立するほど単純ではありません。
水、塩、他の食材との組み合わせ。
消化や吸収の状態、生活環境や活動量。
それらすべてが絡み合って、初めて體は成り立っています。
■卵という“素材の完成度”
つまり、卵単体で“完全”というよりも、卵は極めて完成度の高い素材であると捉えた方が、実態に近いのです。
なぜなら卵は、「生命を育てるためのパッケージ」だからです。
受精卵は、外部から栄養を補給することなく、殻の中だけで一つの生命へと成長していきます。
■「統合されている」という本質
重要なのは、栄養が“揃っていること”ではありません。
どのように組み合わされ、どのように使われる形で存在しているかです。
卵は、タンパク質も脂質も、単なる要素ではなく、“使われる前提で統合された状態”で内包されています。
だからこそ卵は、「完全」なのではなく、完成度が高いのです。
第2章|コレステロールという誤解
■コレステロール=悪という刷り込み
卵の話になると、必ずと言っていいほど出てくるのがコレステロールです。
「食べすぎるとコレステロールが上がる」
「控えた方がいい」
そうしたイメージは、今もなお根強く残っています。
しかし、この認識は極めて単純化されたものです。
コレステロールは、本来「減らすべき対象」ではありません。
むしろ、體にとって不可欠な物質です。
細胞膜の構成、ホルモンの材料、胆汁の生成。
これらすべてに関与しており、生命活動の基盤を支える中枢的な存在です。
■体内で“つくられる”という事実
重要なのは、コレステロールは外から摂るものだけではないという点です。
人体は、必要に応じてコレステロールを合成しています。
その中心が肝臓です。
食事からの摂取量が増えれば合成は抑えられ、逆に不足すれば合成は高まる。
このように、体内には調整機構が備わっています。
つまり、「食べた分だけ増える」という単純な話ではありません。
■なぜ“悪者”になったのか
では、なぜコレステロールはここまで悪者として扱われてきたのでしょうか。
背景には、動脈硬化や心血管疾患との関連を示す研究があります。
しかしそれは、コレステロール単体の問題というよりも、炎症や酸化、生活習慣の複合的な影響の中で起きている現象です。
にもかかわらず、「コレステロール=原因」という単純な構図が広まりました。
ここに、大きな誤解があります。
■不足がもたらすもの
むしろ問題になるのは、コレステロールの不足です。
コレステロールは、ホルモンの材料でもあります。
特にテストステロンや性ホルモン、さらにはストレス応答に関わるホルモンにも関与しています。
不足すれば、
回復力の低下
睡眠の質の低下
気力の減退
ホルモンバランスの乱れ
といった形で現れてきます。
アスリートにおいては、これはそのままパフォーマンスの低下につながります。
第3章|加熱と吸収の本質
■生か、加熱かという問い
卵は、そのままでも食べることができる珍しい食材です。
生、半熟、温泉卵、固ゆで。
同じ卵でも、調理の状態によって性質は大きく変わります。
一般的には「生の方が栄養が壊れない」と考えられがちですが、ここにも単純化された認識があります。
重要なのは、栄養が“あるかどうか”ではなく、體の中で“使われるかどうか”です。
■消化というプロセス
食べたものは、そのまま體になるわけではありません。
一度分解され、吸収され、再構築される。
このプロセスの入口にあるのが「消化」です。
卵のタンパク質は、加熱によって構造が変化し、消化酵素によって分解されやすい状態になります。
つまり、適度に加熱された卵の方が、體にとっては“扱いやすい形”になるのです。
■半熟という最適解
では、どの状態が最も優れているのか。
結論から言えば、半熟から温泉卵の状態が、最もバランスに優れています。
タンパク質は適度に変性し、消化しやすくなりながら、過度な加熱による変化も起きていない。
さらに、口当たりや摂取のしやすさという点でも優れています。
日常的に取り入れるのであれば、このゾーンが最も現実的です。

■生卵と固ゆでの位置づけ
生卵は、加熱されていない分、ビタミンなどの損失が少ない側面があります。
一方で、タンパク質の消化という点では、やや効率が落ちる場合もあります。
また、アビジンという成分がビオチンの吸収に影響するため、極端に偏った摂り方は避けた方が良いでしょう。
固ゆでは、安定した食べ方ではありますが、加熱が進むことで消化にやや時間がかかる傾向があります。
いずれも「良い・悪い」ではなく、用途によって使い分けるべき状態です。
第4章|TKGという文化
■なぜ私たちは卵かけご飯を食べるのか
卵かけご飯。
極めてシンプルで、どこにでもある食べ方です。
炊き立てのご飯に卵を落とし、混ぜる。
それだけで成立するこの一品は、日本人にとって一つの“原風景”とも言えます。
しかし、このシンプルさの中に、見過ごされがちな合理性があります。
■シンプルであるという強さ
卵かけご飯は、調理という工程をほとんど必要としません。
これは裏を返せば、余計な変換を加えずに、そのまま取り込めるということです。
炭水化物(ご飯)と、タンパク質・脂質(卵)。
この組み合わせは、エネルギー供給と材料供給を同時に満たします。
特に、トレーニング後や朝の時間帯においては、この“即時性”は大きな意味を持ちます。
卵の加熱によるの吸収率の違い。
— 續池均(kintsuzuike)@MTR Method Lab®︎ (@kintsuzuike) February 11, 2022
温泉卵:文句なし
半熟:消化も良くおすすめ
生:ビタミンB群の吸収良好
固ゆで:問題なし
いずれにしろ栄養価が高いので、育ち盛りの子どもにはしっかり食べさせたい卵。
咀嚼が減るし胃腸に多少負担がかかるけど、TKG(卵がけご飯)が僕のソウルフード🥚😎🔥 https://t.co/jgQrGiVJdd pic.twitter.com/4LAyvd0Anu
■咀嚼と消化のトレードオフ
一方で、卵かけご飯には弱点もあります。
それは、咀嚼が減ることです。
よく噛まずに食べられるということは、消化のプロセスが短縮される一方で、胃腸への負担がかかりやすくなる側面もあります。
つまりこれは、良い・悪いの問題ではなく、機能と負担のバランスの問題です。
■文化と機能が重なる食べ方
興味深いのは、卵かけご飯が単なる栄養補給ではなく、長く文化として定着してきた点です。
人は、本能的に“合うもの”を残していきます。
理屈ではなく、経験として、この食べ方が體にとって合理的であることを知っていた。
だからこそ、今もなお残っているのでしょう。
第5章|育ち盛りと卵
■成長とは「合成」である
子どもの體は、常に変化し続けています。
身長が伸びる。筋肉がつく。骨が強くなる。
これらはすべて、「成長」と呼ばれる現象ですが、その本質はシンプルです。
体内で新たに“つくられている”ということです。
つまり、成長とは分解よりも合成が上回る状態。
そのためには、当然ながら“材料”が必要になります。
■子どもに必要なのはエネルギーではなく材料
子どもに対しては、「しっかり食べさせる」という意識が強く働きます。
しかし、その中身はどうでしょうか。
炭水化物中心の食事になっていないか。
エネルギーは満たしていても、材料は足りているのか。
體を動かすためのエネルギーと、體をつくるための材料は、本来別のものです。
卵は、この“材料”という役割を、非常に高いレベルで担うことができる食材です。
■「食べすぎ」という概念の再定義
卵は栄養価が高いがゆえに、「食べすぎではないか」と言われることがあります。
しかし、その判断基準はどこにあるのでしょうか。
一般的な平均値なのか。
活動量や成長段階を無視した数値なのか。
運動量が多く、成長が活発な子どもにとって、必要な量は大きく変わります。
重要なのは、“多いか少ないか”ではなく、必要に対して足りているかどうかです。
■日常に組み込むという視点
卵は特別な食材ではありません。
むしろ、日常に組み込みやすい食材です。
朝食、補食、夕食。
形を変えながら、無理なく取り入れることができる。
継続できるという点において、これほど優れた材料は多くありません。
第6章|アスリートと卵
■回復力が競技力を決める
アスリートにとって重要なのは、トレーニングの量や強度だけではありません。
それ以上に重要なのが、「回復」です。
どれだけ負荷をかけても、回復できなければ、體は崩れていきます。
逆に、回復が適切に行われれば、同じ負荷でも體は強くなっていく。
つまり、競技力とは、回復力の上に成り立っているとも言えます。
■回復とは何が起きているのか
では、回復とは何でしょうか。
筋肉の修復、エネルギーの再合成、神経系のリセット、ホルモンバランスの調整。
これらはすべて、体内で再構築が行われている状態です。
そしてその過程には、必ず“材料”が必要になります。
ここで重要になるのが、タンパク質と脂質、そしてコレステロールです。
■卵が持つ意味
卵は、これらの材料をバランスよく含んでいます。
タンパク質は、筋肉や組織の修復に使われる。
脂質とコレステロールは、ホルモンや細胞膜の材料となる。
つまり卵は、回復というプロセスにおいて、必要な要素を一つにまとめた存在です。

https://tanaka-egg.jp/nutrition/index.html
これは単なる効率の問題ではありません。
體が必要とする形に近い状態で供給できるという点において、卵は非常に優れています。
■睡眠とホルモンへの影響
現場でよく見られるのが、「眠れない」「回復しきらない」という状態です。
トレーニングはしている。
食事量も一見足りている。
それでも、體が上がってこない。
こうしたケースでは、ホルモンバランスの乱れが関与していることが多くあります。
コレステロールは、その材料です。
不足すれば、ホルモンの合成は滞り、結果として回復や睡眠に影響が出る。
卵を増やしたことで、これらが改善するケースは少なくありません。
終章|卵を食べるということ
■量ではなく「意味」で食べる
ここまで、卵という一つの食材を通して、栄養、コレステロール、消化、成長、回復と見てきました。
どれも重要な要素です。
しかし、それらを個別に理解するだけでは、まだ足りません。
本質は、そこにはありません。
大切なのは、何をどれだけ食べるかではなく、それをどのような意味で體に入れているのかです。
■食べるという行為の再定義
食べるとは、単なる補給ではありません。
失われたものを埋めるためでもなく、数字を満たすためでもない。
それは、體をつくり、日々更新し続けるための行為です。
その視点に立ったとき、卵という存在は、極めて象徴的です。
一つの生命を成立させるための“すべて”が詰まっている。
それを日常的に取り入れるということ。
そこには、単なる栄養以上の意味があります。
■日常にある本質
卵は特別なものではありません。
どの家庭にもある。
どこでも手に入る。
誰でも食べることができる。
しかし、その中身は極めて本質的です。
だからこそ、日常の中でどう扱うかが重要になります。
特別なことをする必要はありません。
ただ、その意味を理解するだけでいいのです。
お知らせ|不調にお悩みの方へ
検査では異常がない。
休んでも、運動しても、なかなか改善しない。
そのような「不調」は、筋肉が硬く縮こまることで、身体全体のバランス(テンセグリティ)が乱れていることが原因かもしれません。
多くの場合、問題は大きなケガや広範囲の不具合ではなく、ごく一部に残った小さな筋肉のこわばり(筋拘縮・トリガーポイント)です。
トリガーポイント(Trigger Point)とは。
— 續池均(kintsuzuike)@MTR Method Lab®︎ (@kintsuzuike) January 22, 2025
筋肉の中にできる「しこり」のようなもの。
特定の部位に過度の負荷やストレスがかかることで発生する筋肉のこわばり。
私たちはこれを「筋拘縮」と呼んでいる。… https://t.co/hIt7e0Ze3E pic.twitter.com/eeZJI9keLa
この小さな拘縮が体内に点在すると、
骨盤の動きが制限され
身体の軸が不安定になり
肩や肘、手足などの末端に負担が集中します
その状態では、どれだけ運動をしても、姿勢や動きを学び直しても、
本来の體の連動性は戻りません。
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