孤独と人恋しさが矛盾しない場所。岡山最高峰・後山で出会った空と風
兵庫と岡山の県境に、あまり知られていないけれど、歩くとやみつきになる稜線がある。
駒ノ尾山から船木山を経て後山へ。岡山県の最高峰1,344mを踏む縦走コースだ。有名どころではないぶん、ひとが少なくて静かで、笹の稜線がずっと続いている。なんというか、ちゃんと「山に来た」という感じがする。そういう山が好きだ。

〈 登山口から稜線へ 〉
駐車場に車を停めると、山の空気がすっと入ってくる。青空と赤い屋根のコントラストが妙に鮮やかで、今日はいい山行になりそうだという気がした。
序盤は木立の中を歩く、落ち着いた山道だ。葉の隙間から光が差し込んで、足元には枯れ葉。木の根が張り出した道を踏みしめていると、少しずつ頭が山モードに切り替わっていく。

木段を登りきると、視界がいきなり開ける。笹と空、そして遠くの山並み。ここから稜線歩きのはじまりだ。
〈 駒ノ尾山 1,281m 〉

駒ノ尾山頂の石碑は、どっしりと古びた風情で立っていた。周囲には点在する岩と枯れ草、遠くに緑の稜線。ちょっとモノクロ映画みたいな雰囲気がある。

山頂からの眺めがすごかった。南側は遮るものが何もなく、山並みの向こうに平野がうっすら広がっている。霞の先に瀬戸内海があるはずで、思わずしばらく立ち尽くしてしまった。
こういう瞬間のために山を歩いているんだな、と毎回思う。
〈 駒ノ尾〜船木山 稜線歩き 〉

駒ノ尾からいったん鞍部へ下り、船木山へ登り返す。
笹原をかき分けるように続く細い踏み跡、両側から草が迫ってきてちょっと海を泳いでいるみたい。正面には後山がでんと控えていて、「あそこまで行くんだ」という気持ちになる。

稜線の途中にはブナの木立が出てくる区間があって、木の根が路面を縦横に走っていた。コケが生えて、倒木もあって、人の手があまり入っていない原始的な雰囲気。こういう道は歩いていてどこか落ち着く。
〈 船木山 1,334m 〉

船木山の標柱には「兵庫50名山 No.4」の文字。なるほど兵庫県側からも登られている山なんだな、と改めて思う。
〈 後山 1,344m ── 岡山県最高峰 〉

船木山から少し歩くと、後山の山頂へ到着する。
「岡山県最高峰 後山山頂(1,344m) 美作市」。木製の標柱がそれを告げている。県の最高峰というのは、なんとなくちゃんとした達成感がある。

山頂からの眺望は圧巻だった。南側に広がる展望は遮るものがほとんどない。緑の山が幾重にも重なって、霞の向こうに平野がうっすら見える。あの遠くに瀬戸内海があるはずだ、とぼんやり考えながら風に吹かれた。
山頂で少し休んでいると、先に登っていた登山者が声をかけてくれた。「あっちに見えるのが氷ノ山ですよ」と指差す方向を見ると、なるほど、遠くに兵庫の最高峰がうっすら浮かんでいる。大阪から来たという人とも話した。どこから来たとか、どのルートで登ったとか、他愛もない話ばかりなのに、なぜかすごく弾む。
ふだんの世界から離れて、自然の中にひとりで来たはずなのに、人に会うとやっぱり嬉しい。孤独を楽しみに来ているのに、人恋しさもちゃんとある。その両方が、山の上では不思議と矛盾しない。
山って、そういう場所なんだと思う。

空を見上げると、太陽の周りに虹色の光輪が広がっていた。彩雲というやつだ。山頂でこれを見られるのはちょっとした幸運で、思わず空に向かってカメラを向けた。
〈 下山 〉


ピストンで駒ノ尾登山口まで戻る下りは、来た道をもう一度たどる時間だった。
往路では登ることに夢中だった景色が、帰りはゆっくり目に入ってくる。笹の稜線、ブナの根道、駒ノ尾の石碑。同じ道なのに、なぜか別の顔を見せてくれる気がする。
静かで、どこまでも清々しく、でもしっかり山の奥に連れて行ってくれるコース。また歩きたいと思える山だった。
有名な山もいいけれど、こういう「自分だけの居場所」のような山を見つける喜びがあるから、山歩きはやめられない。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
今回のルートをまとめておきますので、山行の参考にしていただければ幸いです。
🗺 コース概要
🚩 駒ノ尾登山口 → 駒ノ尾山(1,281m)→ 船木山(1,334m)→ 後山(1,344m)→ ピストン
🏔 この山のポイント
🌿 稜線の笹原歩きが気持ちいい
🌳 ブナ林の根道区間あり
👁 駒ノ尾・後山ともに南側の展望が広大
🌈 運が良ければ彩雲も
🤝 山頂での出会いがある、そういう山
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