熊山|千年杉と奈良時代遺跡と桜吹雪の山

1年ぶりに訪れた熊山は、以前と変わらず、穏やかな景色が出迎えてくれた。
岡山県赤磐市にある標高508mの低山。
登山口の看板には「これより約1時間30分」と書いてある。
歩き始めると、この山はすぐに奥行きを見せてくれた。
沢沿いの登山道

登り始めてすぐ、沢の音が聞こえてくる。
苔が岩を覆い、シダが両脇から張り出した道を歩く。
4月の山なのに谷の空気はひんやりしていて、光が届きにくい。
ところどころ倒木が道をまたいでいる。自然のままの山道というのは、歩いていて妙に落ち着く。
水の音を聞きながら、沢を何度か横切って高度を上げていく。
足元の石が、長い時間をかけて踏み固められているのがわかる。
どれだけの人がここを歩いてきたのだろうと思いながら、自分の足を置く。
尾根の縦走路へ

尾根に出ると、別の山になる。
木々が頭上でアーチを作る、幅の広い縦走路。さっきまでの薄暗い谷が遠くなるように、視界が広がる。
熊山から高津山、尺八山へとつながる稜線をアップダウンしながら歩く。
春の山は、曲がり角のたびに色が変わる。ミツバツツジの紫、新芽の黄緑、枯れ葉の茶色。足元と頭上で、季節が少しずつ違う。
途中で出会った人と話をしたり、寄り道や写真を撮りながらのんびりと歩いた。
山頂エリア|二本杉・熊山遺跡・猿田彦神社

山頂エリアに入ったとき、まず二本杉が目に入った。
樹齢約千年。
その数字を頭に置いて見上げると、幹の太さと枝の広がりが違って見える。
この木が芽を出したころ、この山はどんな場所だったのだろう。
ただそこに立っているだけなのに、なぜか長く見上げてしまう。

その先に熊山遺跡がある。
石を積み上げた三段の塔。
奈良時代に建てられたとされていて、何のために作られたのか今も解明されていない。
千年の杉よりさらに古い。
答えのないものが、静かにそこにある。
遺跡の周りに桜の花びらが散り敷いていた。
風が吹くたびに、木の上からひとひらずつ落ちてくる。
奈良時代の石積みと千年の杉と桜吹雪が重なる場所が、岡山の春山にある。
遺跡の向かいには猿田彦神社がある。
日本神話でニニギノミコトを道案内した「みちひらき(導き)」の神様。
迷った時、新しいことを始める時、人生の転機に最も良い方向へ導いてくれると言われている。
ちょうど一年前、人生の岐路にいた。
今回は偶然登ることになり、静かに一年の報告をした。
きっと呼ばれたんだと思う。
展望台からの景色

展望台に出ると、眼下に吉井川が蛇行している。
霞の向こう、吉井川が山並みを縫いながら瀬戸内の海へ向かっていく。
本来なら瀬戸内の島々まで見渡せるはずの景色は、黄砂に霞んでいた。
下山

下山しながら、登りで見えていなかったものが見えてくる。
朽ちた立ち枯れの木、苔の模様、光の差し込む角度。
上りと下りで、山はふたつの顔を見せる。
4時間35分、7.6km。
春の熊山で、千年の木と奈良時代の遺跡と桜吹雪に出会った。
また来年も、この場所に報告をしに来ようと思う。
🗻 熊山・高津山・尺八山(岡山県赤磐市)
⏱ タイム:4時間35分
🚶 距離:7.6km
📈 累積標高:580m
🗓 日帰り縦走


【他の登山の記事はこちら】⛰️
【『和気アルプス』ソロ登山の途中で出会い、一緒に登った話。】
【「森林浴の森100選」に選ばれた岡山県立森林公園の話】
【岡山最高峰・後山登山の話】
【吉備津彦神社と龍王山。誓いを立てた話】
いいなと思ったら応援しよう!
最後までお読みくださり、有難うございました。もし気に入って頂けたなら、無理のない範囲で応援してもらえると嬉しいです。