HSPが職場で消耗しないための具体的な技術。作業療法士16年目が実践してきたこと。
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廊下の向こうで、同僚がひそひそ話をしている。
理由はわからない。でも体が反応する。心臓がどきっとして、「自分の悪口かも」という考えが反射的に浮かぶ。
根拠はない。でも消耗する。
これがHSPの職場での現実だ。
16年間、作業療法士として働いてきた。特養という多職種が入り乱れる現場で、HSP気質と向き合いながら、消耗しないための技術を少しずつ積み上げてきた。
今日はその話をしようと思う。
HSPが職場で消耗する瞬間
1対1の場面は得意だ。利用者さんと向き合うとき、私は自然体でいられる。
でも多人数の場は違う。
職員同士の方針のズレから生じるピリピリした空気感。廊下でのひそひそ話。感情的に声を荒げる人がいる場面。
そういう場で、HSP特有の「感情の共鳴」が起きる。他者の不機嫌や感情の気配を無意識に拾ってしまい、体がこわばる。「自分のせいかも」と反射的に受け取ってしまい、ひどく消耗する。
これはHSPの脳の構造上、避けられない反応だ。意志の問題じゃない。
だからこそ、消耗しないための技術が必要になる。
身体的な技術:自律神経を意図的にコントロールする
OTとして身体のことを知っているからこそ、消耗対策も身体から入る。
出勤前のカフェインナップ。 職場に30〜40分早めに到着して、栄養ドリンクを飲んでから20分仮眠する。カフェインが効き始める前に眠ることで、目覚めた瞬間に頭がクリアになる。副交感神経から交感神経へのスイッチを、意図的に切り替えるための儀式だ。
朝イチと散歩後のストレッチポール。 筋肉の緊張をほぐすことで副交感神経が優位になる。1日の始まりと終わりに、身体をリセットする時間を作ること。これだけで消耗の度合いが変わる。
行動的な技術:脳を完全にオフにする時間を作る
夜、あえてひとりで眠る。
家族がいる。でも別室で寝る。HSPは他者の気配があるだけで脳がアンテナを張り続けてしまう。家族であっても、誰かと同じ空間で眠ることが「休息」にならない。
ひとりで眠ることで、脳を完全にオフにできる。翌朝、また動ける状態で起きられる。
これは冷たさじゃない。自分の脳の特性を知っているからこその、合理的な選択だ。
マインドの技術:いい意味で体力を温存する
正直に言う。
適度にサボることも大事だと思っている。本当にサボっている時もある。ここには書けないけど(笑)。
真面目な言い方をすれば、いい意味で体力を温存することだ。
仕事はマラソンだ。最初から全力で走る人は必ずどこかで倒れる。やりがいを持ちながら、でも全力を出し続けることが美徳だとは思わない。
課題の分離はHSPの最強の盾になる
HSPにとって、アドラーの「課題の分離」は最強の防具になる。
HSPは「全員に好かれなければ」という呪いにかかりやすい。他人の不機嫌を見ると、先回りして気を遣ってしまう。
でもそこで立ち止まる。
あの人が不機嫌なのは相手の課題であり、自分の課題ではない。
この境界線を引くだけで、少し気持ちが楽になる。完全にはできない。疲れる日もある。それでもいい。完璧にできなくても、知っているだけで違う。
HSPだからこそ職場で輝ける場がある
消耗するだけじゃない。HSP気質は、支援の現場では圧倒的な強みになる。
マニュアルに載っていない「この人、今日はいつもと違うな」という直感。言葉にならない苦しさをキャッチする感受性。利用者さんが「今日はリハビリをしたくない日なんだな」と察して、無理強いを避けられる柔軟さ。
相手のペースに自然と合わせられること。これはHSPの繊細さがあってこそ活きる、OTとしての大きな武器だ。
繊細さは消すべき欠点じゃない。使いこなすべき才能だ。
一番トラウマレベルで根深い経験
正直に言う。
社会人1年目のアシスタント時代、退社時刻は17時なのに毎日23時まで女性上司に罵倒され続けた。些細なミスを怒鳴られ続けて、「自分は生きている価値もない」と追い詰められた。睡眠薬がないと眠れなくなった。
あの時の「他者の感情的な声=危険」という刷り込みは、今でも少し影響している。
特養に移ってからも、働き始めた頃に一部の介護職員から嫌がらせを受けた時期があった。多職種連携の中での人間関係には、何度も頭を悩ませた。
それでも続けてこられた。消耗しないための技術を少しずつ積み上げてきたから。
同じHSP気質のあなたへ
逃げることは、立派な治療のひとつだ。
合わない環境に居続けて心が折れるくらいなら、自分が呼吸できる場所へ撤退していい。それは弱さじゃない。
そしてもう一つ。
生産性を度外視した「ただ自分が好きな作業」を、1日10分でも死守してほしい。
作業療法の世界で言う「意味のある作業」だ。義務でやる作業ではなく、自分が意味を感じてやる作業。それが自分軸を取り戻し、メンタルを守る防波堤になる。
HSPであることは、あなたの罪じゃない。あなたの個性だ。
その繊細さを、誰かを支える力に変えてほしい。
作業療法士・16年目。特養勤務。元認知症ケア指導管理士。HSP・ISFJ。消耗しながらも、今日も現場に立っています。
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そもそも私がなぜここまで消耗対策を徹底するようになったのか。23時まで罵倒され続けた地獄の社会人1年目の話はこちらに書きました。→ [3. 毎日23字まで罵倒されて~]
「技術だけでなく、心を守るための『考え方』については、アドラー心理学の教えが支えになっています。」 → [21. 『嫌われる勇気』はHSPには冷たく感じた〜]
「職場で消耗しない技術は、実は家庭(特に子育て)でも応用しています。」 → [31. HSPの父親が、娘に絶対しないと決めていること]
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