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ミクロな視点が生んだ違和感〜「是非に及ばず」が二度燃えた背景とは

皆さん、こんばんは。
去る6月13日に国内最大規模の音楽賞を銘打って創設され、開催2回目となるMUSIC AWARDS JAPAN 2026の授賞式がTOYOTA ARENA TOKYOで執り行われた。
最優秀アーティスト賞でV2を達成したMrs.GREEN APPLE、最優秀J-POP楽曲賞受賞の「IRIS OUT」が海外4地域のJapanese Song部門も完全制覇した米津玄師、「好きすぎて滅!」の大ヒットでSnow ManやSixTONESらSTARTO ENTERTAINMENT勢を抑え最優秀ボーイズアイドル賞に輝いたM!LK、「ROSE」「Blue Jeans」などのヒット連発で貫禄の最優秀ニュー・アーティスト賞受賞となったHANA、そして「怪獣」が最優秀楽曲賞に輝いたほか、ミュージックビデオ賞など裏方のスタッフも含め史上最多の8冠を射止めたチーム・サカナクションなど、前年度の音楽シーンの「顔」達が見事に華を添えてくれた。

そんな中、櫻坂46がリクエスト特別賞である「推し活リクエスト・アーティスト・オブ・ザ・イヤー powered by USEN」にて最優秀アーティストに輝く快挙を成し遂げた。
主要部門へのノミネートは逃したものの、支出喚起力ランキング首位のファンダム熱を誇るBuddiesが彼女達に新たな勲章をもたらし、副キャプテンの山﨑天も堂々たるスピーチを披露した。
昼の「Premiere Ceremony」から受賞結果をチェックしていた私もこの結果には驚きを隠せなかった。
今回の受賞結果では、サカナクションの最優秀楽曲賞、=LOVEの最優秀ガールズアイドル楽曲賞と並ぶくらいの嬉しさだ。
来月から最大規模のアリーナツアーに突入する櫻坂、そこに向けて大きく弾みがついたと思う。

一方、そんな華やかな授賞式が催される傍ら、北陸・福井では乃木坂46が恒例の「真夏の全国ツアー2026」初日をサンドーム福井で迎えていた。
当日参戦したファンのX上の報告ポストによると、7月22日発売の42ndシングル「是非に及ばず」を初披露したそうだ。
しかし、今回の新曲が過去最悪レベルの荒れ模様となり、乃木坂界隈を大いにざわつかせているのはご存知だろうか。
ここで、簡単に経緯を振り返ってみよう。

①選抜発表

6月7日放送の「乃木坂工事中」で当シングルの選抜メンバーが発表された。
センターは中西アルノ、井上和、池田瑛紗に続き5期生から4人目の起用となる一ノ瀬美空。
人数は前作の16人から18人に増え、6期生から返り咲きの瀬戸口心月に矢田萌華、そして初選抜の大越ひなのに森平麗心という4人が選ばれた。
3期生からは先代キャプテン梅澤美波に代わり期最年少の岩本蓮加が約1年振りにカムバックした一方、5期生の小川彩と冨里奈央が揃って選抜から外れる波乱も見られ、SNS上では議論が紛糾。
その際に見られた意見を一部抜粋してみると、こんな感じだ。

  • 5期生の二人を押し退けてまで大越・森平を入れる余裕はあるのか?

  • スキャンダルを起こした岩本が復帰できる理由が分からない

  • 前作で歌唱面の弱点が露呈したのに一ノ瀬センターはありえない

主に、小川・冨里の不可解な選抜落ち、岩本の選抜復帰に異議を唱える者が実に多かった。
また、少数ながら前作「最後に階段を駆け上がったのはいつだ?」のパフォーマンスが歌番組で大ブーイングを喰った苦い過去を払拭するための打開策がなされない陣容(ビジュアル重視とも)になったことへの批判も見られたが、さほど目立つ形にはならなかった。

②音源解禁

選抜発表から5日後、6月13日の0:00から各種ストリーミングサービスにて「是非に及ばず」の先行配信が開始された。
しかし、解禁された途端に実際に聞いたファンからは不評の嵐。
YouTubeのコメント欄は、「否」の内容を中心に3000件以上寄せられる異常事態に。
SNSでも、「みーきゅん(一ノ瀬のニックネーム)の良さが活かされていない!」や「なぜ夏曲らしさを逸脱するようなスカしたサウンドになっちゃうの?」と落胆の声で溢れていた。
前述の通り、全国ツアーの初日から披露されているそうだが、「ライブ映えする」と掌返しするファンもいる一方で「いくらライブで良く聞こえてもクソ曲なのは変わらない」と一蹴するファンで二分している模様。
YouTube公式チャンネル「乃木坂配信中」が同曲のコール動画を急遽上げたものの、議論の熱は冷めないようだ。

選抜発表に音源解禁と「是非に及ばず」はなぜ2度の炎上沙汰を招いたか?
原因の一つとして、グループを「ミクロ」な視点で見るファンが増えたことが影響しているのではないかと考えている。
今回の記事を書くにあたり、Xのタイムラインで見かけた乃木坂のファン層の変遷を分析していた方のポストを参考にさせていただいた。
ポストの中身は、「1、2期生がいた頃はマクロな視点で見るファンが多く箱推しの力でグループを押し上げていたが、2022年の5期生加入をきっかけにミクロな視点で見るファンが増え、箱推し文化がほぼ消滅した」という趣旨で綴られていた。
振り返れば、5期生加入以降にSNS上でファンによるメンバーへの個人攻撃が加速したように思える。
今回、活動自粛の「前科」を抱えての選抜復帰が物議を醸した岩本蓮加や先日グループを卒業したもののセレモニーの数日後に流出事案に巻き込まれた佐藤璃果など、「やれ、今だ」と鬼の首を取ったかのようにメンバーのミスを容赦なく叩く事例がこの数年で本当に増えた。

5期生にしても、加入直後の2022年3月に中西アルノが自身の過去をめぐる炎上がきっかけで活動自粛に追い込まれるケースもあった。
完売表文化の発達等により販促競争が加速し、ほぼ毎シングル「選抜総選挙」状態になった環境下で「完売に時間がかかったAさんは選抜に入っているのに、完売スピードが早かったBさんは選抜に入っていない」という風にミーグリ準拠で選抜の人選にいちゃもんをつける者の声が日に日にデカくなっている。

ファン層が箱推し<個推しと変わってきた乃木坂界隈、「推し」基準で物事を考える人間が増えたので「推しが報われなければ可哀想」と望み通りの結果にならなければ無神経に叩き、最悪の場合、他メンバーを不満の捌け口にしようとする。
今回の2度にわたる炎上沙汰に限らず、2022年以降に発生した乃木坂界隈の「有事」の大半は推しフィルターをぶち破る「異物」を排除しようとした結果、起きたものといえる。
ターゲットが分かりやすい選抜人選はもちろんのこと、楽曲についても「推し」視点で叩くようになる。
今回の事例でいえば、「一ノ瀬美空が折角センターになったんだから、もっと良い曲を当ててくれ」という意見がその類だ。

グループよりもメンバー視点で物事を考える、その行き過ぎが全体として停滞を招くのは明白である。
批判をしようにもグループ全体を考えた意見であれば建設的な議論は出来るが、「推し」を軸にした主観的なものになるから広がりを見せない。
以前から、楽曲を売り出すうえで「Who」(誰が歌うか)か「What」(何を歌うか)、どちらが大事かという話を展開しているが、今の乃木坂は「Who」を重視しすぎていると言ってもよい。

坂道グループは大所帯という特質上、メンバー間格差が少数精鋭型のグループと比べるとより露骨になり、補填するための施策がなされない限りファンのフラストレーションも溜まりやすい。
櫻坂や日向坂は推しが満たされないことへの反発から分断の危機を迎えながらも強固なファンダムの団結力で乗り越えているが、乃木坂はミクロ的な見方が主流を占めたことでファンダムの空中分解が加速している。
プロデューサー秋元康が作詞を手掛ける楽曲群のクオリティ低下に加え、メンバーも巻き込むファン同士の内輪揉めもグループの鎖国化と一般向け訴求力の喪失に拍車を掛けているのではないか?
新曲発売は1ヶ月後だが、CDは売れても曲の認知度は相変わらずな感じで終わるだろう。
菅原咲月キャプテン率いる新体制発足からもうすぐ1ヶ月、まだまだ苦難は続くようだ。

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