会話が続かないのは、話題がないからではない|「関係」を前に進める話し方

会話が続かないとき、意識はどこを向いているか
相手に失礼なことを言ったわけではない。
話題が、つまらなかったわけでもない。
それなのに、なぜか会話が続かない。
あとから、
「今の話、相手はどう感じたのだろう」
と気になることがあります。
その理由は、
話のうまさだけではないのかもしれません。
会話の最中に、
意識がどこを向いているか。
自分の言いたいことを伝えることに向いているのか。
それとも、
相手がどう受け取っているかに向いているのか。
その小さな違いが、
会話の心地よさを変えることがあります。
では、会話の中で
私たちは何を前に進めているのでしょうか。
会話には、前に進めているものが違う2種類がある
会話には、
大きく分けて2つあります。
ひとつは、
情報を前に進めるための会話です。
ここでは、
事実や状況、結論を
正確に共有することが目的になります。
もうひとつは、
関係を前に進めるための会話です。
相手がどう感じているのか。
どんな立場で話しているのか。
そこに意識を向けながら、
やり取りを重ねていきます。
どちらが良い、悪いではありません。
ただ、目的が違うのです。
情報を前に進める会話
たとえば、
仕事帰りのこんな一言があります。
「今週は業務が立て込んでいて、残業が続いています」
これは、情報を前に進める会話です。
事実としては、きちんと伝わっています。
報告としても、間違っていません。
ただ、この会話は、
「相手にどう受け取ってほしいのか」までは
少し見えにくいことがあります。
大変だね、と返せばいいのか。
無理しないでね、と声をかければいいのか。
仕事の進め方について聞けばいいのか。
聞いた側が、
次の言葉に少し迷ってしまうことがあるのです。
情報は伝わっている。
でも、相手が入る入口が少ない。
そんなとき、
会話はそこで止まりやすくなります。
関係を前に進める会話に変わるとき
同じ場面でも、
こんな一言が添えられたらどうでしょう。
「今週、かなり忙しそうですね。
こういうとき、どうやって切り替えていますか?」
ここでは、
情報そのものよりも、
相手の感じ方に意識が向いています。
話題は、
「仕事の量」から
「その人の状態」へと移ります。
すると、相手は
自分の経験や気持ちを言葉にしやすくなります。
「帰ったら、少しだけ何も考えない時間をつくっています」
「本当は切り替えたいんですけど、なかなか難しくて」
「最近は、早めに寝るようにしています」
そんなふうに、
会話が少しずつ動きはじめます。
関係を前に進める会話とは、
特別に深い話をすることではありません。
相手が、自分の言葉で入ってこられる場所を
少し残しておくことです。
情報だけの会話は、止まりやすい
たとえば、こんな会話。
「昨日の女子オープン、
横峯さくらがフロントナインでスコアを3つ落として首位から脱落して……」
事実としては正しい。
話題としても、悪くありません。
でも、
もし相手がゴルフに詳しくなかったら。
この会話は、
情報を前に進めたところで、
止まってしまうかもしれません。
関係を前に進める会話には、余白がある
一方で、こんな言い方もあります。
「昨日の女子オープン、残念だったよね。
でも、インタビューを聞くたびに、
プロ意識の高さにはいつも感心するんだ」
ここでは、
ひとつの話題に、
いくつもの入口があります。
ゴルフを知らなくても、
・プロ意識って、どんなところだと思う?
・大事にしている姿勢ってある?
・憧れる人っている?
誰でも、
自分の位置から参加できます。
これは、
関係を前に進める会話です。
雑談でも会議でも。会話が心地いい人がしていること
会話が魅力的に見える人は、
面白い話をしているわけでも、
上手なことを言っているわけでもありません。
相手が入りやすいように、
ほんの少しだけ、余白を残して話している。
「知っている前提」で話さない。
「分かるでしょ」と決めつけない。
その小さな配慮が、
相手を安心させ、
会話をやわらかく前に進めていきます。
輝くのは、話し上手な人ではない
会話で印象に残るのは、
たくさん話す人だけではありません。
正解を持っている人でもありません。
「この人とは、なんだか話しやすい」
そう感じられる人です。
それは、
関係を前に進めようとする
意識の向きから生まれるものだと思います。
いつも上手に話せなくても大丈夫です。
すぐに切り替えられなくても大丈夫です。
ただ、今の会話は、
情報を前に進めたいのか。
それとも、
関係を前に進めたいのか。
その違いに少し気づくだけで、
会話の空気は変わっていきます。
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Profile
桐生 純子|コミュニケーショントレーナー
多くの対話の現場を経て、
今は、ひとりで抱え込まずに
自分の感覚に戻っていくための
個人向けコーチングを行っています。
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