「わかる、私も」が、会話を止めていませんか|相手を主役にする聞き方
企業研修やご相談の場で、
よく見かける場面があります。
部下が勇気を出して悩みを話したあと、
上司がこう返します。
「わかる、私もそうだった」
その瞬間、
部下の表情が、ほんの少しだけ曇るのです。
責めるような曇りではなく、
話を途中で置いていかれたような、静かな表情。
寄り添いたかっただけなのに。
そんな経験はありませんか。
私たちは、寄り添いたいときほど、
自分の似た経験を差し出したくなります。
でもそれが、
知らないうちに会話の流れを変えてしまうことがあります。
今日は、
相手の言葉を最後まで主役にしておく、返し方の話です。
共感と「同じ」は、少し違う
「私も」と言うとき、
スポットライトは一瞬で相手から自分へ移ります。
相手は、あなたの体験談を聞きたいわけではないかもしれません。
ただ、
自分の気持ちを最後まで受け止めてほしいだけなのかもしれません。
研修や対話の場で、こんな言葉を聞くことがあります。
「頑張っているのに、評価されなくて…」
以前の私は、良かれと思って、
「私も同じ経験があります」と返していました。
そのとき、相手の表情が、
ほんの少しだけ曇ったのです。
今は、こう返します。
「評価されなくて、悔しかったんですね」
すると、相手は続けて話し始めます。
本当に伝えたかったことを。
共感とは、
似た経験を語ることではなく、
相手の言葉の温度を、そのまま保つこと。
そこにあるのかもしれません。
主語を、そっと「あなた」に戻す
「私はこうだった」ではなく、
「あなたは、そう感じたんですね」
たったそれだけで、
会話の空気は変わります。
自分の話をしたくなったら、
ほんの3秒、待ってみる。
その余白が、
相手の本音をもう一歩、引き出します。
「大変だね」より、もう一歩踏み込む
「大変だね」「すごいね」「がんばったね」
それも間違いではありません。
でも一歩踏み込むなら、
・期待していたからこそ悔しかったんですね
・本当は、認めてほしかったんですよね
感情の輪郭を、そっとなぞる。
相手が
「そう、それです」
と言った瞬間、会話は
“情報”ではなく“関係”を前に進めます。
話を奪わないという選択
聞き上手とは、
面白い返しができる人ではありません。
「この人は、最後まで受け止めてくれる」
そう思ってもらえる人です。
主役を譲ることは、
自分を消すことではありません。
相手の言葉が育つ時間を守ること。
それが、信頼になります。
今日の小さな習慣
もし今日、
「私も」と言いそうになったら。
その前に、
相手の言葉を一度だけ繰り返してみてください。
「それは、悔しかったんですね」
会話の深さは、
どれだけ話せたかではなく、
どれだけ居場所をつくれたかで決まります。
主役を譲るという選択。
それもまた、信頼を育てる小さな習慣です。
ここに、少し余白を
もしかしたら、
「私も」と言ったあとに、
ほんの少し空気が変わった瞬間を思い出す人もいるかもしれません。
そのとき、
相手はどんな表情をしていたでしょう。
会話は、言葉だけでできていない。
主役を譲るという選択は、
とても静かな信頼のつくり方です。
🌙こうした「会話の距離感」の話を、
noteで少しずつ続けています。
もし、読んでいて
「少し立ち止まりたいな」と感じるところがあったら。
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今の状態に近いものから、
必要なところだけ、拾ってもらえたら嬉しいです。
Profile
桐生 純子|コミュニケーショントレーナー
多くの対話の現場を経て、
今は、ひとりで抱え込まずに
自分の感覚に戻っていくための
個人向けコーチングを行っています。
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