短編【赤い服の女】小説
志島朋美は、とにかく素直すぎる性格の持ち主である。
うお座の朋美は星座占いの本を読んで、うわ!すごい!きゃー!当たってる!と騒いだ挙げ句よく見るとそれは天秤座の説明文だったりする。
素直すぎる性格というのは信じやすいと性格と表裏一体な部分がある。
朋美は高校一年までサンタクロースの存在をわりと本気で信じていた。
という事実は家族一同を驚愕させた。
どのような人生を歩めばサンタクロースの秘密の露見から身をかわせるのだろう。
サンタクロースの存在を信じていた朋美にも一応の言い分があった。
それはサンタクロースが妖精的な精霊的な存在で年に一度、空飛ぶトナカイに乗って現れる謎の陽気なおじいさんではなく、世界のどこかにサンタクロースの組織があって社会的奉仕活動を物理的な移動手段で行っている世界機構のようなモノだと思っていた、と言うのだ。
高校生なりにサンタクロースの存在を、ちゃんと合理的に考えていたわけだ。
そんなもの合理的でも何でもないのだが。
家族で沖縄旅行に行った際も、そこで飲んだルートビアという癖の強い飲み物を兄の洋が「これはインド人の血だってよ」と言ったのを二十歳過ぎまで信じていた。
そしてその笑えないジョークを何人かの友人に得意げに話してしまった事もある。
洋は、その事をとっくに忘れていたけれど。
事あるごとに兄に騙され笑われていた朋美も、二十四歳になるころには人を疑うということを身につけていた。
「赤い服の人がいる、また出た。また見えた」
今はそれぞれ違う病院に勤めてはいるが同じ看護学校で共に学んだ蜂須賀知恵とたまの休みにランチをする事がある。
その蜂須賀知恵が二車線の県道を挟んだ向こう側の歩道を見つめて言った。
知恵は自称ではあるが霊感を持つ友人である。
「え?なに?」
「ほら、あそこ。赤い服をきた、幽霊。こっち見てる」
そっちを見ると赤い服を着た女の人が本当にいた。
いやいやいや。
朋美は心の中で呟いた。
あれは、私の中学時代の悪友の栗本里佳子だ。
生きてます。
生きてる人です。
十日ほど前に会ったばかりです。
栗本里佳子は朋美が知らない人と一緒にいるので気を使って声をかけない様子だ。
「え?朋美さん、見えるの?あの幽霊」
「え?ええと」
志島朋美は素直すぎる性格である。
蜂須賀知恵が嘘をついているとは思わない。
きっと色んなものを幽霊と思っちゃう、おっちょこちょいさんなんだ。
「え?見えない見えない。どこどこ?」
ごめん、里佳子!あなたは今、幽霊という事になってます!
素直すぎる性格というのは空気を読みやすい性格と表裏一体な部分がある。
空気を読んだ上で道化を演じてしまう事もある。
栗本里佳子が幽霊ではないという事実を告げて蜂須賀知恵を恥ずかしめてしまうくらいなら、私は道化を演じて里佳子には幽霊を演じてもらおう。
「行こう、なんかヤバい。ヤバいよ、ずっと見てる。行こう」
知恵はそう言うと朋美の二の腕をグッと掴んで足速にその場を立ち去った。
ずっと見てる。
そりゃそうだろう。
明らかに目があった友人が声をかける事もせず無視してるんだから。
ごめん、里佳子!今度会った時に、釈明する!
でも、これ、ちょっと面白い話だよなあ。
この話を聞いたら里佳子はどんな反応をするのかなあ。
朋美は、里佳子に会う日を楽しみにしていた。が…。
里佳子が一週間前に殺人事件の被害に遭い死んでしまったと朋美が聞かされたのは、それから二日後の事だった。
※ ネタの提供:一瑠/にのまえあきサンのツイート^_^
ありがとうございました😊
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