🧭ハヤトの冒険05|湖のほとりで
ハヤトの冒険
01|選んでしまった一歩
02|キキを追ったその先に
03|風が動く日気をつけろ
04|風が動いた日
05|湖のほとりで← 今ここ
翌朝の森は静かだった。
風の音はもう残っていない。
ハヤトはベッドに横になったまま、
天井を見ていた。
何となく、昨日のことを思い出す。
あの風。
強いだけじゃなくて、少し変な感じがした。
ハヤトは窓際へ視線を向けた。
昨日、森で見つけた首飾りが、
朝の光の中に静かに置かれている。
手に取って天井にかざす。
よく見ると、かすかに模様が浮かび上がる。
「……なんなんだろ、これ」
「首飾り、だよな……」
◆
「ハヤトー」
森の広場に行くと、モコが駆け寄ってきた。
「あ、モコ、ねぇこれ見てよ」
ハヤトはポケットに入れていた例の首飾りを取り出す。
「わ〜何それー! カッコいいモコ〜!」
「え……?」
思っていなかった反応に、ハヤトは少し戸惑った。それから首にぶら下げると、少し得意げに話す。
「昨日、森で見つけたんだ」

どうやって見つけたのかは、うまく説明できなかった。
「どこにあったモコ?」
「ボクも欲しいモコ! 」
「え……いや、多分同じものは無いと思うよ」
「いやだモコ!」
「探すモコー!」
勢いに押されて、
森の中を探し始めることになった。
二人で倒木の下や岩の隙間、
苔の影まであちこち探してみたけど、
それらしいものは何も見つからない。
「ねぇモコ、そろそろ諦めようよ」
「……何もないモコ」
「ほらね……」
「でも、ほしいモコ!」
そう言いながら歩いているうちに、
気づけば湖へ出ていた。
ぽかぽかと温かい日差しが降り注いでいる。
「うわぁ、ぽかぽかモコ」
「ねむい……モコ……」
モコは木陰にもたれかかり、
そのままウトウトと昼寝してしまった。
ハヤトはクスッと笑いながら、
小さなボートを岸へ寄せる。
湖は静かだった。風もやわらかくて、
昨日とは、まるで違う場所みたい。
ハヤトはボートに腰を下ろし、
そのままごろんと横になる。
「気持ちいいや」
湖の水面が、ゆっくり揺れる。
それから、しばらく穏やかな時間が流れる。
岸辺では、モコが木陰にもたれたまま眠っている。時々耳だけがぴくっと動いて、そのたびにハヤトは少し笑った。
「……たまにはこういう日も、いいな」

──その時だった。カサッと小さく葉が鳴って、ハヤトは顔を上げた。
少し離れた木の根元で、黒猫がじっとこちらを見ていた。
「……キキ」
思わず声が漏れる。
キキは逃げずに、尾だけをゆっくり揺らしている。
「最近、よく会うね」
「今日はどうしたの?」
相変わらず返事はない。
ハヤトはボートを岸に寄せ、静かに降りる。
キキはそれを待っていたみたいに、スッと背を向けた。ハヤトは数歩進む。
すると、黒い背中も同じだけ奥へ進んだ。
「……付いて来いってこと?」
キキは振り返らず、ただ一定の距離を保ったまま、森の奥へ歩いていく。
(また、何かあるのかも……)
ハヤトは一度だけ、眠っているモコを見る。
まだ起きる気配はない。
「……少しだけ。すぐ戻るから……」
小さく呟いて、ハヤトはキキの後を追った。
(続く)
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