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🧭ハヤトの冒険05|湖のほとりで

ハヤトの冒険
01|選んでしまった一歩
02|キキを追ったその先に
03|風が動く日気をつけろ
04|風が動いた日
05|湖のほとりで← 今ここ

翌朝の森は静かだった。
風の音はもう残っていない。

ハヤトはベッドに横になったまま、
天井を見ていた。

何となく、昨日のことを思い出す。

あの風。
強いだけじゃなくて、少し変な感じがした。

ハヤトは窓際へ視線を向けた。
昨日、森で見つけた首飾りが、
朝の光の中に静かに置かれている。

手に取って天井にかざす。
よく見ると、かすかに模様が浮かび上がる。

「……なんなんだろ、これ」

「首飾り、だよな……」

「ハヤトー」

森の広場に行くと、モコが駆け寄ってきた。

「あ、モコ、ねぇこれ見てよ」

ハヤトはポケットに入れていた例の首飾りを取り出す。

「わ〜何それー! カッコいいモコ〜!」 

「え……?」

思っていなかった反応に、ハヤトは少し戸惑った。それから首にぶら下げると、少し得意げに話す。

「昨日、森で見つけたんだ」

どうやって見つけたのかは、うまく説明できなかった。

「どこにあったモコ?」

「ボクも欲しいモコ! 」

「え……いや、多分同じものは無いと思うよ」

「いやだモコ!」
「探すモコー!」

勢いに押されて、
森の中を探し始めることになった。

二人で倒木の下や岩の隙間、
苔の影まであちこち探してみたけど、
それらしいものは何も見つからない。

「ねぇモコ、そろそろ諦めようよ」

「……何もないモコ」

「ほらね……」

「でも、ほしいモコ!」

そう言いながら歩いているうちに、
気づけば湖へ出ていた。
ぽかぽかと温かい日差しが降り注いでいる。

「うわぁ、ぽかぽかモコ」

「ねむい……モコ……」

モコは木陰にもたれかかり、
そのままウトウトと昼寝してしまった。

ハヤトはクスッと笑いながら、
小さなボートを岸へ寄せる。

湖は静かだった。風もやわらかくて、
昨日とは、まるで違う場所みたい。

ハヤトはボートに腰を下ろし、
そのままごろんと横になる。

「気持ちいいや」

湖の水面が、ゆっくり揺れる。
それから、しばらく穏やかな時間が流れる。

岸辺では、モコが木陰にもたれたまま眠っている。時々耳だけがぴくっと動いて、そのたびにハヤトは少し笑った。

「……たまにはこういう日も、いいな」

──その時だった。カサッと小さく葉が鳴って、ハヤトは顔を上げた。

少し離れた木の根元で、黒猫がじっとこちらを見ていた。

「……キキ」

思わず声が漏れる。
キキは逃げずに、尾だけをゆっくり揺らしている。

「最近、よく会うね」

「今日はどうしたの?」

相変わらず返事はない。
ハヤトはボートを岸に寄せ、静かに降りる。

キキはそれを待っていたみたいに、スッと背を向けた。ハヤトは数歩進む。
すると、黒い背中も同じだけ奥へ進んだ。

「……付いて来いってこと?」

キキは振り返らず、ただ一定の距離を保ったまま、森の奥へ歩いていく。

(また、何かあるのかも……)

ハヤトは一度だけ、眠っているモコを見る。
まだ起きる気配はない。

「……少しだけ。すぐ戻るから……」

小さく呟いて、ハヤトはキキの後を追った。


(続く)


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