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「落下の解剖学」(備忘録的感想)

※2024年03月執筆

昨年カンヌでパルム・ドールを獲得し、来週発表される米アカデミー賞でも作品賞、監督賞、主演女優賞、脚本賞にノミネートされている。
予告編を観たときにはミステリーかと思ったが、基本は法廷劇で、ヒューマンドラマの部分も強い作品だった。

ドイツ出身の作家サンドラは、ロンドンでやはり作家でフランス人のサミュエルと知り合い結婚する。
現在はフランスのグルノーブル郊外の山荘で、盲目の息子ダニエルと3人で暮らしていた。
ある日サンドラは、学生の論文執筆のための取材を受けるが、夫が邪魔するかのように大音量で音楽を掛け始めたため取材を中断する。
ダニエルは盲導犬と一緒に散歩に出かけるが、帰宅すると家の前に誰かが倒れていることに気づく。
ダニエルはすぐに、それが父のサミュエルだとわかった。

警察の検死によると、サミュエルには頭部に傷があり、それが落下時に着いたものか、あるいは落下中に着いたものか判別ができなかった。
サミュエルは山荘を民宿に改装すべく、自ら屋根裏部屋を工事していた。
サンドラはその間2階の自室で執筆後に昼寝をしていたのだが、警察は物置の壁に残った血痕が自然落下ではつかない角度にあると判断し、サンドラがサミュエルを殺害したと考える。
サンドラの腕に着いたあざ、ダニエルの事件前後の記憶があいまいである事に加え、サミュエルのPCから事件前日に夫婦が激しく口論した音声データが見つかり、警察はサンドラの逮捕に踏み切った。

ストーリーはこの後法廷に移り、事件までの家族の過去が少しずつ明らかにされていく。
元々作家であったサミュエルがなぜ山荘を民宿にしようとしたのか、そしてなぜ自ら工事を行っていたのか。
そして、二人が激しく口論するようになったのはなぜか、などが、法廷の証言で明かされていくのだが、すべての原因がダニエルが視力を失ったことにつながっていく。
この、過去に何があったかを明らかにする見せ方が秀逸だ。
何も知らなかったダニエルは、自らが関係する両親の赤裸々な過去を知らなければならなくなる。
父を失った直後の少年にはかなりハードな内容で、ダニエルに感情移入して心が潰されそうになった。

クライマックスまでのヒリヒリ感に比べ、ラストはやや拍子抜けの感もあったが、それでもかなり満足した作品だった。
盲導犬の演技が話題になっているが、個人的にはそれに加えて挑発的に振舞う検察官の演技力も、作品全体に大きく機能していたと思う。

37.落下の解剖学

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