【2024年度】ローカルディグ第1弾!文化継承×「イミ(意味)消費」モデル構想
こんにちは!ミライ研の田中です。
現在、地域の文化や歴史を探究し、その地域の特性や背景・ストーリーを多様な形で発信し、地域のファンを増やすことをきっかけに、関係人口の創出や文化継承などを目指す「ローカルディグ」という取り組みを各地域で進めています。
本noteでは、ローカルディグプロジェクトの具体的な取り組み第1弾として、北海道函館市東部地域をフィールドに取り組んでいます、「イミ(意味)消費」を取り込んだ地域文化継承モデルの創出に向けた取組の背景や概要、今後について書いていきたいと思います。
◆取り組み背景
―文化への関心がミライを創る。
いきなりですが、皆さんは「地域文化」に興味を持ったり、「文化継承」に関心を寄せたことはあるでしょうか?
また、「地域文化」と聞いて、何を思い浮かべますか?祭りや伝統行事、民俗芸能や音楽、伝統工芸や建築、伝説・民話や風習など、人それぞれ異なるイメージがあるでしょう。
こうした文化を次の世代に伝える「文化継承」は、”ローカルディグ”の重要な目的のひとつです。しかし、皆さんもご存じのように、文化継承にはさまざまな課題があります。
例えば、過疎化や少子高齢化によって、産業や文化を支える人材が不足し、これまでの歴史や文化を詳しく知る人々が減っていることは、まるで大切な宝物が失われていくようで、とても悲しいことです。さらに、文化財の保存や修復に対する資金不足も深刻な問題ですよね。
一方で、時代の変化に伴い、現代社会の若い世代を中心に文化への関心が薄れていることも、心が痛む現実です。これらの課題は、私たちの大切な文化や歴史を守り、次の世代に伝えていくために、真剣に向き合う必要があります。
いずれの課題に対しても、解決の道を開くためには、多くの人々にその地域の歴史や文化に対して興味や関心を持ってもらうことが不可欠です。これがなければ、取り組みのきっかけすら生まれないでしょう。
「ローカルディグ・プロジェクト」では、興味や関心を生み出すために、地域の特性や背景・ストーリーを感じられる体験や機会を、多様な形(文章や写真、映像、音など)で提供することを目指しています。

これをきっかけに、心に強く刻まれる記憶が生まれ、「この地域文化の担い手になってみようかな?」とか、「友人や家族、恋人にこの文化体験をシェアしてみよう!」といった行動が促されるのかもしれません。
こうした体験が、人々の心に響き、文化継承に関する課題の解決に向けた一歩となるのではないか。私たち一人ひとりの興味や関心、行動が、未来への大きな変化を生み出す力になると私は信じています。
―文化に興味を持つという難しさ。
ただ一方で、文化に興味を持つということは簡単なことではない気がします。文化は日常的なものでもあり、当たり前すぎてその価値に気が付かなかったり、貴重で興味深い文化的な背景を知るきっかけもなかなか持てない現実もあるように思えます。
実は、私自身、ミライ研に所属するまでは地域の文化に興味を持っていたかというと、そうとは言えませんでした。ただ、実際に地域住民の方々に話を伺ったり、文化体験をするなど、さまざまな人や物、ことに触れる中で、気が付いたら地域文化に興味を持ち、文化継承の重要性について考えるようになっていました。

そうした文化への興味を持つ難しさを踏まえて「文化継承」について考えたとき、一体、どのような考えや経験、バックグラウンドを持った人だと、歴史・文化継承により興味を持ってもらいやすいのだろうかと思うようになりました。
そこで、近年拡大している消費行動モデル「イミ(意味)消費」に着目することになりました。一度は耳にされたことがあるのではないでしょうか。
「イミ(意味)消費」とは、2016年にホットペッパーグルメ外食総研エヴァンジェリストの竹田クニ氏によって提唱された、近年の消費行動モデルの概念です。

つまり、社会貢献的な活動に関心を持つ人々の行動ともいえるかと思います。例えば、エコ商品の購入や地域振興に繋がる特産品の購入、ふるさと納税、担い手不足などの問題を抱える伝統工芸品を購入することで文化や技術を守る応援活動など、社会的・文化的価値があるかどうかが行動基準として重視されます。
少し、これまでの人々の消費行動を振り返ってみましょう。「モノ(商品)消費」と「コト(体験)消費」は聞き馴染みがあるのではないでしょうか。大量消費・大量生産の時代からモノ(商品)を所有し、商品そのものの機能的価値を求める「モノ消費」。そこから次第にモノの所有感に満たされ、SNSの登場などを背景に体験や経験にお金を使うことを楽しみ、体験的価値を求める「コト消費」へと消費行動のトレンドは移り変わってきました。
そして、2010年以降、東日本大震災や新型コロナウイルスの蔓延などの自然災害に加え、SDGsの浸透などを背景に、社会的・文化的価値を求める「イミ(意味)消費」の動きが強まってきたとされています。この消費モデルは、ミレニアム世代(1981年~1990年代半ば)やZ世代(1990年代後半~2010年代前半)を中心に広がっているようです。
以下のようにも整理されており、イミ消費の時代は、『どうあるべきか(Be)の時代』とされています。マズローの欲求5段階説でいう「自己実現の欲求」にも近い側面もあるようにも感じつつも、現代の成熟社会において物質的な豊かさよりも、みな自身にとっての意義深さや幸福感など心の豊かさをどこか求めてしまう傾向があるのかもしれません。
消費価値観の大きな変化
モノ消費の時代:何を持つか(Have)
コト消費の時代:何をやるか(Do)
イミ消費の時代:どうあるべきか(Be)
◆取り組み概要
―「イミ消費」を取り込んだ、文化継承モデル構想
このような「イミ消費」を行う層であれば、歴史や文化自体に興味や関心をもってもらいやすいのではないか、だとすると、地域固有の歴史や背景・ストーリーにも関心が高いのではないかという仮説を持ちました。
先行研究や関連研究も参照し、文化に興味を持つ難しさにも向き合いながら、「文化継承」に「イミ消費」を取り込む可能性や意義について考えてみたいと思いました。
まずは、そうした「イミ消費」の層をメインターゲットに想定しつつも、体験的価値を重視する「コト消費」の層や商品・サービスの機能的価値や所有感を重視する「モノ消費」の層も取り込んでいくことも視野に、地域固有の歴史や背景・ストーリーの体験(交流、教育、観光等)の多様な形と発信のあり方について考えていきたいと思います。

◆今後の取り組みについて
本モデル構想の実現に向けて、北海道函館市南茅部(みなみかやべ)を軸とした東部地域をフィールドに活動を進めています。地域固有の歴史や背景・ストーリーといった魅力を再発見し、域内外の人々の関心を呼び込むことを目指してまいります。
具体的には、2024年7月から現地フィールドワークや住民インタビューなどを通して、地域固有の歴史や背景・ストーリーを理解することから始めています。今後は、拡大している「イミ消費」をどのように文化継承に取り込んでいけるのか、についての調査研究も進めてまいります。
そのためには、私たちNTT東日本(ミライ研)だけでなく、あらゆる領域の方々の専門的な知見やご支援を賜り、共に新しい未来を描き、それを実現していきたいと考えています。本取り組みに共感いただける方がいらっしゃいましたら、ぜひお声がけいただけると大変うれしいです。持続可能な文化継承モデルづくりを目指してまいります。
最後に、本活動にあたり、温かいご支援とご理解・協力をいただいた北海道民の関係者の皆さまに、改めてこの場を借りて感謝申し上げます。地元住民の方々に喜んでいただける活動になるよう、努めてまいります。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
引き続き、本プロジェクトに関する活動記事の発信してまいります。ご期待ください!
<参照サイト>Food Deploy | 【竹田クニ】新潮流「モノ」→「コト」→「イミ消費」へ!「共感」の連鎖が供給難時代のカギ
<参照サイト>経済産業省 | 今後の生活製品の可能性~若者・世代マーケティングの立場から
<参照サイト>現代消費潮流概論-消費文化論からみるモノ・記号・コト・トキ・ヒト消費- |ニッセイ基礎研究所
<参照サイト>「イミ消費」で考える食とウェルビーイング ~孤食化と二極化に、つながり・健康をどう関連づけるか~ | 宮木 由貴子 | 第一生命経済研究所
研究員:田中健人(たなか けんと)

1992年兵庫県生まれ。青山学院大学卒業後、2015年NTT東日本入社。入社以来、新規事業の立上げや経営企画業務に携わり、2023年よりミライ研究所の立上げ、推進に加わる。地域に残る伝承や物語、人びとの記憶、生活文化、伝統文化の保存と継承などに関心を持ち、現在は「地域の魅力の発掘・再発見」をテーマにしたリサーチプロジェクトの実証に取り組み、地域愛の醸成や地域ブランディング等への活用をめざしている。また、日本遺産の普及・活用に向けた取り組みにも関心を持つ。
