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根性論は無力? W杯の奇跡を再び。ドーハでの悔恨が活きる『一秒』の執念

先週の土曜日、NHKの『新プロジェクトX~挑戦者たち』を観ました。今回の挑戦者は、男子サッカー日本代表です。

29年前、アメリカワールドカップ(W杯)への出場をかけたアジア地区最終予選で、あと一歩のところで夢を逃した悲劇。そこから2022年のW杯で、優勝候補の筆頭であるドイツとスペインを撃破するに至るまでの歴史が語られていました。

2022年の快進撃は、格下が強豪を打ち破る「ジャイアントキリング(大番狂わせ)」として世界を驚かせましたが、番組ではそれが決して偶然ではなかったと解説されていました。

なぜ奇跡を起こせたのか。あと一歩で格下のチームに負け、夢を逃した29年前の日本代表との違いはどこにあるのか。番組で明かされた舞台裏から、私がとくに感銘を受けた「勝利の秘訣」を紐解ひもときます。

この番組では毎回、その回のテーマ(プロジェクト)に深く関わったキーパーソンがスタジオにゲストとして招かれます。そのゲストから直接、貴重な証言や裏話を聞けるのが、大きな見所です。
今回のゲストは、男子サッカー日本代表監督の森保一もりやすはじめさんでした。

29年前に敗退したW杯予選に選手として立ち会い、奇跡を起こした4年前のW杯では指揮官を務めた森保さんは、その違いを「勝利に対する執念の差」にあると見ています。

「今の選手(4年前のW杯に出場した選手)たちの大半はドーハの悲劇の頃に生まれていなかったので、その言葉を使ってもわかってもらえませんでした」と森保さんは苦笑していましたが、29年前の予選敗退は「ドーハの悲劇」として今も語り継がれるほど、当時の人たちに大きなショックを与えました。

それは、こんな悲劇でした。
カタール・ドーハで行われたアメリカW杯アジア地区最終予選。初の本大会出場まであと一歩に迫ったイラク戦。1点リードで迎えた試合終了間際のアディショナルタイム(後半の追加時間)に、コーナーキックから劇的な同点ヘディングシュートを決められ、その悲願を果たせなくなってしまったのです。

そのコーナーキックを蹴る選手の手前にいたのが、森保さんでした。
「一歩、一秒にこだわらない自分の甘さが、あの失点を防げなかった」
当時の自分をそう深く反省する森保さんの悔恨には、今なお消えない重みがあります。
しかしその失敗には、相手が格下のチームだからという油断が潜んでいたことも自覚していたはずです。

それに対し、2022年のドイツ戦、スペイン戦での日本代表の執念は凄まじいものでした。
とくにスペイン戦での「三笘みとまの1ミリ」と呼ばれる三笘薫選手の粘りは、それを象徴しています。

奇跡は、勝ち越しを狙う場面で起きました。堂安律どうあんりつ選手のクロス(サイドから、ゴール前の味方へ送る長いパス)に対し、三笘選手はゴールラインぎりぎりのところで全力で足を伸ばし、ボールをピッチの中へ戻しました。その執念が生んだボールを田中あお選手が膝で押し込み、決勝ゴールが決まったのです。

まさに「一歩、一秒にこだわった」結果だと言えるでしょう。
森保さんは、「無理だと思っても、最後まであきらめずに追いかける執念は、本当にすごい」と絶賛します。

しかし、ドイツ戦においてもスペイン戦においても、日本が格下だという敵の油断をついた後半の強気な戦略が功を奏していたので、森保監督の采配も素晴らしかったと言えます。しっかりとドーハでの教訓が活かされていたのです。

ポジティブな受け止め方の有名な例えとして、コップの水を「もう半分しかない」と捉えるか、「まだ半分もある」と捉えるかという話があります。
これは、「もう1秒しかない」と捉えるか、「まだ1秒ある」と捉えるかにも通じます。

「1秒しかないから、もう無理だ」と足が止まるか、「1秒あるのだから、まだ挑戦できる」と一歩前に進むか。受け止め方ひとつで、結果は大きく変わる可能性があるのです。その差の積み重ねが勝利へとつながっていきます。いや、奇跡は、その執念からしか生まれないと言っても過言かごんではないでしょう。

ドーハの悲劇が若い選手に知られていなかったと苦笑していた森保監督は、後者を選べなかった自分の失敗を彼らにきちんと伝えていました。それも奇跡を生む力になったのです。

今の時代、根性論は否定的に語られがちですが、技術やチームワークと同様に、それも勝利に欠かせない要素であるはずです。
根性があるからこそ、運すらも引き寄せることができる。技術論から見れば、運も非科学的でしょう。しかし運も勝利に不可欠な要素であることは、間違いありません。むしろ技術のみで勝てると思うほうが、非現実的なのです。

2026年サッカー男子W杯(北中米大会)は、今週6月11日(木)から開幕します。日本の試合は、6月15日(月)午前5:00。対戦相手は、欧州屈指の強豪国オランダ(ワールドカップで3度も準優勝に輝いています)です。

今回の開催地は、あのドーハの悲劇がなければ日本代表が行けたはずのアメリカの地です。その場所で悔しさを晴らしてこそ、ドーハでのリベンジは果たせるでしょう。
先輩たちの最後まであきらめないマインド(ドーハの悲劇で学んだ遺伝子)が、今回も引き継がれていることを信じています。善戦を期待しています。


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