荒れる里山。幽霊屋敷とクマの恐怖に、弱虫ペダルを全開した思い出
今日は、果樹畑を散策中に2メートル半ばほどのゴリラに遭遇し、必死に逃げる夢を見ました。
60近くなると夢はすぐに忘れてしまうものですが、あまりの強烈さに、その瞬間の恐怖だけが今も鮮明に残っています。

最近は連日のように、街中でのクマ出没ニュースが報道されています。ゴリラほど大きくないとはいえ、クマにふいに出会ったら相当な恐怖です。
「背中を見せて逃げるのが一番危険」と言われますが、パニックになれば動転して逃げてしまうのが人間というもの。しかし、逃げてもすぐに追いつかれてしまいます。
クマが全力疾走すると時速40~50キロも出るそうです。
人力でその速度を出せるのは、ロードバイクくらい。しかし、かつてロードバイクにハマっていた私からすれば、その速度で平地を巡航するのがどれほど大変かよく分かります。プロのロードレーサー(自転車競技選手)並みの強靭な心肺機能と脚力がないと不可能な領域です。

もちろん、あの巨体ですから全力疾走できる距離は知れています。50メートル~100メートル、長くても300メートルが限界のようです。
そうは言っても「100メートル7秒台」の瞬発力ですから、オリンピックの金メダリストでも到底敵いません。
遭遇してしまったら、マニュアル通り目をそらさず、静かに後退するしかありません。
クマが近づいてきたら、荷物や上着をその場に置くのも有効です。クマがそれに執着している間に距離を取る時間稼ぎができるからです。
ですが、撃退しようと荷物を投げつけるのは逆効果。絶対に刺激しないよう、そっと地面に置かなければなりません。
かつて私は、マウンテンバイクで近くの山に入り、行きつけのサイクルショップの仲間とトレイルライドを楽しんだものです。クマ対策の鈴を鳴らし、一人で走ることもありました。
カモシカには会いましたが、クマに遭遇したことは一度もありません。仲間から、罠にかかった子熊を見た話を聞きましたが、それ以上の経験談は耳にしませんでした。
今はもう、スポーツバイクには乗っていません。親の介護で時間がとれなくなりましたし、代わってくれる家族もいない以上、怪我をするわけにはいかないからです。
スポーツバイクから離れてみると、これで良かった気もします。当時よりも、クマやイノシシなどの野生動物に会う確率が格段にあがっているからです。
野生動物の行動範囲拡大には、里山の崩壊が深く関わっています。
私がスポーツバイクに熱中していた10年前でも、中山間地は空き家が目立っていました。人気のない山の中でお化け屋敷のような空き家を見ると寒気がし、一刻も早くこの場を過ぎ去ろうと、『弱虫ペダル』の主人公のようにケイデンス(ペダルの回転数)をあげたものです。
この10年の間に、周囲の中山間地の学校も次々に廃校になりました。その集落に残っていた高齢者の多くも亡くなり、より一層、過疎化が進んでしまいました。

野生動物の行動範囲拡大の背景には、温暖化による積雪の減少があるといいます。雪が深くなければ彼らは動きやすく、冬でも山から下りてきやすくなるのです。
暖冬で冬眠しないクマも増えており、もはや一年中、クマが出没するリスクにさらされていると言っていいでしょう。
温暖化も里山の崩壊も、人為的な問題です。
しかし、解決は容易ではありません。もしクマの出没増が「炭鉱のカナリア」だとしたら、私は実際にクマに出会うことよりも、その背後にある事態に強い恐怖を感じます。
もしこれが環境危機に陥る序章ならば、この恐怖からは誰も逃げられません。知らぬ間に、クマからゴリラへとレベルアップするほどの脅威に変化している可能性があります。
事実、世界の多くの国々が温室効果ガスの削減目標を掲げながらも、排出量は高水準のまま推移しており、国際機関からも対策の失敗が繰り返し指摘されています。
クマに出くわした時のように、脅威からゆっくり逃げるのではなく、現実に目を背けずに、ゆっくりとでも粘り強く改善を進めていく。この姿勢こそが、今の我々に求められているでしょう。
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