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宇野千代さんも実践した、病を撃退する人の共通項

私が尊敬している作家の一人に、宇野千代さんがいます。
大正から平成にかけて、作家としてはもちろん、着物デザイナー、編集者、実業家と多方面で才能を開花させた、まさに「多彩」という言葉がふさわしい魅力的な女性です。
小説では『おはん』や『生きていく私』などの名作を遺されました。
今年の秋から放送されるNHKの連続テレビ小説『ブラッサム』のモデルにも選ばれるなど、今なお多くの人に愛されています。

宇野さんは、類まれなる長寿でも有名です。98歳(1897年〜1996年)で天寿を全うされました。
95歳のときには色紙に「この頃思うんですけどね、何だか、私、死なないやうな、気がするんですよ」と書かれたほどですから、ご本人はもっと長生きできると確信していたのでしょう。
その前向きで超人的な考え方は、現代のベストセラー『成瀬は天下を取りにいく』の主人公・成瀬あかりが「200歳まで生きる」と公言する姿にも重なります。

実際、宇野さんは長患いすることなく、最期は急性肺炎でさっと旅立たれました。
生涯現役で、健康的に暮らせると信じて疑わなかった。その活力の源は何だったのでしょうか。

長寿の秘訣を問われた際、宇野さんはこう答えたそうです。
「一日中、病気のことで頭をいっぱいにしないことです」

この姿勢は、病を寄せ付けない、あるいは病から回復するための本質を突いています。
心理学者の小林正観さんの著書には、余命宣告を受けながら奇跡的に回復した人たちの共通項が記されています。
それは、「いかに病気を治すか」と闘病に明け暮れるよりも、「残された時間をどう楽しく生きるか」に意識を切り替えたということ。
「病気を治さなければ」と必死になることは、裏を返せば「病気のことばかり考えている」状態です。それでは心まで暗くなり、生命力が削がれてしまいます。
反対に、楽しいことに目を向ければ、自ずと生きるパワーが湧いてくる。それこそが、病を退ける生命力になるのでしょう。

私が宇野さんに強く惹かれるのは、その鮮やかな「生きざま」です。
自伝的小説『生きていく私』のドラマをきっかけに彼女を知りましたが、その人生は波乱万丈そのものでした。
尾崎士郎、東郷青児、北原武夫……。名だたる表現者たちと四度の結婚・離婚を経験し、戦乱の荒波に揉まれ、事業の失敗も経験しています。
しかし彼女は、決して誰かを恨んだり、過去を悔やんだりしませんでした。「転んだら、起き上がればいい」と、しなやかに、逞しく立ち上がり続けたのです。
これこそが、まさに「一日中、病気のことで頭をいっぱいにしない」生き方の実践だったのだと感じます。

私の父は現在90歳で、今まさに大きな病と向き合っています。
もともと高血圧を抱えていたこともあり、これほど長生きしてくれるとは予想していませんでしたが、90歳になるまでは大病らしい大病をせずにここまできました。
父がこれほど健やかによわいを重ねてこられたのは、宇野さんのように明るく、くよくよしない性格だったからだと思います。
父は今、認知症も患っていますが、それがかえって「病気のことで頭をいっぱいにしない」助けとなり、日々を明るく過ごせているようにも見えます。

病に打ち勝つための父の生命力を高め、人生の幕を下ろすその時まで、充実した日々を送れるように。私はこれからも、父が明るい気持ちでいられるような、温かな支え手でありたいと思っています。


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