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銀河漂流記 ーー遥かなる再会の空(7話)

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目次
登場人物
自己紹介

神々の歪んだ野望

「いやぁ、ここでこんなごちそうを食べられるとは思わなかった。満足、満足」
サブリーダーは、現地で振る舞われた独特の芳香を放つ飲み物にすっかり酔いしれ、宇宙人が用意してくれた部屋に寝転んだ。

ここは、男性メンバーが寝室として使うために提供された場所だ。
リーダーは女性なので、別の部屋にいる。

部屋といっても、平らに掘った地面に木の柱を立て、その上にわらのような植物をのせた簡易なもので、家というよりテントの中にいるような感じだ。

この建物も、ボクらの星の古代人の建物によく似ていた。
古代人の暮らしは原始的だから、大きな差が出ようがないのだろう、と思った。

宇宙人がこれほどボクらを歓待してくれるのは、ボクらを神様と勘違いしているからである。

これもリョウさんのお陰だ。
リョウさんの機転でピンチを切り抜けた後、宇宙人はボクらを彼らの集落に案内してくれ、ごちそうを出してくれたり、女性たちの踊りを見せてくれたりするなど、精一杯の歓迎をしてくれた。

そして先ほど宴会が終わり、彼らが用意してくれた寝室でくつろいでいるのである。

といっても、彼らは原始人。電気などない。
なので、照明のない室内は真っ暗である。

暗い天井を仰向けの姿勢で見上げながら今日を振り返ると、凄まじい一日だった。
宇宙船のトラブルで漂流しそうになったり、奇跡的に発見した星が本当に安全か確認する任務を押し付けられそうになったり、槍を持った宇宙人に囲まれて絶体絶命のピンチになったり。波乱の連続であった。

しかし、いまは手厚くもてなされ、極楽気分。結果オーライである。

「ヨシ、わしはこの星の王になるぞ」
酔っ払って気が大きくなったのか、突如、サブリーダーが高らかに宣言した。

「はあ」
タクさんの声がした。
語尾が上がる「はあ」なので、同調するときに発する「はあ」ではなく、あきれた時に発する「はあ」であろう。ボクも同感だ。

「星の王になるって、どうやってですか?」
タクさんが訊いた。

「この星の奴らを奴隷のようにこき使って、ここに王国をつくるんだ。それから、他の地域を侵略して領土を広げ、最終的にこの星を支配する王になるんだよ」
サブリーダーは明るく野望を語ると、高笑いをした。

「できますかねえ」
タクさんは少し冷めた声で言った。

「できるとも」サブリーダーは力強く答えた。「オレが手から光線を出すポーズをした時のことを覚えているだろ。奴らはオレを神だと思っているから、何でもオレの言うことをきく。それにオレらは文明人で、優れた知識や技術がある。その卓越した能力を使って、ここを一気に文明化すれば、どの地域も太刀打ちできなくなる」

「なるほど」
タクさんの声は明るくなった。

「おお、そうすれば、お前に偉い立場を与えてやるから、お前も贅沢ぜいたくができるし、嫁さんも数え切れないくらいもてるぞ」

「はっ、ありがとうございます。ぜひ、よろしくお願いします」
タクさんは声を弾ませた。

そうか、その手を使えば、神様のふりをしなくても、お母さん似の女性と結婚できるなぁ。
さすがは出世の鬼。悪知恵を働かせて、出世してきた男だ。
自分もサブリーダーに取り入って、高い地位につけてもらおうかと激しく心が動く。

しかしそうなると、一生この男に頭があがらなくなる。
死ぬまでこいつの言うことを聞かなければならないのかと思うと、穴の開いた風船のようにまたたく間に夢がしぼんだ。

「星の王になって、どのような文明社会をつくるつもりですか?」
リョウさんがサブリーダーに訊いた。

「そりゃ決まっているだろ、母星のような文明社会だ。オレたちが持っている知識や技術でつくれる文明社会はそれ以外にないんだから」
サブリーダーは、何を聞いているんだといった感じで、面倒くさそうに答えた。

「なるほど、確かに、そうかもしれませんね。それに母星を真似た都市ができれば、故郷に戻れたような気にもなりますし」

「そうだろ」
リョウさんが肯定してくれたので、サブリーダーの声はうれしそうに弾む。

「でも、母星を真似るのは、やめたほうがいいと思います」
リョウさんはやんわりと言った。

「な、なんでだ?」
サブリーダーの声が再び不機嫌になった。

「同じ失敗をすることになるからです」
リョウさんは、穏やかな姿勢を崩さず答えた。

失敗とは、母星の人類が環境負荷の高い文明社会を築いたせいで、環境危機を招いてしまったことであろう。
それと同じ失敗をしないために、母星の再現をするべきではないとリョウさんは主張しているのだ。

ところが、サブリーダーはもつれる舌で必死に反論した。
「別にいいじゃねえか。所詮、ここはオレたちの母星ではない。よその星がどうなったって、構わねえよ。それに、オレらが生きている間は、環境危機なんて起きやしないんだから」

「いいえ、ここは『よその星』ではないかもしれません」

何を言っているのだろう……。ボクは耳を疑った。
ここがよその星でないということは、ここは母星ということか? そんなバカな話があるわけがない。
ボクは常にリョウさんの味方だが、この発言はサブリーダーの発言より狂っていると思った。
それほど、あのうみのようにねっとりと白濁した、舌が痺れるような飲み物を飲んでいる様子はなかったが、リョウさんも酔って思考力が低下してしまったのか?

「はぁ、そんなわけねえだろ。アホか」
サブリーダーは一笑した。
タクさんの失笑も聞こえてくる。

「証拠はあります」
その声には、あのおかしな飲み物の濁りなど微塵みじんもなかった。

暗闇の中で冷徹なまでに響いたその言葉に、ボクは固唾かたずんで、次を待った。


次回の話


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