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骨太ショック市場

7月3日の国内債券市場で長期金利新発は急上昇し、10年物国債の利回りが一時2.810%に上昇(債券価格は反落)した。この利回り上昇の背景には内閣が閣議決定後に提出する「骨太の原案」が影響したと考えられている。

内閣が毎年6月~7月あたりをめがけて閣議決定する経済財政政策の基本方針を「骨太の原案」というが、これは次年度の予算編成に大きく影響してくる。そのため国会が終わるこの時期に提出される。

『骨太の方針2026』
https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2026/0630_shiryo01.pdf

日本10年国債推移

30日に骨太の方針が公開されてから長期金利は上昇傾向にある。


骨太の印象

今回の骨太の方針をどうとらえたのか。3つに分ける。
①財政運営の根本的な変更
②日本型産業の追求
③インフレ容認の色あい

財政運営の根本的な変更は今までの骨太の方針と比較すると一目瞭然、従来の「PBの黒字化」が財政運営の一大重要事項のように見られていたが、今回は「責任ある積極財政」「債務残高GDP比の安定的低下」「成長による税収増」に軸が置かれている印象だった。

今回の骨太を象徴するのが「財政規律」という言葉がなくなったことだ。

”今までの緊縮財政を大きく翻して現内閣は積極財政をしていきます。"
と市場に表明した瞬間であった。

問題はその表明を市場は受け入れるのか。いや正確には受け入れざるを得ない状況なのだが、それによる対価は確実に払う必要がある。

②の日本型産業の追求は日本成長戦略会議で具体化された17の戦略分野が当てはまる。内容としては
1.AI・半導体
2.デジタル・サイバーセキュリティ
3.情報通信
4.量子
5.防衛産業
6.航空・宇宙
7.海洋
8.造船
9.マテリアル
10. 合成生物役・バイオ
11. 創薬・先端医療
12. 資源・エネルギー安全保障・GX
13. フュージョンエネルギー
14. フードテック
15. 防災・国土強靭化
16. 港湾ロジスティクス
17. コンテンツ

となっている。その中でも資金流入において期待される分野は5つ

1.AI・半導体
4.量子
5.防衛産業
6.航空・宇宙
12.資源・エネルギー安全保障・GX

以上の5つが既に国策として示されいる成長分野であり中長期の投資テーマとして注目を集めている。

③のインフレ容認の色あいは市場で議論が過熱している最中なので火中の栗を広いような形で述べていきたい。

骨太の方針2026を見ると勿論インフレ容認の記述はない。日銀の独立性を担保する上(名目上)で内閣がインフレを容認する発言を文章で書くのはまずい。そこで①の財政運営の根本的な変更である。

次のセクターで紹介するが今回の骨太の中で“財政規律”という言葉が消えた。積極財政をするので財政規律は現政権には似合わない言葉だと思ったのか採用されなかった。

しかし国債市場は株式市場以上にプロの密度が高い世界である。そのプロ達は日本国債をどう見極め、日本市場をどう評価するのか。

1.  財政運営の根本的な変更

日本10年金利

「骨太の方針2026」が発表された後の市場の反応は今までの日本にとって過激そのものだった。

日銀の総裁が安倍政権を代表する緊縮財政×金融緩和の黒田総裁時代から植田総裁に変化し、今までの金融緩和政策を改めると表明した。

その中でも一番の目玉がYCCの廃止だった。YCC(イールド・カーブ・コントロール)は日銀の定めた目標金利に対して長期国債をその額まで無制限に買い入れる、という政策だった。

その背景には政府の緊縮財政と不況時代に日銀が金融引締めを行い長期金利が上昇してしまえば住宅購入といった長期商品の消費が落ち込み、さらなるデフレを招くと考えたからだった。

その結果10年債券利回りは1%を割り込んでいた。0.1%で推移する10年債利回りが通常だった日本は、多くのサラリーマンが変動金利で住宅を購入し、変動金利が、金利のない世界のスタンダードで根付いてしまった。

だが、日銀が無制限に国債を買い入れることは市場の原理を無視した危険な行為である。通常そうであるべき価格で取引されるべき商品が外圧によって抑えられるわけで仮に”国債の買入を減額します。今日から長期金利は市場取引に一任します”と表明すれば需要が一気に変化し、市場は金利を求めるようになる。それが今なのである。

また、国債の最大購入組織である日銀は利回りに対する利払いの増加が日銀を苦しめることになる。利払いの増加は結果的に日銀のプライマリーバランスを圧迫し、円の信用問題になる。

「円はデフォルトしない」

通貨発行権を持つ日本こその理論のようだが、その対価は異常な円安時代になるかもしれない。では、骨太の話に戻そう。骨太が発表されてから長期金利が上昇したのは周知の事実である。

ここは骨太が全面的に影響しているかといえば議論の余地はあるところだが、実際市場は骨太が公表された後に上昇が発生したわけで一端の原因はあると言っていいはずだ。

今回の金利の上昇は、今までの上昇よりも重い意味を持つ。
政府が積極財政を行うことに対して市場は反発したメッセージを含むからである。

それも一気に上昇した。これが最大のメッセージである。

政府は積極財政のための準備として日銀の利上げを阻止したい意思がある。しかし日銀もプライマリーバランス正常化に向けてYCCの廃止と金利の正常化がしたい。

そんな中で政府は積極財政で経済を刺激したい。

その意思疎通が取れていないような事が今回の骨太で見えてくるのではなかろうか。

「財政規律」という言葉を抜いた内閣には重い責任が乗っかった。

面白いのが骨太の方針を発表してから市場が反応したために政府は骨太の方針の文言を修正したのである。
さらにその修正理由が市場の反応を受けて、というのだからなお面白い。

要は、政府は市場に勝てなかったと表明した瞬間である。政府が主導で市場を動かしてきたのにも関わらず、ここで逆転した。市場が政府を動かしてしまった。これほど信用リスクを疑問に思う瞬間は今までになかった。

国債は今まで日本国内で保有することが当たり前だったが今は海外投資家が買い始めている。その動きが去年から活発になってきた。日本政府は海外の市場参加者を理解する必要がある。

2.日本型産業の追求

「フィジカルAIの構築を軸とする『AIトランスフォーメーション(AX)』を全産業で加速し、人口減少下においても高付加価値を生み出す経済構造への転換を図る。」と強く書かれている。

高市内閣のAIトランスフォーメーション(AX)に関する意向としては、物理世界を基盤とする導入支援を考えている。現状の非物理世界での運用は民間企業が先立って導入しているため、日本のモノづくり産業の現場で導入を進めることがAI運用国としての特色を感じることができる。

フィジカルAIは製造業、特にインフラ産業に対して強いアプローチを持っている。フィジカルAIは領域だけで考えると幅が広くなってしまう。例えば農業を行うようなフィジカルAIがいたり、中華を作るフィジカルAIがいたり。

私の意見二なってしまうが、ここでのフィジカルAIのニュアンスは、非物理的世界から物理世界へ何かしらの影響を与えることができるようなAIをフィジカルAIだと認識しているのではないか。と考えている。

例えば、車製造におけるベルトコンベア式の製造過程に親となるAIを配置し、製造のデータを集め、データから製造プロセスの簡易化や自動組み立て、検品処理といった指示を出すようなAIを想定している。

映画「アイ・ロボット」に出てきたような個々単位でのフィジカルAIの産業導入は研究開発費やランニングコスト、高度な専門知識を必要とするなどの課題が山積みになっていることを考えると妥当ではなかろうか。

余談はこの辺りで。。。

実際にフィジカルAIの研究開発と導入を行っている企業は未だ少ない。規模の在る企業で行える特権的な産業セクターであるとも考えられる。

【日立】

日立(6501)

日立Lumada3.0はフィジカルAIの脳みそとなるソフトウェアプラットフォームが存在する。そのシステムの中にあるのがHMAXであり、それぞれが産業用途別に「HMAX Mobility」「HMAX Energy」「HMAX Industry」がある。

https://www.hitachi.com/content/dam/hitachi/global/ja_jp/press/articles/2026/01/0129b.pdf

HMAX Industryに着目すると、役割は製造プロセスの技術低支援とサポートである。製品立ち上げの加速やエネルギー消費の最適化、製造業に直面する労働者の安全・品質・生産性などを分析し、行動できるよう反映する。

このシステムでは民間企業の製造システムのプロセス支援となるが、仮に公共機関との連携を行えば、劣化した下水管を過去の資料から分析し、効率的な改修工事の実施や管理が可能になる。

公共下水管の耐用年数は約50年と言われており、1980年台に大規模な下水管工事が行われていることを考えると、下水管工事の改修を全国的に行っていく必要性がある。

フィジカルAI関連銘柄 一覧

【菊池製作所】

菊池製作所(3444)

企業の製品開発に使用される試作品や金型の製作に強みを持つ。
「総合ものづくり支援企業」と言われる幅広い分野の製造業で新技術・製品の創出支援を行っている。
注目なのは、「ものづくりメカトロ研究所」を中心に、大学・研究機関との共同研究を続け、連携のネットワークを拡大してきた点。
サポート・サービスロボット分野を中心に製品化に移行した案件については共同ベンチャーを設立。国・地方自治体も巻き込み、資金面も含めて事業化を支援しています。
※サポート・サービスロボット:ヒトの生活や能力を支援するロボット・装置。工場での稼働率を向上させる産業用ロボット(自動機)と異なり、製作では使う人や用途に合わせて微調整が求められる。

https://www.kikuchiseisakusho.co.jp/より引用

試作から量産までをワンストップで行う「開発型製造業」。
特にロボットの試作・開発において強みを持ち、自社ブランドの装着型作業支援ロボット(「マッスルスーツ」等の受託開発・製造など)など、フィジカルな現場の課題をハードウェア技術で解決することに長けている企業。

【川田テクノロジーズ】

川田TECH(3443)

橋梁建設大手の川田テクノロジーズは、工事現場などで働く全身型ヒューマノイドロボット(ヒト型ロボット)の運用試験を2025年秋に開始した。AI(人工知能)が状況を判断する汎用ロボットの開発を目指す。現実世界でロボットを自律制御する「フィジカルAI」は国土交通省も開発・実証を推進する方針を示し、官民双方で活用に向けた取り組みが進む。

ヒト型AIロボットが工事現場へ、川田テクノロジーズが運用試験開始 | 日経クロステック(xTECH)

橋梁・土木といったインフラ事業と、産業用ロボット事業の二本柱。
特に傘下のカワダロボティクスが開発する人共存型ロボット「NEXTAGE」が人間と同じ作業空間で働くフィジカルAIの先駆け的存在。
ハードウェアとAIを組み合わせた現場作業の自動化に強みがある。

【安川電機】

安川電機(6506)

工場の生産ラインの一つの単位である「セル」を産業用ロボットやサーボモータ、インバータで自動化することを得意としてきました。
工場の機器の稼働状況(プロセスデータ)や生産状況(ステータスデータ)を、熟練者の経験に基づいた”暗黙知”ではない”数値”として生産管理することができるようになります。
データで管理することで稼働停止の赤いランプをなくし、稼働している緑のランプを点灯させ続ける、それがお客さまにご提供していきたいことです。

アイキューブメカトロニクス | 製品情報・ソリューション | 安川電機

産業用ロボットおよびモーター・ドライブ技術の世界的なパイオニア。
製造現場におけるロボット化の基盤を支えており、AIを用いた高度なモーション制御や、デジタルデータとフィジカルな動作を統合した「i3-Mechatronics」構想を推進している。

昨日(9日)タイムリーに出たニュースの中で安川電機がAI搭載ロボを生産したことが示された。AIロボットの最大の利点は自ら学び、改善し、行動を行うところにある。特にその改善データが蓄積されていくにつれ学習データは倍増し、様々な産業に導入する際の強みになる。

【ハーモニック】

ハーモニック・ドライブ・システムズ(6324)

この領域で注目を集めているのが、1970年設立で小型精密減速機の分野で世界シェア首位を握るハーモニック・ドライブ・システムズ(以下、ハーモニック)。
2025年度の売上高570億円、営業利益15億円を見込む中堅企業ながら、時価総額は4000億円を上回る(26年3月時点)。
主力製品は、創業時から磨き続けてきた減速機の波動歯車装置「ハーモニックドライブ」。
丸山顕社長が「基本特許が切れてなお、これほど長く用いられる部品は稀だ」と自負するように、自動車から航空宇宙まで用途は幅広い。
減速機はロボットの関節に搭載され、動作精度に直結する重要な部品だ。とくにヒューマノイド1体当たりの減速機搭載数は、従来の産業用ロボットの約6~10倍に上るともされる。どれほどAIが進化しても、関節の歯車が精巧でなければ、指先の精密な動きを実現できない。
同社は2月、東証スタンダード市場からプライム市場へ区分変更した。ここにきてアクセルを踏み込む背景には、部品市場への成長期待がある。

フィジカルAIで脚光「小型減速機」世界王者の野心━━創業56年目にプライム上場、ヒューマノイド部品で世界中から熱視線 | ビジネス | 東洋経済オンラインより引用

フィジカルAIで脚光「小型減速機」世界王者の野心━━創業56年目にプライム上場、ヒューマノイド部品で世界中から熱視線 | ビジネス | 東洋経済オンライン

ロボットの関節部に不可欠な「精密減速機」のトップメーカー。高精度・小型・軽量な減速機は、人型ロボットや産業用ロボットが正確に動くための「関節」として不可欠です。AIが指令する複雑で繊細な動きを、物理的に再現するための心臓部を供給しています。

【ヒーハイスト】

ヒーハイスト(6433)

 産業ロボット向け直動機器(ベアリング)の製造を主力としている。また、同社の高技術力を背景としたヒューマノイドロボット分野への取り組みにも注目が集まっている。今月2日には「KyoHA(京都ヒューマノイドアソシエーション)」に参画すると発表。KyoHAは、ヒューマノイドロボット産業の再興を目指して京都を拠点に設立された新団体で、上場企業では村田製作所<6981>やSREホールディングス<2980>なども参画している。株式市場ではAI分野における次のステージとしてロボットとAIの融合などをコンセプトとした「フィジカルAI」が投資マネーの関心を集めており、同社は時価総額50億円未満の小型株ながら、関連有力株の1社として頭角を現している。

ヒーハイストが急騰演じる、フィジカルAI関連の関連有力株として頭角現す | 個別株 - 株探ニュースより引用

ヒーハイストが急騰演じる、フィジカルAI関連の関連有力株として頭角現す | 個別株 - 株探ニュース

精密直動機器(リニアガイド等)の専門メーカー。ロボットの動きを滑らかかつ高精度に支えるためのパーツに強みがあります。また、近年は自動化ニーズに応えるべく、搬送ロボットなどの開発・支援にも注力しており、フィジカルAIの「足回り」を支える企業です。

【ファナック】

ファナック(6954)

ファナックはロボットが状況を理解し自律的に動く「フィジカルAI」を推進し、以下の4技術を実現しています。

1. 言葉で操作 生成AIが人の指示を理解し、プログラミング不要でロボットが自動実行。

2. 人を避けて作業継続 AIが人の動きを予測し、ロボットが停止せず安全に回避。

3. 2本アームで柔軟物を配線 力覚制御でケーブルの張りを感じ取り、人手のように繊細に配線。

4. 動く部品を追従しながらねじ締め AIが3D認識し、ワークの動きに同期して精密作業を継続。

フィジカルAIとは?|定義から最新のフィジカルAIシステムを解説! - オープンプラットフォーム特設ページ - ファナック株式会社より参考

産業用ロボットおよびNC装置の世界最大手。
工場の自動化(FA)におけるデファクトスタンダードを握っている。
AIを用いた異常検知や、ロボット同士が自律的に連携する「FIELD system」など、フィジカルな製造現場にAIを実装するプラットフォームを構築している。

それぞれの企業を分野別で考えると「安川電機・ファナック」は既に機械を持っている点に大きなアドバンテージがある。その分スピード感を感じることができる。安川電機の"i3-Mechatronics"ファナックの”FIELD system”はハードウェアの売上にアップデートする形で新しいネットワークを築こうとしている。

それに対する精密機械としてハーモニックの減速機・直動機器は生産現場へのフィジカルAI導入の後押しとなる。人間による操作、機械による自動操作の精度を向上させる上でディフェンシブに近い推移をしていく。十分な需要がある。

加えて、菊池製作所ト川田テクノロジーズは実際の現場運用で先鋭的な存在感を発揮している。特に官民連携は政府の指針に対して順応している。夢を抱かせる。

フィジカルAIは既に注目株として一部は人気を集めているが、政府の骨太の方針によって更なる夢として存在感を示すことになるが、現場との温度感に疑問を抱き始めるのは時間の問題ではないだろうか。
AI企業の収益構造と投資額に乖離が見えるように長いタームで実現する業界であることは間違いない。それに対して市場が一方的に熱狂し金が集まっているのには危機感がある。

半導体関連銘柄 一覧

フィジカルAIに引き続き半導体関連株にも注目があつまる。

現状、政府が支援するAI分野というのが業種別の特化型AIであり米国の総合型AIと比べるとニッチな市場での戦いを望んでいるように見える。

一方で半導体関連産業は日本企業を長年支えてきた。
AIのみならず、半導体は炊飯器にも使われるレベルで汎用している。

キオクシアに始まり、東京エレクトロンといった近年注目を集めた企業や村田製作所の株式に着目して関連株の判断を仰ぎたい。

【キオクシア】

キオクシア(285A)

上場時の2500億円の赤字を克服し、一時は日本最高値の株価を達成したキオクシア。
先日、べインキャピタルによる全株売却が完了し、投資フェーズとしては一区切りついた。

6月22日の最高値を更新してから下落圧力が続いていたが、7月10日の市場は上昇圧力が働きモメンタム買いが垣間見える。一時7万を割ったが現在は8万円台前後で推移している。

決算報告では、生成AI向けデータセンター需要の拡大を背景に、売上収益が2兆3,376億円(前期比37.0%増)、営業利益が8,704億円(同92.7%増)、純利益が5,545億円(同103.6%増)と大幅な増収増益となった。

資産は3兆6,901億円へ拡大し、自己資本比率は37.9%まで改善した。
営業キャッシュフローは6,165億円の黒字を確保し、期末の現金及び現金同等物は4,707億円へ増加した。2027年3月期第1四半期もAI向け需要の継続を背景に、大幅な増収増益を見込む。

【東京エレクトロン】

東京エレクトロン(8035)

半導体装置製造企業の大手である東京エレクトロン。AIサーバー向けのロジックやDRAM投資が旺盛で、強気相場が続く。一時的な調整が入っているようなインデックスだが、需要は堅調であり、一旦下落が収まった後は上昇していく。

2026年3月期は、売上高が2兆4,435億円(前期比0.5%増)と微増となる一方、営業利益は6,249億円(同10.4%減)、経常利益は6,303億円(同10.9%減)と減益。
一方で純利益は5,744億円(同5.6%増)と過去最高を更新した。
総資産は2兆8,609億円、自己資本比率は71.5%へ上昇し、財務基盤は一段と強化された印象。

営業キャッシュフローは5,397億円の黒字を確保し、期末の現金及び現金同等物は5,054億円となった。
2027年3月期中間期は大幅な増収増益を見込んでおり、年間配当は628円へ増配、中間配当は361円を予定している。

【村田製作所】

村田製作所(6981)

受動部品(コンデンサ等)の最大手である村田製作所。半導体関連株として認識されるため先日の下落圧力を強く受けた。一方で、村田製作所は既に販売ネットワークを構築しており、スマホ、車載部品、AIサーバーといった幅広い分野で構築されている。

そのため、AIブームとは違った目線で村田製作所を評価する必要がある。物理的なハードウェア産業はDC設立を含めて振興状況であり、今後も堅調な需要がある。

https://corporate.murata.com/-/media/corporate/about/newsroom/news/irnews/irnews/2026/0707/2607-own-shares-j.ashx?la=ja-jp&cvid=20260707001852000000

2026年3月期は、売上収益が1.83兆円(前期比5.0%増)、営業利益が2,818億円(同0.8%増)、純利益が2,339億円(同横ばい)と増収・利益は堅調に推移した。コンポーネント事業が好調だった一方、デバイス・モジュール事業は減収となった。総資産は3.2兆円へ拡大し、有形固定資産や棚卸資産が増加した。2027年3月期は売上収益1.96兆円、営業利益3,800億円、純利益2,930億円と大幅な増収増益を見込み、年間配当は70円を予定している。

半導体関連株が日経平均の下支えとなり、上昇トレンドを生み出している。

一方で、ボラティリティが高くなっていることが懸念材料としてある。半導体関連株に対する市場の評価は異常なほど高い。高すぎるあまり調整タームにいる現状、決算結果が堅調でも株価が下がるような状況が発生している。

半導体関連株に対する調整タームが起きている現在でも期待値は常にピークを思わせるような動きをしている。ベアブルの活発な市場は正直静観しながらロングで持ちたい。

4.量子

量子分野の期待値はAI開発以前から高かった。AIはその速度を加速さえた存在であった。量子コンピュータと暗号耐性の確保はAI時代において、国力になる。

よく、各国の量子コンピュータの性能比較を行った記事が出ているが、本当に重要なのは量子コンピュータを利用した創薬の開発やマテリアルの開発である。

民主党政権時代にスパコンに関して蓮舫議員が「2位じゃダメなんですか」で話題になったが、スパコンの性能を引き上げることは結果的に安全保障や疫病に対する加速度的なワクチンの開発に貢献する。

量子技術関連銘柄 一覧

【富士通】

富士通(6702)

富士通の量子技術の強さはハードウェアからソフトウェアまで一貫して研究開発を行うスキームにある。
理化学研究所と共同開発して超電導量子コンピュータの開発を手掛け256量子ビットコンピュータの提供が開始されている。

1024量子ビット機を見据えた超伝導量子コンピューターの開発

この256量子ビットは国内最大級規模で2023年に公開された64量子ビットから約4倍まで拡張されている。これは日本の快挙である。

【NEC】

NEC(6701)

NECと聞くと世界で初めての超電導量子ビットの開発に成功したパイオニア的な存在であることを知っている人もいるはず。。。

最近は生体認証技術のニュースが増えて量子分野が雲隠れしているように見えますが、研究開発は熱心。

物流拠点や工場の生産工程で使わてるような最適化、効率化に必要な組み合わせ式の計算技術(量子アニーリング)の研究が行われている。

フィジカルAIでも少し触れたが物流拠点に対する技術的なアプローチは以前よりも積極的になってきている。物流問題2026で世間にも知られたように以前まで物流業界はAtoBの間の大きなコストと認識されていた。

その点を経営的な目線で見直すことで在庫管理の効率化や配送の効率化、それが結果的に企業の利益にも直結するような非常に重要なセクターとなっている。

その点でNECの考える技術の応用は期待が上がる。

【NTT】

NTT(9432)

ちょっと前の話だがNTTのlasolvに関して発表があった際にネット上で大々的に批判されることがあった。

当時ニュースを見ているとNTTの技術は嘘のように報道されていることに正直憤りまで感じるほど酷いありさまだったと思い出す。

この問題に関して私は量子コンピュータの情報伝達ミスだったと思っている。

報道会社たちがこぞって量子コンピュータのように報道したせいで認識の齟齬が発生し期待値が下がってしまった。そんな感じであろう。

組合せ最適化の一つであるMax Cut問題の測定図

当時NTTが公表した量子技術はイジングマシンと言われる組み合わせ最適化問題に対する専用機だった。

一般的な量子コンピュータと混同されやすいが今回はこれが混同されてしまったがために酷評される結果になった。

先ほどNECの量子アニーリング技術に関して触れたが、これも量子コンピュータとは別の形態を持っているため混同には気を付けなければならない。

現在のNTTは光通信技術を応用した光量子コンピュータの研究開発に勤しんでいる。また、超電導技術のような超低温での運用や莫大なエネルギー利用ではなく稼働をより低コストで運用可能にするための技術が開発されている。

今後、世界的にエネルギー関連の問題はより活発化していくことが予想される中で注目の技術の一つである。

5.防衛産業

2021年から発足した岸田政権下の防衛費増額は注目であった。岸田政権後の石破内閣でも防衛費の増額が行われ、現高市政権は特に国家防衛の観点での発言が多い印象がある。

日本国防衛費推移

以前までの日本の防衛費はGDP1%前後の約5兆円程度が毎年予算に盛り込まれているのが通例であった。
しかし2026年の防衛関連予算は25年度当初予算比3.8%増の9兆353億円(米軍再編経費などを含む)となっている。

近年の中露の動きが活発化してきていることを考えると当然の動きである。また以前『米国一国覇権のレジリエンス』で述べさせていただいたが、米国は世界の警察の座から降りたがっている。

先日トルコで開催されたNATO会合でトランプがEU各国に対して防衛のフリーライドが目に余る、各国は防衛費の増額と軍事関連の産業を支援するように求めたように米国が軍事を展開すること自体にリスクと莫大なコストが必要になることに嫌気すら感じさせる。

実際にNSS2025の中でトランプはアメリカ大陸及び北大西洋の防衛は行うが、それ以外の国は自国がリーダーシップを取って防衛を行うべきだとしている。その中で日本のような軍備永久放棄を掲げている国は非常に苦しい。

国内で幾度となく議論が行われているが、タイムリミットが見えないところが非常に不安なところである。

ちなみに現在、ロシアと戦争を行っているウクライナは独立宣言を行った時に核の永久放棄の宣言を行っていた。結果的にウクライナは世界2位の核保有国の座を降りることを選択した。しかし、その後のウクライナは皆様ご存じの通りの結果が発生した。

この事例は非常にレアケースと言えるかもしれない。陸続きであり、以前ロシアから独立した、その時期もソ連崩壊に伴っての意味合いが強かった。

しかし、近隣である中国の領海権の主張は日に増し、台湾併合の話題を出してきている。中国は過去2回台湾の併合に失敗しているが、その勢いも徐々に増しているように見える。

これは政治的な話題ではなく、市場の見解で考えるとリスクが大きくなればそれに関連する企業の株は確実に上がる。これが道徳的に正しいとは判断できないが、ここでは数字で話すことが効率的で進みやすい。

防衛産業関連銘柄 一覧

【三菱重工】

三菱重工(7011)

日本の軍事費の増額に伴って三菱重工の2026年度5月12日に発表された決算では防衛予算の拡大や各国の安全保障需要の高まりを背景に、航空・防衛・宇宙セグメントが業績を牽引した。

売上収益は4兆9,741億円(前期比14.1%増)、事業利益は4,322億円(同21.8%増)、親会社株主に帰属する当期利益は3,321億円(同35.3%増)と大幅な増収増益を達成。

航空・防衛・宇宙部門では、防衛航空機や飛しょう体、艦艇などの需要拡大が収益を押し上げている。

資産は8兆2,697億円へ拡大し、自己資本比率は37.3%まで改善。営業キャッシュフローは9,426億円の黒字、期末の現金及び現金同等物は1兆3,348億円まで増加した。

2027年3月期も、防衛需要やエナジー事業を中心とした受注拡大を背景に、売上収益5兆4,000億円、事業利益5,400億円と過去最高水準の業績を見込んでいるような状況である。

次の注目は8月の決算発表であるが、高市政権と米国の動きを考えると安定的な株価上昇は盛り込まれると次年度まで安定的な需要が発生することを盛り込める。

【川崎重工業】

川崎重工業(7012)

川崎重工業も防衛費の拡大や航空宇宙分野の需要増加を背景に、売上収益は2兆3,112億円(前期比8.5%増)、事業利益は1,451億円(同1.4%増)、親会社の所有者に帰属する当期利益は1,081億円(同22.9%増)と増収増益を達成している。

航空宇宙システムやエネルギーソリューション&マリン事業が業績を牽引し、防衛・航空機関連の需要拡大が収益を下支えをしているような状況である。

航空・宇宙産業でも触れさせていただくが高市内閣は北海道を中心に産業開発の新天地として開発を進めている。

ロケットの開発・発射上に加え、国策プロジェクトのRapidus(ラピダス)の工場は北海道の千歳にある。

三菱重工業はJAXAのH3ロケットに開発に携わっているが、防衛産業は派生して他産業の研究開発に貢献している点でディフェンシブ株の印象が強くなるが、現政権では大きいアドバンテージがある。

では川崎重工業の直近である2026年3月期の連結決算に戻る。
資産は3兆3,246億円へ拡大し、親会社所有者帰属持分比率は26.4%まで改善。営業キャッシュ・フローは1,400億円の黒字を確保した。
2027年3月期も航空宇宙システムや精密機械・ロボット事業の伸長を背景に、売上収益2兆5,600億円、事業利益1,700億円と過去最高水準の業績を見込んでいる。
※次の決算は8月7日を想定である。

【IHI】

IHI(7013)

IHIは数あるモノづくりの企業の中でも1853年創業と長い歴史がある総合重工業メーカー。特に航空機用ジェットエンジンのシェアは国内トップクラスであり、先の宇宙開発の関連企業としても注目が集まっている。

ディフェンシブの要素が大きい企業ではあるが、未だ過小評価は否めないところがあると感じる。

さて、IHIの決算は防衛予算の拡大や民間航空機需要の回復を背景に、売上収益は1兆6,434億円(前期比1.0%増)、営業利益は1,655億円(同15.3%増)、親会社の所有者に帰属する当期利益は1,609億円(同42.8%増)と増収増益を達成している。

防衛事業や民間向け航空エンジン事業が業績を牽引し、防衛装備品や航空エンジン需要の拡大が収益性向上に寄与している。

総資産は2兆4,285億円へ拡大し、親会社所有者帰属持分比率は26.9%まで改善。営業キャッシュ・フローは1,213億円の黒字を確保し、期末の現金及び現金同等物は1,550億円へ増加した。
2027年3月期も、防衛・民間航空エンジン分野や原子力事業の拡大を背景に、売上収益1兆8,300億円、営業利益2,400億円と大幅な増益を見込んでいる。

6.航空・宇宙

漸く市場でも注目を集めてきたであろう分野がこの航空・宇宙産業。今までの評価は一部の資本家によるコンテンツ消費のような認識が広まり、あまり注目を集めることはなかった。

しかし、日本国内でJAXAのH3ロケットの発射やスペースワンのカイロスロケットの発射が話題になると一気に現実味を帯びてきたと注目が集まっている。

また、宇宙産業は安全保障の観点からも重要視されつつある分野の一つでもある。特に通信インフラは有事の際に狙われやすい。台中の軋轢が広まっていく中で中国は台湾の海底ケーブルを傷つけてしまったとする報道を幾度としている。

これは国内を混乱に巻き込む非常に効率的な方法である。国際通信ができないことは現代のスマホ社会を考えると非常に危険な事であることは容易に考えられる。その際に宇宙産業が注目されるのである。

スペースXの提供する衛星通信は物理的に遮断を防ぐことができる唯一の方法である。既に日本の報道機関では山の中での報道の際に安定的な電波の確保からスターリンクを利用した放送がスタンダードになってきている。

日本の宇宙産業に話を戻すと、ポテンシャルは「サイズ」にあることが分かる。

筆者作成

カイロスロケットのサイズ感は非常に小さく、生産量もスペースXのファルコン9と比べると圧倒的であり、ロケットの回転率が高い。

ロケット事業は一部の資本家のための観光産業だけでなく定期的な物流事業に応用されていく。まだ近未来の技術に思われているが、その技術は着実に向上し、経験値を積むことが今の課題になっている。

航空・宇宙関連企業銘柄 一覧

【スカパーJSAT】

スカパーJSAT(9412)

民間通信インフラ事業を展開するスカパーJSAT。有料多チャンネル「スカパー」の展開で有名だが、その衛星に関してスカパーJSATの持つ17機の静止衛星はアジア最大規模である。

決算では、衛星通信需要の拡大や安全保障・防衛分野での宇宙利用の進展を背景に、営業収益は1,276億円(前期比3.1%増)、営業利益は353億円(同28.3%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は233億円(同22.0%増)と増収増益を達成している。

やはり宇宙事業が業績を牽引し、衛星通信サービスの拡大に加え、防衛・安全保障分野で高まる宇宙インフラ需要が収益性の向上に寄与。

総資産は4,078億円となり、営業キャッシュ・フローは537億円の黒字を確保した。
一方で、将来の成長に向けた衛星投資の拡大により投資キャッシュ・フローは765億円の支出となり、期末の現金及び現金同等物は576億円となった。

2027年3月期も、宇宙事業の成長市場への展開加速や安全保障関連需要を背景に、営業収益1,350億円、営業利益390億円と増収増益を見込んでいる。

【ispace】

ispace(9348)

日本初の民間宇宙スタートアップ企業である。先ほどのスカパーJSATとの大きな違いは宇宙の開発研究を行うispaceに対してスカパーJSATが衛星通信システムを構築するビジネスモデルにある。

そのため国内競合企業としてではなく、共同開発企業として連動している点がある。

7月16日に公表されたispaceの発表では月探査に関する民間通信インフラの実証に関する覚書を締結したことを公表した。宇宙経済圏はまだ未開拓のブルーオーシャンである。このインフラ独占権を巡る陣取り合戦にスカパーJSATとispaceは協定を組んだ。

このタイミングで協定を組んでいる点も注目である。国の需要がある中で十分な資金がR&Dコストを民間技術で効率的に支出できる。今後のROICに着目したいところである。

さて決算報告では、月面開発プロジェクトの推進や各国の宇宙開発・安全保障分野への投資拡大を背景に、売上高は33.07億円(前期比30.3%減)となった一方、経常損失は81.41億円(前期は113.34億円の損失)、親会社株主に帰属する当期純損失は81.52億円(前期は119.45億円の損失)と損失幅は縮小している。

複数の月面探査ミッションやランダー開発を進める中で先行投資が続く一方、資金調達により財務基盤は強化されてる。
総資産は477.04億円へ拡大し、自己資本比率は31.6%まで改善。期末の現金及び現金同等物は296.9億円へ増加した。

2027年3月期も月面開発ミッションへの投資継続により営業損失117億円を見込む一方、プロジェクト収益は90億円と大幅な増加を予想しており、中長期的な宇宙・安全保障関連需要の取り込みを目指している。

12.資源・エネルギー安全保障・GX

資源エネルギー関連の話題はイランと米国の軋轢によって過激化するホルムズ海峡の封鎖で盛り上がっているが、一番注目するべきはホルムズ海峡の動向ではなく、日本の各分分野別のエネルギー自給率の動向ではないだろうか。

日本のエネルギー自給率は各国比較で見ると以上に低い。お隣の韓国と比較するとそれほどまでには深刻ではないと言われそうだが、問題はそこではなくどんぐりの背比べは結果的に共倒れに発展する。

資源エネルギー庁より抜粋
資源エネルギー庁より抜粋

経済産業省の資源エネルギー庁が発表している『日本のエネルギー2025年度版「エネルギーの今を知る10の質問」』を参照すると日本がエネルギーに関する供給制限を受けていることがよくわかる。
特に原油の海外依存度が高く国内での供給は難しいことがよくわかる。さらに、その輸入国の原油を手に入れようとするとホルムズ海峡を通らざるを得ない点も非常に危険である。

UAEがOPECプラスを脱退したことに関して以前言及させていただいたが、これはホルムズ海峡を通らない点で日本にとって好機である。しかし、未だ多くの原油、天然ガスはホルムズ海峡を通過するタンカーに懸かっている。

その影響が鮮明にわかったのが、米国がホルムズ海峡を再び封鎖、イランとの覚書が失敗に終わった時であった。

翌日(7月9日)の東京株式市場では大阪ガスは寄り付きの急落後は売り一巡が響いていた。

大阪ガス9532

一方でこの後、関連株で紹介するINPEX株は原油関連株の上昇を受けて続伸した。エネルギー関連のボラは今非常に高くなっているのが実情であるが、動きが見やすい(原因が鮮明)である点は本来ディフェンシブの意味合いを持つ。

INPEX(1605)

資源・エネルギー安全保障・GX関連銘柄一覧

【INPEX】

INPEX(1605)

先ほど、日本の天然ガスに関する輸入割合を紹介したが、原油に比べて天然ガスの中東依存度は低いことが分かる。ホルムズ海峡を経由する液化天然ガスの年間輸入量は約400万トンであり、日本全体の6.3%となっている。

この量に対してにほんの電力・ガス会社は年間輸入量に相対する在を既に保持しており、供給制限は発生しない状況にある。一方で輸入割合の最大はオーストラリアとなっており、豪州西北部からの輸入割合は特に高い。

この安定供給に一躍を買っていたのがINPEXである。「イクシスLNGプロジェクト」の成功があり、2018年10月から供給が開始され年間890万トンほどの生産を行っている。

さらには今回の中東情勢に対してINPEXはホルムズ海峡を必要としない中東のアゼルバイジャンからの輸入を開始した。カスピ海から地中海を経由して日本に輸入するルートは安全供給のルートとして注目されていたが、INPEXが先どって実現させている。

この島国という地政学的な不利は危機的な状況においてリスクヘッジとコネクションが非常に強みを増す。

決算を見るとエネルギー安全保障の重要性が高まる中、原油・天然ガス価格の下落を受けて売上収益は5,018億円(前年同期比6.5%減)、営業利益は2,782億円(同14.1%減)、親会社の所有者に帰属する四半期利益は1,094億円(同13.4%減)と減収減益となった。

一方、円安効果や生産量の増加が収益を下支えし、エネルギー資源の安定供給を支える事業基盤を維持した。
総資産は8兆194億円へ拡大し、親会社所有者帰属持分比率は61.0%と高水準を維持している。
通期では原油価格や為替前提の見直しを受けて業績予想を上方修正するとともに増配を発表しており、資源・エネルギー安全保障需要やLNG開発、CCS・水素事業などの成長分野を背景に、中長期的な収益拡大を見込んでいる。


【三菱商事】

三菱商事(8058)

7月15日のニュースで天然ガス開発エーソンの買収を完了したことを発表した。負債と合計して総額1兆2,000億円である。エーソンの年間ガス生産量はピーク時で1,800万トンになる。日本の年間LNG需要の25%に相当する。

世界が脱炭素化に向かう中での買収がストランデッド・アセットになるのではないかと不安要素もある。短期のインフラ需要は大きいが、この点は危険要素になりうる。

決算は、資源・エネルギー安全保障の重要性が高まる中、収益は18兆9,160億円(前期比1.6%増)となった一方、親会社の所有者に帰属する当期純利益は8,005億円(同15.8%減)となった。

前年度のローソン再評価益や豪州原料炭事業の売却益の反動で減益となったものの、銅事業の減損戻入れやエネルギー・金属資源事業が収益を下支えした。
総資産は24兆1,517億円へ拡大し、営業キャッシュ・フローは1兆4,900億円の黒字を確保するなど、資源権益への継続投資を支える強固な財務基盤を維持している。

2027年3月期は、資源・エネルギー事業の収益拡大や世界的なエネルギー需要を背景に、親会社の所有者に帰属する当期純利益1兆1,000億円を見込むとともに増配を予定しており、LNGや銅など戦略資源を軸としたエネルギー安全保障分野での成長を加速させる方針としている。

【三井物産】

三井物産(8031)

再生可能エネルギーに対する投資が活発な三井物産。LNG開発においても強いバリューチェンが背景にある。

核融合発電への投資も積極的で政府は2030年代の発電実証を目指し、市場規模は2034年約90兆円、2040年約120兆円と予測している。
その中で三井物産は京都フュージョニアリングやCFSなどへ出資し発電実用化を推進。

核融合技術市場推移

世界の核融合技術市場は、2023年の3,121億ドルから2033年には5,435億ドルへ拡大し、2023~2033年の年平均成長率(CAGR)は5.7%と予測される。

各国政府や民間企業による実証・商業化投資が加速しており、発電だけでなく医療、素材、産業機器など幅広い分野で市場拡大が期待されている。

核融合発電はサム・アルトマン氏も言及しているがその実現と運用の未来はさほど遠くない。2029年にはヘリオン・エナジーによる核融合発電エネルギーの供給開始が想定されている。

先ほど三菱商事の天然ガス開発企業の事例を挙げさせていただいたが、核融合発電の安定供給が可能になった際は確実に効率的、安全性の観点から天然ガス産業の衰退が明確に見られる。

他にも三井物産はカナダのファースト・クァンタムが保有するアルゼンチン・タカタカ銅鉱床の権益取得候補に三井物産が浮上している。

同鉱床は年間32万トン超(世界供給の約1.5%)の生産能力を持つ世界最大級の開発案件。
AI・データセンターや再エネ向け需要拡大を背景に、将来的な銅供給確保を巡る資源獲得競争が一段と活発化している。

https://www.bloomberg.com/news/articles/2026-07-15/first-quantum-said-to-seek-sale-of-stake-in-giant-copper-project

幅広いサプライチェーンの確保が可能な三井物産の強みである。

決算では、エネルギー安全保障や重要資源の安定確保が世界的な課題となる中、親会社の所有者に帰属する当期利益は8,340億円を計上した。

LNGや石油・ガス、鉄鉱石などの資源事業が収益の中核を担い、モザンビークLNGや低炭素アンモニア事業への投資を進めるなど、エネルギー供給網の強化と脱炭素分野への事業拡大を推進した。

総資産は前期末比で大幅に増加し、資源・エネルギー関連資産や持分法投資の積み増しが資産拡大を牽引した。基礎営業キャッシュ・フローは9,789億円を確保し、石油・ガス生産事業やLNG、鉄鉱石などへの積極投資を継続している。

2027年3月期は、エネルギー事業で資産リサイクルや米国ガス事業の拡大を見込み、親会社の所有者に帰属する当期利益9,200億円、基礎営業キャッシュ・フロー1兆500億円を予想しており、資源・エネルギー安全保障分野を成長の柱として位置付けている。

【レノバ】

レノバ(9519)

再生可能エネルギー事業で注目を集めているRENOVA(レノバ)

日本の森林割合は約67%と未開拓地と荒廃した里山が広がっており再生可能エネルギー事業の開発余地はまだある。また、太陽光発電の開発適地が議論される中で建物の側面に設置可能なペロブスカイト太陽電池は次世代の発電方法として実装が進んでいる。

化学工業日報「ペロブスカイト太陽電池-量産・普及へ日本の現在地-」より

ペロブスカイト太陽電池-量産・普及へ日本の現在地-』を参考にすると物理的優位性が高いことが分かる。薄くて柔軟、かつ軽量でありシリコン系では設置不可能だった場所での発電が可能になる。さらにコスト構造も印刷技術やコーティングで製造できるためシリコン系の1/3~1/5程度に抑えることができる。

まだ開発段階であるが、コモディティ化の期待が高まる。レノバはこの事業に参入するのか定かではないが、参入は市場の拡大に一躍を担う可能性は高い。

決算である。
エネルギー安全保障や脱炭素化の進展を背景に、売上収益は876.22億円(前期比24.7%増)、営業利益は82.83億円(同103.7%増)、親会社の所有者に帰属する当期利益は33.08億円(同23.1%増)と大幅な増収増益を達成した。

バイオマス発電所の新規連結や売電収入の増加、小規模・分散型太陽光発電の拡大が業績を牽引し、再生可能エネルギーの安定供給体制の強化が収益拡大に寄与した。

総資産は6,114.64億円へ拡大し、親会社所有者帰属持分比率は20.1%まで改善。営業キャッシュ・フローは282.73億円の黒字を確保し、発電設備や蓄電事業への投資を継続している。

2027年3月期も、小規模・分散型太陽光発電所の順次稼働やバイオマス発電所の通年寄与、蓄電事業の拡大を背景に、売上収益957億円、営業利益113億円と増収増を見込んで入る。

3.インフレ要因の色あい

「骨太の方針2026」は政府が市場に負けた瞬間ではないか、と証明してしまったのではないか。

インフレを起こしたいような政策を打つ政府とプライマリーバランスの安定化、金利の正常化を図りたい日銀で対立構造が見えてしまうような状況。
骨太の方針発表後に麻生氏が「円安気になる」という発言も政府内での意思疎通が図られてしまうような印象を市場に与える。

しかし、問題はインフレの原因を理解し、できるだけ安定させようという意思を市場に見せる姿勢に在るのではないだろうか。

一時的な補助金は結果として未来の負債として蓄積される。それが国民の生活のセーフティネットととして最重要であればそれと同時に根本的な解決のための政策が必要である。

エネルギー課題に関して言えば中東のエネルギー依存は日本の地政学的な観点から偏向は危険であることがホルムズ海峡問題で鮮明になった。しかし、レアアースの課題で見えるように日本の近海での油田の開発はコストが大きく長期的な費用が必要となる。

では、再生可能エネルギーの開発や原子力の利活用を進め自国内のエネルギー自給率の向上を目指すべきなのである。2023年ベースの日本のエネルギー自給率の6割は天然ガス、石炭であり、太陽光・風力発電はイギリス、フランス、ドイツといったEU諸国に加えて中国、インドよりも低い。

原子力発電に関しての議論が過熱する中で再エネ開発に期待が集まる。日本は世界6位の海域面積を誇る海洋国家であり洋上風力発電の導入ポテンシャルは期待できる。しかし、その研究開発費は輸入のコスト高によって事業者の撤退が発生しており政策としての参入余地を模索されている。

私は現政府はホルムズ海峡問題に関して短期的な解決がされることを目論んでいると思っている。需要を創出させる政策を打ち、供給網が限界にある今、それでも需要創出を前面に出すのは次の米国中間選挙までに結果はでる、と考えているからではないのか。定かではないが。。。

どうしても雑談が増えてしまうのだが、インフレの容認は如何にという点でインフレによる賃金上昇率を見てみたい。

名目・実質賃金上昇率推移

2026年度の春闘は非常に盛り上がった記憶がある。新卒の初任給が40万円は非常に注目され、一方の管理職の給与は横ばい、なんとも少子化国家を代表するような現象が起こっていた。

インデックスを見ると分かりやすいが、日本の実質賃金は2025年以降でプラスに転じている。これはインフレ容認を考える上でポジティブに考えることができる。

消費者物価指数と実質家賃の推移

2020年のコロナショック後のCPIは急上昇し、インフレの動向を示すが、一方の家賃の推移に関してはCPIと連動せず、緩やかな上昇曲線を描いている。

物価の上昇要因が国内の影響ではなく、海外に大きな要因があると言える変動だ。

生産者物価指数推移

また、消費者物価指数に対して生産者物価指数は6月に2023年以来の最速ベースで上昇している。日本企業向け投入物価の指標は6月に前年同月比7.1%の上昇。

中東のエネルギー情勢による上昇と考えられる。

これだけ見ても日本のインフレは供給不足によるコスト圧が影響していることが分かる。一方で、実質賃金は上昇し、円安が加速している。

国内の中小企業に与える圧力は大きくなる一方である。大手企業に比べて中小企業の賃金上昇率が低かったのは勿論だが、国内需要を増やすだけでは中小企業は倒れていってしまう。さらには日銀の金利上昇で長期資産の購入は停滞を見せ始めている。

とにかく供給を増やさなければならない、これが今の一番の課題であることは間違いなさそうである。



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