『ジョジョ』はなぜ“説明”なのに止まらないのか|理解が安心ではなく絶望になる|失敗から学ぶ名作の作り方 第46回
【今回登場する作品】
・『ジョジョの奇妙な冒険』

【人物】
・空条承太郎
・DIO
・東方仗助
・吉良吉影
・ディアボロ
■説明は本当に悪なのか
第42、43、44回で
「語りの向き」を扱ってきました。
『鬼滅の刃』が“心の声だらけ”でも読める理由|説明ではなく“生存反応”として読者へ届く構造|失敗から学ぶ名作の作り方 第42回
『鬼滅の刃』はなぜ“作者の説明”に見えないのか|語りは読者へ向いた瞬間に説明になる|失敗から学ぶ名作の作り方 第43回
『SLAM DUNK』『ONE PIECE』感動するシーンは読者へ向いていない|キャラクターは作品世界だけを見る|失敗から学ぶ名作の作り方 第44回
『鬼滅の刃』では、
心の声を扱いました。
『SLAM DUNK』では、
セリフを扱いました。
『ONE PIECE』では、
行動を扱いました。
そこで見えてきたのは、
キャラクターの言葉や行動が、
読者へ向いた瞬間、
作者が見えやすくなる。
そして、
説明っぽく見えやすくなる。
ということです。
では、
説明そのものは悪なのでしょうか。
もちろん違います。
物語には、
説明が必要です。
説明がなければ、
何が起きているのか分からない。
細かい状況は分からない。
何を目指しているのか具体的に分からない。
だから説明は必要です。
でも、
説明には弱点もあります。
説明が増えるほど、
謎が減る。
不安が減る。
先が見える。
つまり、
緊張が減る。
だからこそ創作論では、
「説明しすぎるな」
と言われることがあります。
では、
説明は少ない方が良いのでしょうか。
説明が多いのに、
むしろそれを武器にしている作品があります。
『ジョジョの奇妙な冒険』です。
■『ジョジョ』は説明だらけである
ジョジョは
かなり説明します。
能力説明。
条件説明。
理屈説明。
分析説明。
かなり多い。
例えばDIO戦。
「ザ・ワールド」の正体を探るために、
承太郎たちは状況を分析し続けます。
吉良吉影戦でも同じです。
「キラークイーン」が何をしたのか。
仗助たちは説明と推理を何度も繰り返します。
普通なら、
テンポが落ちそうです。
普通なら、
没入が切れそうです。
でも、
なぜか止まらない。
むしろ、
説明されるほど先が気になる。
ここがかなり不思議です。
■読者は“今すぐ欲しい情報”には没入する
説明の、そして読者の没入の前提を整理しておきます。
読者は、
“今すぐ欲しい情報”
には没入します。
例えばゲーム。
強敵が現れた。
第二形態になった。
能力が分からない。
この時、
プレイヤーは説明を欲しがる。
能力を知りたい。
弱点を知りたい。
攻略法を知りたい。
なぜなら、
生き残りたいからです。
つまり、
説明だから読む
のではない。
必要だから読む。
ここが重要です。
ジョジョも同じです。
今、
何が起きているのか。
敵は何をしたのか。
どうすれば助かるのか。
例えばDIO戦。
時間が止まっているらしい。
でも、
どう止まっているのか分からない。
承太郎たちは、
その答えを必死で探します。
そこが知りたい。
だから説明なのに、
読者は前のめりになる。
説明にも色々ありますが、
その一つが、
この「読者が今欲しい情報」です。
■普通の説明は「理解→安心」
やはりゲームの例。
強敵が現れる。
第二形態になる。
未知の能力を使う。
ここで説明が入るとする。
すると、
なるほど。
そういう能力か。
こう攻略するのか。
となる。
つまり、
理解
↓
安心
です。
必要な情報、その説明によって、
状況が整理される。
整理されるから、
先が見える。
だから安心する。
説明というのは、
本来こういう働きをします。
分からないことが減る。
不安が減る。
だから落ち着く。
読者は安心する。
そうすると今度は
物語を引っ張る力は落ちてしまいます。
落ち着き、次が見えてしまいます。
説明すればするほど引っ張る力は落ちていくことになります。
■“欲しい情報”だけでは足りない、説明で没入は弱くなる、ではどうするか
ここからが、
ジョジョの面白いところです。
読者は、
欲しい情報には没入する。
これは確かです。
でも、
それだけでは足りません。
なぜなら、
欲しい情報
↓
理解
↓
安心
で終わってしまうからです。
実際、
多くの作品はここで終わります。
敵能力が分かった。
弱点が分かった。
攻略法が分かった。
「ああそういうことか」
となる。
問題が解決へ向かう。
緊張が下がる。
没入が終わる。
ここが失敗です。
■ジョジョは「理解→絶望」になる
ジョジョは違います。
理解
↓
安心
ではない。
理解
↓
絶望
になる。
ここが特殊です。
例えば、
触れたら終わり。
近づけない。
逃げても追ってくる。
時間が飛ぶ。
未来が見える。
能力が分かる。
条件が分かる。
仕組みが分かる。
するとどうなるか。
例えばDIO。
時間を止めている。
正体が分かった。
でも安心しません。
むしろ、
「そんなの勝てるのか」
になります。

ジョジョの奇妙な冒険 第3部 スターダストクルセイダース カラー版 第16巻
未来が見える。
時間を飛ばす。
説明されるほど、
「どうやって倒すんだ」
になります。
安心しない。
逃げ場が消える。
理解するほど、
「無理だろ」
になる。
「どうしろって言うんだ」
になる。
つまりジョジョは、
説明によって、
問題を解決しない。
説明によって、
問題を深くする。
読者を不安にする。
ここが他の作品と決定的に違います。
■理解した瞬間に、さらに詰む
例えば普通の作品なら、
敵能力判明
↓
攻略の糸口発見
になります。
でもジョジョは、
敵能力判明
↓
さらに詰む
になる。
能力を理解した瞬間、
「やばい」
が強くなる。
絶望が鮮明になる。
だから説明が、
緊張を下げない。
むしろ上げる。
説明によって、
恐怖が具体化する。
だから読者は、
さらに先が気になる。
■説明が悪なのではない
創作論では、
説明するな。
説明は悪だ。
と言われることもあります。
でも、
ジョジョを見ると、
少し違うことが分かります。
問題は、
説明そのものではありません。
説明した結果、
何が起きるのかです。
説明で危険なのは、
問題まで解決してしまうことです。
そして、
安心させてしまうことです。
満足させてしまうことです。
もちろん、
物語が終わる場面なら問題ありません。
でも、
まだ話が続くのに、
「ああ、そういうことか」
で終わってしまう。
これは避けなければなりません。
説明によって、
問題が解決する。
不安が消える。
先が見える。
だから読者は落ち着く。
落ち着くということは、
物語を引っ張る力も弱くなる。
ここが、
説明が嫌われる理由の一つです。
でも、
ジョジョは違います。
■今回の結論
ジョジョでやっているのは、
必要な情報の提供、
でも、
読者の没入は切れない。
それは
理解が安心になるのではなく、
理解が絶望になるから。
理解した瞬間に、
さらに詰む。
だから読者は、
「じゃあどうする?」
を考え続ける。
ジョジョの説明が特殊なのは、
情報量が多いからではありません。
説明によって、
問題を解決するのではなく、
説明によって、
問題をさらに深くしているからです。
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■今回の失敗の教訓
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説明したことが失敗なのではない。
説明によって問題まで解決してしまうことが失敗である。
理解の先に安心を置くと、読者は参加をやめる。
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■創作でどう使うか
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説明を書く時は、
情報を渡して終わりにしないようにしよう。
理解した瞬間に問題が深くなるのか、緊張が高まるのかを考えよう。
説明で安心させるのではなく、読者が攻略へ参加したくなる状況を作ろう。
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