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【投資のリスク、キャリア】 暴落の先の未来を信じる [第55回]


前回の記事では、夏のボーナスの理想的な分配法として、現在の幸福と未来の安心へ賢くお金を割り振る「黄金比」についてお話ししました。

その中で、ボーナスの約7割をインデックス投資などの未来の資産へと回す分配プランを提示しましたが、実際に投資をしようとするとき、多くの人が「強い躊躇」を抱きます。

「今が最高値で、自分が買った瞬間に高値掴みになるのではないか」
「世界情勢がこれだけ不安定な中で、もし大暴落が起きたらどうしよう」

この、誰もが一度は抱く恐怖をどう乗り越え、ブレない一歩を踏み出すべきか。今回は、投資家として、そこで働く職業人として最も重要な「未来の信じ方」について、私なりの視点をお話しします。

1. 私たちが投資を躊躇してしまう「不安の正体」

投資を目の前にして足がすくんでしまう理由は、突き詰めると「未来に対する不確実さ」にあります。

日々のニュースを見渡せば、地政学的なリスクや国家間の対立など、世界情勢の不安定さを伝える報道が絶えません。それに連動するように、連日「史上最高値更新」と騒がれる市場を見ていると、「今がピークで、この不安定な情勢のなか、明日から一気に大暴落するのではないか」と心が揺らいでしまうのは当然のことです。これは人間の脳に備わった「損失回避バイアス」として、極めて正常な感情と言えます。

どれだけ「長期投資が正解だ」と頭(データ)で理解していても、目の前の不穏な世界情勢と、大切な資金が減るかもしれないという恐怖に対して、私たちの感情は激しく抵抗します。

では、この感情のブレーキをどのように解除すれば良いのでしょうか。それは、目先の情報(ノイズ)を追いかけることではありません。私たちが生きる世界の「未来」をどのような時間軸で捉えるか、という一点にかかっています。

2. 「今が経済のピーク」なのか?

ここで一つ、本質的な問いを立ててみましょう。 「今、この瞬間が、人間の経済活動のピークなのだろうか?」と。

もし、ここが人類の限界であり、世界情勢の不安定さに押しつぶされて世界はこれ以上良くならないと思うのであれば、確かに投資は今すぐやめるべきです。しかし、本当にそうでしょうか。

医療の現場にいると、私は日々「人間の執念と進歩」を肌で感じます。かつては不治の病とされた癌の治療戦略は絶えず進化し、私が一生懸命取り組んでいるロボット手術の手技も、最新工学との『新結合』によって劇的に精度を上げています。

もちろん、これからも大暴落や、予測不可能な世界情勢の激変は必ずあります。一時的に世界が立ち止まるような嵐の夜もあるでしょう。しかし、人類はこれまでも、数々の戦争や疫病、金融危機といった凄まじい困難を、イノベーションという形でことことく乗り越え、進化を遂げてきました。

今この瞬間も、世界中のどこかで新しい技術が開発され、名もなき人々が「昨日より良い明日」を作ろうと知恵を絞っています。

私は、その「困難を乗り越えて進化していく人類の未来」を、強固なエビデンス(歴史)を元に信じています。だからこそ、目先の情勢や一時的な為替・値動きの波に惑わされることなく、世界経済の成長そのものに丸ごと乗っかる「オール・カントリー(全世界株式)」に、自分の資産を投じることができるのです。グラフの長期的な右肩上がりとは、この「人類の進歩と成長への信頼」そのものを映し出す鏡に他なりません。

3. 投資とキャリアの本質は「未来への信頼」である

そして、この「暴落を恐れず、長期的な成長に賭ける」という思想は、私たちの仕事のキャリアにおいても全く同じことが言えます。

組織の中で生きていると、誰もが一度は大きな壁にぶつかります。大一番の勝負に敗れたり、仕事で手痛い失敗をして周囲からの評価が下がってしまったりすることもあるでしょう。それは家計やメンタルにとって、まさに市場の一時的な「大暴落」のような局面です。

しかし、そこで「もう終わりだ」と絶望して足を止めてしまえば、損失はそこで確定してしまいます。大切なのは、一時的な評価の下落(暴落)に怯えて打席を降りてしまうのではなく、そこから這い上がり、さらに上昇していく「自分自身の未来」を信じて、淡々と努力(自己投資)を継続することです。

私たちが投資を行えるかどうか、あるいはキャリアを切り拓けるかどうかは、タイミングの良し悪しや現在の情勢の安定で決まるのではありません。「暴落の先にある、未来の進歩を信じられるか」という、自分自身の覚悟で決まるのです。

「今が最悪のタイミングかもしれない」と悩む必要はありません。人類が、そしてあなた自身が生きることを諦めず、不安定ななかでも明日をより良くしようと活動し続ける限り、過去の暴落も、一時的な失敗も、未来から振り返ればすべてさらに高く跳ぶための「通過点」に過ぎなくなります。

目先の数字や他者からの評価の上下に一喜一憂するのをやめ、未来を信頼する強さを持つこと。それこそが、感情の揺らぎを抑え、人生の打席に立ち続けて大きなリターンを得るための、最強のエンジンとなります。

最後に

長い人生の後半戦において、私たちが手に入れたいのは、単なる口座の数字の右肩上がりだけではありません。外側の世界や組織がどれだけ揺れ動こうとも、「未来はこれからも良くなっていく」と確信していられる、内なる心の平穏です。

もし、日々のニュースや職場の現実に心が折れそうになったときは、一度画面を閉じ、世界を動かしている人間の底力と、あなた自身の可能性を信じてみてください。

困難の先にある未来を信じて、等身大の一歩を進める。そのしなやかな歩み(自分の歩幅)こそが、あなたとご家族の未来に、何にも代えがたい確かな安心感をもたらしてくれるはずです。

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