『薬屋のひとりごと』の蟇盆と『舌切り雀』のつづら ― 蛇や毒虫はなぜ「罰」の象徴になったのか?
※アニメ第45話『蟇盆』の内容に軽く触れています
1. はじめに
アニメ『薬屋のひとりごと』第45話「蟇盆(蠆盆、たいぼん)」は、シリーズの中でも特に衝撃的なエピソードでした。
地下の拷問部屋に大量の蛇や毒虫がうごめき、その中へ人を閉じ込める。
猫猫ですら普通の人なら悲鳴を上げそうな状況です。
ところが私はこのシーンを見ていて、なぜか日本昔話を思い出しました。
それは『舌切り雀』です。
なぜ中国の残虐な拷問と、日本の子ども向け昔話が結びつくのでしょうか。
『#薬屋のひとりごと』第2期
— 『薬屋のひとりごと』アニメ公式 (@kusuriya_PR) June 6, 2025
🍃 第 45 話「蟇盆」放送中!📺
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
Aパート終了!
拷問部屋に連れられた猫猫。
恐ろしい"蟇盆"の刑とは…!?
感想はぜひ
【#薬屋のひとりごと】を付けて
ポストしてくださいね📝
続いてはBパート!
最後までお見逃しなく👀#薬屋2期 pic.twitter.com/L2rLWlo7gQ
2. 蟇盆(たいぼん)とは何か
蟇盆(蠆盆とも書く)は、中国で語り継がれてきた伝説的な酷刑です。
一般には殷王朝末期の暴君・紂王と愛妾・妲己の逸話として知られています。
罪人を毒蛇やサソリなどの毒虫で満たした穴や容器へ落とし、苦しみながら死なせるというものです。
実際にどこまで史実だったかは議論があります。
しかし少なくとも中国文化の中では、
「最も残酷な罰」
の象徴として広く知られていました。
『薬屋のひとりごと』では、この蟇盆が物語の重要なモチーフとして登場し
ます。

3. 中国では本当に悪人だけが罰を受けたのか
ここで興味深い疑問があります。
中国の刑罰は本来、罪人を処罰するためのものです。
しかし歴史を見てみると、必ずしもそうではありません。
後宮の権力争い。
皇位継承争い。
宦官の陰謀。
皇帝の猜疑心。
こうした理由から、無実の人が処刑された例は数え切れません。
制度上は「悪人への罰」。
しかし現実には「権力者に嫌われた者への罰」に変わってしまうことも多かったのです。
だからこそ、中国の宮廷史にはどこか理不尽で恐ろしい印象があります。
『薬屋のひとりごと』の後宮世界も、そうした歴史の空気をうまく取り入れています。
4. 舌切り雀にも蛇や虫が登場する
ここで日本昔話の『舌切り雀』を思い出してみます。
優しいおじいさんは雀たちから小さなつづらをもらいます。
中には大判小判や宝物が入っていました。
一方、欲張りなおばあさん(あるいは欲張りな隣人)は、大きなつづらを持ち帰ります。
そして途中で開けてしまう。
すると中から飛び出してくるのは、
蛇
ムカデ
蜂
毒虫
化け物
などです。
子どもの頃は何となく読んでいましたが、改めて考えるとかなり不気味です。
なぜ宝の反対が「蛇や毒虫」なのでしょうか。
5. 共通するのは「罰の象徴」
もちろん『舌切り雀』が蟇盆をそのままモデルにした証拠はありません。
しかし興味深い共通点があります。
中国文化でも日本文化でも、
蛇や毒虫は長い間
「恐怖」
「穢れ」
「天罰」
を象徴する存在でした。
仏教の地獄絵にも蛇や虫に責められる罪人が描かれます。
説話集にも同じような描写が少なくありません。
つまり、
中国では
「罪人を苦しめるもの」
日本では
「欲張りな人への罰」
として、
蛇や毒虫が使われていたのです。
6. 中国の残虐刑は昔話へ変化したのか
中国で語られた残虐な刑罰のイメージが、そのまま『舌切り雀』になったという証拠はありません。
しかし、中国文化や仏教説話を通じて伝わった「蛇や毒虫による罰」のイメージが、日本の物語世界にも影響を与えた可能性は考えられます。
『舌切り雀』のつづらから飛び出す蛇やムカデも、そうした「罰の象徴」の一例として読むことができるかもしれません。
蟇盆では人が死にます。
しかし舌切り雀では、蛇やムカデは懲らしめ役です。
同じモチーフが、より穏やかな民話の形に変わっているのです。
7. おわりに
猫猫が放り込まれた蟇盆。
そこにうごめく蛇や虫。
その光景を見た時、多くの日本人はどこか既視感を覚えるかもしれません。
それは地獄絵だったり、昔話だったりするのでしょう。
『薬屋のひとりごと』は単なる中華風ミステリーではありません。
中国史や後宮文化だけでなく、日本人が昔から親しんできた物語とも、思いがけないところで繋がっているのです。
次に『舌切り雀』を読む機会があれば、ぜひつづらから飛び出した蛇やムカデにも注目してみてください。
もしかすると、その奥には、人々が長い時間をかけて共有してきた「恐怖」や「罰」のイメージが隠れているのかもしれません。
蛇や虫は、中国では残虐刑や後宮の物語、日本では昔話や妖怪伝説など、さまざまな形で恐怖の象徴として語られてきました。
このテーマについては、また別の記事でさらに掘り下げてみたいと思います。
✨本日発売✨
— サンデーGX編集部 (@SundayGX) August 19, 2023
サンデーGX9月号『薬屋のひとりごと』は…
響迂らをかばうため神美に悪態をついた猫猫は、翠苓を苦しめた古代の処刑法・蟇盆に処され…
毒を持った蛇や虫のいる牢獄に閉じ込められた猫猫…一体どうなる!?
単行本17集は、9/29頃発売決定!お楽しみに🌸#サンデーGX #薬屋のひとりごと pic.twitter.com/6jDp5Hb2JI
※この記事にはアフィリエイトリンクを含みます。
⬇️⬇️🪷🍵薬屋のひとりごとの世界観で
花茶を楽しめるものを集めました🍵🪷⬇️⬇️
見るだけでも楽しいですよ
⬇️⬇️今回の記事をもとにシリーズをはじめました⬇️⬇️
⬇️⬇️こんな記事も書いてます⬇️⬇️
ここから先は
妖怪、鬼、後宮、怪談、そして現代アニメ。 一見バラバラに見える物語の中には、「恐怖」や「異質なもの」をどう語るかという共通のテーマがあり…
ありがとうございます!
