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[小説]僕は僕を信じて生きていた 中学生編episode 6 

中学生編 episode 6 

 大変失礼な話だけど、この親子はどうかしているんじゃないかと思ってしまった。普通の親であれば男の扱い方なんて教えるはずもなく、むしろ変な男に騙されるな近くに寄るなどと教えるはず。自宅では、お母さんが妹に口酸っぱく言っているのを目の当たりにして来たからなおさらだった。
「いえ、僕がおんぶじゃなくて肩車なんてどう?って言ったんです!」
「嘘つけ!顔に書いてあるよ~。竜士君がそんな冗談言えないでしょ~・・・。僕はド真面目です!って言う眼差しよ!そんなに見つめないで、私が好きになっちゃうじゃない・・・。そんな事より、凛花もいい加減に降りなさいよ!貴女からは見えてないと思うけど、竜士くんはもう限界よ!膝が笑っちゃってるし~。あなた達はお馬鹿コンビね!」
「も~~~、いい加減に下ろしてよ~。あ~ぁ、お母さんにこんな所見られてめっちゃ恥ずかしい~!」
「ま~た~そんな事言っちゃって。本当はまだ乗っていたいくせに~!なんちゃってね~。それはそうと、あなた達が遅いから夕食の支度全く出来てないわよ!買い物袋預けて本当失敗したわ~・・・。さあ、支度しましょ!竜士君も手伝ってちょうだい!」
 三人でキッチンに立ち夕食の準備に取りかかろうとした時だった。玄関のチャイムが鳴り、
「こんばんわ!お待たせ致しました。ピザ屋で~す!」
「えっ、お母さん頼んでたの?」
「何言ってるの!今日はすき焼きって言ったじゃない!」
「じゃ~誰?お父さんは今日ライブの打ち上げに付き合うって言ってたよね~」
「とりあえず、出て来てちょうだい」
玄関先でのやり取りを聞いていると、どうやら間違えなくここの住所で頼まれたみたいだった。
「お母さ~ん!一〇〇〇〇円ちょうだ~い」
「一〇〇〇〇円だなんて、あの子何言ってるのかしら?竜士くん、そこのネギ刻んでてくれる?」
引き戸の隙間から覗いていると、ななんと三枚ずつのピザを持って来た。
「なんだか納得いかないわよね~。頼んでもないのにお金払って・・・。誰がこのピザ食べるのよ?すき焼きだっていうのに!」
「お~~い!今帰ったぞ~~!」
「えっ!お父さん?」
「はぁ~?ちょっと凛花出て来てちょうだい。お迎えがないと、あの人うるさいから・・・」
 玄関の方へ耳を傾けると、
「おっ、お帰りなさい。どうしたの?ライブの打ち上げに付き合うって言ってたじゃん?」
「そうだよ?でも、遅くなるとは一言も言ってね~ぞ?」
「だっ、だよね~・・・。お母さ~ん!お父さん帰ったよ~!」
「なんだ?いつもと違う空気が流れてるぞ?まあいいや!ピザ届いてるか?」
「えっ、お父さんだったの!」
「それはそうだろ!この家でピザ頼むなんて俺だけだろ!それはそうとお母さんは?」
「比較的シラフに近いみたいだから言うけど、お父さんはお母さんが居ないと生きていけないでしょ!いっつも帰るなり、『お母さんは、お母さんは?ともみ~!今帰ったぞ~~~!』って言ってるじゃん!酔っ払って帰って来てた時は必ずと言っていいほど言ってるよ!」
「なんだ、凛花!そんなに悪い事か?いいじゃんかよ!お母さんが大大大好きなんだからよ!凛花も俺みたいな男を見つけろよ・・・。そんな男が居たら、すぐに承諾してやるからよ!なんつってな~」
「いっつもそんな事言って!凛花知ってるんだからね~。お母さんには、『どんなに良い男を連れて来ても絶対に付き合う事は許さない!』って言ってるんでしょ!自分の事棚に上げて良く言うよね~!ハッキリ言ったらいいじゃん!『何があっても認めないって!』そんな事言ったら、凛花は直ぐに出て行くから!これは本当だからね。よ~く覚えておいてよ!」
「なんだよ~、そんな寂しい事言うなよ~。想像して泣けて来たじゃんか~」
「お母さん居るんだろ?お~い今帰ったぞ~。ピ~ザ。ピ~ザ。ピ~ザ食べよ~よ
早く持って来てよ~」
「全く!どうしようもないわね~。ピザは逃げないから、早くお風呂に入って来なさいよ!」
「そんな事言って俺が居ないうちに食べちゃうんだろ~・・・。見え見えだぜ!」
「やっぱり今日も酔っ払ってるな!酔っ払うといっつもそんな事言い出すけど、私が貴方より先に夕食済ませた事ある?どんなに遅く帰って来ようとも、ただの一度も先に食べたり先に寝た事なんかないわよ!あぁ~、だんだん腹が立って来た。いい加減にしないと、この家出て行くよ!私が言い出したらどうなるか解ってるはずだけど?本当にいつまでたっても学ばないわよね。えぇ~コラ!このハゲおやじが!調子に乗ってんじゃね~ぞ!大体にして、飲みに行ってんのに帰って来てから『腹減った、何か作って~!』って、迷惑にも程ってもんがあるわ!こっちは、お腹と背中がくっつく程に腹空かして待ってるってんだよ!逆に食べずに待ってた事なんて唯の一度もねぇだろうが。こちとら、日々日記に書いてるから解ってんだよ!朝帰りだけは絶対に許さないって言ったってことごとく破るしな!不満、全てぶちまけてやろ~か?えぇ!ハゲたら離婚って言ってんのによ!そのハゲ方はなんなんだよ。脳天だけハゲ。残ってる髪は長髪って、気持ちが悪いにも程ってもんがあるだろ~が!全部剃っちまえよ!一緒に歩いてる私の身にもなれってんだ!」
「おっ、お母さんその辺にしといてあげて・・・。お父さん泣いちゃうよ~」
 どんなに遅く帰って来ようとも夕食を待っているなんて、なんだかんだ言って親父さんの事が好きなんだなぁ~とネギを刻みながらに思った。
「おい!それはそうとキッチンに誰か居るのか?気配を感じる・・・。って言うか、あの小汚い靴は誰のだ?家では見た事がねぇ~ぞ・・・。梨花子でもなけりゃ 涼のでもないだろ~?」
 今までの会話の流れからして、自分からこんばんわと言って出て行く勇気はなかった。すると親父さんが、
「そこに居るんだろ、コソコソしてね~で出てこいよ!」
 逃げ道は一切ない。意を決して、
「すっすみません・・・。おっお邪魔させて戴いてます。ともみさんと同じ学校に通っている、後藤竜士と申します!」
「なんだお前?普通は最初にこんばんわの一言だろう~がよ・・・。は~い、やり直し!って言うか、ともみは学校に勤めていて通っているのは凛花だろうが!」
 おやじさんの恐ろしさのあまりに間違えて言ってしまった。緊張も極限状態。すると、ともみさんが、
「おい酔っ払い!さっき言った事聞いてなかったのか?凛花行くで!ほなさいなら~」
 二人共本当に出て行ってしまった。親父さんと二人きりの最悪の時間の始まり。のはずが意外な展開に。
「いつもの事だ気にするな。凛花が男を家に招くなんて初めての事だ!仁(ジン)は知ってんだろ?彼奴ですら玄関先でさいならだぜ~。まぁ、くつろいで行けや!俺はもう寝る!おっ、ピザ残すなよ~」
 なんと雑魚寝の親父さんと、六枚の手付かずピザがも残されてしまった。
なんとも耐えられず、六枚のピザを一枚ずつに分けアルミホイルに包み、忍び足で凛花ちゃんの家を後にした。猛ダッシュで自宅に戻ると、玄関先で親父が腕組みをしそれはそれはすごい形相で待ち構えていた。確実にゲンコツが飛んでくると思い構えていると、
「こんな時間まで、強一さんをお待たせするなんて失礼極まりないぞ!これ持ってしばらくつったってろ!」
 なんと強一さんの事がバレてしまっていた。いつもの様に二〇リットルバケツになみなみと砂を入れられ両手に立たされた。代々続いている後藤家の式たり、帰りが遅くなるとゲンコツかバケツが待っていた。強一さんを待たせるなんて失礼極まりない?親父は強一さんの事を知っているのか?疑問に思いながら一時間が経過すると親父が出て来て、
「いいぞ、中に入れ!強一さんの好物はピザだってよ。今日はピザだ六枚頼んだ!
そろそろ届くはずだ。さっさと風呂に入っちまえよ!なんつ~顔してんだ?お前もピザ好きだろ~」
 まさかのピザ一二枚分。お土産と言って出そうと思ったのに既に六枚ものピザを頼んでいたなんて・・・。そそくさと自分の部屋に戻り引き出しに隠した。お風呂から上がると既にピザが届き宴が始まっていた。
「竜士!お前、なんで早く言ってくれなかったんだ?一世を風靡した伝説のBURAKUS`のドラム強一様だぞ!いやぁ、本当にこいつの今までの無礼をお許し下さい・・・。今後は私の部屋を自由に使って下さい!なんでしたら、ドラムセットも大丈夫ですよ。近所には話通しておきます!」
「いえいえお父さん、そう言う訳にはいきませんよ!竜士君もかなり上達したので私は自分の家に戻りますよ。お気遣い、誠にありがとうございます」
 そう言い残して強一さんは家から出て行ってしまった。自分の帰りが遅くなったばっかりに強一さんが出て行ってしまった事を思うと、いたたまれない気持ちになり一晩中眠れなかった。次の日の朝、親父が物凄い形相で部屋に入って来た。
「強一さんの家を教えろ!昨日のお詫びに行って来る!」
 強一さんの事を思うと、学校の裏山に有る洞穴が強一さんの自宅などとは決して教えられるはずもなかった。
 朝から胸ぐらを掴まれながらも親父には、
「部活の帰り道、強一さんが何処からとも無く現れて、いきなりドラムを教えてあげるって言われただけだから本当に知らないんだよ」
 嘘をついてしまった。
「竜士、本当だろうな!嘘だったらゲンコツどころじゃすまねぇぞ!あぁ~、胸ぐら掴んででも引き止めればよかった・・・。竜士もよ~く覚えておけ!これが後悔先に立たずってやつだ!お前に言った事はねぇ~けどな、俺の座右の銘はな・・・、耳の穴かっぽじってよ~く聞けよ!
『思い立ったら直ぐ行動!後先考えずに直ぐ行動!』
確かに何も考えず行動を起こすのはおかしな事だと思うけどな、考えに考え抜いてから行動したとする。結果報われなかったらどうだ?散々考えた時間がもったえないだろう~・・・。まぁ、しょせん結果論だけどな!朝から、なんだこんな話・・・。面倒臭くなって来た!って、俺が話し始めたのか!用は、考え抜いたって最終的には行動してみないと解らないって事!むしろ、見切り発車で失敗した方が多くの事をえられる!えられるって何って思うだろぉ~。そんなのお前にも教えられねぇ~よ!自分で学んでこそ身に付くものだ!やっべ~、朝の会議に遅刻するじゃんかよ!しかも今日は年に一回の重要会議だった・・・。行ってくるぞ!お前自分が食ったもんくらい洗ってから行けよ!ついでに俺のもな!」
 と、磨りガラスが入った木製の引き戸を勢いよく開け行ってしまった。こんな調子の朝は大体ガラスが飛び散ってるパターン。手摺りも無い急な階段を駆け足で降りると予想的中。この光景を見る度にあの大ショックを受けた光景が蘇った。
 小学三年生の時に図工の授業で作ったステンドグラスを玄関の引き戸にはめ込んだ。市内の小学校コンクールで最優秀賞を取った作品。それはそれは近所でも噂になり、毎日見れる様にと、爺ちゃんが大工さんに頼んで引き戸ごと交換してくれた。が、せっかくの大作も、朝の遅刻しそうな親父の勢いよく開ける一撃で割られてしまった。
 ある日の事、早朝、知らないおじさんが自宅を訪ねて来た。何やら親父と真剣な話をしている様だった。いつもの様に学校に行く仕度をしていると、
「この拳骨はお前がイジメた子の拳だと思え!」
と、僕はいきなりぶっ飛ばされた。
「今、いらしていたのはその子のお父さんだ。『もう、こんな思いをするのはやだ!学校に行きたくない・・・』って言って自分の部屋に閉じこもってしまったらしいぞ!『もうやめさせて下さい』必死な思いで来たと思う。まさかお前がイジメなんてやっているとは思いもよらなかった・・・。さっき会社に電話して、親戚で不幸があったから今日は休ませて下さいともらうことにした!学校にも、お前が『高熱が出たから休ませて下さい』と、連絡しておいた。今日はとことん話しをするぞ!覚悟しろ!とりあえず寝る」
 確実にまたぶん殴られる。寝息を確認し学校へと猛ダッシュした。まさかのまさか、自分がイジメを?意味が解らなかった。初めての大遅刻で既に授業が始まっていた。こんな日に限って一時間目から保健体育の時間・・・。いつもとは違い一番怖い大野先生の授業だった。大野先生は生活指導も兼任。噂では市内で一番恐ろしい先生と言う事を聞いた事があったからだ。
「すみません!親父が余計な事を言ってしまったんです・・・。体調は大丈夫です!よりによって先生の授業を遅刻すみませんでした!」
「遅刻?そんな事どうでもいいけど、お前さ~!親父さんのせいにするのは良くねぇんじゃね~の?そう言うのが頭来るんだよなぁ・・・。今の子供達?今の若者達は、何かっちゃ~人のせいにしたがる!自分で自分のケツもふけねぇ奴ばかり・・・。俺はよぉ、この先この国がどうなっちゃうか不安でしょうがねぇ~よ!どんどん他の国に先を越されてって・・・。そう言う時が必ず来る!お前らにはハングリー精神ってもんがねぇ~んだよ!教師に食ってかかって来る位がちょうど良いんだ!お前らにそんな気合いはねぇと思ってるけどな・・・。まぁ、お前らが生まれた時代が悪いって言ってしまえばそれまでだけれどな・・・。最近じゃ、教師の質も落ちに落ちてるしな!親御さんに気を使ってばかりで、本来教えるべき勉強?道徳?言い出したらきりがねぇ~な・・・。まぁ、お互いに上手く触れ合える時代じゃなくなった事は間違えない!上手く言えねぇけど、俺はお前らの人生の中の三年間、たった三年間かもしれねぇけど全力で向き合って、お前らにとって意味のある時間にする!何てったってこれしか考えてねぇ~・・・。自分で言うおもおかしいけど、俺はお前らに対する気持ち?熱い心?情熱?どれも一緒か・・・。あぁ~何言ってんだか解らなくなって来た!何となく伝わってんだろ!こんな事言わせんなよ!」
すると、自分以外全員が口裏を合わせたかのように、
「いや、いやいや~!先生が勝手に言ってるだけで、誰も求めていませんけど~・・・」
「何だと?このクソガキ達が~!」
「あれあれ?怒ってるんですか?叱ってるんですか~~~?」
「怒ってんに決まってんだろうが!」
「怒られてると思う人~~~」
「・・・」
「叱られてると思う人~~~」
「は~~~い!」
満場一致だった。
「お前ら、何なんだよ!この間の続きを予習しておけ!」
と言い残し、涙を拭いながら出て行ってしまった。
 次の日の朝礼の事、珍しく教頭先生が朝礼台に立っていた。教頭先生は物凄く精悍な顔付きで真面目を絵に描いたような人。ところが、今日の表情は普段と違い、まるで別人に見えた。そんな教頭先生を感じたのか皆んながざわつき始めた時、
「お、おはようございます・・・。昨晩より校長先生は大野先生のご自宅に行ってらっしゃいまして・・・、代理の私から重大な報告があります。え~、え~~~・・・。若干名の人は知っていると思いますが、じ、実は、大野先生は以前から大病を患っておりました。昨晩容体が急変し、お亡くなりになられてしました。ご冥福をお祈りし、皆さんと黙祷を捧げたいと思います。
も、黙祷!!!
早朝、校長先生から連絡があり、大野先生が最後に残した言葉を皆さんに伝えて下さいとの事です。皆さん!耳の穴なをかっぽじってよーく聞いて下さい。
『こんな俺だけれども、これから先もお前らの心の中で生きさせてくれね~か?』・・・、・・・、・・・」
 教頭先生は壇上で泣き崩れてしまい、ともみさんに担がれ保健室へと運ばれてしまった。
 朝礼が終わり教室に戻ると、カーテンの中から大声で泣く声が・・・。足元に目を移すと、ド派手なにペイントされた上履き、立石だった。ここぞとばかりに以前から立石に敵対心を抱いていた近藤が勢いよくカーテンをめくった。
「何だ~?だっせ~、お前泣いちゃってんじゃん!え~~~!何々?まさか大野だ死んだから泣いてる訳じゃねぇよな?えぇ?」
 クラス全員が近藤を睨みつけた。よくもまぁそんな言葉が言えたものだと誰もが思っていたに違えない。皆んながふつふつと湧き上がる怒りを押し殺していると、
自転車通学、学年で身長が一番小さく、クラスで一番のいじられキャラの福ちゃんが豹変した。相変らずヘリュームガスを吸い込んだかの様な声で、
「おい!お前、良い加減にしねぇとぶっ飛ばすよ?」
当然のごとく近藤は即答。
「本当にお前の声は面白すぎだな!お前のおかげで毎日楽しく学校生活を送らさせて貰ってる!で?何だって?俺をぶっ飛ばす?はいはい、一昨日来やがれ!」
「本当だぞ!やると言ったらやる男なんだぞ!良いんだな、覚悟しろよ!」
と言いながら教室から出て行ってしまった。
「何が覚悟しろだよ・・・」
二人のやりとりに疲れ何となく窓の外へ視線をずらすと、何と福ちゃんが更に血相を変えて教室めがけて走って来た。頭には通学で被っているヘルメット。何がやりたいのかと見ていると、な、何とそのままダイブし教室に飛び込んで来た。
『バッ、リーーーン』
窓ガラスが割れたと同時に近藤が吹き飛び気を失ってしまった。
「どうだ!やるって言ったらやるんだよ!」
福ちゃんは凄んで言っているつもり、クラスの皆んなは、甲高い声でその気になっている福ちゃんを見て大爆笑。すると、学年で一番可愛い美里ちゃんが、
「ごめん!誰にも言ってなかったんだけど・・・。福ちゃん、私の彼氏なんだ!
これ以上、福ちゃんを馬鹿にするなら私が許さない!」
「・・・、・・・」
 この一言に皆んな驚かされた。以降、男子は一切福ちゃんを馬鹿にする事はなくなった。ところが、女子は可愛がっていた福ちゃんが取られたと言うのが気に入らなかったらしく、この一件を境に美里ちゃんへのイジメが始まった。毎日の様にひそひそ声で美里ちゃんの悪口が聞こえた。
「ちょっと可愛いからって調子に乗ってさ~私前から気に入らなかったんだ~」
と、学年一不人気で女子番長の佐知子が美里ちゃんに聞こえる様に言うと、周りの女子も口を揃えて、
「そうよそうよ!私達も前からそう思っていたんだ~。もう、無視しちゃおうよ!」
「無視。いいね~いいね~!」
 自分が小学生の時にイジメられた事を思い出した。あの時は物凄く辛くて、いっそうこの世から消えてしまいたいなどと思ったんだ。そんな時、彼奴に助けられた。自然と声が出てしまった。
「無視ってひどくねぇ?美里ちゃん、何も悪い事してないじゃん!何が気に入らないの?」
すると女子番長佐知子が、
「竜士は何も知らねぇくせにしゃしゃり出てくんじゃねぇよ!」
「あぁ?知らねぇよ!でも無視はねぇだろ無視は!お前がやられたらどうなんだよ!」
「そんな事考えた事ねぇよ!」
「どんな理由が有ったって無視は良くねぇ!って言うか佐知子は何が気にいらねぇんだ?」
「おっお~・・・。そこ聞くかよ!そんじゃぁハッキリ言うけどよぉ、一回しか言わね~からよ~く聞けよ!・・・、・・・」
と、言い残し教室を出て行ってしまった。
「ピッピピッピーーー・・・」
大音量でスピーカーからノイズが聞こえ皆んなが耳を塞いだ。
「や、やめなさい!ガタ、ゴト、ガチャ、痛、ガチャガチャ・・・痛って~な!」
何やら、もめている音がまる聞こえ。大きな鼻息がおさまったと思いきや、
「ふ、福ちゃ~~~ん!私、佐知子は幼稚園の時から福ちゃんが大好きでした~~~!さっき、美里から福ちゃんと付き合っている事を聞きました!本当に悔しいけれど、決して邪魔はしません・・・。多分?絶対に!でも、でも、ふ振り向いてくれるまで?・・・とにかく、とにかく、ず~~~っと待ってるから~~~ピッピピーーー・・・。プツ」
 しばらく沈黙。口火を切ったのは気を失っていた近藤だった。
ムクッと起き上がり、
「あぁ~、とうとう言っちゃったよ・・・。佐知子と二人だけの秘密だったのによ~。でも、普通、放送室のっとってまで言うかねぇ・・・。まぁ、佐知子らしいっちゃらしいけどな~」


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